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カディスの赤い星は解説にあるように、国際冒険小説としても一級品である。ギターに始まり、
スペインの内乱、スペインの人々との出会い・・・ やがて、舞台をスペインに移して息詰まるサスペンスが始まる。ギターとフラメンコが目の前に 迫ってくるような描写もある。過激派との乱闘シーンも息を呑む・・・・・・・・・・。 フランコ総統とスペイン内戦についての「スペインの人々」 の本音も見事に描いている。独裁者フ ランコが支配するスペインは外国人からみれば酷い国である。しかし、スペイン人にとっては大事な 祖国である。総統の演説を聞くために広場に終結する膨大な数の群集はフランコ総統とスペインをま るごと支持しているのである。そんな民族のアイデンティティーにふれている。 それにしても、この本を読んで読後感が清々しいのは、この長編が恋愛ものとして一級品だからで
その他に、ここに登場するPR社の部下二人が夫婦になってしまうところ、脇役ながら、存在感の
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百舌の叫ぶ夜
★★★ |
能登半島の突端である弧狼岬で発見された記憶喪失の男は、妹と名乗る女に
よって兄の新谷和彦であると確認された。 東京新宿では過激派集団による爆弾事件が発生。倉木尚武警部の妻が巻き 添えとなり死亡。 そして、豊明こ興業のテロリストと思われる新谷を尾行していた明星美希部長 刑事。錯綜した人間関係の中で巻き起こる男たちの宿命の対決。その背後に隠 された恐るべき陰謀。迫真のサスペンス長編。 (解説から) |
カディスの赤い星
(上・下 2巻) ★★★
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フリーのPRマン、漆田亮は、得意先の日野楽器から、ある男を探してくれと頼ま
れる。その男の名前はサントス。20年前スペインの有名なギター製作家ホセ・ラモ スを訪ねた日本のギタリストだという。わずかな手がかりをもとにサントス探しに奔 走する漆田は、やがて大きな事件に巻込まれていく。 (上巻) サントスとダイヤがう埋め込まれたギター「カディスの赤い星」を追ってスペインに
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十字路に立つ女 | 逢坂剛に期待して次に読んだ本。
期待外れで100ページも読まず止めてしまった。もし、手元に読む本がなくなったら 再度 挑戦するかも・・・? |
よみがえる百舌
★★★ |
「百舌の叫ぶ夜」が良かったので、新刊を買ってしまった。
スリルとサスペンスの点では前作に劣らないが、百舌が途中で入れ替わっていたり ちょっと符合性のないところもある。 女刑事倉木と元刑事の大杉のコンビが活躍する。 |
★★★ |
さすがは逢坂剛。見事に長谷川平蔵を蘇らせてくれました。
最初の「寄場の女」に大したことがないと思いましたが、二編目から、 後半のどんでん返しが入ったはなしか登場。読者をあっと言わせる手法は、見事とい うしかありません。 ・寄場の女
内容(「BOOK」データベースより)
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「百舌の叫ぶ夜」 この本は凄い。ここまで、読ませる本と出会えた
ことを喜びたい。 百舌がこのサスペンスの主役となるわけだが、百舌が何者であ るのか・・・。 全くわからないまま展開されていく。物語はどんどん 進むが、わからないことだらけ。そして、次第に明かされていく謎。 その謎が自然に説明されていくところに作者の高い才能を感じてし まう。 それにしても、展開が時間を順序とおり流れず、首を捻るところが 何個所かある。はじめは作者の「間違い」かと思ったがそうではな かった。深い意図が秘められていたのである。 「百舌の叫ぶ夜」の解説を読んで、カディスの赤い星を知った。 読んでみたらさすがに直木賞をとるような本だった。 |
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1960年 東京生まれ
早稲田大学中退後広告代理店勤務などを経て作家活動に入る。 1988年 「幸福な朝食」が第一回日本推理サスペンス大賞 優秀作 1996年 『凍える牙』で第115回直木賞を受賞 |
はじめに読んだのが「紫蘭の花嫁」。
これはサスペンスミステリーとしては一級のものであろう。ただ、終末を期待して読んでい くと釈然としないものが残る。小田垣刑事部長と摩衣子の関係である。ネタばれになるので これ以上書かないが、結末がなぜ?で終わる本も珍しい。 その後短編集を読んだが、こちらは今ひとつ。 (読み手にハッピーエンドへの期待があるからか?) 乃南アサが直木賞をとった「凍える牙」を早く読みたいが、今のところ予算がない・・・・。
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(上)
★★★ |
波乱の人生を描いている。
この作家にしては新境地だと思う。 福島の農家四男に嫁いだつねだったが、夫が東京に出て株の失敗で多額の借
凍てつくオホーツク海に突き出し、人も寄せ付けぬ原生林に覆われた極寒の地・
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(下) ★★★ |
北海道開拓の悲惨さとそれに立ち向かう、とわの姿が続けて描かれている。
感動の大作である。 とわが嫁いだ男は農家の四男。農地がないので他に仕事を見つけなければな
小樽での子守奉公で初めて都会の暮らしに触れたとわは知床に戻り、森のなかで
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★★★ |
直木賞をとった傑作。
これまで読んだ乃南アサの本が今ひとつであったので、この本には期待していたが 確かに直木賞に値する、読み応え十分の一冊であった。 深夜のファミリーレストランで突如男が炎上死。そして起こる連続殺人事件。
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ニサッタ ★★★ |
主人公の青年はどうなってしまうのだろう。
危うく切ない話の連続だが、深く考えさせられる物語。 はらはらしながら読んだら、なんと500ページという分厚い本なのに、いつの間にか 読み終えてしまった。 東京で最後に辿り着いた住み込みの新聞配達店。 そこで、沖縄から来たという冴えない女・竹田杏菜(たけだあんな)と一緒になった。 杏菜は故郷に帰った耕平を追って、斜里町(北海道)にやってきてしまう・・。 相変わらず杏菜に全く関心のない耕平だった。 しかし、スーパーでのアルバイト、酒を飲んでの自動車事故、まだまだ続く「不幸」。 耕平は東京で無責任に暮らす父のこと、母のこと、そして苦労してきて達観したよう な祖母に囲まれ、自分の生き方を考えていく。 杏菜の悲しい生い立ちも語られる。アイヌ人との対比で・・・。 ------------------------------------------------------------ 内容(「BOOK」データベースより) ネットカフェ難民なんて他人事だと思ってた 会社の倒産をきっかけに、何をやっても裏目裏目に。 最初の会社を勢いで辞め、二番目の会社が突然倒産し、派遣先をたて続けにしく じったときでも、住む場所さえなくすことになるなんて、思ってもみなかった。ネット カフェで夜を過ごすいま、日雇いの賃金では、敷金・礼金の三十万円が、どうして も貯められない。 気がつけば負け組のワーキングプアになっていた青年を主人公に、現代の幸福を
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★★★ |
次の展開が気になって、長編なのに一気に読ませられてしまった。
あらためて乃南アサは読ませる作家だと思った。 こんな詐欺師がいたら怖い。
巻き上げた金は夜の高級店で遊びまくるために使う。同じ服を着ない。ブランド物の
かつて司法試験を目指し刑事に落ち着いてしまった阿久津は家族を顧みない日が
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★★★ |
明日への希望もなく、引ったくりなどの犯罪を犯しながらその日ぐらしをしている、
伊豆見翔人。 載せてもらったトラックの運転手を脅したために、居眠りした隙に車から人里はな れた山の中に放り出されてしまった。 闇の中で一夜を過した翔人は、バイクでケガをした婆さんを助けてその家に厄介 になる。優しく人懐っこい村人達。翔人はしばし穏やかな生活を送る。 ある夜現れた婆さんの息子の自分勝手な言い分を聞き、我が身を振り返る。そし て出直しを決意する。 乃南アサがこういうパターンの本を書けるということがわかった。 |
あたる場所で ★★★ |
「一番長い夜に」を先に読んでしまったので、順序が逆になったが、内容は似てい
るので違和感がない。 出所後、マッサージの治療院に勤めた芭子だったが、経営者からセクハラを受け 辞める。その頃弟が現れ、きちんとした家の娘と結婚するので、正式に縁を切りた いと書類を持参される・・・。 いったい何を目的に生きていけばよいのか・・。悶々とする芭子。 そんな時、芭子は明るく健気にふるまう務所仲間だった綾香の職場・パン屋を覗
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★★★ |
このシリーズは3つの本になっている。これは2番目のものであるが、読んだのは
一番最後だった。 この3冊の本、次々に読んだが実に読みごたえがある。ハラハラさせる展開もあり、 深く考えさせられる場面も数多い。ここまでのめり込んで読んだシリーズも珍しい。 ・「かぜの人」綾香がいい男だと言って、芭子に紹介した男は学者?
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★★★ |
久しぶりに読んだ乃南アサ。
テレビ化されていたような気がする。 深く考えさせられる一冊である。物語がどのように展開るのか、どんな結末が待っ ているのが目が離せない・・・。 6つの小話からなっている。雑誌に時期をずらして載せたものを合本。 ・芭子に犬の高価な衣装を注文した若夫婦と老舗の店を営む両親との確執。 ・銀杏拾い ・綾香の息子の消息をたずねた仙台で芭子は未曾有の大地震に遭う。 作者自身の実体験をもとに生々しい地震現場が語られる。 辿り着いたホテルで、行きの新幹線で一緒だった南と東京へのタクシーに便乗 することになる。 ・綾香はこの地震をきっかけに災害ボランティアの道を進み、芭子とは週1回から 月1回と疎遠になる・・。 芭子はタクシーで一緒だった弁護士・南と付き合い始める。南は芭子の過去を しったうえで受け入れている。 そして、綾香の自分の犯した罪への悔みが語られる。 このシリーズとしては最終作らしい。 順序が逆になるが、続けて前2作も読もうと思っている。 ------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) わたしは、まだやり直せるのだろうか? 幸せになって、いいのだろうか? 刑務所で 知合った前科持ちの芭子と綾香は、東京下町で肩を寄せ合うように暮らし始めた が――。 健気に生きる彼女たちのサスペンスフルな日常は、やがて大震災によって激し く変化していく。二人は、新しい人生の扉を見つけられるのだろうか? 二人は自分たちの大きな違いに気づき始める。人を殺めるとは何か。
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この作家の本はなかなか読み応えがあって良い。
短編に中に、超短編を挟んでいる。 連作ではないので全く違った話なのだが、目が離せず一気に読めた。 ・ハズバンド ただ見栄えだけに生きる女。家事を一切せず自由奔放生きる女に振り回され続 男は、女が別な男のもとに走ったため、離婚し何とか復活する。しかし、元妻の男 は女の扱いに困り、元夫に何かと相談をしてきた・・そして、女も元夫のところに やってくる・・。 ・僕が受験に成功したわけ 小学生の僕は女友達の母親の「綺麗な脚」のとりこになる・・・。 ・アンバランス 4歳も年下の男と同棲し会社をやめ、結婚を心待ちにする女。しかし、マンネリ化 なのか、男は仕事以外に関心がなくなったように見え、結婚に不安を感じ別れを 決心する。男は・・・。 ・それは秘密の 突然の台風で真っ暗なトンネル閉じ込められた男と女(女は横転したバスから 助け出された)。2人は親近感を持ってひと時を過ごす・・・。 ------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 心理描写の名人上手が、小説技法と男女観察の粋を尽くした、きらめく宝石のよう な小説たち! 罠と浮気。カネとライバル。煩悶と純心。明けない夜と、白茶けた朝。 いつまでも瑞々しい老婆、フェティシズムに目覚めた小学生男子、結婚できないカ ップル、闇の中で胸をときめかせる政治家――。 〈恋ごころ〉という厄介きわまるものを抱えた男たち女たちのミステリアスな心情と 希望を描く、作者会心の珠玉短篇集。 |
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「にげなきゃ、あいつから逃げなきゃ」花屋で働く三田村夏季の前へ突然表われた
謎の影。 その瞬間から彼女の逃亡生活が始まった。 一方、神奈川県下で連続婦女暴行殺人事件が発生。史上まれにみる凶悪犯罪を 前に捜査陣は翻弄される。苦悩する刑事部長・小田垣と彼に近づく美女・摩衣子・・・ ・・(表紙から) |
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萩行きの高速バスに事件が発生する。乗務員が殺され、バスは何処とも知れぬ場
所をさ迷う。台風の接近による雨・風が激しさを増す中で、乗客のそれぞれの思いが 交錯する。 恐怖の一夜を描いたサスペンス。 |
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恐くて意外な結末が待っている短編集。 |
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日常の狂気を扱った短編集。 |
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うーーん!
面白かったが、メリハリが今一つかもしれない。 たんたんとした文、展開。 昔話を忠実に辿っているようにも感じさせて…実は全く違う展開・・。 仕掛けは良い。 ------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 大人も子供も楽しめるユニークな昔話集が誕生しました。 ドラマ化で話題となった『いつか陽のあたる場所で』など、次々話題作を生み出す乃 南アサさん。 イケメンさるどんに遊びれた純情かにどん(「さるとかに」)じじとばばが始めた新商売 とは?(「花咲かじじい」)一寸法師が姫君を手に入れた計略(「一寸法師」)六人の地蔵 と、六人の息子たち(「笠地蔵」)ほか、大人も子どもも楽しめる直木賞作家・乃南アサ が贈る、ユニークな昔話集。 手練れの作家の手にかかると、大人も楽しめる、誰も読んだことのない新解釈でよみ がえる! ユニークなエンタテインメントに大変身。太宰治の『お伽草子』を彷彿とさせる意欲作
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1964年 宮城県生まれ (早稲田大学卒)
1992年 「六番目の小夜子」でデビュー 日本ファンタジーノベル大賞の最終候補作となる。 2005年 「夜のピクニック」が第26回吉川英治文学新人賞。第2回本屋大賞。 ホラー、SF、ミステリーなど、さまざまなタイプの小説で才能を発揮している。 ファンには“ノスタルジーの魔術師”の異名で親しまれている。 主な著書 「球形の季節」「三月は深き紅の淵を」「光の帝国 常野物語」「不安な童話」 「ライオンハート」 |
六番目の小夜子 ★
★ ★
NHKの夕方のドラマにもなっていたこの六番目の 小夜子。 年代が全然違うのでちょっと恥ずかしいが・・・、 「乱読」を自認する私としては、有名?なものは何で も読んでやろうということで、古本屋で偶然見つけた のを幸い買ってしまった。 ホラー・ミステリーということだったが、学園を舞台
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物語の一節
「学校というのは、なんて変なところなのだろう。同じ歳の男の子と女の子がこんなにたく さん集まって、あの狭く四角い部屋にずらりと机を並べているなんて。なんと特異で、な んと優遇された、そしてなんと閉じられた空間なんだろう」 ここを舞台に起こるミステリー、小夜子伝説。
美しく謎めいた転校生津村沙世子、「小夜子」伝説の謎に挑む関根秋、そして花宮雅子と
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〜〜常野物語
集英社 |
10の短編から成っている。「常野」の能力を身につけた人々の辿る運命を語りながら
現在の私たちの生き方について鋭く切り込んでいる。 @大きな引き出し A二つの茶碗 B達磨山への道 Cオセロ・ゲーム D手紙 E光の帝国 F歴史の時間 G草取り H黒い塔 I国道を降りて・・ |
新潮社 ★ ★ ★ |
高校生活最後を飾るイベント「歩行祭」。それは全校生徒が夜を徹して80キロ歩
き通すという、北高の伝統行事だった。甲田貴子は密かな誓いを胸に抱いて歩 行祭にのぞんだ。三年間、誰にも言えなかった秘密を清算するために―。学校生 活の思い出や卒業後の夢などを語らいつつ、親友たちと歩きながらも、貴子だけ は、小さな賭けに胸を焦がしていた。本屋大賞を受賞した永遠の青春小説。 (「BOOK」データベースより) 映画化され話題を呼んだ一作である。
甲田貴子と西脇 融が主人公ということになるのだろうが、6番目の小夜子と
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深き紅の淵を
講 談 社 |
ぼんやりと物語の筋を追いかけながら読んでいると、全く意味不明のことだらけで
実につまらないお話である。 「たっ一人にだけ、たった一晩だけしか貸してはならないというまぼろしの本をめぐ る物語・・・」 このうたい文句に惹かれて買ってしまった。 第一章「待っている人」 会社員の鮫島巧一が読書が趣味という理由だけで金子会長の広大な屋敷に招か れるところから始まる。この屋敷に集まる四人と鮫島は幻の本「三月は深き紅の淵 を」について語り合い、この本を探し出すという賭けをする。そして・・・ 第二章「出雲夜想曲」
第三章「虹と雲と鳥と」
第四章「回転木馬」
次第に作者が「三月は深き紅の淵を」を書き始めるお話になっていく・・・。
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第20回の山本周五郎賞を受賞した作品と言うことで図書館から借りて読んだの
だが・・・。 途中でリタイア。「三月は深き紅の淵・・」を読んだ時と同じような感じがした。 全編を読めば、その素晴らしさがわかるのかもしれないが・・・。 一緒に借りてきてた早瀬乱「三年坂」も同じような感じでリタイアした。 このところ忍耐力が落ちているのかもしれない。 |
★ ★ ★ |
久しぶりに読んだ恩田陸。
これまで本とちょっと異質のドタバタ物・・。 ひと言でいえば、なんでもありの「痛快、無類の興奮ありの面白い本」 登場人物が多彩で、巻頭にある「登場人物紹介」を時折覗かないと、誰が誰やら わからなくなる。 元暴走族ながら、今はおとなしいOLの加藤えり子や、子役をめざす麻里花、玲奈 など面白いキャラクターも登場する。 商品の説明・内容の紹介から
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1961年生まれ。アニメーションディレクターを務めるかたわら、ミステリーを執筆。
1991年 第37回江戸川乱歩賞(連鎖)その取材力と物語性が高く評価された。 1995年 第17回吉川英治文学新人賞(ホワイトアウト) 1996年 第10回山本周五郎賞(奪取) 1996年 第50回日本推理作家協会賞長篇(奪取) 2006年 第25回新田次郎文学賞短編集(灰色の北壁) |
覇王の番人
★★★ |
真保裕一が精魂込めて書き上げた歴史小説の傑作と言って良いだろう。
明智光秀については、いろいろな本に登場する。最近読んだのでは岡田秀文の 「本能寺十六夜物語」。この中でも明智光秀は好意的に捉えられている。 しかし、この覇王の番人のように、徹底的に人物像に迫ろうとした本は少ないよ うな気がする。 「後記」で作者が述べている。 ずっと疑問でならなかった。明智光秀は多くの英傑が居並ぶ信長の家臣の中で 羽柴秀吉と並び立つほど、出世争いをしていた武将だ、と多くの歴史本や小説に 書かれていた。ところが、彼がどれほどの武功を馳せてきたのか、詳しく伝えてく れるものはほとんどなかった・・・ 歴史は勝者によって描かれていく・・この物語を書き終えた今、私は確信している。 明智光秀こそが、実は戦国時代を終わらせた真の武将なのだと。 ------------------------------------------------------------ 両親、兄弟、友を侍に殺された小平太は甲賀忍びの仲間に入り、やがて明智光 秀に使えるようになった。(準主役) 明智光秀は幼なじみで心を寄せていた「帰蝶」が信長に嫁ぐのを機会に美濃を出 て流浪し、やがて越前・朝倉に身を寄せた・・。そして、足利義昭を奉じる細川藤 孝と出会い、やがて信長に仕えるようになる。 天下布武のために、ただそのために光秀は信長の過酷な命令にも従ったのだが ・・・・。 細川藤孝の思惑、秀吉の深謀・・そして、何よりも大事な明智光秀の武功と人物 像に切り込んでゆく・・・その視点が斬新・真摯で素晴らしい。 光秀に常に従う従兄弟の弥平次(秀満)、次右衛門との堅い主従の契り。 覇王として変貌してゆく信長・・ ------------------------------------------------------------ 物語は「小平太」らしき老僧を、細川の若君が訪ね、語り合うとい形で構成させて いる。 終末・・家康は川越・無量寿寺北院の「天海」を江戸城に呼ぶ・・・。 |
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歴史に題材をとった覇王の番人が良かったので、図書館で見つけたのを幸いに
さっそく読んでみた。主人公の細川政元も興味をそそられる人物だった。政元の成 長や考えを周囲の人たちから見るという視点で書かれた部分が多く、この点では 主人公に感情移入できにくいところがある。 8代将軍義政から子の9代義尚、そして、甥の10代義稙(よしたね)、掘館公方 からの11代義澄・・・次々と実権を持たない将軍が出る。11代義澄は政元が自分 の意のままにかえた将軍である。 内容(「BOOK」データベースより) 下克上の主犯かつ変人・細川政元を描き切る。絶大なる権力を握る「半将軍」? あるいは妖術を操る希代の変人? 管領家当主として、才をもって時代を牛耳 った男・細川政元を、新しい視点から描く歴史巨編。 妖術を操り、空を飛び、女人を寄せつけず独身を通した“希代の変人”細川政元。 応仁の乱後の混迷した時代に、知略を尽くして「半将軍」の座をつかみ取る。信長 に先立つこと70年、よく似た人生を送り、戦国時代の幕を開けた武将の、真の姿と は? 政元の姉・洞勝院と、室町幕府を守ろうとする日野富子。女たちの戦国時代も華 々しく幕を開ける。 |
動乱始末 ★★★ |
安政の大地震が起こって、その動乱を収めるために町廻り同心抜擢された寅
之助はかつての父の腹心だった松五郎の助けを借りて数々の事件に挑む。 捕り物帳として楽しく読めた。 内容(「BOOK」データベースより) 地震ですべてを失った板前は憎き男を見て追いかけ、夫の帰りを待つ女は瓦礫 の中を妾のもとへ走ってしまう。息子のために危ない読売に手を出す戯作者がい れば、どさくさまぎれに吉原を逃げ出した遊女も現れる。さらに虎之助の恋路に暗 雲が立ち込め、尊敬する父にも疑惑の影が…。 さあ、どうする!?猫背の虎!恋と人情、謎解きに捕り物。動乱直後の江戸を舞台に 繰り広げられる超エンターテインメント時代小説。 |
枝の下で ★★★ |
はじめこの作家の描きたいことがどの辺りにあるのかよくわからなかった。
森の中で不思議な女と出会い、そこから別れた妻との過去を振り返ったり、現在 森林で働く自分を見つめたり・・・・・・・と。 やがて、自衛隊の内部問題に踏み込む。何年も自衛隊で暮らす者にあらわれる 倦怠感と将来への夢の欠如。そしていじめ。 それらを包含しながらストーリーは進み、読み手を次第に物語の世界に引きずり 込んでゆく。国有林・森のしごと・自然保護団体の活動なども丹念に描きながら、 札幌や北海道を舞台に愛車「ランドローバー」を自在に走らせていくのもよい。 主題は栗原の言葉 「事実を知り、人に伝える。それは大切なことだと思うよ。けど、誰もがそれを受け とめ、耐えられるわけじゃない。俺は心を温かくする嘘も、生きていくうえでは時 には必要になる、って思うんだ。」 という辺りにあるのではないか。 不発弾を持ち出した自衛隊員、自衛隊員になりきれなかった男といじめ、ついに
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★★★ |
傑作である。織田裕二が主演して映画にもなったが、原作よりスケールが劣ると
いう感想が多いとか・・。 解説から
ダムについての豊富な知識に裏付けられた、荘大にして緊迫感溢れる一作。 |
★★★ |
五つの短編集
@盗聴
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奪 取 ★★★ |
さすがに山本周五郎賞をとった作品。読み応えがある。
ヤクザの金融から借りた金を返すために、両替機を通過するだけの偽札づくりに とり組んだ道郎と雅人。見事に成功して大金を手に入れるが、途中で変なジジイ と知り合う。雅人はヤクザにつかまり、道朗はジジイと本格的な偽札づくりを始め た。かなり分厚い本だが展開がスリリングでどんどん読めた。偽札を作るための 細かな説明が続くところは読み飛ばす感じだったが・・。 ジジイはヤクザのために命を落とし、道朗は出所してきた雅人と再び組んで、偽 札づくりにとり組む。ジジイが働いていた印刷工場の幸緒も加わり、ついに完成す るが・・・。 最後に道朗は本を書いてもうけることにした。そのペンネームは亡くなったジジイ もいれて四人からそれぞれ一字ををとった「真保裕一」(四人は途中で戸籍を取 得して名前を変えている) |
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事件が起こったのはアメリカだが、舞台を日本を移して物語が展開する。
南米のボリビアや東南アジアのタイのことも登場する。 外務省、警視庁、その他中央官庁の役人たちの思惑も絡んで、捜査はなかなか 進まないが、黒田は粘り強く取り組む。 筋の展開としては面白いのだが、真保裕一はもう少し簡潔にキレのある文を並 べられないのかといつも思う。 ------------------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) サンフランシスコで日本人女子大生・霜村瑠衣が失踪し、日本から駆けつけた父 親の立ち会いのもと、アパートの捜索が行われた。外務省邦人保護担当領事・黒 田康作も現場に立ち会ったが、当の父親は、娘の失踪理由を知っていて隠してい る様子が窺われる。瑠衣の容疑は、単なる窃盗ではなく、テロ準備罪?! 黒田が調べていくうちに、彼女の周囲には、日系ボリビア人や謎の日本人フリー ジャーナリストをはじめとする不審な人物の影がちらついていて、何人かの死亡者 までいることが判明。 ついに失踪事件の背後に隠されていた真実に辿り着いたとき、その重さに、黒田 は愕然とする。国益を優先すべきか、邦人の命を守るべきか、黒田の苦悩はつきな い。 |
★★★ |
選挙に無関心な国民が無責任な政治を生み出す・・その通りだと思う。
政治の改革と一票の重さの再認識のために立ち上がった達彦と健一郎。 無所属で立候補することの難しさとこ、選挙戦の実態を細かに描き出しくれた 一作で読みごたえがあった。 それにしても、真保裕一の本は「長い」。半分以下の量で書けないものかと・・ いつも思ってしまう。 ------------------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 事業失敗の責任を押しつけられ嫌気がさし、総合商社を辞した駒井健一郎。 元中央新聞記者で、故郷・静岡県秋浦市からの衆院選立候補を決意した、健 一郎の高校陸上部での親友にして恋敵・天知達彦。二人は、理想と、ある目 的とを胸に、徒手空拳でコンビを組んだ。 夢と情熱にほだされて、応援に立ち上がった同級生たち。私たちが手にして いるダイスを、今こそころがそう―この国を変えるために。そして自分を変える ために。 1999‐2000年、宙ぶらりんだった「34歳」たちが、衆院選を舞台に“第二の青 春”を燃やし尽くそうとしていた…。 |
★★★ |
素晴らしい!!
真保裕一の凄さを再認識させられた。 作家の使命・・そんなものがあるとすれば、まさにそれを全うする本を書いている。 内容はデータベースに紹介されてるので省略。 もりはら鉄道に燻ぶっていた者たちが生き生きと動き出す・・人間は認められ活動 の場が与えられれば、眠っていた能力が芽を吹く・・。 カリスマ・アテンダント・篠宮にもつらい過去や悩みがあることを、篠宮に沿って描 いているのも良い。 ------------------------------------------------------------ 内容(「BOOK」データベースより) ベストセラー『デパートへ行こう!』に続く、感涙必死の再生物語、第2弾! 県下最大のお荷物といわれる赤字ローカル線、もりはら鉄道は、廃線の瀬戸 際に立たされていた。再生を図るため、前社長が白羽の矢を立てたのは…… なんと新幹線のカリスマ・アテンダント。篠宮亜佐美。三十一歳、独身。 「この鉄道の経営は、素人以下です」「お金がないなら、智恵を出すのよ!」 県庁から送り込まれた鵜沢哲夫以下、もり鉄社員は戸惑うばかり。しかし、亜 佐美は社長に就任するや、規格外のアイデアを連発し、鉄道と沿線の町はにわ かに活気づいていく。 一方、時を同じくして、列車妨害、駅の放火、台風による崖崩れと、数々の事件 が亜佐美たちを襲う。そんな中、社員すべての希望をかけた「もり鉄フェスティバ ル」の日がやってくるが……。 赤字鉄道の再生は? 寂れた沿線の町おこしは? そして、不穏な事件の真相は? もり鉄に明日はあるのか? 読めば元気の出てくる、痛快鉄道再生ストーリー!! 人々の希望を乗せた列車は、感動の終着駅に向かってひた走る。 |
ふりかざす君へ |
マスコミの事件関係者に対する容赦なき弾劾・・。そんなものをイメージしたが
ちょっと期待外れだった。 かつて新聞社に席を置いたこともある主人公が、逆に取材を受ける立場になり その理不尽さに腹を立てる場面もあるのだが。 食中毒事件を起こしたホテル。子どもの死もあった。社長であり地元にいくつの も事業を行っていた舅は苦境に立たされた。それを見ながらも、逃げ出した不破は 別れた妻の苦境を救うために舞い戻った。 不破の帰郷を喜ばない者が不和を襲う。何か知られてはならない秘密があるのだ ろうか・・・。 高校ラグビーの先輩で新聞社の上司でもあった大瀧は新聞社社長となり街を仕切 っていた。 ----------------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 地元紙の記者だった不破勝彦は、神永美里と結婚し、義父の仕事を助けるべく ホテル業へ転身する。が、やがてホテルは不祥事を起こし義父は失脚、妻との 不和も重なり、彼は故郷から逃げ出した。 七年後―彼は帰りたくない故郷へと戻る。元妻の不倫相手を救うために。 問題を起こしたホテルを、正義の名のもとに攻撃した新聞社。そのトップに就任し たのは、高校の先輩である大瀧丈一郎だった。 ホテルは彼の傘下に吸収され、不破を恨む者たちが次々と現れる。 そして、ついに魔の手が彼を襲う―! 「正義」の意味を問い直す、渾身の長篇ミステリー!! |
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「古今の警察小説のあらゆる要素を包含して、しかも従来のどんな類型にも属さない、
まったく新鮮な作品である。・・・・・愛する一人娘を殺された巡査は、不処分で釈放さ れた容疑者の少年を撃てるのかという問いは、当事者にとってだけでなく、私たち読 者にとっても限りなく重い・・・・・・」 帯に書かれたこの文句に引きずり込まれるように買ってしまったのが「巡査」である。 |
宝島社文庫 |
暑い夏の夜、交番の実直なる巡査・島野順平のひとり娘が、神社の森で殺された。
まもなく逮捕された少年は証拠不十分で不処分、釈放。 悲嘆のなかで島野の家庭は崩壊した。そしてある日、島野は拳銃を持って失踪・・。 親友の真壁警部補が必死に島野を捜索する過程で事件の真相が浮かび上がってく る。(解説から) この本、確かに読み応えがあったが・・・・・・・・。
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昭和32年、東京生まれ
国際商科大学卒 上毛新聞社に勤務、フリーライターとなる。 平成3年「ルパンの消息」が第9回サントリーミステリー大賞佳作になる。 平成10年「影の季節」で第5回松本清張賞受賞。 平成12年「動機」で第53回日本推理作家協会賞短篇部門賞受賞 |
臨 場・・ |
やはり横山秀夫は凄い!
読ませる文と、納得のどんでん返し・・・。 この本ではテレビ化された1部〜10部のあらすじを紹介したり、配役紹介、インタビュ ーなども載せている。 ただ、5つの短編を読んで感じるのは、内藤聖陽と「倉石義男」は別ものだということ。 倉石は底知れぬ深さがある。内藤のような軽々しさ、検視官の制服をく引っかけるという イメージとは異なる。 人間を鋭く見つめるという点では共通していいるのだろが・・・。 ------------------------------------------------------------ 内容(「BOOK」データベースより) ‘終身検視官’、死者の人生を救えるか--。 辛辣な物言いで一匹狼を貫く組織の異物、倉石義男。
誰か一人が特別な発見を連発することなどありえない事件現場で、
出版社からのコメント
臨場とは、警察組織では、事件現場に臨み、初動捜査に当たることをいう。
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64 (ロクヨン) ★★★・・ |
広報・警務部に所属することになった三上はもと刑事部であった。
刑事部と警務部の確執。 警察庁長官のD県警訪問の真の意味は? 不可解な事項を明確にせず、三上は上から報道各社への広報を命令される。 そもそもは交通事故を起こした妊婦の匿名にかんすることから始まった。 やがて、かつて三上も捜査にくわわった未解決事件「64」が関わってくる。 三上は娘を殺された雨宮に、長官の遺族訪問を納得させるために、動き始めるが・・・。 三上自身も「顔」を気にした娘が家でしたという最大の悩みを抱えている。 週末にやってくるどんでん返しは見事だ。感動する。
それにしても長い。これをもっとコンパクトにできなかったのだろうかと思ってしまう。
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半 落 ち 講談社★★★・・・・・・・・ |
書店で思わず手に取った。
「30万部突破! このミステリーがすごい!」 「’03年版 週刊文春’02ミステリーベスト10 第1位」 という帯の見出しにひきつけられたのである。 最近は古本屋で「新古本?」を買うことが多くなったが、新本のこの本を手にとって10ページ程読ん でたちまち購入を決めた・・・。この語り口、この文体、臨場感、読み手を瞬く間に事件の場に引きず り込んでしまう手口に脱帽である・・・・。 妻を殺した梶総一郎に関わっていく人物は6人。 ・県警捜査強行犯指導官 志木和正
この6人にそれぞれの人生があり、引きずっているものも決して軽くはない。梶総一郎の事件とそ
落としの名人・志木和正。 警察官としてある地位に登りつめてはいるが、取調べの仕事が自分
他の5人の人生も、それぞれの立場で付随?して語られる。
中尾は生粋の新聞記者。ただ一発のネタを狙い、その刹那に賭ける男、その土地に留まる義務
植村は生まれ故郷の出世頭である。兄や親戚の者の期待を受けて弁護士になった逸材だが、この
裁判官の藤村は、裁判官以外にほとんど外の世界を知らない「孤高の人」である父が、妻の助言
古賀は定年を目前。牧場に婿に入った息子を頼る気はさらさらない・・・・。 クライマックス。志木は梶が骨髄移植で救った池上を連れて訪れる。そして明かされる「空白の二日
終末はともかく、息もつかせずここまで読ませてしまった作者に最大限の敬意を表したい。 |
震 度 0・・ |
これは警察組織内部の権力闘争?のようなものである。
警務部課長という、人事など組織の中枢を担っている不破が失踪。折から発生した阪神大震災と絡め、 ストーリーが展開する。 この先どうなるのかと興味は尽きない。この作家の特徴である読ませる文で、どんどん読者を引っ張る。 しかし、何だろう。「どうなるだろう」と読み進めて、途中で「つまらない終わり方をしてほしくない」と思い 始めた。 本部長、警務・警備・生活安全・刑事、各部長の思惑と過去の恋人関係、今の不倫、本部長が闇の金 融王から洋服仕立券を渡されてしまったこと、不破の隠し子疑惑?などを織り込んでみても、心に残る ものは少ない。 警察上層部はこんなつまらないことをやっているのか・・・これが主題では物足りない。 ---------------------------------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 阪神大震災の朝、N県警本部警務課長・不破義人が姿を消した。県警の内部事情に通じ、人望も厚い 不破が、なぜいなくなったのか? キャリア、準キャリア、叩き上げ、それぞれの県警幹部たちの思惑が、 複雑に交錯する……。組織の本質を鋭くえぐる長編警察小説。 |
陰 の 季 節 ★★★・・・・・・・・ |
D県警本部、人事を担当する切れ者の二渡警視。
その二渡を四つの事件に絡ませながら、警察内部にうごめく人々の生々しいドラマを四つ展開させて いく。 第1話 陰の季節
第2話 地の声
第3話 黒い線
11/28・29 滝川への往復の寝台列車の中で読んだ。
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動 機 ★★★・・・・・・・・ |
第1話 動機
紛失した警察手帳を巡って、警務課企画調査官の貝瀬正幸が奔走する。 実は警察手帳の一括保管を起案したのは貝瀬である。紛失防止を阻止するために導入し た新制度だったのである。 内部捜査で浮かび上がってくるたたき上げの刑事「軍曹」。今は老人ホームで廃人のよう になっているが、かつては外勤警察官の鑑(かがみ)と讃えられた貝瀬の父の姿を絡めながら ストーリーは展開する。 二冊を残して発見される警察手帳。迷宮入りとなるであろう、この事件に定年間近の軍曹 の一途な思いが凝縮され、読後感は悪くない。 テレビでドラマ化された一作 第2話 逆手の夏
第3話 ネタ元
第4話 密室の殺人
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影 踏 み ★★★・・・・・・・・ |
ノビカベと呼ばれる泥棒が主人公。
15年前の出来事が真壁修一の人生を大きく変えた。
全編を漂う雰囲気が、どこかしら東野圭吾と似ていると感じたを受けた。
十五年前のあの日、男は法を捨てた。
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真 相 ??? |
【カバーの解説】
犯人逮捕は事件の終わりではない。そこから始まるもうひとつのドラマがある。 息子を殺された男が犯人の自供によって知る息子の別の顔「真相」 選挙に出馬した男の絶対に当選しなければならない理由「18番ホール」など 事件の奥に隠された個人対個人の物語を五編収録。人間の心理・心情を鋭く 描いた傑作。 切なくなるストーリばかりである。
「不眠」は、リストラされることの怖さと厳しさ、「他人の家」は一度法を犯した
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ルパンの消息 ??? |
【カバーの解説】
「昭和」という時代が匂い立つ社会派ミステリーの傑作!///////////////// 平成2年12月、警視庁に一本のタレ込み情報。15年前に自殺として処理され た女性教師の墜落死は。実は殺人事件だった・・・・。しかも、犯人は、教え子 の男子高校生3人だという。時効まで24時間。事件解明に総力を挙げる捜査 陣は、女性教師の死と絡み合う15年前の「ルパン作戦」に遡っていく。 「ルパン作戦」・・・3人のツッパリ高校生が欠航した破天荒な期末テスト奪取 計画には。時を超えた驚愕の結末が待っていた。 昭和の日本を震撼させた「三億円事件」まで取り込んだ複眼的ミステリーは、 まさに横山秀夫の原点。人気絶頂の著者がデビュー前に書いた「幻の処女作」 が、15年の時を経て、ついにベールを脱いだ! デビュー前の作品ということで、筋としては二転三転、予想外の人物が早くか
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1980年 愛知県生まれ。
名古屋経済大学法学部卒業 アルバイトをしながら作家を目指し、各新人賞に応募。 2004年 「カタコンベ」で第50回江戸川乱歩賞を最年少で受賞 |
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リミットは水没するまでの5時間。
洞窟に閉じこめられた調査隊が危ない! 「贖罪」の思いを胸に、単身、救助に向かった青年を襲う「殺人者」の恐怖。 |
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1948年 生まれ。
早稲田大学卒業 主な著書に「金塊船消ゆ」「密約幻書」「クリスマス黙示録」 「二島縁起」 「海上タクシー(ガル3号)備考録」 「症例A」「追憶列車」「離愁」 「海賊モア船長の憂鬱」など |
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【解説から】
二之浦ゆり子は青年医師・里見に誘われ、瀬戸内海の小島巡りに同行するが、 その際、ひとつの無人島を目にしたことで、過去の悪夢が甦る。彼女は15年 前誘拐され、その島に放置されたことがあるのだ。里見と交際を始めたゆり子 は、彼とともに過去の謎と向き合う決意を固めるが、浮かび上がってきたのは 驚愕の真実だった。「症例A」の著者が贈る、ドラマとトリックが融合した傑作。 夏の猛暑の最中に読んだ。
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1956年 埼玉県生まれ 成城大学経済学部卒
広告製作会社、コピーライターを経て作家 1997年 「オロロ畑でつかまえて」で第10回小説すばる新人賞 2005年 「明日の記憶」で、第18回山本周五郎賞 2006年 「明日の記憶」が渡辺謙主演で映画化 軽妙洒脱、上質なユーモアに富んだ文章には定評があり、 行間に人生の哀歓が漂う。(光文社の解説から引用) |
ドライブ ★★★ |
大手の銀行マン・牧村伸郎は出世を目ざして、理不尽な上司の命令にも耐
えていたが、ある日支店長に暴言を吐き銀行を辞め、タクシーの運転手にな る。 次の仕事をみつけるために(公認会計士試験)、腰掛けのつもりではじめた タクシー運転手の仕事だったが、次第に受験も諦め、ノルマに追われる毎日を 過ごすようになる。妻や子ども達ともうまく行かなくなったある日、昔の恋人を 見かけ、自分の過去を辿り直す。 「人生、今からでも車線変更は可能だろうか。」 しかし、昔の恋人が甥っ子にした仕打ちを垣間見て、その道を選ばなくて良か ったと思うようになる。 家族をあらためて見つめ直してみれば、それなりに良いことに気づく。 泥酔した元上司の支店長を引っ張り回し、自宅前に降ろし、タクシードライバー として生きていくことを決意する。読後感が悪くない。 本屋の立ち読みと図書館(腰掛け読み?)で読了。 |
★★★ |
山本周五郎賞をとった本をいろいろ読もうと思ってパソコンで検索。図書館で
次々と借り始めて間もなく行き当たったこの本。荻原浩が「自分の頭の中身 をほじくり返すようにして書いた」という。50才にして若年性アルツハイマー にかかった主人公が病気の進行と正面から向き合う姿が描かれている。 「誰だったっけ。ほら、あの人。」
翌朝菅原老人と別れて、帰路についた佐伯は、吊り橋のたもとに立っている
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前作の二つが良かったので、今野敏の本と一緒に借りた。
古木にまわる話を集めたオムニバス。 ・東国に下向した国司の公惟(きみただ)は郡司である浅子一族の裏切りに
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さよなら、 そしてこんにちは
★★★ |
7つの短編集。
奥田英朗の「家日和」と似ている感じを受けた。家日和が平凡な家庭に訪れ・ る、ちょっとした異変を取り上げているみれば、こちらは「働く人」が主となる かもしれない。ただ、ビューティフルライフのように「もう一つの主題」が隠され た短編もある。 ・さよなら、そしてこんにちは
・スーパーマンの憂鬱
・美獣戦隊ナイトレンジャー
・寿し辰のいちばん長い日
・スローライフ
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漂流記 |
確かに面白いんだけれど、ちょっと長い。
昔読んだロビンソンクルーソーや十五少年漂流記を思い出す。 飛行機の故障で墜落。運よく無人島に流れ着いた10人と一匹の犬。 救助をあてにしたが一向に現れず・・・。 やがて、生活の知恵を身につけ、食料を調達し、無人島生活を始めると いうお話。椰子の実、魚、蟹、水鳥やコウモリ、ウミガメまで食料に・・・。 ---------------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 塚本賢司、28歳。接待出張で乗り合わせた飛行機が遭難し、なんと、流れ 着いたのは水も火もないポリネシアの孤島!!賢司をコキ使う上司たち、スポ ンサー企業の御曹司、挙動不審な新婚カップル、小学生とそのじっちゃん、 怪しいガイジン。あり得ないメンバー10人での毎日は、黒~い本音も秘密の 過去も、隠しきれない生活だけど…。 |
座敷わらし
★★★ |
4月末に映画が上映されるというので、原作を読んでみることにした。
岩手の遠野が舞台のようでそうでもない。(場所が明示されない) 東京で家族はバラバラになっていたーー。 父親の晃一は地方に赴任になったのを機会に、古い大きな一戸建ての家を 借りる手はずを整える。最初は絶対反対だった妻の史子だったが、やがて 順応し始める。友達から浮いていた娘の梓美も水泳をきっかけに友達ができ る。息子の智也はサッカーの、老母には近所の知り合いができる・・・・。 そして、座敷わらしーー。 大らかな自然に囲まれた古民家で家族が自分の生き方を見つめ、絆を取り 戻していく姿が清々しい。秀作である。「さよなら、そしてこんにちは」に集録 されている「ビューティフルライフ」のテーマと似たところがある。 座敷わらしは間引きされた子が成長したもの・・・という一説があることが紹 介されているが説得力がある。成長の過程で親から何も学んでいないから、 いつまでも幼いのだと・・・。 終末、晃一は本社に呼び戻され、三か月で家族は東京に帰ることになる。 気落ちする皆だったが、東京への帰路で立ち寄ったレストランで??。 ---------------------------------------------------------- 内容紹介から 生まれてすぐに家族になるわけじゃない。一緒にいるから、家族になるのだ。 東京から田舎に引っ越した一家が、座敷わらしとの出会いを機に家族の絆を 取り戻してゆく、ささやかな希望と再生の物語。 朝日新聞好評連載、待望の単行本化! |
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神様からひと言・・・組織のトップのひと言で何事も決まる。
タマちゃんラーメンはそんな会社である。 専務にただ追従する重役たち。その専務も副社長の前では抗弁できない。 佐倉涼平はたまたま出席できた会議で暴言を吐き、左遷される。 その左遷先・お客様相談室でのドタバタが本書のメイン。 競艇狂いだが、クレームに対してはプロの腕を持つ篠崎の指導?を受けて 涼平は次第に客のあしらい方を身に付けていく・・・。 ドタバタの中に深く考えさせられる出来事も折り込み物語は進行する。 本の楽しみを味わわせてくれる。 --------------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 大手広告代理店を辞め、「珠川食品」に再就職した佐倉凉平。入社早々、 販売会議でトラブルを起こし、リストラ要員収容所と恐れられる「お客様相談 室」へ異動となった。 クレーム処理に奔走する凉平。実は、プライベートでも半年前に女に逃げ られていた。ハードな日々を生きる彼の奮闘を、神様は見てくれているやい なや…。サラリーマンに元気をくれる傑作長編小説。 |
百通りの方法
★★★ |
痛快もの。
現代の世相への皮肉もふまえた7編の短編集。 ・原発がともす灯の下で 絹子は息子夫婦と同居しながら昔テレビが我が家にやってきた頃を思い 出す。 ・俺だよ、俺 俳優を目指していたはずがいつの間にか、「演技力」を生かして?.詐欺商 売の仲間に・・・ ・今日もみんなつながっている 小説家を名乗る高齢者、メールを通して意外に繋がる社員 ・出逢いのジャングル 動物園でのお見合いパーティーに参加した陶子は、大学の時に動物行 動学を専攻していた・・ ・ベンチマン 会社をリストラされた男は妻にいいだせないまま公園に通う・・ ・歴史がいっぱい 敦志の彼女は歴女 ・幸せになる百通りの方法 英雄は妙に危ない歌を歌う、ストリートミュージシャンの女に会う・・。 点滴後の具合がパッとしない時なのに、この本はどんどんと読めた。
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この作家の本もたくさん読んだら、ちょっと惰性に流れる感じになってきた。
7つの短編からなっている。「磯野波平を探して」がちょっと異色。 サザエさんにでてくるこのお父さん、この年代に主人公は差しかかったのだが その趣味、言葉遣いなど全く異なる。主人公は波平のように会社帰り一人で 飲み屋に立ち寄る。そして・・会う。 ・結婚しようよ・・娘が男を連れてきた
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江國 香(えくにかおり)・ |
東京生まれ。
1987年「草之丞の話」で小さな童話大賞 1989年「409ラドクリフ」でフェミナ賞 「こうばしい日々」(坪田譲治文学賞・産経児童出版文化賞) 「きらきらひかる」(紫式部文学賞) 「ぼくの小鳥ちゃん」(路傍の石文学賞) 「なつのひかり」「薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木」 「神様のボート」「ウエハースの椅子」「ホテルカクタス」 「東京タワー」など作品多数。 |
安全でも 適切でもありません |
山本周五郎賞受賞作。
題名から内容を想像することができなかった。 作者があとがきで書いている次の文が内容を示している。 短編小説を書きたい、と思い立ちました。
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中山 可穂・ |
経歴・その他、Wikipediaを
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1960年、名古屋市生まれ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
早稲田大学教育学部英文科卒業。 大学卒業後に劇団を主宰、作・演出・役者。 解散後、会社員となる。 1992年に「ルイジアンヌ」でTOKYO FMによるラジオ番組「ラヴ・ス
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白い薔薇の淵まで | 山本周五郎賞受賞作。
この作家は女性同士の恋愛(レズビアン)をテーマにした作品が多いのが特徴だという。 自身もレズビアンであることを公言している。しかし「フェミニズム運動、ゲイ・パレード、 新宿二丁目のどれにも興味はなく、小説を執筆している時が一番楽しい」という。 (ウィキペディアから) 東京で会社勤めをしていた川島とく子は、飲み会の帰りに立ち寄った深夜の青山ブッ クセンターで知らない女から、声をかけられた。 「その本買わないんですか。」 それが山野辺塁との出会いだった 塁の庇護者である編集者の古巻。 川島と一度は結婚する喜八郎。 周囲の心配をよそに二人の関係は深まるばかり。 |
翔田 寛 (しょうだ かん)・ |
1958年 東京生まれ。学習院大学大学院卒
美術館勤務及び、大学での美術史教員の経験がある。 2000年 「影踏み鬼」で第22回小説推理新人賞を受賞。
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経歴・その他、Wikipedia等を 参考にしました。 |
誘 拐 児
★★★ |
終戦翌年の昭和21年、幼児誘拐事件が起きた。だが、身代金の受け渡し
場所の闇市で、警察は犯人逮捕に失敗。物語はそこから始まる。 15年後、再び事件は動く。生い立ちに疑問を持った青年とその恋人は過去 につながる道を必死で探し求め、そこに妙な殺人事件が絡む。悲劇と希望、 非情と愛情が交錯する。やがて姿を現す真犯人。新進作家によるスピード感 あふれる展開が、読む側の緊張を持続させる。(朝日新聞社の評から) 舞台が戦後まもなくの闇市、その後昭和30年代というのも良い。
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ストーリーそのものは、(読み終わってみれば)そんなに複雑ではないが、結構な
ボリュームのある本である。 読みごたえはあっても、読後感が今ひとつ。 埋蔵金のことは後半も終わりに近づかないと出てこない。前半は方向が見えない まま進む。 ただ、プロローグに「打ちこわし」と押し込み、それを取り締まりに女房の実家(両 替商)に駆けつける同心と火事の場面が出てくるので、これが物語に関係してくる らしいという想像はつく・・・。 -------------------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 1790年、江戸の治安を守るため、ときの老中松平定信は江戸の沖合を埋め立て、 人足寄場を設置、無宿人たちを収容した。人々は恐れを込めて、その島を「無宿島」 と呼ぶ――。 人を騙し金を稼いでいた倫太郎と伊之助は、別人になりすまし、皆が恐れる無宿 島に自ら乗り込んだ。彼らの狙いは、無宿島に隠されているという幕府の埋蔵金。 うまく無宿人たちに紛れ込んだ二人。計画は完璧で、あとは金を奪い脱出すれば良 いだけだったはずが、島ではひとり、またひとりと無宿人たちが殺されていくのだっ た。 一体誰が、何のために殺人を犯すのか。犯人は一体……。二人は無事、埋蔵金 を手に入れ、島から脱出することができるのか。 ロマン溢れる曲者揃いの男たちの傑作脱獄時代ミステリー! |
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デッド・オア・アライヴ--江戸川乱歩賞受賞作家アンソロジーの中の一作
7人の著者に与えられたテーマは「デッド・オア・アライヴ(生死の危機)」。 さらに、各作品の登場人物が2013年9月7日正午の帝国ホテルに同時に 存在するという時空間の共有の下、それぞれのミステリーが進行する。 生真面目だけが取り柄の石工の父のもとから、母は若い職人と駆け落ち。
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富岡製糸場の密室 ★★★ |
ミステリーという点では、奇抜な展開や意外な結末が 待っているというわけでは
ない。 しかし、明治時代初期、日本の黎明期に重要な役割を果たした、群馬の富岡製糸 場を事件の舞台に選んだというのは凄い。 時代背景の考察をしっかり行い、生糸を紡ぎだす工程についての勉強も積んだと 思われる。 皇太后と皇后陛下が視察に訪れる日を数日後に控えて、富岡製糸場で反政府 運動の者たちに不穏な動きが見られるという。 おりしも起こった殺人事件に本庁の桐野警部と司馬巡査が向かう。 石炭小屋という密室の中で起こった殺人事件。犯人は誰か。そして密室の謎は? 二人の警察官とは別に工場長の娘で女工の「勇」は、事件解決に挑む。 偉人は人間の生き血を吸う・・・そう思い込んでいる町の人々は、女工の殺人事件 を機に、偉人達を排除し工場も叩き壊そうと一揆を起こす。 一触即発の場に立ちふさがった桐野と司馬だつたが、なすすべがない。 その時、工場長の尾高は暴徒の前に立ち、近代工業の重要性と、貧しい生活から の脱却を必死に訴える・・・。 -------------------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 日本の近代化を推進する原動力として、明治新政府が総力を挙げて建設した富岡 製糸場。開業翌年の明治5年、 この大規模器械式製糸場内で、若き工女が惨殺死体となって発見された。密室殺 人の裏に隠された意外な真相に、被害者の傍輩である工女が迫る。 『誘拐児』ほかで時空を超える人間の業と謎を探求し続ける江戸川乱歩賞作家に よる、近代日本ミステリー。 |
末浦広海 (すえうら・ひろみ)・ |
1988年関西学院大学経済学部卒。・・・・・・・・・・・・
システムエンジニア、経営コンサルタントなどを 経て、アルバイトをしながら執筆活動を続ける。 2008年に第54回江戸川乱歩賞を『訣別の森』 (応募時の作品名は『猛き咆哮の果て』)で受賞。 |
第54回江戸川乱歩賞
訣 別 の 森 |
槇村は、民間の航空会社に所属するドクターヘリの操縦士である。・
契約している北見市街の総合病院に常駐している。出動要請があ ると医療スタッフをヘリに同乗させ、事故現場へ向かうのだ。 ある日、出動した植村は、墜落機を上空から発見する。血だらけ になっているパイロットはかつての部下・武川一恵だった。 物語は一恵が搬送先の病院から行方をくらまして以降、ミステリ
知床の自然がエゾシカに破壊されないように、オオカミを放とうと
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この作家。テーマがよくわからない。
正高は兄弟同様に育った宗篤が学生運動(過激派)に走ったの を説得にいき、立ち合いの中で殺害してしまう。そして、無期懲役の 刑を受け、控訴もせず刑に服す。 やがて39年後に仮出所。 物語はプロローグの後、正高が出所したあたりから始まる。 妻や孫との生活の中で、再び剣に生きがいを見出すようになる・・。 そのあたりまでは良いのだが、最終章で納得がいかない・・・。 孫の真人、妻の淑恵をもう少し描き切ってほしかった。 文末に参考文献が13冊載せられている。文もどんどん読ませるも のではある。 ------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 殺人の罪で無期懲役囚となった居合いの達人・正高。40年の収 容生活を経て仮釈放の身となったいま、妻や孫との新しい生活が 始まろうとしていた。 だが、そこに娘の姿はない。出所直前の轢き逃げ事故で他界し ていたのである。一度も会うことのなかった娘…その死の真相を調 べるうち、正高は、驚愕の真実を知ることになる。 父は、自らの罪と向き合い、娘への贖罪を果たすことができるの か。剣技を磨くことしか知らない男の、不器用だが気高い生き様を 描く、乱歩賞作家の書き下ろし新作。 |
吉田 修一・ |
1968年、長崎県生まれ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
法政大学卒業。 1997年「最後の息子」で第84回文学界新人賞を受賞。 同作が第117回芥川賞候補作となる。 他書に「最後の息子」「熱帯魚」(文藝春秋)がある。 ※経歴・その他、幻冬舎版を参照しました。 |
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山本周五郎賞受賞作。
5つの章から成っている。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・杉本良介 21歳・H大学経済学部3年 現在、下北沢のメキシコ料理店でバイト中。 ・大垣内琴美 23歳・無職 現在、若手人気俳優「丸山友彦」と熱愛中。 ・相馬未来 24歳・イラストレーター兼雑貨店長 現在、人生を見つめて深酒中。 ・小窪サトル 18歳・自称「夜のお仕事」に勤務 現在、無駄な若さを切り売り中。 ・伊原直輝 28歳・インディペンデントの映画配給会社勤務 現在、第54回カンヌ映画祭パルムドールの行方を予想中。 この他に直輝と同棲していたが、今は別な恋人(中年)暮とらしている美咲 が登場する。以前通りにこのマンションに出入りするという変わった設定。 男女の枠を越えた友情、自由に気ままに生きる若者達、そんなイメージで 読み進めたが・・・。 最終章の直輝の行動からこの本の主題が強烈に語られていく。 作者が描きたい世界はここにあったのかと知った。 出版社/著者からの内容紹介
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パレードの時もそうだったが、どんどん先を読ませられる。
この先どうなるのだろうと。 土木作業員をしている祐一は、両親が離婚。母が男と行方をくらまして、祖父 母に育てられた。 祐一は女と会っても自分の意志をはっきり伝えられない。出会い系で知り合っ た佳乃に入れ込むが、佳乃からすれば、金銭がらみで付き合ってやっていると というだけである。 その佳乃はどうかと言えば、大旅館の息子・圭吾と付き合いたいのだが、圭吾 からすれば、思慮もない、くだらない田舎娘ということになる。 その佳乃が人気のない峠の道で殺される。 犯人はだれか。 理容店を営み一人娘の佳乃を育てた両親は、佳乃が出会い系サイトを利用し たり、男と簡単にホテルに行ったりする娘だとはとうてい信じられない。 多彩な人物も登場し、読み手に「悪人とは誰なのか」を考えさせる。 佳乃や佳乃の父親の行動を笑う、圭吾とその仲間。 佳乃の保険外交員の仲間。 祐一が通いつめたヘルスの女。(祐一のことが怖くなり行方をくらます) 気丈に生きる祐一の祖母・・・。 祐一に運命の出会いを感じた、洋服店の光代・・・。 この本、最後までハラハラしながら読んだ。 しかし、それにしても、深く考えさせられることはあっても、読後感はあまり良く ない。その意味では、湊かなえ「告白」に似ている。 清々しい読後感を期待したい。 ----------------------------------------------------------- 内容紹介から なぜ、もっと早くに出会わなかったのだろう――携帯サイトで知り合った女性を 殺害した一人の男。再び彼は別の女性と共に逃避行に及ぶ。 二人は互いの姿に何を見たのか? 残された家族や友人たちの思い、そして、 揺れ動く二人の純愛劇。 一つの事件の背景にある、様々な関係者たちの感情を静謐な筆致で描いた 渾身の傑作長編。 ------------------------------------------------------------ 内容(「BOOK」データベースより) 保険外交員の女が殺害された。捜査線上に浮かぶ男。彼と出会ったもう一人 の女。加害者と被害者、それぞれの家族たち。 群像劇は、逃亡劇から純愛劇へ。なぜ、事件は起きたのか?なぜ、二人は逃 げ続けるのか?そして、悪人とはいったい誰なのか。 |
あの空の下で
★★★ |
これは前掲の2つの本とは全然違う。
日々の生活の中から心に残るひと時を切り取って見せてくれる。 12の短編と6つのエッセイ。 ふらりと旅に出たい、飛行機に乗って・・・。そして知らない街、しらない景色の 中に佇んでみたい・・・。そんな気持ちを掻き立てられるような一冊である。 ----------------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) ANA機内誌『翼の王国』に掲載された短編を書籍化。数々の文学賞を軒並み 受賞した吉田修一、初の読みきり連載小説&エッセー集となる。 1編ごとに異なる主人公の些細な日常を、胸が詰まるほどリアルに表現した12 の短編小説と、世界の旅エッセイ6編を収録。 |
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世之介が長崎から上京するところから始まる。
郊外の久留米市に居を構え、同じ学部になった学生との交流していく。 その時々の場面での世之介の対応が素朴で、新鮮。面白い。 同じ経営学部の倉持、阿久津唯とサンバサークルに入るが、この二人はやが 付き合い始め、阿久津唯は妊娠してしまう。大学をやめ働き始める倉持・・・。 (それぞれの十数年後の生活も途中に入る。)世之介は倉持にホテルでバイト をして金を貸し、引っ越し荷物も運んでやった。 クーラーがあるということで強引に押しかけたアパートの学生・加藤は男にしか 興味がない・・。 世之介が好きになった片瀬千春は高級娼婦の噂を立てられるが、自由奔走 に生きる。 世之介を好きになったお嬢様の祥子。その言葉遣いや独特の思考経路も面 白い・・・。 学生一年目のさまざまな出会いが、面白おかしく語られるので、どんどん読み 進めさせられる。423ページの本をほとんど1日で読んだ。 読書の楽しみはあるが、さて何が残るかと言えば、読後に満足感はあまりな い。祥子、千春はそれぞれの道を行く。加藤は念願の二人住まい??。倉持 は仕事はそれなりに順調だが引きこもりになってしまった娘を抱えている。 そして、世之介は・・・。 ハッピーエンドに終わらない小説を書くことがこの作家の特徴だろうか。 ----------------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 楽しい。涙があふれる。本年最高の傑作感動長編! 「王様のブランチ」「朝日新聞」ほか多数メディアで激賞。 横道世之介。
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1959年 岐阜県生まれ
プランナー、コピーライター、構成作家を経て作家となる。 2002年 「邪魔」で第4回大藪春彦賞受賞。 2004年 「空中ブランコ」で第131回直木賞受賞。 著書に「ウランパールの森」「最悪」「東京物語」 「イン・ザ・プール」「マドンナ」「真夜中のマーチ」 「サウスバンド」「ララピポ「「ガール」など。 スポーツにも造詣が深く「野球の国」 「延長戦に入りました」など |
★★★ 文芸春秋 |
精神科医・伊良部一郎が悩める人々を救う??
面白くもどこか真実味のある短編集。 ・オーナー 球団の合併問題に登場した「ナベマン」こと田辺満雄。 日本一の発行部数を誇る大新聞社の会長であり、プロ野球人気球 団のオーナーでもある。 ・アンポンマン 安保貴明。 インターネットによるホームページ作成会社を設立。 時代の寵児となり、テレビ局の買収にかかるが、ひらがな健忘症? となる。 ・カリスマ家業 自然の若さを保つ女優。 見栄をはって仕出し弁当を全部食べてしまった後、運動のために 急遽立ち入った伊良部さ総合病院の地下で・・・。 ・町長選挙 伊豆半島の沖合に浮かぶ千寿島に、離島研修で派遣された宮崎 良平は町を二分して行われる町長選挙に巻き込まれる。 買収、恐喝・・なんでもありの熾烈な戦い。 この旧態依然とした島になぜか伊良部逸郎が登場。 町の診療所に勤務することになった伊良部は、八木派、小倉派 双方から、「特養ホーム」誘致を頼まれる。 やがて、決着は「棒倒し」でつけられることとなった。 棒倒しは、10年前まであったこの町の運動会のメインイベントで ある。イベントというより代々あった二派の決着の場だった。 久しぶりの古色蒼然たる町の大イベントが今まさに開始されようと している。 |
★★★ 文芸春秋 |
直木賞を受賞したというこの本。前回読んだ「町長選挙」と同じ精神
科医・伊良部一郎シリーズ?である。 5話が載せられている。 ・空中ブランコ
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内容(「BOOK」データベースより)
・会社が突然倒産し、いきなり主夫になってしまったサラリーマン。 ・内職先の若い担当を意識し始めた途端、変な夢を見るようになっ た主婦。 ・急にロハスに凝り始めた妻と隣人たちに困惑する作家などなど。 日々の暮らしの中、ちょっとした瞬間に、少しだけ心を揺るがす「明る い隙間」を感じた人たちは…。今そこに、あなたのそばにある、現代 の家族の肖像をやさしくあったかい筆致で描く傑作短編集。 |
オリンピックの
身代金 ★★★ |
これは大作である。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
奥田英朗がこれだけの長編を、サスペンス調で、しかも一昔前の情 景を丹念に描ききってくれる作家だとは思わなかった。脱帽のひと言 に尽きる。 参考文献に「オリンピックのころの東京」「古地図・現代図で歩く・・」 以下30数冊が挙げられているのも凄い!。 内容(「BOOK」データベースより) 昭和39年夏。10月に開催されるオリンピックに向け、世界に冠たる大 都市に変貌を遂げつつある首都・東京。この戦後最大のイベントの成 功を望まない国民は誰一人としていない。そんな気運が高まるなか、 警察を狙った爆破事件が発生。同時に「東京オリンピックを妨害する」 という脅迫状が当局に届けられた!しかし、この事件は国民に知らされ ることがなかった。警視庁の刑事たちが極秘裏に事件を追うと、一人 の東大生の存在が捜査線上に浮かぶ…。「昭和」が最も熱を帯びてい た時代を、圧倒的スケールと緻密な描写で描ききる、エンタテインメン ト巨編。 |
★★★ |
短編集。
・マドンナ 課長の荻野春彦は年甲斐もなく同じ課の倉田知美に恋心を抱く。 人当たりのよい倉田知美が無邪気な笑顔を見せるのは・・。 ・ダンス 大手の会社に勤める田中芳雄は同期の浅野が部長のペースに 合わせないので、間に立って苦労する。 ・総務は女房 大手に勤める恩蔵博史は総務部に異動し、出入り業者の不正を 発見する。 ・ボス 突然外資系から女性の上司がやってきた。 それまでのルールを無視し酒の接待などをしない。 その上司の意外な一面を見る・・。 ・パティオ パティオで新企画を行う鈴木信久は、一人で読書をする老人を 目にする。 |
どちらとも
言えません ★★★ |
これは面白い。奥田英朗がスポーツについて語っている。日本人が
考えるスポーツの価値? 位置?が欧米とは著しく異なること・・ その他・・・ ・スポーツの階級と門外漢のジャパニーズ ・スポーツはオーナーの道楽である ・日本人のサッカー不向き論 ・メダルの価値と五輪の大本営発表 ・結果待ち競技と観る者のジレンマ ・スポーツの配置は神様が決めるのだ |
★★★ |
読み始めから、「最悪」の事態に向かう三人の姿が描かれ、読むのが
辛い感じがした。 鉄工所を経営する長谷川は、無口で何を考えているかわからない従 業員に振り回されたり、新しい大型機械を入れる羽目になり大金を銀 行から借りることになったり・・・・。きわめつけは近所からの騒音苦情 である。理詰めで攻めてくる住民運動に抗しきれない・・・。 ヤクザと関わり、死ぬ思いで、次々と犯罪に手を染めざるを得ない和 也。 登場人物が次第に追い詰められていくのをただ読むしかない読者? しかし・・・・。 読後感が悪くない。 これがこの作家の最大の持ち味である。 --------------------------------------------------- 著者からの内容紹介から お先まっ暗、出口なし それでも続く人生か 小さなつまずきが地獄の入り口。転がりおちる男女の行きつく先は? 不況にあえぐ鉄工所社長の川谷は、近隣との軋轢(あつれき)や、取
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★★★ |
この本は良い。
★をたくさん付けたい・・。 小さな広告代理店で働く久雄。さかのぼって、名古屋から上京して 予備校にやってきた久雄。短かったが大学生活(中退) そして、独立して小さな会社を立ち上げる・・・。 時にユーモラスに、時に人生の悲哀を描いて読者を惹きつける。 名古屋人である久雄と家族や恋人の特徴?もふんだんに語られる。 --------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 1978年4月。18歳の久雄は、エリック・クラプトンもトム・ウェイツも素 通りする退屈な町を飛び出し、上京する。キャンディーズ解散、ジョン・ レノン殺害、幻の名古屋オリンピック、ベルリンの壁崩壊…。 バブル景気に向かう時代の波にもまれ、戸惑いながらも少しずつ大 人になっていく久雄。 80年代の東京を舞台に、誰もが通り過ぎてきた「あの頃」を鮮やか に描きだす、まぶしい青春グラフィティ。 |
★★★ |
これは秀作。
奥田英朗が自分のことを書いていると思われる小品(後半二編)も 有る。 「作家は乾きかけの雑巾から水滴を絞り出すような作業・・・」 そうかもしれない。 ・甘い生活 料理がうまく万事に心づくしの行き届く理想の妻ではあ
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★★★ |
これは実に面白い。
奥田英朗、渾身の一作? 実に用意周到に連作を綴っている。 目立たない女子高生だった糸井美幸は短大に入って一新。 世の男たちを誑かし、華麗に生きる女に変身する。 10の短編。初めは狭い街に住むいろいろな人の話かと思うが・・ そのうち糸井美幸が何らかの形で登場・・怪しげなイカガワシイ話に ・・・。 --------------------------------------------------- 内容紹介 内容(「BOOK」データベースより) 美幸って、知っとる? この町のどこか夜ごと語られるは彼女にまつわ る黒い噂──。 町で評判のちょっと艶っぽいイイ女。雀荘のバイトでオヤジをコロが し、年の差婚をしたかと思えば、料理教室で姐御肌。ダンナの保険 金を 手に入れたら、あっという間に高級クラブの売れっ子ママに。 キナ臭い話は数知れず、泣いた男も星の数――。 美幸って、いったい何者? 愛と悲哀と欲望渦巻く人々を描く、奥田節 爆裂の長編小説。 中古車店に毎晩クレームをつけに通う3人組、麻雀に明け暮れるし
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★★★ |
衝撃作である。
重松清「十字架」もそうだが、教育現場にいる方には必読の書では ないだろうか。 学校でのいじめは、こんな風になっているのかもしれない。 屋根から木に飛び移るのに失敗して亡くなった?名倉祐一は、家が 呉服屋で金持ちの一人息子。 運動が不得意なのにテニス部に入っていて、場違いに高価なラケッ トを持ったりしているので「「ちゃま 夫」と呼ばれていた。 祐一をいじめていた(背中のつねった傷)ということで、4人の名前が 出る。 ここまで読んで、飲み物をたかったり、暴力を振るった仲間は酷いと 思った・・・。 そのうちの坂井瑛介と市川健太はどうみても、友達を苛め るとは思えないタイプだとわかってきた・・。 担任の飯島と高校の同期だった刑事の豊川。豊川たち警察の取り 調べ、若い検事の熱心な調査によって、寡黙だった中学生の口が 少しずつ開かれる・・。 いじめは単純に双方の善悪を決められないような気もしてくるような 展開。 最後に真実が明かされるのだが・・・。 -------------------------------------------------- 内容紹介 内容(「BOOK」データベースより) 中学二年生の名倉祐一が部室の屋上から転落し、死亡した。 屋上には五人の足跡が残されていた。事故か?自殺か?それとも…。 やがて祐一がいじめを受けていたことが明らかになり、同級生二 人が逮捕、二人が補導される。閑静な地方都市で起きた一人の中 学生の死をめぐり、静かな波紋がひろがっていく。 被害者家族や加害者とされる少年とその親、学校、警察などさま ざまな視点から描き出される傑作長篇サスペンス。 |
池井戸 潤 (いけいど・じゅん |
岐阜県生まれ。岐阜県立加茂高等学校・・・・・・・・・・・・・・・・
慶應義塾大学文学部・法学部卒業。 大学卒業後、三菱銀行(当時)入行。その後コンサルタン ト業の仕事のかたわらビジネス書の執筆活動を展開する。 1998年、銀行の暗部に迫った小説『果つる底なき』で 第44回江戸川乱歩賞を受賞。銀行・金融関係のミステリ ー小説、いわゆる銀行ミステリーのほか、銀行系知識も 取り入れつつ幅広いテーマの小説を手掛けている。 (ウィキペディアを参考にしました。) |
果つる底なき ★★★ |
作者が冒頭で次のように述べている。
この作品は、銀行員だった私が実際に体験した出来事をモチーフ にしています。 企業の一員として生きていくうえでの、さまざまな矛盾や苦しみ、 自分の考えを貫き通そうとする主人公の苦闘・・。銀行という職場 が舞台になっていますが、ここに描かれた人間関係は多くの人に 共通するテーマです。 --------------------------------------------------- 「なあ、伊木、これは貸しだからな」と、謎の言葉を残して坂本は死 んだ。死因はアシナガバチによるアナフィラキシーショックだった。 翌日、坂本が顧客の口座から金を引き出し、自分の口座に送金し ていたことが発覚する。伊木は、坂本の無実を信じ、坂本が生前 何をしようとしていたのか調べ始める。その過程で、自分が融資 を担当した「東京シリコン」の倒産の真の原因を突き止め、坂本が 言っていた「貸し」の意味を理解し、痛恨の思いに駆られる。しかし、 坂本の死には更に深い闇が隠されていた。伊木の行動を邪魔す る者が現れ、更なる死人・怪我人が出始める。 (ウィキペディアから引用しました。) 伊木と恋人の菜緒の触れ合いが一服の清涼感を与えてくれる。 |
バブル入行組
★★★ |
病院に入院する前にブックオフで仕入れた本。
「果つる底なき」と同じように作者の銀行マン生活を生かした 題材である。 --------------------------------------------------- 大手銀行にバブル期に入行して、今は大阪西支店融資課長の 半沢。支店長命令で無理に融資の承認を取り付けた会社が倒産 した。すべての責任を押し付けようと暗躍する支店長。 四面楚歌の半沢には債権回収しかない。夢多かりし新人時代は 去り、気がつけば辛い中間管理職。そんな世代へエールを送る痛 快企業小説。(裏表紙の解説から) |
花のバブル組
★★★ |
これは文句なしに面白い。
「オレたちバブル入行組」の続きである。
東京中央銀行営業第二部次長の半沢は、巨額損失を出した老舗
前作の「オレたちバブル入行組」から、責任もピンチもパワーアップ
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★★★ |
二段組みの500ページ近い長編であるが、どんどん読ませられて・
しまった。 赤松徳郎は運送会社の二代目社長。 ある日赤松運送のトレーラーのタイヤがはずれ、通行人を直撃して しまった。事故は本当に整備不良なのか。大手自動車会社のホー プ自動車を相手に必死の戦いが始まった。 旧財閥系のホープは重工や銀行も抱える大企業である。警察も世 間の目も過失を認めない赤松に冷たい。最愛の妻を亡くした被害 者の夫も赤坂に冷たい。 赤坂は雑誌記者がかき集めたホープ自動車の過去のに事故関係 者を訪ね歩き、やがて・・・。 いつ倒産してもおかしくない状況に置かれた赤坂。その中で亡き 父の姿を思い浮かべたり、、家族に支えられたりしながら、必死に 立ち向かう。「オレたちバブル入行組」にどこかにたところもある。 会長をしているPTAで「女王蜂」から非難される場面もある。 |
★★★ |
待望の直木賞を取った作品。
前半は空飛ぶタイヤと、ちょっと似ている。著作権侵害で大手から 訴えられた町工場の社長の必死の戦いが描かれる。相手のナカ シマ工業はやり手の弁護事務所を抱え、技術的な専門が飛び交 う裁判を進めてくる。そして、長期戦に持ち込み、こちらの資金が なくなるのを待っているのだ。ロケットの研究者をやめて佃製作所 の社長となった佃航平は元妻が紹介してくれた優秀な弁護士・神 谷を頼りに裁判ら挑む。 --------------------------------------------------- 本の内容紹介から 佃製作所が取得した特許技術が、日本を代表する大企業、帝国重 工に大きな衝撃を与えていた――。 会社は小さくても技術は負けない――。 モノ作りに情熱を燃やし続ける男たちの矜恃と卑劣な企業戦略の息 詰まるガチンコ勝負。 さらに日本を代表する大企業との特許技術(知財)を巡る駆け引きの 中で、佃が見出したものは――? 夢と現実。社員と家族。かつてロケットエンジンに夢を馳せた佃の、 そして男たちの意地とプライドを賭した戦いがここにある。」 |
ルーズベルト・ゲーム
★★★ |
この作家の本は、窮地に追い込まれた会社や製作所が、苦難の
末に切り口を見つけ再生の道に転じる・・・そんなものが多い。 読後感が良い。どんな時にも投げ出さず、土壇場まで夢を捨てな いことが大切だと知らしめてくれる。 ルーズベルト・ゲームは8対7の勝負だという。それがもっとも緊迫 する。この本の終末もそれに近い。 --------------------------------------------------- 内容説明から 中堅メーカー・青島製作所の野球部はかつては名門と呼ばれたが、 ここのところすっかり成績低迷中。会社の経営が傾き、リストラの敢 行、監督の交代、廃部の危機・・・・・・。野球部の存続をめぐって、 社長の細川や幹部たちが苦悩するなか、青島製作所の開発力と技 術力に目をつけたライバル企業・ミツワ電器が「合併」を提案してくる。 青島製作所は、そして野球部は、この難局をどう乗り切るのか? 負けられない勝負に挑む男たちの感動の物語。 |
★★★ |
最初は営業第二課長の原島が主人公と思ったが、第一課長の坂戸
の失脚があってから、風向きが変わって・・・徐々に作者の意図した展 開になり、主役交代? この作家の本は会社内部の思惑が描かれ興味深い 坂戸の生い立ちと東京建電への入社、その後の経過も描かれ興味
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★★★ |
これは面白い。
仕掛けは、親子で体が入れ替わるという、どこかで読んだことのある もので斬新さはないが、テーマは熱い。 政治は誰のために行うのか、その原点が語られる。 総理・武藤泰山が息子の考える自然栽培の会社、新薬導入に積極 的な会社等の(息子の代わりに)面接を受け、考えを改めさせられて いく。 息子・翔も父親の偉大さに少しずつ気づかされる。 政治家のあり方・・・これまでの本でも見られる「正論」に説得力があ る。 気軽に読める秀作である。 ----------------------------------------------------- 内容説明から 企業小説を変革し続けてきた乱歩賞作家・池井戸潤が、ついに政治 の世界に踏み込んだ! ある日突然、首相・武藤泰山と、武藤の大学生のドラ息子・翔の中身
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★★★ |
「オレたちバブル入行組」「オレたち花のバブル組」に続くシリーズと
しては3冊目である。 前作が銀行を舞台にした若手の躍動と粘りであるが、本作は、子会 社に出向させられた半沢が部長として、親銀行の無謀に立ち向かう。 胸をすく企業小説であるのは前作と同じ。 テレビ化され圧倒的な視聴率を誇った前作、続編がつくられるとすれ ば本書が原作となるだろう・・・。 -------------------------------------------------- 内容紹介・内容(「BOOK」データベースより) ついにドラマ化! 大人気の「半沢直樹」シリーズ第3弾! ! (TBS日曜劇場 7月7日~) 人事が怖くてサラリーマンが務まるか!
ときは2004年。銀行の系列子会社東京セントラル証券の業績は
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★★★ |
読み進めて、すぐに半沢ワールドに引きずり込まれてしまった。
後戻りはできない。次から次へと降ってくる難題に、半沢と一緒に 立ち向かわざるを得なくなってしまった。 今回は航空業界と銀行が舞台。それに政治が絡む。
最後までハラハラドキドキ。
頭取命令で経営再建中の帝国航空を任された半沢は、
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野沢 尚 (のざわ さとし) |
1960年生まれ。愛知県名古屋市出身。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
愛知県立昭和高等学校、日本大学芸術学部映画学科卒。 テレビドラマの脚本で高い評価を受ける一方、ミステリー小説にも幅を広げた。 北野武の映画監督デビュー作の脚本を手掛けたことでも知られている。 1998年、『眠れる森』『結婚前夜』で第17回向田邦子賞受賞。 1983年 『V・マドンナ大戦争』で第9回城戸賞準入賞。 1997年 小説『破線のマリス』で第43回江戸川乱歩賞を受賞。 1997年 小説『恋愛時代』で第4回島清恋愛文学賞を受賞。 1999年 脚本『眠れる森』『結婚前夜』で第17回向田邦子賞を受賞。 2001年 小説『深紅』で第22回吉川英治文学新人賞を受賞。 2002年 『反乱のボヤージュ』で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。 2004年 44歳没 (ウィキペディアを参考にしました。) |
破線のマリス |
これは放送界に身を置き、ニュース編集に携わる者の内幕を
描いている。 以下(「BOOK」データベースより)引用させていただきました。 首都テレビ報道局のニュース番組で映像編集を担う遠藤瑤子は、 虚実の狭間を縫うモンタージュを駆使し、刺激的な画面を創りだ す。彼女を待ち受けていたのは、自ら仕掛けた視覚の罠だった!? 事故か、他殺か、一本のビデオから始まる、超一級の「フー&ホワ イダニット」。第43回江戸川乱歩賞受賞の傑作ミステリ。 |
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読後感が悪くない。
大人の恋がじっくりと語られる感じである。 三つの恋が語られる・ ・ふたたびの恋 ・恋のきずな ・さようならを言う恋 内容(「BOOK」データベースより) ベテラン脚本家の室生晃一は、休暇のために訪れた沖縄で、シ ナリオ学校の教え子である大木新子に再会する。新子はかつて の恋人でもあり、今や超売れっ子脚本家になっている。彼女が 沖縄に来たのは、公共放送ドラマのシナリオのストーリー作りに 行き詰まったためだった。頼まれて相談に乗る晃一だったが、実 は偶然に思えた沖縄での二人の邂逅には、大いなる裏があった。 |
高野 和明 |
1964年 東京都生まれ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
映画・TV・Vシネマの撮影現場でメイキング演出やスチルカ メラマンなどを担当。映画背監督・岡本喜八氏の門下に入る。 1989年 渡米。ABCネットワークの番組にスタッフとして参加。 ロサンゼルス・シティカレッジで映画演出・撮影・編集を学ぶ。 1991年 同校を中退後、帰国して映画・テレビなどの脚本家となる。 |
13階段 ★★★ |
死刑囚・樹原亮が死刑を待っている場面から始まる。・・・・・・・・
刑務官の南郷正二は2年の刑を終えた三上純一を助手として、 樹原亮の死刑阻止のために真実究明に取り組む。 樹原亮が殺したとされている保護司の宇都木は何故殺された のか。千葉県中湊郡は三上が昔同じ高校の女の子と一緒に 家出した地でもあった。 三上が殺した佐村恭介の父親も登場し、複雑に絡む謎が一気 に解決する。意外な真実とは・・。 久しぶりに読ませる本に出会った。死刑執行に到る過程を細か に描いているのも興味深い。 |
高殿 円・ |
1976年生まれ 2000年に「マグダミリア三つの星」で
第4回角川学園小説大賞奨励賞を受賞しデビュー。 ファンタジーほ中心に、「銃姫」「プリンスハーツ」など 40冊にのぼるライトノベルを上梓する人気作家。 他にノンフィクション「オーダーメイドダーリン」や漫画、 芝居、映画の原作も手掛ける。 |
特別国税徴収官 |
鬼上司・鏡のもと、鈴谷深樹(すずやみき)・通称ぐー子は、??
人間の生活と欲望に直結した「税金」について学んでいく。 内容(「BOOK」データベースより)
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柚月裕子(ゆづき ゆうこ)・ |
1968年、岩手県生まれ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
第七回「このミステリーがすごい」大賞受賞。 2009年「臨床真理」でデビュー。 フリーターとして、雑誌やテレビ局のホームページで 作家の対談や取材、記事作成を行う。 |
★★★ |
ネタバレにはならないと思うので、いくらか書く。(読み出して間も
なく、高瀬夫妻の一人息子・卓が交通事故で死亡する場面が出 てくるので。) 卓を轢いた車を運転していた男が、公安委員長をしていたことで 事件を卓の信号無視として不起訴にされてしてしまう。納得でき ない高瀬は警察や地検に掛け合うが、全く相手にされない。この 場面が非常に理不尽で、現実離れしているような感じがした。 しかし、それらを差し引いても、このミステリーは凄い!。最初か ら最後まで一気に読ませられてしまった。 ------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 元検察官の佐方貞人は、刑事事件を専門に扱うやり手弁護士だ。 そんな佐方の許に、かつて在籍した地検の所在地で起きた殺人 事件の弁護依頼が舞い込む。高層ホテルの一室で起きた刺殺事 件。物的証拠、状況証拠ともに、依頼人が犯人であることを示して いた。男女間の愛憎のもつれが引き起こした悲劇。世間やマスコ ミの誰もが、依頼人に勝ち目はないと見ていた。しかし佐方の、本 筋を見抜くプロの勘は、これは単純な事件ではないと告げていた。 敗戦必至の弁護を引き受けた佐方に、果たして勝算はあるのか。 やがて裁判は、誰もが予想しなかった驚くべき展開をみせる…。 |
★★★ |
さすがに「このミステリーがすごい」大賞を受賞したむ作品であ
る。最後の証人に引き続いて読んだが、一気に読ませられてしま った。真犯人が本当に意外な人物でびっくりさせられる。(ただ、 好みとしては、別な方面に真犯人を求めてほしかった。) ------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 臨床心理士の佐久間美帆は、勤務先の医療機関で藤木司という 二十歳の青年を担当することになる。司は、同じ福祉施設で暮らし ていた少女の自殺を受け入れることができず、美帆に心を開こうと しなかった。 それでも根気強く向き合おうとする美帆に、司はある告白をする。 少女の死は他殺だと言うのだ。その根拠は、彼が持っている特殊 な能力によるらしい。美帆はその主張を信じることが出来なかった が、司の治療のためにも、調査をしてみようと決意する。 美帆は、かつての同級生で現在は警察官である栗原久志の協力 をえて、福祉施設で何が起こっていたのかを探り始める。しかし、 調査が進むにつれ、おぞましい出来事が明らかになる。 |
検事の本懐
★★★ |
この本は凄いのひと言に尽きる。
文が凄い。内容が凄い。 ともかくもどんどん読み進めさせられるのである。 第一話の入り方も巧妙。 県警同期からの嫉妬で、中傷をうける所轄所長が管内の放火事件 解決に苦しむのがテーマかと思っていたら、それは検事「佐方」登 場の布石のようなものであった・・・。 第三話「恩を返す」 この話は感動する。佐方の高校時代が語られ・・・。 「感動する本に」にこの本を追加した。 --------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) ・県警上層部に渦巻く男の嫉妬が、連続放火事件に隠された真相を 歪める(『樹を見る』)。 ・出所したばかりの累犯者が起した窃盗事件の、裏に隠された真実 を抉る(『罪を押す』)。 ・同級生を襲った現役警官による卑劣な恐喝事件に、真っ向から対 峙する(『恩を返す』)。 ・東京地検特捜部を舞台に“検察の正義”と“己の信義”の狭間でも がく(『拳を握る』)。 ・横領弁護士の汚名をきてまで、恩義を守り抜いて死んだ男の真情 を描く(『本懐を知る』)。 骨太の人間ドラマと巧緻なミステリー的興趣が、見事に融合した極 上の連作集。 |
★★★ |
検事・佐方の父親は弁護士だったが、顧問先の会社社長の死にあ
たり、現金を横領、刑務所で獄死した。 「最後の証人」「検事の本懐」で少ししか触れられなかった、佐方の 父について書かれた一作。 父の13回忌が営まれ、佐方や親族だけが細々と集まる席に、龍円 寺の住職は他の人も呼ぶ。 佐方の父と小さい頃からの親友だった住職が皆を前に語る真実。 業務上横領罪は裁判の前に金を返せば実刑を免れたと思われる のに、佐方の父・陽世はそれをしなかった。 そこには弁護士としての倫理観と社会正義をの矛盾に苦しむ陽世 の姿があった・・・。 胸を打たれる一作である。 |
★★★ |
郵便物が配達されない。この出来事に検事の佐治はこだわった。
郵便物には現金が入っていたのではないかと。 浄化槽にまで入り、汚物をさらい・・・。 事件が終わって・・。 佐治は屋上で遠くを眺める。 両親を亡くした佐治に祖父母から時々手紙が届いた。 中にはいつも皺だらけの五千円札が入っていた。 祖父母は農家を営んでいる。狭い田畑を耕し、暮らしは豊かではない。 ちいさながま口に入っている札はいつもしわくちゃだった。 皺くちゃの五千円は佐治がことわっても送られてきた。 皺くちゃの五千円札を眼にするたび、佐治の目頭は熱くなった・・。 この話、読んでいる者の琴線に触れる。 柚月裕子、心に沁みる文を書く素晴らしい作家である。 |
★★★ |
前に掲載した「業をおろす」「心を掬う」もこの本に集約されている。
(この二編は以前、小説の雑誌で読んだらしい) 残りの二編は、実質は痴漢事件の上・下のようなものである。 地方の名門で資産家の婿が起こした電車内での痴漢事件。 被害に遭った女子高生は過去に恐喝などの補導歴があり、言葉遣い 態度ともに悪い。 金を巻き上げるための冤罪ではないか・・・ 検察官上司、国会議員からの圧力・・・ 検事・佐方は小さな事件に真摯、毅然とした態度で取り組む。 列車内の目撃者も出て、無罪が確定しようとしたとき・・・。 感涙の一作である。 ------------------------------------------------- 商品の説明 出版社からのコメンより 2012年度の山本周五郎賞にノミネートされ、2013年度大藪春彦賞を 満場一致で受賞した『検事の本懐』TV、新聞雑誌で話題沸騰、 法曹会からもエールをおくられる著者の受賞後第一作です。 検事の矜持をかけて権力との激闘に挑む力作中篇「死命」、『ザ・ベス トミステリーズ2013(推理小説年鑑)』にも選ばれた傑作短編 「心を掬 う」、感涙必至の“帰郷小説"「業をおろす」を収録した検事・佐方シリ ーズ最新刊。 いまミステリー界で熱い注目を集める『このミス』大賞作家・柚月裕子 の、大いなる飛翔を告げる、渾身の一作! 郵便物紛失事件の謎に迫る佐方が、手紙に託された老夫婦の心を救
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パレードの誤算 | 生活保護受給者の実態をミステリーとサスペンスに仕立てにしている。
暴力団の収入源になり、薄給しか手にしない、架空の病院通院など、 考えさせられてしまう。 主役は市役所に採用になったばかりの牧野、何年か前から市役所勤 務だが牧野と一緒に福祉保護課にまわされた小野崎。2人の正義感が 永遠に続くことを願いたい。 柚木裕子のこれまでの作品と比べると、今ひとつインパクトが欠けるか もしれない。 ------------------------------------------------- 商品の説明 出版社からのコメンより 念願の市役所に就職がかなった牧野聡美は、生活保護受給者のケア を担当する事になった。 敬遠されがちなケースワーカーのという職務に 不安を抱く聡美。先輩の山川は「やりがいのある仕事だ」と励ましてくれ た。 その山川が受給者たちが住むアパートで撲殺された。受給者からの信 頼も篤く、仕事熱心な先輩を誰が、なぜ? 聡美は山川の後を引き継いだ が、次々に疑惑が浮上する。山川の知られざる一面が見えてきたとき、 新たな惨劇が……。 ケースワーカーはなぜ殺されたのか。優秀な先輩の素顔を追って、女性
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大門 剛明・ |
1974年 三重県生まれ。・龍谷大学文学部卒。・・・・・・・
2009年 第29回横溝正史ミステリ大賞とテレビ賞をW受 賞した「雪冤」でデビュー。 著書に「罪火」「確信犯」がある。 法的・社会的問題に切り込む、期待の新鋭。 |
★★★ |
ミステリーとしては一級品。
無期懲役囚として刑務に服し、仮釈放となった久保島。 久保島は被害者の家族に会い、謝罪しようとする・・・。 やがて、久保島は被害者の父親の会社で働くようになり、厚生施 設を出る。 折しも起こった殺人事件。 その関与を疑われたのは久保島だった。 被害者・能埼は若い頃、暴走族に入っていたが、その頃久保島の 婚約者が強姦され自殺しているのだ・・・・。 物語は久保島に心を寄せるようになった補導士のさくらを絡めて 展開していく。 終盤、息詰まるシーンの中で明かされる意外な真実・・・。 ------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 23年前に2人を殺し、無期判決を受けた男・久保島が仮釈放され、 深津さくらの勤める金沢の更生保護施設に入寮してきた。 凶悪事件を起こしたとは思えぬ誠実な更生ぶりに、次第に心ひか れていくさくら。 市内で殺人事件が発生し、寮生に疑いの目が向けられた。さくら は真相をつきとめるべく奔走する。 |
(ひとやのとげ) ★★★ |
これは傑作。
初任刑務官は・武島果たして職務を続けていけるか。 舞台は弘前刑務所(参考までに・・弘前には刑務所はない) 多彩な先輩とのかかわりの中で、一人前の刑務官になっていく。 「赤落ち」とい被告人が控訴するかを賭ける、とんでもないギャン ブルが刑務官の間で行われている。統括の名久井から探索を命 じられた武島は、そのギャンブルの中心になっている秋村が、人 間を深く見つめる眼を持っていること驚かされる。単なる飲酒運転 による事故ではなかった・・・。 刑務所の改革を断行しようとするキャリアの名久井。ただの上昇 志向者だと思ったのだったが・・・。 最終章、武島は初任の小田が、弄られていた受刑者を助けようと して何をしたか見抜く力を備えていた。 ------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 獄の棘とは刑務所の鉄条網のこと。この閉ざされた内部では、 外からは窺い知れない様々な事件が起こっている…いじめ、 内部告発、ギャンブル、偽装結婚、脱獄…… 新米刑務官・武島良太が見た、塀の中の真実。 横溝賞作家が放つ、傑作社会派ミステリー! |
久間 十義 (ひさま じゅうぎ)・ |
1953年 北海道生れ。早大卒
1987年 「マネーゲーム」で文藝賞佳作入選しデビュー。 歴史的事件に想を得た問題作を次々と発表し、 ポストモダン文学の旗手として注目を集める。 1990年 「世紀末鯨鯢記」で三島由紀夫賞受賞 |
★★★
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421ページの分厚い本なのだが、次々と起こる新しい事件と
サスペンスに目が離せず読ませられてしまった。寝る前に読 む始めると12時を過ぎてしまったりする・・・。 読みやすい文と読者の目を逸らせない息詰まるような展開。 刑事物としては一級品である。しかし…長い!! 警察上部と大蔵省、銀行、そして影でうごめく者たち・・・。 一介の警部補・松浦は巨大な敵に立ち向かう。大学同期で 検事の古沢美由紀、警察学校同期の赤松、そして、恋人の 桐山比呂子、道警・大和田のたちの協力を得て・・・。 国のトップや秘書官は味方のように思えたが所詮は政治家 だった・・・。 内容(「BOOK」データベースより)
北海道のリゾート開発に絡む明和銀行不正融資事件で、
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