雨のむこうに
晴れた日には
風待ち湊・深浦の海岸沿いの町並みと
遙か彼方まで広がる日本海の水平線が見える
役場の煉瓦色の庁舎が
埋立地に浮かび
ところどころに頭を出した小島が
うち寄せる白波を
悠然と受け止めている |
いつの間にか降り出した雨に
窓外の景色が
セピア色に覆われて
佇む人の
心の深奥に
静寂のひとときが流れる
ひたひたと積もり行く
夕暮れ色の記憶に
いつしか
切なさをおぼえて
彼方に目を転ずれば
黒いシルエットを残して
針葉樹は
空に向かって伸びゆき
枝をいっぱいに広げた桜木は
湿った大気を思いのままに吸い込んでいる
耳を澄ますと
微かな音を立てて
広大な海に落ちていく
雨粒の音
大海の懐深く包み込まれ行く
その
不思議な音が聞こえくるようだ |