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永井路子は作家というより歴史学者のような方だと思います。
武士の誕生や武家政治の確立期については大変よく研究されています。 NHK大河ドラマ「草燃える」の原作になったつわものの賦・炎環・はじめは 駄馬のごとく・・・・・など。源頼朝と頼朝を取り巻く人々について、全く違った 視点から光をあてて解釈してみせました。 また、二代執権北条義時や梶 原景時・三浦義村などの考え方や立場を心情を見事に描いています。 |
つわものの賦(ふ) | 源頼朝の旗揚げから承久の変まで |
炎環(えんかん) | 鎌倉武士の生きざま |
はじめは駄馬のごとく | ナンバー2の人間学 北条義時・源義経・徳川秀忠・平時忠・明智光秀・藤原不比等・他 |
執念の家譜 | 三浦光村・曽我兄弟・松永久秀・長谷川等伯・小早川秀秋・他 |
相模のもののたち | 中世史を歩く |
雲と風と | 最澄の生涯 |
噂の皇子 | 平安時代に生きた人々を描いた8つの短編 |
王朝序曲 上・下 | 藤原冬嗣を中心に桓武天皇と平安遷都の時代を描く |
悪霊列伝 | 吉備・祟道(早良親王)・菅原道真・他 |
続悪霊列伝 | 平将門・楠正成・他 |
うたかたの | 儒学者を夢見た一人の男の生きざまを傍らにいた、6人の女性の目を通して描いている。 |
乱 紋
永井路子歴史小説
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久しぶりに永井路子の本を読んだ。(23.6)
NHK大河ドラマで「江〜姫たちの戦国〜」が放送されているが、首を傾げる場面ばかり。 「江」とはどんな人物だったのだろうと思った時、この本にめぐり会えた。 佐治与九郎(お市の姉の子)、豊臣秀勝(秀吉の姉の次男)、そして、徳川秀忠。 三人の夫に使えた江は、無口で何を考えているのかよくわからなかった。二人の姉・茶々 と初とは対照的でいつも目立たなかった・・。 歴史の流れの中に静かに身を浸らせながら、激動の時代を逞しく生きた江の姿に魅入ら れて700余ページの重い本を抱えながら一気に読んでしまった。 |
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司馬遼太郎についてはコメントするのも恐れ多いような気がする。
初期のものはともかく、円熟期や晩年のものは強力な説得力があり、並みの作家は遠く 及ばない。この点では松本清張の書く歴史物も同じである。 司馬遼太郎が凄い作家であると思ったのは「北のまほろば」を読んだ時である。
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覇王の家 | 徳川家康の生涯を描いた長編。忍従の後に徳川幕府300年の礎を築いた家康について作者独自の
視点が冴える。 |
箱根の坂 | 人生の終盤かと思える年代で関東制覇に乗り出す北条早雲。越え難い坂を越えた早雲への思い入
れは深い。 |
関ヶ原 | 関ヶ原を壮大なスケールで描いた大作。決戦に臨む武将達のさまざまな人間像が描かれるが石田三
成を評価してくれた点が嬉しい。 |
王城の護衛者 | 5つの短編集。会津の青年藩主松平容保、長州の大村益次郎、岩倉具視の片腕玉松操、
人斬り以蔵、河井継之助など、時代を生きた人間に焦点をあてて書いている。 |
戦雲の夢 | 関ヶ原の戦いに敗れ、再起をかけて大阪夏の陣に立ち上がる長曽我部盛親の悲運の生涯を描く。 |
幕末 | 幕末の暗殺事件、桜田門外の変など12の事件を描いている。 |
真説宮本武蔵 | 5つの短編集。宮本武蔵、千葉周作など。 |
馬上少年過ぐ | 7つの短編集。伊達政宗、坂本龍馬など。 |
義経 | 戦いの天才源義経。その生涯に司馬遼太郎が思いをはせる。 |
最後の将軍 | 15代将軍徳川慶喜、その栄光と失意の生涯を描く。この本で、慶喜が明治を生き抜き大正2年まで
存命であったということを初めて知った。 |
空海の風景 | 上巻しか読んでいない。芸術院恩賜賞をとった書なので暇ができたら完読したいところである。 |
歴史を考える | 歴史を題材に4人と対談したのをまとめたもの。 |
北のまほろば | 青森県内各地を歩き、広く題材を集めて歴史の中の北の大地に思いをはせている。 |
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あまり聞きなれない作家かもしれません。直木賞を受賞した「東京新橋雨中図」を除くと
写楽まぼろし・名主の裔(すえ)・男の軌跡など著作は少ない方です。 杉本章子の作品の 中で一番はじめに読んだのは写楽まぼろしです。本屋でたまたま目に付いた「写楽」に惹か れて買ってしまいました。その前まで高橋克彦の「写楽殺人事件」読んでいたせいでしょうか。 謎の多いこの浮世絵師に興味を持ちました。 いきさつはともかく、読み進めるうちに杉本章子の世界ぐいぐいに引きずり込まれていきまし
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江戸最後の名主の生き方を描いている。 |
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南町奉行も務めた男が明治の世にひっそりと生き抜く姿がある事件とのか
かわりで描かれる。 |
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大胆な筋立てで写楽を作り上げ、写楽がいた江戸時代の市井の生活を生
き生きと描いている。 |
(他に 男の軌跡) |
江戸から明治へと移り変わる社会の波にもまれながら、画家として生きる
小林清親の姿と人々の哀歓をえがいている。 |
ふらふら遊三 |
時代の波に翻弄されながら生きた風変わりな異色落語家の生涯を描いて
いる。(解説から) |
女占い十二か月 |
1月〜12月生まれの市井に生きる女性の生き方が語られる。
草双紙「女用知恵鑑宝織(おんなようちえかがみたからおり)に書かれた 占いは、当たっていることもあれば完全に外れていることもある。 幸せをかみしめる女、自分の運命と身を委ねる女、占い本に振り回された 女・・・。読後感の爽やかなものもあるが、何とかならないのかと考えさせ られものも多い。(「けいどう」で吉原送りになったおみつなど。) この占い本は実際に江戸時代に売られていたらしい。 |
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春告鳥と2冊借りて読んだ。表題の「おすず」は一作目にしか登場せず。
おすずの許嫁だったが、吉原の引手茶屋の内儀と昵懇になってしまった 信太郎が主役となって全編に登場する。おすずは信太郎に裏切られても 諦めきれずにいたのだが、押し込み強盗に入られ、操を奪われて自害し てしまう。 その後、芝居小屋に寄せている信太郎の前にさまざまな事件が起こる。 信太郎は幼なじみで、岡っ引きを目指す元吉とともに事件解決にとり組 む。 「オール読みもの」に間をおいて掲載されたせいか、5つの短編に中で、 信太郎をめぐる人々が何回にもわたって説明される。登場人物も多く、読 んでいて、かなりくどい感じもする。江戸情緒や時代背景は細かいが、 スリルとサスペンスという点では物足りない。 |
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1925年 東京都新宿区生まれ。文化学院卒。
1952年 「燐の譜」で『サンデー毎日』の懸賞小説に入選。 吉川英治に師事する。 1962年 『孤愁の岸』で第48回直木賞 1977年 『滝沢馬琴』で第12回吉川英治文学賞 1977年 『戦乱 日本の歴史』(小学館) 1986年 『穢土荘厳』で第25回女流文学賞 |
上・下 |
高名な作家であるので、いつか読みたいと思いつつなかなか機会がなかった。
読んでみて、さすが・・と思うばかり。 時代考証がしっかりしていて文章も素晴らしい。 馬琴を取り巻く家族、妻・息子・嫁・孫、そして兄弟。 頑なで筋を通そうとする馬琴の一途な姿がひしひしと伝わってくる。 片目から両目へ失明しながら、家族を支えるため、そして大作を完成させるた め、馬琴は書き続ける。最後に頼りになったのは、無口で愛想のひとつもなく 学問の素養もないと思われた嫁のお路の力を借りて、ついに「南総里見八犬 伝」を完成させる。 |
上・下 |
内容(「BOOK」データベースより)
時代を超える作品世界を構築した近松門左衛門の魅力は、何に由来するのか。 綿密な考証と卓越した構想力によって、その謎を説き明かす。 |
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1941年 岩手県一関市生まれ。学習院大学政経学部卒業。新聞記者を経て、
82年 「黄金流紗」で第28回江戸川乱歩賞を受賞してデビュー 85年 「七人の共犯者」で第12回角川小説賞を受賞。 近著に、「えちご恋人岬殺人事件」「させぼ西海橋殺人事件」 「ねむろ風蓮殺人事件」など、「さすらい署長・風間昭平シリーズ」 他に、「謙信暗殺」「つるべ心中の怪塙保己一推理帖」などがある。 |
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久しぶりに中津文彦の本を読んだ。
この作家は義経を追いかけていた頃よく読んだ。(司馬遼太郎、大仏次郎などの 著作と共に。) ただ、遠野物語殺人紀行を読んだときに、この作家の文体が馴染みにくくなり、 以後遠ざかっていた。(この本の着想、遠野の山奥に住む人を解明・・・は、説得力 があって興味深い。) さて、風の浄土。 これは今まで読んで知っていた、阿倍一族、前九年・後三年の役、藤原三代、義経 の平泉への逃避などの知識を整理する意味でも凄く良かった。 ------------------------------------------------------------ Amazonの内容紹介より 少年時代の源義経は、鞍馬山の天狗に出会った。父の仇をとりたいと訴える義経に 稽古をつけてくれた彼らは、平家を討ち、源氏の再興を目指す「草の根党」の面々だっ た。 彼れに導かれて、義経は奥州の都、平泉。その広大さと繁栄ぶりに驚く義経は、藤 原秀衡の庇護を受けることとなるのだが―。初代・藤原清衡による壮大な都造りと、 秀衡の庇護を受けた源義経の悲劇を軸に、平泉の都と藤原三代の栄枯盛衰を描く、 壮大な歴史巨編! |
ジンギスカン
殺人事件 |
モンゴル研究に関する日本での第一人者、砂原教授が自宅近くの井の頭公園で
殺害された。教授が団長を務めるはずだったモンゴル訪問団の五人のメンバーの 一人に推理作家、中小路信が加わった。 果てしないモンゴルの大草原をひた走る大陸横断国際列車のなかで、第二の事件 が起こった。事件の鍵は、奥州平泉から逃れたといわれる義経北行伝説の真相と、 義経ジンギスカン説にあると、中小路は推理したが・・・。 モンゴル取材旅行した著者が義経伝説の謎に迫る歴史ミステリーの傑作。 (本の解説より) |
成吉思汗の鎧 | 三陸海岸で連続殺人事件発生!
事件の背後に潜むのは義経北行伝説の謎か? (帯の見出しより) |
殺人紀行 |
千歳空港を飛び立った全日航ボーイング727型機が遠野山中で墜落、乗っていた
115人全員が死亡した。たまたま遠野に取材にきていた東朝新聞記者結城は、ニュ ースを知り、現場に一番乗りした。 凄惨な墜落現場では、マスコミ各社が取材合戦を展開、遺体収容も順調に進む。 だが、異変が起こった。どう数えても2遺体多く収容されているのだ。 この謎の解明には結城は、ひとりの男を追いつめていった。遠野から光りきらめく沖 縄へと…。 遠野物語に隠されている“秘密”がひき起こす連続殺人事件。 著者会心の紀行ミステリー。 (紀伊國屋書店の内容詳細から) |
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1951年 和歌山市生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。
ロンドン大学大学院終了・ 2001年 日本建築学会文化賞を受賞。 1994年 「鹿鳴館の肖像」により、歴史文学賞を受賞。 著書 「荷風とル・コルビュジェのパリ」「ヒトラーの建築家」 「東京駅の建築家 辰野金吾伝」 |
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題名が目にとまって借りた。初めての作家である。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
建築家でも有名な方のようだが、歴史も丹念に調べて安土城と信長、光秀の 事跡と心理描写を良く描き出している。 佐久間信盛、林通勝、荒木村重 ・・信長の勘気に触れたために過去の業績 にもかかわらず冷遇された者達。(村重はついに離反した。) かの者達のようにはならない・・・ついに光秀は立つ。 |
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1948年 大阪生まれ。早稲田大学文学部卒業。・・・・・・・・・・・・・・・・・
1977年 「僕って何」で芥川賞受賞。 著書 「いちご同盟」「鹿の王」「パパは塾長さん」「地に火を放つ者」 「迷宮のラピア」 他多数。 |
★★★ |
この作家の本を初めて読んだ。
「僕って何」は有名だが、題名が軟弱な感じがして読むこともなかった。 今回県立図書館でこの本を偶然見つけたのだが、読んでみて良かった。 完全な歴史物である。登場するの藤原四家の人物名が細かに記されている。 南家の仲麻呂はじめ11人、北家・小黒麻呂など9人、式家12人、京家2人。 皇族・百済王家・その他を含めて100人近くの名前と簡単な説明が巻末に載 せられている。 桓武天皇・山部王の若き日から天皇になるまで、そして天皇としての施策に ついて精魂込めて書ききった大作である。三田誠広がこのょうに史実を丹念 に調べて書く作家だということに驚かされた。 |
★★★ |
桓武天皇に続く歴史物の2冊目。
若き日の在原業平との出会い、儒者として、勉学に励む日々。 道真は信念を持ち、古来の中国の例を参考にしながら、帝の決め方、臣とし てのあり方を奏上する。 儒学の弟子でもあった皇子が予想外に帝位につく。この宇多天皇の信頼を 得て、右大臣まで上りつめた道真だったが、藤原北家や皇籍離脱した源家 一派のために罪に落とされる。背後には宇多上皇の関与を排斥しようとした 醍醐天皇とその取り巻きの思惑が絡んでいた。 時代の背景を丹念に描いているため、多少取り付きにくいところがあるが、 最後まで興味深く読み進められた。 四面楚歌。 「あなたはいつも一人です。」 妻の宣来子が言う。 道真15歳、宣来子10歳から連れ添った妻だった。 大宰府に強制的に移される道真が生涯でただ一度読んだ恋歌 君が住む宿の梢をゆくゆくと
涙が出そうになった。
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前2作が良かったので、かなり期待して読んだが・・。
軽いタッチの痛快忍者ものである。 面白おかしく・・これだけを望むのであれば格好の本。 言葉遣いが現代なので、何とも武士の時代という感じがしない。 今の建物や今の喩をを言ったり・・・。 関ヶ原、大阪の陣も戦いの臨場感がない。細川や大谷を訪ねる幸村の態度、 言葉遣いは、現代の若者そのもの・・・。幸村そのものが戦術を語れる以外は まるでお調子者なのである。 霧隠才蔵、猿飛佐助(女)が空を飛ぶ・・全くのおとぎ話。 |
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1969年 「ママは知らなかったのよ」で第1回新潮新人賞 1989年 「深川澪通り木戸番小屋」で泉鏡花文学賞 1993年 「恋忘れ草」で直木賞 1997年 「江戸風狂伝」で女流文学賞 |
木戸番小屋 |
川沿いの澪通りの木戸番夫婦は人には言えない苦労の末に、深川に流れて
来たと噂されている。 思い通りにならない人々は、この二人を訪れて智恵を借り、生きる力を取り戻 してゆく。 傷つきながらも、まっとうに生きようとつとめる市井の男女を、細やかに温かく 描く、泉鏡花賞受賞の名作集 (解説から) |
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久しぶりに北原亞以子の本を読んだ。本のコミュでどなたかが絶賛しておられ
たので期待が大きかった。テーマがそれぞれ異なる七話の短編集。 ・帰り花 かつて子どもの自分に優しくしてくれた手習いの師匠を訪ねるおりょう ・冬隣 忠右衛門が矢場の女と浮気し、夫婦の仲に亀裂が入るが・・。 ・風鈴の鳴りやむ時 おしんは建具師の国松と所帯を持つはずだった。お蓮さえ現れなかったら ・草青む 婿養子の吉兵衛は晩年を妾のおつやとひっそり暮らそうとするが・・。 ・いつのまにか 平穏無事な生活を手に入れたお俊の前に弟の文次郎が現れる ・楓日記 秋田・佐竹藩に関する異聞。殿様のお顔をしみじみと仰いだ方はいない ・あんちゃん 百姓の末っ子・捨松は江戸へ出て名をかえ、店を持つまでになったが・・。 |
★★★ |
名作短編集である。北原亜以子の素晴らしさがわかった。
・女の仕事 ・初恋 ・こぼれた水 ・いのち ・夜の明けるまで ・絆 ・奈落の底 ・ぐず 内容(「BOOK」データベースより) 江戸の片すみ・澪通りの木戸番小屋に住む笑兵衛とお捨。心やさしい夫婦の もとを、痛みをかかえた人たちが次々と訪れる。借金のかたに嫁いだ女、命を 救ってくれた若者を死なせてしまった老婆、捨てた娘を取り戻そうとする男…。 彼らの心に温かいものが戻ってくる物語全8作。第39回吉川英治文学賞受賞 作。 |
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読後感を書き始めて、BOOKデータベースを見たら、こちらの方が的確に書か
れていることがわかり、そのまま引用させて戴いた。江戸物でない作品なの で新鮮な感じがした。「木戸番小屋」のような心温まる話はあまりない。 ---------------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 中央停車場の工事現場で働く青年、自由恋愛を夢見て東京へ出てきた田舎娘、 ステーションホテルを根城に結婚詐欺を繰り返す男、化粧室で変身し男を誘って 小遣い稼ぎをする女教師…。今も昔も、ある者は夢を、ある者は挫折を胸に秘め て降り立つ東京駅。明治・大正・昭和の激動期を通して、複雑に絡み合う人間 模様を「グランドホテル形式」で描く。人情語りの名手・北原亜以子の意欲作。 |
深川澪通り木戸番小屋 |
いま、ひとたびの 花柊
澪つくし 下り闇
ぐず豆腐 食べくらべ 初霜 ほころび ---------------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 江戸深川。人の心に灯をともす木戸番夫婦の物語。 孤独や後悔を抱え生きる人達にそっと手をさしのべるぬくもりに満ちた八篇を 収録。 |
慶次郎縁側日記 ★★★ |
最初の一話「その夜の雪」で同心・森口は娘を失う。(自害)
自害せざるを得なかった娘の心情を想えば自然に涙が溢れる・・・。 娘を失ってみて初めて分かる復讐の心。何もかも捨てて仇を討とうとする森 口のの前に、長年仕えてきた岡っ引きの辰吉が立ちはだかる・・・。 二話以降は、隠居した森口(慶次郎)の周囲に起こる出来事や事件を描いて いる。 深川澪通り木戸番小屋と似ているようで異なるのは、慶次郎がいつも中心に いて解決に一役買っているわけではということである。 このシリーズは飯炊きの佐七、妻を殺された過去を持つ岡っ引きの辰吉、慶 次郎の婿の晃之助など多彩な人を巻き込んでいる。 ---------------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 最愛の一人娘を亡くして数年、今は隠居の元南町奉行同心・森口慶次郎。 しかし、彼のまわりでは何故か日々事件が起こる。そのたびに元腕利き同心は 決して重くはない腰をあげることになる。江戸の人情と粋がにおい立つ連作集。 |
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祭りの日 目安箱 黒髪
かぐや姫 御茶漬け蓬莱屋
冬ざれ そばにいて 風光る 福きたる 慶次郎の活躍場面は少ない。
これは短編にはなっていないが、そんな吉次に取調べを受ける「古傘買い」
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深川澪通り木戸番小屋
★★★ |
木戸番の夫婦の優しさが漂う。
ふっくらして良い香りのするお捨が、悩む人たちに寄り添う・・ お捨と一緒にいると、生きる希望が湧いてくる。そんな話が 散りばめられている。秀作である。 -------------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 江戸・深川。木戸番の笑兵衛とその妻、お捨は、人にいえない苦労の末に 深川に流れてきたと噂されている。 無口だが頼りがいのある笑兵衛と、ふっくらとした優しさで人々を包み込む お捨のもとには、困難な人生に苦しむ人々が日々、訪れる。 悲しみや愁いを抱えた人たちの背中をそっと押す二人。 生きてゆくことにささやかだが確かな希望の灯をともす、八篇を収録。 今年3月に逝去した著者による、このシリーズ最後の1冊。 |
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300年近い年月、人から人へと渡りながら、世相とそこに生きる人々の姿を描
いている。 連作形式の大作である。 ただ、鏡が見聞きしたことを語るという形式になっているため、歴史的な場面 での、臨場感が欠けるのは否めない。壮烈な場面、音、人声が書かれないか らである。 人物の考えや心根の記述も、第三者的になる・・・。 -------------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 秀吉への貢ぎ物としてポルトガルから渡来したぎやまんの手鏡。 秀吉から於祢(ねね)へ、お茶々へ、お江へ、さらには赤穂義士や田沼意次、 尾形光琳、シーボルト、新撰組、彰義隊―へと、時に贈答品、時 には呪われ た品として持ち主が代わっていく中で、鏡に写り込む のは江戸という時代の 色と、人々の心模様──。 2013年3月に急逝した直木賞作家・北原亞以子さんが、十年あまり書き継い だ一大江戸絵巻『ぎやまん物語』がいよいよ刊行です。 鏡を語り手に選んだことについて北原さんはこう書き残しています。 「鏡は人の顔だけでなく、様々なものを映します。鏡がそれを持っている人のど ういう様子を映すかで、その人の内面まで描くことができたらと思っています」 端正かつたおやかな文章で、生涯江戸時代に生きる人々を愛し、書き続けた 北原さんの集大成ともいえる作品です。 |
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正統派の歴史小説作家というところか。
直木賞を受賞した「海狼伝」、柴田練三郎賞の「戦鬼たちの海、」海将ー若き日の小西行長」など 海を中心とした作品が多い。」 山田長政の波乱の生涯を描いた「風雲児」も読み応えがありそう。 |
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織田信長が天下統一を目指して伊勢・志摩の平定に乗り出した時、
志摩の土豪から身を起こした九鬼嘉隆は真っ先に信長の摩下に馳せ 参じた。 信長の知遇を得て、九鬼の運命が開けた。文録の役で織田水軍の 総大将として海戦に明け暮れた戦国大名の数奇な人生を描く。 (解説から) |
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1274年の蒙古襲来で島を襲った蒙古兵に5歳の孫を無残に殺され
た老漁夫は、復讐のため独り島に残った。老人は孫を刺殺した蒙古兵 を殺し孫の恨みを晴らそうと待ち構えていた。 九州、瀬戸内海、小笠原など、島と海にまつわる7つの物語が掲載 されている。 その中のひとつ「鉄砲修行」が特に印象に残る。 |
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昭和20年生まれ
早稲田大学文学部
「夏姫春秋」で直木賞受賞
上 |
商の湯王を輔け、夏王朝から商王朝への革命を成功に導いた稀代の
名宰相伊尹の生涯と古代中国の歴史の流れを生き生きと描いた長篇 小説。桑の木のおかげで水死をまぬがれた「奇蹟の孤児」伊尹は有る 竿氏の料理人となり、不思議な能力を発揮、夏王桀の挙兵で危機に 瀕した有竿氏を救うため乾坤一滴の奇策を講じる。 (解説から) |
下 |
夏王桀に妹をささげることで有竿氏の危機をすくった伊尹は桀のライ
バルとして台頭してきた商の湯王から三顧の礼を受け、湯王の臣とな る。伊尹のねらいは夏と商の和親だったが、時代の流れはこれを許さ ず、ついに夏と商は激突し夏朝は滅亡する。湯王は商王朝を開くが、 伊尹の仕事はまだ終わりではなかった。 (解説から) |
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大津事件と時の大審院長児島惟謙(これかた)の硬骨を
描いた秀作を読んでこの作家の素晴らしさにふれることが できた。 「護法の神」児島惟謙の毅然とした態度に感銘を受ける。 西郷隆盛との駆け引きも興味深い。死語爵位奏請の動き があったが、大津事件が支障になった。その時、遺族が 「大津事件を捨て、爵位を受けたとあっては、故人が浮か ばれません」と奏請の運動を断ったという。 |
上 |
明治24年5月11日、国賓として日本を訪れたロシア皇太子が、滋賀県
大津で、沿道警備の巡査津田三蔵に斬りつけられ負傷した。世に言う「大 津事件」だが、国中が津田三蔵の処遇をめぐって、カンカンガクガクの大論 争。 モスクワ、レニングラードを取材し、新資料を駆使して「大津事件」の顛末 を描いた意欲的な長篇小説。 |
下 |
「わたしは「復讐するは我にあり」以来、犯罪者を書いてきたが、いつか
裁く側に視点を据えたいと思った。そこで出合ったのが大津事件だった。 (あとがきより) 国家をゆるがせた大津事件の全体像に社会講談の方法でせまった著者 会心のノンフィクション・ノベル。 |
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1941年兵庫県生まれ 早稲田大法学部卒
会社勤務を経て68年からフリー 85年「大君の通貨」で新田次郎文学賞受賞 94年「恵比寿屋喜兵衛手控え」で第110回直木賞受賞 |
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争いは世の常、人の恒。江戸の世で、その争いの相談所が恵比寿
屋のような公事宿だ。ある日、若者が恵比寿やを訪れ、兄が見知らぬ 男に金を返せと訴えられたと相談した。 喜兵衛は怪しい臭いを感じ取る。事件の真相は如何に? 江戸の街に生きる市井の人々を愛情込めて描く長編歴史小説。 (解説から) |
敵討ちにあらず |
この作家の本はかなり前に読んだ。
今回は二冊目。八州廻りの十兵衛が旅先でさまざまな事件と出会うと いうもの。 文は緻密にできているようだが、事件へのかかわりがわりと「さらり」と 逃げるようにところがある。 十兵衛と事件先で何故かたびたび出会う火盗改めの樋口新三郎。新 三郎は自分の懐を満たすために賄いを求めてあちこちに出没していた と思ったのだが・・・。 幼い頃に別れた妹を探していた。終章で解決するのが、この物語の一 つの見どころでもある。 -------------------------------------------------------- 文芸春秋・担当編集者一言から ご存じ“八州廻りシリーズ”第8弾です。武州からあてもなく北に向かった、 お馴染み十兵衛一行。壬生で町奉行を務める旧知の吉村兵太左衛門を 訪ねるが、彼は名門の総領息子から逆恨みされた挙げ句、命を落とすは めに……。怒った十兵衛がとった行動とは? 普段は面倒ごとを嫌ったり、 ちゃっかりしたところもある十兵衛ですが、今回は正義漢ぶりと剣の腕を 披露します。 |
半次捕物控 |
題名になっている「天才絵師と・・」は最後に載せられている短編である。
淡々と読んだ。 事件のからくりが意外だったりするのだが、あまり驚かないのは、文体に 「転機」を感じさせるものがないのかもしれない。 仇討の場に双方が現れない、左利きの辻斬り?の横行、ドラ娘と替え歌 で馬鹿にされる話・・・。 それぞれに予期しないようにドン返しではあるのだが。 岡っ引きの半次と剣の道場を開いている小三郎との掛け合いは余談とし
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東京本郷生まれ 武蔵大学教授
「蛍火の怪」「瑠璃菊の女}(旗本絵師シリーズ) 「見返り仏の女」(新人物往来社) 「かぶきの誕生」(明治書院)
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江戸の四季折々の風物詩を背景に、各篇とも、事件の進行につれて、新三
郎得意の枕絵ができあがっていく、という趣向もさることながら、前作「蛍火の 怪」の文庫本あとがきでも記されているように、このシリーズには、各巻とも 「作者だけのひそかな仕掛け」がほどこしてある・・・・・。 (解説から) この「仕掛け」を全く考えなく読み終えてしまった。
主人公は千三百石の御使番を勤める旗本の三男でありながら、武士を嫌っ
四つの事件は結構血なまぐさく、読むのが厳しい場面も多かったが、捕り物
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東京本郷生まれ 1953年2月17日〜・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
生後すぐに千葉県に移る。千葉県立国府台高等学校卒。 ホテル・観光業の専門学校卒業後、国内外のホテルに勤務。会社経営や機械翻訳の 下請を経て、作家になる。この間に、酔った勢いで書いた小説が最終選考に残った ことから小説を書き始めた、という逸話がある。 時代小説を数多く書き、好きな作家に山本周五郎を挙げている。2001年にその周五郎の
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名作短編集である。
山本周五郎賞を取った本を読み進めていて巡りあうことができた。 舞台を江戸時代に置きながら、男女や夫婦の心の機微や運命を巧みに 書き上げている。短編のひとつ「五年の梅」は、主君に諫言するために 許婚の弥生と別れた男が蟄居を命ぜられる。弥生は金貸しの男と一緒 になり、盲目の娘を産む。その時主人公の助乃丞は、弥生を不幸にして のぼせあがっていた自分に気づく・・・。運命に流されながらも、自分を 見つめ直し、やがて弥生と娘を迎える助乃丞の姿が切々と描かれてい く。 その他の短編 ・後瀬の花 ・行き道 ・小田原鰹 ・蟹 |
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味わいのある短編集である。
この作家の凄さを感じ始めている。たんたんとした日常生活を描いてい るようで内に秘めた埋火のような情念が見える。 ・芥火 囲われの身から開放され、自分で店を持とうとするかつ江。 以前に働いていた水茶屋のおかみ・うらのしたたかな生き方を手本 としながら、可能性に向けてやるしかない・・・。 ・夜の小紋 兄の信兵衛が休止したために、由蔵は魚油問屋の店を継ぐことにな った。紺屋(こうや)弟子入りして五年目、小紋の図案や型彫りを生 業にするつもりだった由蔵はふゆともわかれる。兄の息子が一人前 になるまで・・。 それから十年。由蔵はふゆが染めた小紋て・・・。 ・虚舟 親のための働きに出て、放蕩を重ねた父が死んだ後も母と弟に金 を巻き上げられるいし。一人娘と別れて暮らし、一人の夜に晩酌を 楽しむ・・・。 ・柴の家 三百石の家に養子に入り、さしたる仕事もなく登城する信次郎。 妻と義母は生まれた息子にしか関心がなく、夫婦の仲はとっくに冷 え切っている。 やがて、瀬戸助という陶工と孫のふきと出会い陶房に通い始める。 瀬戸助が死に、のこされたふきと焼き物に取り組む信次郎は、家を でることを決意する・・・。 ・妖花 住み慣れた浅草から川向こうに住むようになった「さの」。 夫の柳吉は職人気質の仏師で、家を留守にすることが多い。 不満ばかりのさのの前に柳吉の世話になっているという「むめ」が 現れる。 着物を替え、壊れかけた家庭を修復していくしかない・・・。 |
男の縁 |
秀作が集められている。
八つの短編から成っているが、一つ一つが読み手を惹きつけて離さな い。 ・悪名 幼馴染の多野と重四郎。お互いに想いがありながら別な相手と一 緒になり、別れ、今は料亭の仲居と客。 強請り、酒びたりなど評判の良くない重四郎が姿を消して・・・。 ・男の縁 「御家中興記」を編纂する宇津木丈大夫の前に、早見伝兵衛が現れ 自分の出自を語る。新陰流の使い手であることを隠し仕官してきた 死病に冒された早見伝兵衛は乱心を装い藩の不正者を誅するため に乱闘を起こす・・・。 丈大夫の家で伝兵衛と居合わせたことのある犬井庄八が伝兵衛を 討ち取る。 ・旅の陽射し 重い病に犯された医師の意伯と妻の万は銚子に旅をする。 ・九月の瓜 勘定奉行の宇野太左衛門は、かつて政争により親友だった捨蔵を 裏切ったと言う負い目がある。 廃れて暮らす捨蔵を訪ねた太左衛門は・・・。 ・梅雨のなごり 藩政の改革のために文字通り骨身を削って働く無口な父。 ただの酒飲みに見えた伯父(母の兄)小市。 ・向椿山 庄治郎は医学を修めるために江戸に遊学。残された十六才の美沙 生は、明るく気丈な娘に見えたが・・・。 ・磯波 姉妹の奈津と五月。 奈津は妹の言葉に騙され、想いを抱いていた直之進をあきらめる。 道場を継いだ直之進と五月の夫婦に隙間風が・・・。 ・柴の家 芥火(あくたび)におさめられている。 |
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絵を描くことの好きだった末高明世は有休舎の岡林有休(葦秋)のもとに
通い、蒔絵師の倅・平吉、小録の武家の次男・小川陽次郎と知り合う。 やがて、明世は結婚し、一児ををもうけるが主人は病没。舅も亡くなって 家は零落する。 絵を捨てきれない明世は姑と一人息子と暮らしながら、有休舎に行く。そ して、成人した光岡修理(陽次郎)と会う。修理は婿入りを機会に貧しい暮 らしから脱していたが、満たされないものがあり、絵に向かっている。 時代は幕末の変動期。一人息子の順一郎と修理は勤王派となり、藩内 の対立に巻き込まれていく。女の生き甲斐と自立を求めて、絵に進む明世 の姿が描かれている。 |
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内容(「MARC」データベースより)
藩衰亡を防ぐため、家老から追腹を禁ぜられた又右衛門。跡取りの切腹、 身内や家中の非難の中、ただひたすらに生きた12年を問う。苦境に人の心 を支えるものとは? |
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この作家の文は格調が高く巧みである。
他の本と一緒に読んでいるとその差に驚かされる。 この本も蒔絵の世界を余すところなく緻密に描いて隙がない。 3章に分かれているが、1章を読み終えた時点で貸し出し期限になり完独 読を断念。内容紹介に的確に述べられているので引用させて戴く。 ---------------------------------------------------------- 内容紹介 朝日新聞朝刊に連載された乙川優三郎氏の力作の単行本化。松江で蒔 絵師の一家に育った主人公理野は、兄の修行に付いて江戸にのぼる。 厳しい修行の途上で兄は亡くなるが、理野は田舎に帰らずそのまま工房 で蒔絵職人として身を立てようと決意する。羊遊斎や酒井抱一など実在の 芸術家の中にたくみに虚構の人物を組み合わせ、江戸の町を背景に、女性 の立場から見た江戸職人の世界を描く時代小説の傑作。 内容(「BOOK」データベースより) 原羊遊斎、酒井抱一、鈴木其一など実在の人物の間に虚構の女性主人公 を泳がせ、女性の眼から見た蒔絵職人の世界や出会った人々、そしてやる せない恋心を描いた渾身の力作。 |
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目次を見て「霧の橋」の項があったので短編集かと思ったが、長編だった。
惣兵衛と房之助は長年の友だったが、惣兵衛が想いを寄せてきた小料理 屋の女将をめぐって諍いを起こす。女将がかつて領外追放となった普請奉 行の娘だったからだ。酔いに任せ房之助は惣兵衛を切ってしまう・・・。 そして年月が流れ、惣兵衛の息子・与惣次は仇討を遂げたが、兄の公金 横領に絡み、武士を捨て、「紅屋」の婿となっている。 物語はやがて惣兵衛を名乗るようになった与惣次の「商人としての生き様」 を描いたものである。「紅」をめぐる商人同士の争い、裏での駆け引きを 通して与惣次は次第に商人らしくなっていく・・・。 最終章、父と房之助の諍いの元凶となった女将・ふみが現れ・・・。 巧みな文体と江戸時代の商人、街並みが描かれ、その世界に浸れる秀作。 --------------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 刀を捨て、紅を扱う紅屋の主人となった惣兵衛だったが、大店の陰謀、父 親の仇の出現を契機に武士魂が蘇った。妻は夫が武士に戻ってしまうので はと不安を感じ、心のすれ違いに思い悩む。 夫婦の愛のあり方、感情の機微を叙情豊かに描き、鮮やかなラストシーンが 感動的な傑作長編。第七回時代小説大賞受賞作。 |
シャッフル |
うーん!
最初の老いて海女をやめ、夫の介護をしながら暮らす絹江。昔の海女仲間 聡子は一人暮らし。2人ともこれから先に明るい未来はない。新聞配達、夏 場のアルバイトなどで何とか食いつないでいる。2人は昔を想いながら海に 行く・・・。 インドネシアで知り合った日本人と結婚して房総に落ち着いたオリーだった が優しかった夫に先立たれてしまった。それでも、オリーはたびたび現れる 夫の姿に励まされ一人で生きていく・・・。 この2つの短編を読んでいるうちはなかなか良いと思った。 13の短編が収録されている。 最初は良かったが、次第に退廃的な雰囲気が漂う。 各短編が何らかの脈絡を持ったり、関連付けると読み応えも出ると思うが それはない。ただ、舞台が房総の海沿いの町だというだけ。 --------------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 歓楽の灯りが海辺を染める頃、ありえたかもしれない自分を想う。 『脊梁山脈』で「戦後」を描き、大佛賞に輝いた著者の「現代」小説。宝石の ような時間もあった。 窮屈な現実にも追われた。まだ思い出に生きる齢でもないが、やり直せない ところまで来てしまったのか。 房総半島の街で自己を見失いかけ、時に夢を見、あがく、元海女、落魄した ジャズピアニスト、旅行者、女性郵便配達人、異国の女…… 「これぞ短篇」「珠玉」としか言いようのない滋味あふれる13篇。 老いた海女、落魄のピアニスト、ライムポトスと裸婦、家に辿りついた異国の
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1950年 茨城県生まれ 国学院大学卒・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
国学院大学折口博士記念古代研究所勤務ののち、著述業に専念。 1988年「F1地上の夢」で新田次郎文学賞受賞 1994年「帰郷」で直木賞受賞 他の著書に「監督」「オーケイ」「男ともだち」「満月」「空に満月」 |
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江戸から明治に移る動乱の時代を、一人のキリシタン類族の若者を通して
描き切った作者渾身の大作。 後に宇源太と名前を変える藤右衛門はキリシタン類族の村に生まれた。 幼馴染のおみよが庄屋の息子に手篭めにされ、仕返しに行ったおみよの 兄は逆に殺されてしまう。藤右衛門は庄屋の息子を殺し江戸に逃げるが そこから攘夷と倒幕に揺れる時代の波に翻弄されていくことになる。 僧達の堕落。大国主命の教えを説く塚本彦弥との出会い。道場主の 吉野新三郎、勝海舟との出会い。 作者が描きたかったテーマは日本人と宗教の問題だと思われる。キリ シタン類族の存在とその差別、また江戸時代を生き抜いたキリスト教の 実態である。巻末に30数冊の参考文献が掲げられているが、史実も踏ま えながら、詳細に書きあげているのがわかる。 仏教については非常に厳しい記述が多い。神道に指導者や教義がな いことに付けいって神社を寺の附属物にし、神道を葬り去ろうとしたこと。 また寺や僧は寺請制度で保護され、宗教としての道を忘れ金儲け だけに走っていたことなど・・。 明治政府が天皇を現人神として祭り上げるためにキリスト教を禁止した こと、廃仏毀釈の嵐、平田篤胤や本居宣長等が唱えた本来の神道とは 異なる、神道の組織作りをしようとしたことなど・・。 また、相楽総三と赤報隊のことにも触れるなど、多彩である。 700ページの歴史長編を読むのはちょっと手間だった。 |
隠居修行 |
この後、シリーズものになりそうな気がする。
直参旗本の日向半兵衛は偶然助けた新太郎を養子にし、家督を譲る。 気ままな隠居のはずが、さまざまな難事が持ち込まれる。 弟で目付の松平半次郎(婿養子に入った)、勝谷用人、そして、謎の 男・聖天の藤兵衛達の助けを借りながら、難事件を解決していく。 ・女の櫛 ・尾ける子 ・聖天の藤兵衛 十両の鶯 ・金貸し |
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夜の街に働く男と女。どこにでもありそうな男女の出会い・・。
9編の男女をめぐる話が並んでいる。 この作家がこんな話を書くというのは面白い。1950年生まれというのも 頷ける。 ・マハナージのおばさん 北島仁志は広瀬照美に恋しているが、マハナージのおばさんは 照美に40才の写真家を紹介してしまう。そして、照美はやがて大 人の魅力に惹かれていく。 一方仁志はとろけるような声を出し、体をくねらせながら離す佐田 博子を紹介される。 マハナージのおばさんは二つの工作をしたわけだが、何のために? ・その他 |
★★★ |
温泉に行って、浴槽から上がってしばし本を読む・・・という目的で、古本
屋で購入したのが、この本と次の「孤立無援の名誉」である。 この作家については歴史ものを書くというイメージがあったが、山際淳司の ような内容で驚かされた。かなり前に書かれたものだが、野球ファンにはこ たえられないような珠玉の一冊である。 ----------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 西本聖、平野謙、石嶺和彦、牛島和彦、古屋英夫、高橋慶彦―個性豊か な6人のプロ野球選手はスーパースターではなかったが、職人芸の心意気 とプロフェッショナルな野球魂を持っていた。 6人それぞれが過去の栄光を捨てて、逆境に立ち向かい、野球に人生を 賭けたかを温かく描いた感動のノンフィクション。 |
孤立無援の名誉
★★★ |
野球の話は一つだけ。あとはさまざまなスポーツ(その他も)から題材を
得ている。 --------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 退場。最後の試合でルールどおり毅然とした態度で、プロ野球審判の名誉 をかけ信念をつらぬく“仏の昇さん”。野球、F1レース、サッカー、テニスなど、 スポーツの世界を舞台に、いずれもプロであることに誇りを持ち、それゆえに 孤独な男たちを、男だけの世界を描いて、快い余韻をひびかせる短編小説集。 |
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この作家が直木賞をとった作品を是非読んでみたいと思って図書館で借
りた。 インパクトが少ない作品である。直木賞がこのようなものなのか・・・ちょっと わからない。地方の工員が栄光の場に立つことになり、充実した日々を送る が、やがて派遣期間が過ぎれば元の職場に戻らなければならない・・・・。 その時の空虚な気持ちはわからないわけではないが、それでどうしたのかと いう、その後のインパクトが欲しかった。 この本には同じような短編が6編載せられている。 静かな生活に戻る主夫、昔の場所に舞い戻る野球選手というテーマのもの もある。 ----------------------------------------------------- 出版社/著者からの内容紹介 F1エンジンの組み立てのメンバーに選ばれて世界中を駆け回った男の日常は 栄光に充ちていた。が、解任後は普通の生活が待っていた |
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1949年 函館市生まれ 函館大谷短期大学卒・・・・・・・・・
1995年 「幻の声」でオール讀物新人賞受賞 2000年 「深川恋物語」で吉川英治文学新人賞受賞 2001年 「余寒の雪」で中山義秀文学賞受賞 他の著書に「我、言挙げす 髪結い伊三次捕物余話」 「深川にゃんにやん横町」 |
とんぼ
江戸人情堀
★★★ |
これは珠玉の短編集である。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
趣味人クラブのコミュで「今年読んだ本ベスト」に挙げた方がおられたので、 図書館で借りた。六つの堀沿いに住む市井の人々の哀感とため息、そして 幸せをほのぼのとしたタッチで描いてみせる。 ・ため息はつかない・・薬研堀
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・紫陽花
かつて吉原の遊女屋にいた直は、今は押しも押されもせぬ大店「近江屋」 のお内儀。 そのお直のもとに、昔の店の妓夫(客引き)・房吉がやってきて、同い年だ った梅ケ枝の死を告げる・・。 ・あさきゆめみし 両国広小路・金毘羅亭の女浄瑠璃に熱をあげ、「駒ちゃん連」の元締めと なった正太郎。日頃から気に入らない伊勢屋の直助が女浄瑠璃。京駒に 手を出し、正太郎の姉を嫁にほしいと持ちかけてきた時・・・。 ・藤尾の局 両替商「備前屋」の内儀は、先妻の子どもたちが暴れると、娘と一緒に 逃げ出すような、腹を立てない女だったが・・・。 かつて大奥で藤尾の局と呼ばれていた・・・。 ・梅匂う 小間物屋を営み、へちま水を商う助松は、見世物小屋の女力持ち・大滝 と出会い・・・。 ・出奔 お庭番川村修富の甥・勝蔵が行方をくらまし、やがて死体で見つかった。 勝蔵に何があったのか・・・。 ・蝦夷松前藩異聞 栄吉こと蠣崎将監広伴は、藩主松前昌広の「発疳(はっかん)」という心の 病に苦しめられる・・・。 ・余寒の雪 知佐は江戸に行く叔父夫婦同行した。江戸の道場で腕試しが出来ると喜 んでいた知佐だったが・・・。 |
★★★ |
三作目で宇佐江真理の凄さに驚かされる・・。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
歴史作家であることを印象づける短編集である。 ・たば風
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久しぶりに写楽の本を読んだ。
これまでに、杉本章子「写楽まぼろし」高橋克彦「写楽殺人事件」を読んで いる。どちらも秀作であった。 宇江佐真理の写楽は上記二冊と比べると、やや物足りない。 写楽が果たして何者なのかと・・わくわくするような展開になっているわけで はないので。 写楽を斉藤十郎兵衛という能役者とし、それに係わって浮世絵を仕立て上げ る者たちに焦点を当てている。 山東京伝、葛飾北斎(鉄蔵)、幾五郎(後の十返舎一九)など、蔦谷重三郎を 中心に多彩な顔ぶれである。蔦谷のの番頭をしたこともあるとして、滝沢馬琴 も登場する。また、蔦谷から狂歌を出した太田蜀山人も登場させている。 |
★★★ |
前記の「寂しい写楽」を除くと、これまで短編集を読むことが多かった。
これは作者が精魂こめて書きあげた長編の秀作である。 松前藩の武士であった栂野尾弘右衛門(とがのお・こうえもん)は、謀反の罪 を着せられたため、江戸に出て町人となる。やがて「福助」婿となり、岡っ引 きの仕事を見つける。 物語は「福助」の女将おあきを中心に進展するが、背景に幕末から明治へと 揺れ動く中で、弘右衛門(弘蔵)がかつて籍をおいた松前藩の姿も描かれる。 函館出身の作者が丹念に文献を読み、大作を書き上げたという感じである。 幕府と官軍の戦い、彰義隊、榎本武揚の戦いなど詳しく描いている。 松前に行った息子の良助は・・・。 松前に帰郷した弘蔵夫婦だったが、住みなれた江戸に帰る・・・。 最後まで読み終えて大きな感動があった。 ----------------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 江戸の本所に「福助」という、おでんが評判の縄暖簾の店があった。女将のお あきは、元武士で岡っぴきの亭主と息子の良助、娘のおてい、そして常連客た ちに囲まれて、つつましいが、幸せな暮らしをしていた。 しかし、江戸から明治に代わる時代の大きな潮流に、おあきたち市井の人々も いやおうなしに巻きこまれていく。そしてついには、息子の良助が彰義隊に志 願してしまう…。幕末・江戸の市井に生きる人びとの人情と心の機微を描き切 る、著者渾身の傑作時代長篇。 |
髪結い伊三次捕物余話 |
6編の短編だが、伊三次が事件や出来事に関わる連作集である。
この作家には、当たりはずれがちょっとある。 この本はどちらかいうと平坦・・。インパクトに欠ける。 予想外の事件が起こったり、難解な謎が立ち塞がったというのがあまりない。 伊三次の芸者をしている女房、幼少ながら健気な娘、歌川豊光のもとに弟子 入りして絵の修行をしている息子・伊与太、伊与太の恋人で、松前藩に奉公 にあがっている茜、伊三次の弟子・九兵衛・・・。 それらの者の周辺に起こった出来事が穏やかに語られる・・・そんな本である。 ----------------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 人気の髪結い伊三次シリーズ最新作は、人情味あふれる短編6作を収録。 あやめを丹精することが生きがいの老婆が、庭で頭を打って亡くなってしまう。 彼女の部屋から高価な持ち物が消えていることを不審に思った息子は、伊三 次に調査を依頼する。暗い過去を持つ、花屋の直次郎が疑われるが……。 (「あやめ供養」) 伊三次の弟子、九兵衛に縁談が持ち上がる。相手は九兵衛の父親が働く魚 屋「魚佐」の娘だが、これがかなり癖のあるお嬢さんだった。 (「赤い花」) 浮気性で有名な和菓子屋の若旦那は、何度も女房を替えているが、別れた 女房が次々と行方知れずになるとの噂があった。このことを聞いた伊三次は 同心の不破友之進に相談する。 (「赤いまんまに魚そえて」) 伊三次の息子、伊与太が心惹かれ、絵に描いていた女性が物干し台から落 ちて亡くなった。葬式の直後、彼女の夫は浮気相手と遊び歩いていた。一方、 不破家の茜は奉公先の松前藩で、若様のお世話をすることになっていた。 (明日のことは知らず) 仕えていた藩が改易になった男。知り合いの伝手を辿って再仕官しようとす るが、なかなか上手くはいかず、次第に困窮していく。(「やぶ柑子」) 「不老不死の薬」を研究していた医者が亡くなった。彼の家には謎の物体が
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1959年 兵庫県宝塚市生まれ。中央大学法学部卒業。??・
1993年 集英社レディスコミック誌「You」にてマンガ原作者 (ペンネーム・川富士立夏)としてデビュー。 2007年 「出世花」で第2回小説NON短編時代小説賞奨励 賞を受賞し、作家デビューする。 |
みおつくし
★★★ |
これは秀作である。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
主人公「澪」の姿と周りの人々との心の通い合いが実に良い。 この本は、わずか1カ月の間に10刷発行しているがその理由がわかる。 ・狐のご祝儀・・ぴりから鰹でんぶ
故郷の大阪で水害で両親を失い、天満一兆庵の女将・芳に救われた澪だ
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★★★ |
名作である。
この作家は内容、文章力ともに優れた作家である。 和菓子屋「桜花堂」の主人夫婦から養女にと言われるが、驚くべき事実が
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高田郁のできるまで ★★★ |
これは素晴らしい。
2ページ程の短編ばかりなのだが、一編一編に心温まる話があり感動する。 この短い話の中で読み手の心を掴む・・高田郁は凄い!! ------------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 今、一番泣ける時代料理小説『みをつくし料理帖』シリーズ著者・高田郁、 初のエッセイ集。 雲外蒼天を信じ、日々を送る人へ届けたい言葉がありま す。 漫画原作者・川富士立夏時代に漫画雑誌「オフィスユー」に四年半にわたっ
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永遠に在り ★★★ |
不朽の名作と言ってよい。
関寛斎という、素晴らしい医術を持ち、名を残しながら、晩年北海道の開拓 に取り組んだという異色の偉人。それを妻の立場から描いている。 いつも物事を良いほうに捉えてみせる、あいの姿が素晴らしい。
あいの姑になった年子の言葉。
関寛斎は実在の人物であり、十勝・陸別町には開拓の先人ということで資料
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銀河線 軌道春秋
★★★ |
珠玉の短編集。この言葉はこの本のためにあるよう・・・。
読み手の心を捉え、感動の波を送る・・・素晴らしい作家である。 ・お弁当ふたつ 夫の背中がうらぶれていると思った妻。会社を訪ねて夫がリストラされて いたことを知り愕然とする。夫は毎に何をしていたのだろう。後をつけた妻 が見たのは・・・。 ・車窓家族 大阪神戸を走る私鉄から見える集合住宅の一室はカーテンがなく、老夫 婦の生活がそのまま見える。その姿に癒される客がいる。 ・ムシヤシナイ 父親から勉強を強制され続けてきた息子は、自分の気持ちを抑えきれな くなり、駅で蕎麦屋を営む祖父のもとに現れる。 ・ふるさと銀河線(内容に紹介) ・返信 陸別で不慮の事故死をした息子の面影を偲ぶために夫婦は陸別町にや ってきた・・。「ここは何もないところですが、そこが良いのです・・・」 満天の星だけ・・・。 ・雨を聴く午後 不動産の会社に務める男は、かつて住んでいた古集合住宅の部屋に入 り込む。そこは安住の地に思えたが・・・そこに住む女には深刻な悩みが あった。 ・あなたへの伝言 アルコール依存症悩まされる女。 女は更生し立ち直った年上の女を尊敬し頼りにしていたが・・・ ・晩夏光 認知庄の姑を看取ったなつ乃は息子と離れ一人暮らしをしている。 ある日、なつ乃は物忘れがひどくなっていることに気づく。 ・幸福が通り過ぎたら 大学で苦楽を共にした、桃、梅、桜の三人は30数年ぶりに会う。 女ながら造り酒屋を継いだ桜は、自分だけが苦労していると思っていたが 男二人にも耐えがたい事情を抱えていた・・・。 あとがきで作者が
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1948年 高知県生まれ。 都立世田谷工業高等学校電子科卒業
旅行代理店、広告制作会社、コピーライター、航空会 社関連の商社勤務などを経て、 1997年 「蒼い籠」で第77回オール讀物新人賞を受賞。 2000年 初の単行本「損料屋喜八郎始末控え」を上梓し、 時代小説の新しい書き手として注目を集める。 2002年 「あかね空」で第126回直木賞受賞。 |
(文藝春秋) |
希望を胸に身一つで上方から江戸へ下った豆腐職人の永吉。己の技量一筋に生きる
永吉を支えるおふみ。やがて夫婦となった二人は、京と江戸との味覚の違いに悩みな がらもやっと表通りに店を構える。彼らを引き継いだ三人の子らの有為転変を、親子二 代にわたって描いた第126回直木賞受賞の傑作人情時代小説。 (「BOOK」データベースより) ---------------------------------------------------------------- 一部・二部に分かれている。 一部は永吉が亡くなり、おふみも体調を崩すまで。 一部の前半で、永吉と所帯を持ったおふみの爽やかさが目立つが、おふみの父母 が相次いでなくなり、おふみは長男の榮太郎を溺愛するようになる。そのようすが 苛立たしいくらい・・・。弟の悟郎、妹のおきみは理解しがたい母の姿に悲しい思 いをさせられている。 二部はおふみが亡くなり、葬儀を取り仕切る榮太郎の前に姿を現した平野屋の平六 がヤクザの親分の傳蔵を伴い、昔の証文をネタに京やを乗っ取ろうとする・・。 明けない夜がないようにもつらいことや悲しいこともあかね色の空が包んでくれる・・ |
★★★ (光文社) |
この作者の二冊目を読んだ。
あかね雲は映画化のビデオを先に見てしまったので、筋がわかってしまい今ひとつと いう感じがあった。やはり、先のわからないストーリーは読み応えが違う。 主人公の「つばき」の逞しい生き方に魅了させられた。 内容(「BOOK」データベースより) 江戸に心から愛されている一膳飯屋がありました。知恵を使い、こころざしを捨てず、 ひたむきに汗を流したおんなの生き方。直木賞作家の魅力あふれる細腕繁盛記。 |
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1967年 京都生まれ。 京都大学法学部卒業・・・・・・・・
2009年 「春の空風」が松本清張賞候補となる。 2010年 「マルガリータ」で第17回松本清張賞受賞。 現在は故司馬遼太郎氏布陣・福田みどりさんの 個人秘書を務める。 |
★★★ |
ローマ少年使節団の4人の帰国後の生涯を描いた力作である。
主人公は棄教した千々岩ミゲル(清右衛門)とその妻となった 珠である。 千々岩ミゲルが何故棄教したのか、作者は豊臣秀吉との関係 で千々岩ミゲルに好意的に解釈している。 ミゲルは司祭をめざす三人と袂を分かち、大村喜前と有馬春信 に仕えるが、棄教した者として茨の道を歩むことになる。 |
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1941年 長崎県生まれ。 日本大学芸術学部卒業・・・・・・・・・・・・・・・・・
作家・脚本家。 代表作にNHK大河ドラマ「黄金の日々」「山河燃ゆ」 「花の乱」 映画「異邦人たちとの夏」(日本アカデミー賞最優秀賞脚本賞) 小説「紙ヒコーキが飛ばせない」「夢暦長崎奉行」「蝶々さん」 |
(げんじつ) ★★★ |
上記・村木嵐の「マルガリータ」に似ているところがある。・・・・・・・・・・
村木嵐は阻害されていた千々岩ミゲルに光を与えてくれた。 この本ではその息子が天草四郎時貞という設定にしている。 巻末に100以上の参考文献が載せられている。島原の乱やキリシ タンの実態、領主・松倉(島原)・寺沢(天草)の苛政について詳細に 調べたものと思われる。 幕府の上使・老中松平信綱にも焦点を当てていて、読み応えがある。 「才あれど徳なし」と世間から見られていた信綱だが、投降した百姓を 処断せず、自領の忍藩に連れていく。それは、原城に上がった最終の 日に、「西空に日輪が二つ並んでいるのを見た」ためである。その中に 亡き妻の顔があった・・・。息子にそのことを語ると、「それはこの地方 に、この季節になると見える『幻日』でしょう」と言われてしまう。 その時、信綱は眼下を漕ぎだしていく小舟に天草四郎を見た・・・。 ------------------------------------------------------ 内容(「BOOK」データベースより) 九州キリシタン王国建国は、目前だった! 一揆軍の総大将・天草四郎は、天正遣欧使節・千々石ミゲルの息子だ った。 そして幕府軍を震撼させた長崎要塞化計画とは―ほとんど取り上げられ ることのなかった文献をもとに、日本史上最大の一揆といわれる島原の 乱を大胆な推理で活写する、著者渾身の長編歴史小説。 |
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1960年 神奈川県横浜市生まれ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
早稲田大学卒業後、日本IBMに長らく勤務。 現在はコンサルティング・サービスの会社を経営しつつ 歴史・時代小説を執筆。 主な著書は「武田家滅亡」「山河果てるとも」「疾き雲のごとく」など |
首 ★★★ |
北条が関わった戦いが舞台で、首を とる武士達のさまざまな姿と
葛藤を描いている。 ・瀕死の友から頼まれた首を自分の手柄にしてしまった男 なんとその友は陣地に帰ってきた。 ・間違って氏政の三男の首を取ってしまった男 ・摩利支天を信じ、戦いで常に傷を受けたことのない新三郎は 4つの首をとってはならないという夢を見た翌日・・。 ・首を拾って自分の手柄としたことに味をしめた清右衛門が 次に拾った首の本当の持ち主は・・・。 ・他二編 |
惨 ★★★ |
長が武田勝頼を攻めた時に、親戚筋や家来衆が次々に裏切るの
だが、その顛末を克明に描いている。 ・木曾谷の証人 木曾義昌と義豊の兄弟 ・要らぬ駒 下條家 ・画龍点睛 信玄亡き後、甲斐に舞い戻った信虎。 信虎の六男・信廉はどうする・・。 ・温もりいまだ冷めやらず 信玄の五男・仁科五郎盛信と、織田信長五男・源三郎 ・表裏者 穴山信君 |
天狗党西へ |
悲惨な結末が結末が予想される物語なので、事件の前後関係や
流れを知ろうと思い、どんどん読み進めた。 水戸藩で著名な藤田東湖の息子・小四郎を中心に展開する。 尊王攘夷を叫び、日本が外国の植民地とならないことを強く訴え て結成された水戸天狗党。しかし、いつの間にか水戸藩内の対立を うみ、やがて討幕運動とみなされてしまう。意を決した一党は、徳川 慶喜に血気の意するところを伝えようと京都を目指す。 幕府からの討伐命令を受けた諸藩の動き、壮絶な戦い、苦難の 冬の山越え・・・・。夜明け前の舞台に躍動しようとする人々の姿が 苦闘の中に描かれている。 -------------------------------------------------- 内容説明から 一人また一人。困窮する故郷のために、男たちは結集した! 水戸 藩から京を目指した貧しくも屈強な義士たちの血と涙の行軍。幕末最 大の悲劇を描く歴史巨編。 |
★★★ |
戦国を生き抜く者たちのさまざまな思惑や行動を、緊迫感の中に
描き切った珠玉の短編集。 以下、6つの短編を短くまとめてみた。 ・浪人大将
・戦は算術に候
・短慮なり名左衛門
・毒蛾の舞
・天に唾して
・国を蹴った男
|
★★★ |
これは面白い。
黄金の地が伊豆半島南端にあるという奇想天外なストーリー。 秀吉配下の水軍の船に乗り、沼津から伊豆半島沿いに南下し 北条水軍と戦い、その寄る城を落としていくシサットと徳川水軍の 向井弾正。 当時の戦術を細かに調べ、伊豆半島も実地調査したというこの作 家の描写が冴える。 秀吉の走狗は誰か?という小謎もある。 -------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースよ)から 1588年、長崎に上陸したイエズス会士レンヴァルト・シサットは、布 教の行き詰まりを打開すべく秀吉の元に向かった。秀吉は、近く行う 東国征伐に同行し、彼の航海学・天文学の知識を生かすなら、東国 に布教の拠点を作ってよいという。 布教の想いを胸に、伊勢大湊から伊豆半島に至るうち、「奥伊豆に 黄金の国がある」という噂を耳にするようになる―黒い竜に守られてい る、というその国の実態は驚くべきものだった!怒涛のような筆致で描 き出す、歴史海洋冒険合戦譚。 |
★★★ |
最初、登場人物が多く相互関係や時代背景を把握するのが難し
かった。 30ページ程読んだあたりでクリアしようと思ったが、我慢して継続。 長尾景春が主君である「山内上杉」に叛旗を翻したあたりから俄 然面白くなりどんどん読み進めた。 山内上杉と同一歩調をとる扇谷上杉、その中心は江戸城を築いた 太田道灌である。 管領・上杉を敵とした景春の戦い、上杉と敵対する古川公方を手 を結など離散離合を繰り返し、下剋上に漬かっていく。古川公方の 後に関東入りした堀川公方、伊勢新九郎なども登場する。 本格的な戦国時代が始まる少し前の関東の騒乱が描かれ、新鮮 な感じて読み終えることができた。 -------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースよ)から 好かぬ小僧だ―。関東管領を継いだ上杉顕定を一目見て、景春は 思った。腹悪しき主君との軋轢は深まり、やがて叛旗を翻した景春は、 下剋上を果たす。長きにわたる戦いの幕が、ここに切って落とされた。 対するは、かつて兄と慕った巨人・太田道潅。さらには、駿河で勃興 する新世代の雄・北条早雲も動き出す。叛乱に次ぐ叛乱は、新たな時 代の創始者たちを呼び覚ましていく―。 |
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25.1 東京旅行の列車内やジャズ喫茶で読んだ。
この作家、戦国時代の関東を書かせたら無類の面白さを描いてみ せる。幻海、叛鬼・・・。多数の参考文書をもとに自在の創造力を発 揮して読み手を戦国時代に引きずり込んでくれる。 ・見えすぎた物見
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図書館の新刊コーナーで紹介されていたので予約して借りたが、
鯨漁と太地に関わったは短編ばかりだった。 途中飛ばし読みをして全容を掴んだ。 和歌山県にあるこの町。江戸時代から明治までの移り変わりの中で 一貫した漁法を守り抜いた男たちのようすや苦悩が描かれている。 この作家には清々しく終わるものが少ないという感じがする。 機会があれば太地を訪ねてみたい。 http://www.town.taiji.wakayama.jp/ -------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースよ)から 和を乱せば、死。江戸時代、究極の職業集団「鯨組」が辿る狂おし き運命! 仲間との信頼関係が崩れると即、死が待ち受ける危険な漁法、組
網を打つ者。とどめを刺す者―。おのおのが技を繰り出し集団で鯨
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★★★ |
北条早雲については強い関心をもっていた。
この本への取り掛かりは、富樫倫太郎「北条早雲 青春飛翔篇」を 読み終えた後だった。 富樫倫太郎の本と比べると、参考文献をもとにして重厚に書かれた という印象が強い。前著は良く知られていない少年から壮年への過 程を描いているので創作部分も多い。爽快感がある。 そういうわけで、本書を読むときは、駿河に下向するまでのことは、 ちょっと駆け足で読んでしまった。 駿河に到ってからの新九郎(宗瑞)の関東制覇への足掛かりとその 後の戦いを読んだ。堀越公方、扇谷上杉との連携、離反・・。 それらの経過が子細によく描かれていて、興味深く読んだ。 山内上杉、古河公方との駆け引き、また三浦一族との戦い・・。 三浦は武士の世を守るため、宗瑞は民の世を作るために戦う。 下剋上の先駆けとなった宗瑞の、「民を大切にする政治」という考え 方がテーマとなっているのが興味深い。 -------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベース)から 京都を主戦場に、11年間も繰り広げられた権力闘争・応仁の乱。 それによって荒廃した都の姿に絶望し、挫折から立ち直り、関東の 地に新天地を求め、守旧勢力を駆逐し、、民のための秩序を希求 し、覇権を打ち立てた北条早雲。 その国家像と為政者像を注目の作家が描く歴史巨編。 |
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徳川家康を整理して読むにはちょうど良い。
桶狭間・・今川義元の滞在する場所を織田方の梁田に教えたのが家 康だというくだりは面白い。 「衆に秀でた者は己を知ろうとせぬ。それにはんして、凡庸なものほど 己を知ろうとする。」 「乱世では己を知る者ほど強き者はおらぬのだ・・・」 雪斎の言葉が心に残る。 -------------------------------------------------- 内容紹介から 最注目作家・伊東潤×戦国の覇者・徳川家康 吉川英治文学新人賞、山田風太郎賞、歴史時代作家クラブ賞。 次々と主要文学賞を制圧する著者が、ついに上洛を果たす! 過酷な乱世を勝ち抜いた天下人、その「生きる力」に迫る。 この世には、凡人にしか越えられない山がある――。
幼き頃、師より「凡庸」の烙印を押された男は、いかにして戦国の世を
山岡荘八『徳川家康』、隆慶一郎『影武者徳川家康』、司馬遼太郎『覇
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★★★ |
勝頼がなぜ長篠の戦いに臨んだのか、無謀な突入までの経過はどうな
っていたのか、それらに明確に応える一冊である。珠玉の作。 山県、内藤、馬場・・・名だたる武田の宿老たちと勝頼の側近・長坂釣閑 との確執。 信玄没後、3年は戦いをしてはいけないという遺言を宿老たちは守ろうと する。それは勝頼には自分を軽視する態度にしか思えなかった。 信玄を超えたい勝頼には耐えがたかった。 一方、秀吉は鉄砲3000丁の用意を信長に命令され、今井宗及とともに 大難題に取り組む。 鉄砲の重要性は武田も十分に分かっていた。しかし、武田も鉄砲を持っ ていたのだが、玉と玉薬が不足してしまった。武田に玉薬を供給してい た者たちを抑えられてしまったのである。 玉と玉薬が武田にあれば、戦いの帰趨はわからなかった・・。 敗戦と討ち死にを覚悟した宿老たちが勝頼を逃がそうと死地に赴くのを 見て、勝頼は宿老たちの想いを知る。 -------------------------------------------------- 内容紹介から 信玄亡き後、戦国最強の武田軍を背負った勝頼。 これを機に武田家滅亡を目論む信長、秀吉、家康。息詰まる駆け引きの 果て、ついに合戦へと突入する。 かつてない臨場感と、震えるほどの興奮! 待望の歴史長編! 最強武田軍vs信長・秀吉・家康連合軍!戦国の世の大転換点となった長
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野望の憑依者 | 足利幕府の陰の立役者で、悪逆非道と言われた高師直。
物語は闘犬をなにより好んだ北条得宗家・高時とのもとに行き、高師直が 連れて行った闘犬と高時自慢の闘犬が戦うあたりから始まる。 「力なきものは何も出来ぬ」「死ねば土に帰るのみ」 師直は後醍醐天皇の反乱を鎮めるために向かった足利高氏に、討幕を そそのかす。 以後は、史実に従ってどんどん展開してゆく。この作家の文は読みやすい ので歴史の知識を得るのにちょうどよい。 ただ、カスタマーレビューで評価があまり高くないのは、歴史の出来事を
それにしても、足利高氏(尊氏)を感情で生き、尊王の考えを脱しきれない
悪に生き、悪に死す―婆娑羅者・高師直、降臨。動
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★★★ |
さすがに伊東潤。
そんなに有名でない人物に焦点を当て、池田屋事件を描き切った傑作であ る。 これまでよくわからなかった宮部鼎蔵、吉田稔麿についてもかなり理解が進 んだ。 これまでは、新撰組の活躍する本を読むことが多かった。近藤勇、沖田総司 少人数ながら敢然と不逞浪士に立ち向かうという場面、喀血する沖田、剣 技が冴える近藤。 しかし、内実は違う。 宮部たち勤王志士たちは、捕縛された古高を救い出すか、京都の町に火事 を起こし天皇を動座させるか・・・過激な発言をする者と穏健派の者たち。 議論が白熱すると、刀を抜くことになる・・・それを回避するために、志士達の 刀を集めて階下に保管した。そのため、皆脇差しかなかったのである。 新撰組の密偵として志士に近づいた福岡は攘夷の熱に逆にまかれ、新撰
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昭和33年 高知県生まれ。土佐高校、奈良女子大卒。
イタリアのミラノ工科大学などで2年間デザ インを学ぶ。 デビュー作は児童文学「ミラノの風とシニョリーナ」 第15回柴田錬三郎賞 - 『曼荼羅道』(2002年) 第116回直木賞 - 『山妣』(1996年) 他著書に「死国」「狗神」「蛇鏡」「蟲」 |
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長編を延々と読んで一つの世界を知ることはできたが
感動があまりなかった。終末で山津波が起こるが、この後の展開には 消化不足が残る。破戒僧・映俊がしぶとく生き残ってしまうのも納得が いかない。 内容(「BOOK」データベースより) 大正中期、四国の隔絶された漁村に異国船が現れた。目的な高価な 桃色珊瑚。乱獲の結果、珊瑚は採れなくなって久しかったが、イタリア 人エンゾはあきらめずに海に潜り続ける。そんな彼に惹かれていく海 女のりんを幼なじみの健士郎は複雑な気持で見つめていた。やがて 採れないはずの珊瑚が発見されたことから、欲望にとり憑かれた若者 たちが暴走し始め…。直木賞作家の傑作伝奇小説。 |
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1966年、東京都生まれ。明星大学人文学部英語英文科卒。女流作家。・
市場調査会社に勤務の傍ら、インターネットで時代小説を発表。 2007年 「色には出でじ 風に牽牛」(『花合せ』)で全選考委員からの絶 賛を受け第2回小説現代長編新人賞を受賞し、作家デビュー。 著作に『泣き菩薩』『三悪人』『緋色からくり』『身をつくし』がある。 |
★★★
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これは面白い!!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ドキドキの痛快篇と言ったところ。 後に天保の改革で南町奉行となる鳥居耀蔵が水野忠邦とではなく、遠山金四郎 と組んで活躍するのも面白い。 この作家が女性であるというのは、案外知られていないかもしれない。 ------------------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 吉原を舞台に遠山・水野・鳥居の騙し合い!それは目黒祐天寺の火事から始ま った―若き遠山金四郎、水野忠邦、鳥居耀蔵、三つ巴の知恵比べが、花の吉原 で動き出す。『花合せ』で注目の著者が贈る時代長編! 騙されたら、騙し返せ。駆け引きこそが生き甲斐だ―。目黒・祐天寺の火事に隠
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★★★ |
安藤広重が八代州(やよす)河岸定火消同心という設定。
(広重は26歳まで実際にこの職にあった。26歳で祖父方の親戚の者に家督を譲 り、絵師となったのである。) 広重は絵を描く以外たいしたことはないが、幼馴染で同僚の西村信之介、 猪瀬五郎太とともにも「頼まれ火付け」の一味・狐火と戦う。 大柄で強力の五郎太、深謀遠慮、策士の信之介は広重のことを「重坊」と呼ん でいる。 江戸に頻繁に付け火らしい家事が起こり、三人は出火のあった寺を調べ始める。 上司で与力の小此木は剣の達人。最後に狐火の凄腕の浪人を倒す。 読みやすい文と量で、先へ先へとせかせられるように読むことができた。 「三悪人と」と同様、痛快な一篇である。 |
★★★ |
三悪人の続編。
遠山金四郎、鳥居耀蔵、水野忠邦が登場。手を取り合ったり、裏をかいたり。 今回は鳥居耀蔵の出番が多い。遠山金四郎は時折登場という感じ。 寺社奉行としての水野忠邦の起死回生の一手。それは大奥をも巻き込んだも のだった。その成功のために手を貸す鳥居耀蔵、料理番の彦六、そして遠山 金四郎の活躍する。 二本松大炊に面倒を見てもらったという、「小夜」も恩人の無念を晴らすために 立ち回るが・・・。 ------------------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 浜松藩では、幕閣での出世のために自ら願い出て転封した、藩主・水野忠邦打 倒の不穏な動きが起きていた。江戸上屋敷に、転封の際、諫死した二本松大炊 の幽霊が出るとの噂まで立っている。 そこで、金四郎と耀蔵は、忠邦のため一計を案じることにする。遠山金四郎、鳥 居耀蔵、水野忠邦、後に袂を分かつことになる三人が繰り広げる、好評『三悪人』 に続く、悪知恵を絞った化かし合い。 |
★★★ |
この作家の本は痛快無比。続きを読むのが楽しい。
さる藩の殿様に繋がる弥生は東慶寺から伯母の営む船宿に引き取られ、影の 仕事も請け負っている。 その裏稼業とは「とんずら屋」現代の「逃がし屋」である。 ・駈込 ・往帰 ・夜逃げ ・出戻 ・奪還 ・木戸破 後半は弥生を狙う家老の一派、別な思惑で弥生を付け回す二人組、謎の若旦 那・進右衛門が絡んで・・・。 ------------------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 借財がかさみ、首が回らない。亭主や奉公先の無体にこれ以上耐えられない。 そんな人は、回向院裏の『浜之湯』に祀られた小さなお地蔵様にゆくとよい。そう すれば「とんずら屋」が、舟で逃がしてくれるという―。 隅田川の船宿『松波屋』、一門で営む裏稼業。昼は船頭、夜は逃がし屋、その 正体は女性!?ヤバい奴ほど、恰好いい。痛快時代活劇。 |
ほそ道密命行 | 柳沢保明、水戸家の思惑が絡み、芭蕉と供の曾良の旅が危険にさらされると
いう設定なのだが、二人が狙われる背景がはっきりいない。 よくわからない背景のまま物語が進み、敵?が監視し、時には襲い来る。 芭蕉を殺せばどうなるというのか?? また、殺すのであれば、もっと手だれの 者を多数仕向ければ一気に片がつくと思えるのだが。 芭蕉隠密説はよく論じられるところであるが、この辺をシビアに描いてほしかっ た。 ------------------------------------------------------------ 内容(「BOOK」データベースより) 風のように漂泊したいという俳聖・芭蕉。しかし、旅の先々で五代将軍綱吉の側 用人・柳沢保明と水戸徳川家の思惑が交錯し、さらに東照宮普請にまつわり、伊 達家がからむ。まさに不穏な道中―。 |
清四郎よろづ屋始末
★★★ |
第一話 おふみの簪
清四郎はかつては奉行所の与力だったが、奉行の命で偽分銅の不正を訴え る。そのために主である奉行・榊は自刃。清四郎は町人となった。 よろづ屋を営む清四郎のもとに難題が持ち込まれる。 簪職人・平次は好きになった「おふみ」が平次の前から姿を消す。 おふみの好きだった桜の簪を作り続ける平次は、ある日相模屋の女中・おく めが、おふみにあげたはずの簪をつけているのを見つける・・・。 第二話 正直与兵衛 正直者の与兵衛は休んだ茶屋で、団子の包みを取り違え、一分金を 手にしてしまう・・・。 一分金の持ち主は赤子をつれた二人の侍だった。 第三話 お染観音 「みをつくし料理帖」にちょっとにたところがある。 煮売屋を営むお染。さまざまに味付けを工夫し、清四郎と与力の木暮の 心に染みる料理を作るのところが何とも言えない。 幼い娘を抱え、健気に明るく生きる姿も二人には気に入られている。 そのお染の過去が絡む話は、読み手に深い味わいと感動を与えてくれる。 |
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この作家の本は読みやすい。
人形浄瑠璃の一座に起こる出来事を、人形遣いや三味線、語りなどの役者の 立場や行動を中心に描いている。 特別な謎解きやどんでん返しはない。 上方からやってきた子供をつれてやってきた隠居風の正兵衛、その正体は? ------------------------------------------------------------- 内容紹介より 柄は大きいが気は小さい、若き紋下太夫の竹本雲雀太夫。二枚目役者も裸足 で逃げ出す色男、「氷の八十次」こと人形遣いの吉田八十次郎。江戸で流行り の人形浄瑠璃、木挽町は松輪座に、今日も舞い込む難事件。 人形浄瑠璃に人生をかける男たち。とびきりの「芸」で綴る、笑いと涙のお江戸
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おひとつ ★★★ |
和菓子の世界に浸れる一冊。
読後に、久しぶりに本舗菓子屋に行ってみようか・・そんな気になった。 父母が亡くなり、叔父に「百瀬屋」を追い出された晴太郎・幸次郎の兄弟は 父の弟子だった茂市のもとに身を寄せ、「藍千堂」という小さな菓子屋を営む。 叔父の執拗な妨害にあいながらも、桜など四季の香りを出せる菓子づくりに 取り組む。 ---------------------------------------------------------- 内容紹介より 大江戸スイーツ切り貼り屏風 小さな菓子所藍千堂を切り回す兄弟に訪れる様々な難問奇問。 季節季節の菓子に見立てて見事解決。時代人情話のお披露目でござい! 晴太郎、幸次郎兄弟が営む藍千堂から今日も飛び切りのお菓子がひとつ。 |
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1930年 東京生まれ 東大法学部卒。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
中小企業金融公庫、山一證券にて要職を歴任。 その後、経営コンサルタントとして奔走する傍ら小説を書き始め 75歳の時、「信長の棺」で作家デビューを果たした。 「秀吉の伽」「明智左馬助の恋」と続く「本能寺三部作」は文庫と 併せて150万部を記録。 このほか「謎手本忠臣蔵」「空白の桶狭間」「求天記」 「安土の幽霊」などの著作がある。 |
密書
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75歳という驚くべき年齢でのデビュー。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
自分の頑張ればできるかも・・・希望を抱かせてくれる。 --------------------------------------------------- 三つの短編からなっている。 ・蛍大名の変身 源氏の名門・京極家の当主高次。源氏の名門ではあるが、 今はいささか一万石の大名である。妹の龍子が秀吉の側室 となるが、その座も茶々がより脅かされている。やがて徳川 の世となり八万石となるが・・・・。 蛍大名と言うのは女の尻の光で出世することからつけられた。 ・冥土の茶碗 織田信長から柴田勝家に下された貴重な高麗茶碗。 この茶碗が勝家の生き様とともに語られていく。 信長の後継問題、しずが岳の戦い 勝家の自害・・・ 今この茶碗は根津美術館に青井戸茶碗「柴田」として伝わっ ている。 ・神君家康の密書 石田三成憎しで関が原の戦いで東軍に加担した福島正則。 秀吉の忘れ形見・秀頼を守るという起請文を書くという言質を 家康からとったのだが、起請文は一向に届かない・・・。 --------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 女房の尻の威光に縋る蛍大名と異名を取った京極高次。しかし 関ヶ原の勝敗は彼の籠城によって逆転した。 雲の動きが災いし、宿敵・秀吉軍が迫る北ノ庄城。信長下賜の 井戸茶碗でお市と茶席を設けた柴田勝家の最期の戦術とは。 東軍最強を誇る猛将・福島正則。強すぎるが故に家康に警戒さ れた彼は、ある賭けに出た。取引は呆気なく成功したが…。 戦国覇道の大逆転劇に与った三武将。歴史を変えた三つの落城 秘話。 |
空白の桶狭間
★★★ |
この作家の二冊目である。
高齢になってから小説を書き始めた作家ということで、強い関心を 持っていた。 桶狭間の戦いに新解釈を持ち込み、思い切った仮説のもとに前篇 を構成している。奇抜ではあるが、論理的に構成されていてとても面 白い。世情伝えられている「奇襲」は今川の細作が多方に配置され ているので不可能だったのではないかという作者の考えには共感で きる。 風雨が予想外に激しかったとしても、今川本陣に辿りつけるものだ ろうかと疑問は消えない。 それを打破するための信長のは別な動きをする・・・これは納得でき る。 背後で画策したのは木下藤吉郎であったというのも頷ける。 藤吉郎の蜂須賀との交わりや各地を放浪して情報活動に取り組む 姿も自然である。 徳川家康も信長を今川の本陣に入れるのに一枚かんでいるのだが、 後にはそのことに一言も触れていない。 信長像の描き方も納得できる。 |
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1955年 大阪生まれ 甲南女子大学文学部卒
コピーライターとして広告制作会社に勤務後独立。 2006年 大阪文学学校に入学し小説を書き始める。 「実さえ 花さえ」が初めて書き上げた作品で 第3回小説現代長編新人賞奨励賞を受賞した。 |
★★★ |
秀作である。読み手の心に染み入る温かさがある。・・・・・・・・・・・・・・・
この作家に出会えた幸運を喜びたい。 巻末に参考文献が26冊載っている。 丹念に描かれた作品である。 感動した本に追加した。 ---------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 江戸・向嶋で種苗屋を営む若夫婦、新次とおりんは、人の心を和ませる 草木に丹精をこらす日々を送っている。 二枚目だが色事が苦手な新次と、恋よりも稽古事に打ち込んで生きて きたおりんに、愛の試練が待ち受ける。 既にしてプロ級、と選考委員絶賛のデビュー作! |
★★★ |
朝井まかての二冊目。
知里がどうなるか、目が離せず読み進めるうちに読み終えていた・・。 「すか」は「はずれ」、「たん」は「たれ」。つまり、ミスや失敗ばかりするこ と。また、その人。 「まぬけ」にとってかわった語。「このおたんこなすの唐変木!」 -------------------------------------------------------- 内容説明より 江戸の饅頭屋のちゃきちゃき娘だった知里は、江戸詰め藩士だった夫の 大坂赴任にともなって、初めて浪速の地を踏んだ。急な病で夫は亡くなり、 自活するしかなくなった知里は、ふとしたはずみから、天下の台所・大坂で も有数の青物問屋「河内屋」に住み込み奉公することに。 慣れない仕事や東西の習慣の違いに四苦八苦し、厳しいおかみさんから 叱責されながらも、浪速の食の豊かさに目覚め、なんとか日々をつないで いく。 おっちょこちょいで遊び人ながらも、幻の野菜作りには暴走気味の情熱を 燃やす若旦那に引き込まれ、いつしか知里は恋に落ちていた。障害だらけ のこの恋と、青物渡世の顛末やいかに。書き下ろし長編時代小説。 |
★★★ |
明治時代の小説家、歌人であった三宅花圃(かほ)が師であった中島
歌子を入院先に見舞い、歌子の自宅の整理を手伝う。そして布紐で括ら れた奉書包みを見つけ読み進める・・。 そこに書かれていたのは、水戸藩士に嫁いだ水戸藩御用達宿「池田屋」 の娘・登世の人生だった。 この本は、樋口一葉とともに、中島歌子の弟子であった三宅花圃が語る ような形で書かれている。 登世の夫となった林忠左衛門は水戸天狗党として、諸生党との内紛を戦
旅行で福井・敦賀に行ったとき、パンフレットに「武田耕雲斎像」
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★★★ |
前半は、盲目の娘・おあいからみた西鶴が描かれるが、娘は父を全く評価
していない。母の死にも嘘涙を流して、実際は家族を顧みていない。 弟二人を養子に出して後顧の憂いなく俳諧に打ち込む・・・そんな父が許せ ないのである。 父との確執がありながら、母から教わった家事をこなしていくおあい。 要領が良く、あまり働かないが憎めないお玉とともに。 日常の淡々とした描写と西鶴に対する偏った記述のオンパレードのように 感じて・・・途中でもういいかな・・・とリタイアも考えたが最後まで読んでしま って良か った。 中盤から、西鶴の創作への悩み、娘への想いが次第におあいに理解され
おあいが亡くなり、西鶴も翌年亡くなる。この親子の永年の想い、生き方を
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★★★
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この作家。
本当に味のある本を書く。 国禁を犯して日本地図をじ国に持ち込もうとしたシーボルト。 シーボルトはもともとドイツ人であったらしいのだが、日本の情報を仕入れる ために、阿蘭陀商館に入り込んだらしいという話もある。 シーボルトが日本の内情を知り、本国に報告する職務を追っていたのは確 かなようだ。(シーボルトを密告したのは間宮林蔵ではないかという説もあ る。) シーボルトのために、処刑されたり罰を受けた者は多い。 そんなシーボルトの素晴らしい一面を切り取って描いてくれたのが本作。 植木商の下働きだった熊吉は、職人のだれもが出島に行くのを渋ったため 一人前の職人として、シーボルトのところにまわされた。 植木の知識が少ない熊吉だったが、シーボルトの意に沿うように不断の努 力を続ける。 シーボルトは多彩に花を咲かせる日本の自然をこよなく愛する。 そして、いつしか、素晴らしい花々をオランダに根付かせられないだろうか と考えるようになる。 熊吉は日本の良さを認めてくれるシーボルトを尊敬し、何ヶ月もかかる阿蘭 陀へ、枯らさずに届けるための工夫に邁進する。 シーボルトのもとに身請けされ、妻となった女も、興味深く描いている。
西洋に日本の草花を根づかせたい。長崎の若き職人がシーボルトと共に伝
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秀作ではあるが、ちょっと物足りない。
文の切れがないのかも。 緊迫感と史実に対する考察が少ないのが難点。(参考文献は13冊もある。) 亡き父の親戚・三兵衛も最後までひょうきんなままで終わるのももったいな い。 尾張藩士・榊原小四郎は書類をきちんと作成したり、金の計算をしたりでき
松茸とれなきゃクビ!?頭の切れる若き藩士が、御松茸同心に飛ばされた!殿
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1967年 兵庫県生まれ 早稲田大学卒業
京都造形芸術大学準教授。 読売新聞記者、NHKディレクターを経て。 2000年「無頭人」で第11回朝日新人文学賞受賞。 |
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時代背景を丹念に描き、人買いと吉原、心中へと焦点を当てている。
作者渾身の一作なのだろうが、救いようのない世界が描かれていて 読後感がよくない。 ------------------------------------------------------ 内容(「BOOK」データベースより) 幼い頃、江戸に売られてきた平太とお七。大川橋での別れから十余年、 平太は奉納相撲で江戸中を沸かせる強力に、お七は将来吉原を背負って 立つと噂される花魁=司となっていた。 春、人買い上がりの豪商・弥平による花見の席で、司の放ったひと言が 弥平の逆鱗に触れる。この女を丸裸に剥いて内奥まで貫き、打ち震えさせ、 屈服させたい―激情にかられ、弥平はしきたりのすべてを踏み越えて司を 我がものとする。 しかし、お七の心は決して思うにまかせない。そしてある夜、お七は平太 とともに、江戸から、弥平の元から消えた―。 |
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1948年 山形県酒田市生まれ 千葉大学工学部卒業
京都造形芸術大学準教授。 読売新聞記者、NHKディレクターを経て。 1999年 「超高層に懸かる月と、骨と」で第38回オール読物推理小説新人賞受賞。 2004年 「夏の椿」(原題「天明、彦十店始末」)が松本清張賞の最終候補となり。 2007年 「蒼火」で第九回大藪春彦賞を受賞。 2009年 逝去。 |
花晒し (はなざらし) ★★★ |
この作家に出会えた幸運を喜びたい。
亭主が亡き後、翁稲荷の元締となった・右京は、先代の一の手下・歳三 、死んだ姉さん芸者の恋人であった小向弥十郎の助けを借りて町内のも め事を解決する。 ・秋の蝶 姉さん芸者の墓参りに出かけた右京は、会いたくない男 桧垣と 会ってしまう。 ・花晒し 内の若い娘たちが神隠しに・・・。 ・二つの鉢花 櫛屋のの店先には折々の鉢物が置かれている。その櫛屋の強 情な主・九蔵が桂屋に騙され借金を負う。 ・稲荷繁盛記 霊験あらたかな稲荷神社に仕立てあげる見事な仕掛け・・・。 ・恋の柳 息子の小五郎を育てながら、寺子屋の師匠をしている千 嘉は 女好きの久太郎に想いを寄せそうになる。 後半二編に右京は登場しないが、長屋を舞台に起こる事件や暮らしが 描かれている。 秀作である。(感動する本に追加) |
白疾風 ★★★ |
この作家の本はテーマが素晴らしい。
伊賀の忍者だった「疾風の三郎」は、戦国が終わり、徳川の時代になって から、かつて助けた娘と夫婦になり、水田を開拓して平穏に暮らしている。 だが、後にやってきて一緒に村を作り上げてきた村長・土屋平蔵(甲府の 出)が埋蔵金の在り処を記した図面を持っているという噂が流れ、風魔の 一党が村を襲う。 平和な日々を送る元伊賀忍者の心情、村を守るための決意。 人の世の生き様を考えさせる、現代にも通ずる指標がある秀作。 戦火に焼かれた人々を目にして生きる希望を失った娘を妻とし、夫婦で助 け合う姿、村を侵す者に敢然と立ち向かう姿・・・感動を誘う。 ------------------------------------------------------ 内容(「BOOK」データベースより) 待望の書き下ろし。時代ミステリーの面白さはここにある! 金脈に埋蔵金!? 武蔵野の谷の村が何者かに狙われる。 かつて伊賀の忍びとして活躍した三郎は、自分の村を守るため村人と共 に戦う。 |
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60歳を迎えた主人公が昔を振り返るという設定で始まる。
自分の昔とは随分違っているのだけれど、なぜか当時を懐かしみながら、 一気に読ませられてしまった。 私たちの世代には必読の一冊かもしれない。 新聞配達店に住み込んで、予備校や夜間大学に通った者が身近にもい た・・。 新聞配達の地域にすむ高校生のサキへの想いもわかる・・。 ------------------------------------------------------ 内容紹介・内容(「BOOK」データベースより) 生きることも、働くことも、こんなにまっすぐだった。 昭和41年の東京下町。山形・酒田から出てきた受験浪人生の康夫は、生
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★★★
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江戸の町が造られていく過程や、江戸に集まってきた来た人たちのいきさ
つ、暮らし、成功談など、庶民目線で描いている。 藤沢周平のように、読者を物語の中に自然に惹き込んでくれる。 しっとりとした読みやすい文である。 ・日照雨(そばえ)
名も無き男の人生だろうが、この手で拓いた人生だ。もはや死に場所など
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1945年 広島県生まれ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1998年 「もぐら」で第16回大阪女性文芸賞佳作 2000年 「母の背中」第34回 北日本文学賞選奨 2003年 「小日向源伍の終わらない夏」で 第10回九州さが大衆文学大賞・笹沢左保賞受賞 他の著書に「鶯の墓」「秋の蝶 立場茶屋おりき」など |
美作の風 | 津山藩と一揆のことを調べて書き上げた一作なのだが・・・。
津山藩の譜代の家臣・圭吾は、大庄屋の娘・美音を妻としている。 形は武家の養子としたものの農民の娘を嫁にしたことで、姑の於 里久は美音に辛く当たる。圭吾は勘定方から郡代預けとなり、農 民を取り締まる役に付く。折しも藩の年貢米の取り立てが厳しくな り、農民の不満が高まる。 やがて、徳右衛門や弥治郎を中心に多数の農民が集結する。徳 右衛門達の願いは新しい農民の国を作ることだった。しかし、それ は叶えられるはずのない高望だった。 過酷な藩の仕置きに翻弄される圭吾・・・。 この話、一揆を中心としたものと考えると中途半端な気もするし、 圭吾や友だった草間惣介、逢坂、妻の美音の生き方を描いたとし たら物足りない。女流作家の良さが表れている分、思い切った切 り込みがない。 |
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1948年秋田生まれ。武蔵野美術大学卒業。東北大学大学院修士課程修了。
三菱重工業に入社後、13年半のOL生活を経て、1988年 脚本家デビュー。 テレビドラマの脚本に「ひらり」「毛利元就」「週末婚」「私の青空」「昔の男」 「白虎隊」「塀の仲の中学生」など多数。 1993年 第1回橋田賞、1995年 作詞大賞、2011年モンテ・カルロテレビ祭で 三冠を受賞。 2000年9月より女性は角横綱審議委員に就任。2010年任期満了により退任。 2011年4月東日本大震災復興構想会議委員の就任。 他の著書に「エイジハラスメント」 「二月の雪、三月の風、四月の雨が輝く五月をつくる」など多数 |
十二単を着た悪魔
★★★ |
これは面白い
タイムスリップして、平安時代に紛れ込んだ「雷」 しかも、源氏物語という設定されたような世界。 ここでの生活は雷の思考や行動が、これまでにないほど積極的で 人にも頼られるようになる。 雷の眼と行動を通して、源氏物語の世界を描くという視点も良い。 この作家は横綱新審議員として知っていたが、作家としてなかな かのものであると今頃気づく。 豊富な参考資料を読みこなし、史実を徹底的に重視しながら、砕け た調子で描く源氏物語の世界は、この上なく面白い。 この物語の中心を「弘徽殿の女御」にしている点も斬新で面白い。 考えてみれば、光源氏は本当に女に奔走である。精神的な障害も あるのではないかと思ってしまう。この光源氏と兄の一宮(後の朱 雀帝)の関係を雷は弟の「水」と重ね合わせて捉えている。 最終章 現代に戻った雷は・・・。 ---------------------------------------------------- 内容紹介より 日本では、千年前から男は情けなく、そして女は強かった……。
そんな時、弟の水が京大医学部に現役合格したとの知らせが入る。
雷は、アルバイト先で配られた『源氏物語』のあらすじ本を持ってい
人間の本質を描き続けてきた内館牧子が描く、本家本元よりも面白
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1921年 大阪市生まれ。明治大学専門部文芸科。
1953年 「喪神」で第28回芥川賞を受賞。 柳生連也斎、 剣法奥儀 柳生武芸帳などを発表。 クラシック音楽・オーディオの評論家でもある。 「五味手相教室」「五味人相教室」「五味マージャン教室」などの著作もある。 交通事故を起こし有罪判決を受けるなど、多彩な人生を送る。 1980年 死去。 |
★★★ |
丹下典ぜんが紀伊国屋文左衛門、堀部安兵衛等と知り合い
赤穂浪士と関わっていくあたり、中盤でクリア。 次の予約の本が入ったこと、NHKのテレビでこの話の結末を 見てしまったので・・・。 それにしても、一昔前の作家は凄いと思う。
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1959年 大阪府生まれ。大阪歯科大学卒業。歯科医。
1997年 「身代わり吉右衛門」が小説CLUB新人賞佳作。時代小説を中心に活躍。 2009年 「奥右筆秘帳シリーズ」が「この文庫書き下ろし時代小説がすごい!」の 第1位に選ばれる。 2010年 「孤闘 立花宗茂」で中山義秀文学賞。 主な著書に、「天主信長、我こそ天下なり」「日輪にあらず 軍師黒田官兵衛」 「大奥騒乱 伊賀者同心手控え」など 死ぬまでに100冊本を書くことを目標としているとのこと。 |
宇喜多四代
★★★ |
これは凄い。
この作家とめぐり合えたのは嬉しい。 豊臣政権の5大老であった宇喜多秀家についてよくわからなら なった。徳川、前田、上杉、毛利は歴史上有名であるが、宇喜 多がどこからどのように出現したのか。 この本は秀家の父・直家の生涯を描いている。 備前を治めていた浦上家の家老だった祖父が討たれ、路頭に 迷った少年時代から、備前一国を支配し、秀吉の与力となるま での権謀術数の数々・・・。戦いに明け暮れてて年月。 それらが、この作家によって実に分かり易く描かれている。 とにかく読みやすい。 これは何故だろう。 段落を短く切る。会話を多くし、読み手を人物に同化させる。 場面の切り替えが適切・・・。 いろいろ考えられるが、とにかく読み手に隙を与えず読ませる。 こんな本に久しぶりに出会った。 つづけて次作を読んでみたい。 ------------------------------------------------ 内容紹介より 天文三年(1534年)、備前・砥石城へ浦上家の重臣・島村宗政の 軍勢が押し寄せてきた。守勢は、もう一人の重臣・宇喜多能家。 一時は主家をしのぐ名声を得た能家であったが、8年前に中風を 患い隠居の身となっていた。戦陣にも立てない能家は籠城を諦め、 息子・興家と孫の八郎を城から落ち延びさせることを決意する。 能家最期の抵抗の間に城を脱出した興家親子の、食うにも事欠 く放浪の旅がはじまった。追手を避け一時は旧師の寺を頼り、そ の後は備前福岡の豪商の家に親子で身を寄せる。 能家の敵討と宇喜多家再興を果たせぬうちに、興家は商家の娘 を後妻にもらい、義母と折り合いの悪い八郎は商家を飛び出す。 近くの寺で過ごすうちに月日が流れる。 父・興家は商家で亡くなり、毛利氏や尼子氏の跋扈する中国地 方の情勢も風雲急を告げ、直家と名を変えた八郎は旧主・浦上宗 景に召し出される。梟雄・宇喜多直家が踏み出した最初の一歩だ った |
女城暗闘 ★★★ |
これは面白い。
妾屋という設定もユニークだが、妾を世話することで、大家や高 禄の武士との繋がりを持っているというのもに何となく納得させ られる。二人の用心棒、大月、山形の助けをかりて持ち込まれ る難題を解決していく、痛快物である。 この本では、大奥の問題解決に至っていないので続編で明か されると思われる。 ------------------------------------------------ 内容紹介より 大奥に将軍家斉の子を殺めた輩がいる……。小姓組頭・林出羽 守は獅子身中の虫を炙り出すべく、大奥を探る女を用意せよと妾 屋昼兵衛に厳命。 白羽の矢が立ったのは仙台藩主の元側室・八重。だが、かつて 体を張って彼女を守った大月新左衛門も場所が大奥では何もで きぬ。女の欲と嫉妬が渦巻く大奥で八重の孤闘が始まった。 読む手が止まらぬ第4弾! |
我こそ天下なり ★★★ |
これは良かった。
一気に読ませられた。この作家の文は実に読みやすい。 織田信長についての知識はある程度あるので「歴史をおさらい」 するような感じでどんどん読み進めたのだが・・・。 後半、「これは!!」という展開。 光秀による本能寺の変、秀吉の中国大返し、これを斬新な解釈 で描き切って見せる・・・これは面白い。 さもありなん・・・と思わせるのも凄い! 信長の思い切った博打?は成功するのか。 竹中半兵衛の知力と、志半ばに倒れる姿が心に残ります。 また、今、大河ドラマになっている「軍師官兵衛」についての記載 多い。(この本の主役かとおもう場面もある。) ----------------------------------------------- 内容紹介より 神になりたかった信長 天皇の地位を簒奪し、東アジア征服を企 図していたといわれる織田信長。だがその野望はさらに大きく、 神となって世界に君臨しようとするものだった。骨太歴史長編 数万の一向宗徒を殲滅。武田を滅ぼし、北陸から上杉、中国の
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奥右筆秘帳 ★★★ |
これは面白い。
「この文庫書き下ろし時代小説がすごい」のベストシリーズ第一位 に輝いたというのもわかる。 奥右筆としての立花併右衛門の毅然とした態度。仕事を全うしよう とする行動が心強い。 右衛門を守る隣家の剣豪柊衛悟の活躍も光る。 ----------------------------------------------- 内容紹介より 天明(てんめい)の飢饉(ききん)に苦しんだ津軽藩(つがるはん)から の石高上げ願いに、奥右筆組頭立花併右衛門(おくゆうひつくみが しらたちばなへいえもん)はロシアとの密貿易を疑う。 国是である鎖国を破り、利権を握らんとするのは誰か。幕政の闇に 触れる併右衛門を狙う者は数知れず。 愛娘瑞紀(みずき)が伊賀者(いがもの)に攫(さら)われ、護衛役の柊 衛悟(ひいらぎえいご)と救出に向かうが!? 緊迫の第二弾!<文庫書下ろし> |
奥右筆秘帳 ★★★ |
秋田・新玉川温泉に宿泊したが、ホテルの図書室に単行本や
文庫本がたくさんあった。時代物も、いろいろな作家のものが あった。 このシリーズは同じ設定で12冊出ている。 史実をある程度踏まえて書いているので深まりもある。 この作家は現役の歯医者さんというのも面白い。 ----------------------------------------------- 内容紹介より 一族との縁組を断り、松平定信を敵に回した立花併右衛門。 だが愛娘瑞紀は、なんと縁談相手の旗本家に掠われてしまう。 それでも定信は、将軍家斉(いえなり)の暗殺未遂事件の黒幕探し を併右衛門にあえて依頼する。 併右衛門をかばい手裏剣を肩に受けた衛悟に殺到する刺客たち。 人気爆発シリーズ白熱の第七弾! |
御広敷用人
★★★ |
上田秀人の本は痛快にして面白い。
温泉で寝転がりながら読むのに最適。 このシリーズ…1〜3と続編もぜひ読んでみたい。 御広敷用人・水城聡四郎は商家の娘を嫁にもらうが、これがなんと 将軍吉宗の養女になってからの嫁入り。聡四郎が紀伊にいた時か らの吉宗との付き合いがあったためである。聡四郎の勤め・御広敷 用人は将軍のそばに控えるがとりわけ信任が厚い。 大奥と対立する吉宗は紀伊からお庭番を入れたため、伊賀者から も快く思われていない。 聡四郎は吉宗の命を受け、手練の家臣とともに戦う。 ----------------------------------------------- 内容紹介より 将軍・吉宗による登用で御広敷用人となった水城聡四郎。 しかし、具体的な担当はなく無任所のままだった。そこへ吉宗から 直々の命が下り、竹姫付きとなる。竹姫には京都から新たなお付き の女中がくるが、その女中が大奥の火種となる―。 一方、伊賀者を敵に回した聡四郎を新たな刺客がつけ狙う。 聡四郎に最大の危機が。 |
お髷番承り候5 |
将軍家綱を巡る争い。
史実にはほとんど登場しないが、由比正雪事件にかかわった紀州 藩主頼宣は戦国時代を経験した最後の武将として将軍職を欲して いる。さらに家綱の兄弟である、綱重、綱吉が絡む。 頼宣の息子・光貞は50代になりながら未だ藩主になれず・・。 次期将軍の座を巡る争いは面白い。 ただ、この一作は惰性に流れた感じがする。 ----------------------------------------------- 内容紹介より お髷番深室賢治郎は絶対的な忠義を誓う4代将軍家綱から目通りを 禁じられてしまう。麹町で起きた浪人衆惨殺事件を報せず、逆鱗に 触れたのだ。だが、そこには紀州藩主頼宣の関与があった。 将軍であろうと迂闊に手出しできぬ難事。 賢治郎は事の真相を探る。 待ち受けるは次期将軍を巡る陰謀。次々にに襲いかかる黒鍬者、 根来者を討ち破り、家綱の信頼を取り戻せるか、孤独な闘いが始ま る! |
(ほうすうのゆめ) ★★★ |
伊達政宗の一代記。
政宗についてはこれまで他の本で読んだことがあった。 また、NHK大河ドラマになった時は欠かさず見たので、蘆名や周辺 小大名との戦いなども大体わかっていた。秀吉の待つ小田原に遅参 するいきさつ、その後の振る舞いも。 そういった知識を思い起こしたり、新たな解釈を得たりして興味深く読 み進めることができた。 宇和島の初代藩主となった政宗の長男・秀宗、幼いころから秀吉の もとに人質として出され「表裏者の息子」と言われ鬱屈した半生を送っ てきたが政宗と初めて胸襟を開いて話し合う場面は心打たれる。政宗 は秀宗の想いを初めて知り、心から詫びるのである。 正室・愛姫との初めの3年の不和など・・・。 政宗のもとを片時も離れず、常に先を見据えて的確な進言をしてきた 名軍師・片倉小十郎、小さな神社の神官の次男だった小十郎が政宗 に使えるようになったのは姉が政宗の乳母になった為である。 以来、政宗は師と仰ぐ禅僧・虎哉宗乙と小十郎によって奥州の雄とな っていくのである。 やがて、天下は家康のもとで定まり、小十郎は病床に。 小十郎を見舞った政宗は「奥州制覇」と書いた紙を渡す。2人の、また 伊達藩士達の夢だった・・・棺桶に入れて持って行けと・・・。 ここを読んで涙が出そうになった。 東北人の一人として、伊達に天下をとってほしかった・・・。 ----------------------------------------------- 内容紹介より 奥州制覇――吾の夢に、そなたは要る。伊達政宗一代記。 戦国乱世――初陣から人取り橋の戦い、摺上原の合戦、小田原参陣、 大坂冬の陣・夏の陣、と乱れ行く戦国を、寵臣・片倉小十郎との熱き絆 で生き切った伊達政宗の生涯を描く、感動巨編。 |
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1959年 長野県生まれ。
西洋史への深い造詣と綿密な取材に基づく歴史小説に定評がある。 フランス政府観光局親善大使を務め、現在フランス観光機構(AF)名 誉委員。パリに本部を置くフランス・ナポレオン史研究学会の日本人 初会員。 著書に「皇帝ナポレオン」「マリー・アントワネットの生涯」「いい女」
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会津の桜
★★★ |
歴史物は取り掛かりが億劫なところがある。読み進めてからも、くどい文
が並んでいると途中で投げ出しそうになる。 この本にはそれがない。 フィクションは入っているが史実も丹念に追いかけている。 それなのに読み手を惹きつけて離さない。 素晴らしい作家の一人である。 主人公の八重と大川大臓を交互に書き、会津を追われた者たちの、それ ぞれの生き方を描き出して見せる。家老として藩士や民を引き連れて最北 の地・斗南に向かう大臓。片や八重は主のいない女家族とともに米沢へ。 朝敵となった会津の人々の行く手には艱難辛苦が待ち構えていた。 しかし、やがて西南戦争に巡査として徴用され、かつての恨みを晴らす会 津武士たち。 政府の役人に取り立てられ自分の居場所を見つける者たち もいる。 会津を陥れた維新の元勲にも生涯の終末がやってくる。 木戸孝允の病死、西郷隆盛の自刃、大久保利通の暗殺。 会津の人々にとって恨みは果たされたが・・・。恨み・汚名、それらは新しい 世界で、自分たちの力を発揮することによって晴らされていくものではない か・・・この言葉に真実があるように思えた。 会津を人々に理解を示し新政府の腐敗を訴え反乱を起こした江藤新平、大 臓を抜擢した谷干城なども登場する。 大河小説を読み終えた気分がする。 中央公論の紹介文が的を得ているので引用させていただく。 -------------------------------------------------------- 内容紹介より抜粋(中央公論新社 渡辺千裕) 本書は『幕末銃姫(じゅうき)伝』(中公文庫)の続編にあたり、会津落城後 の八重を描いている。元号が明治と改まった1868年、会津藩士たちは各地 に散る。 やがて八重も京都府顧問の地位を得た兄に誘われ、運命に導かれるように して京都へ。将来の夫となる新島襄(じょう)と出会い、同志社英学校の設立 に奔走する?というところまでは、多くの人もご存じかもしれない。 だが、著者は英学校設立までのプロジェクトと並行して、女性として結婚の 悩みに直面する八重の姿を描く。ある男性への振りきれない恋心の顛末(て んまつ)、西南戦争勃発に再び銃を手に取って戦地に向かうなど、史実から 想像の翼をはばたかせた藤本さんの筆が光る。 |
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1954年 静岡市生まれ。 上智大学文学部英文科卒。
外資系企業勤務を経て 1996年 「眩惑」でデビュー。 2003年 「其の一日」で第24回吉川英治文学新人賞 2007年 「奸婦にあらず」で第26回新田次郎文学賞 2012年 「四十八人目の忠臣」で第1回歴史時代作家クラブ賞作品賞 著書に「狸穴あいあい坂」「恋かたみ 狸穴あいあい坂」 「幽霊の涙 お鳥見女房」 「花見ぬひまの」など多数ある。 |
狸穴あいあい坂 ★★★ |
穏やかな、しっとりした江戸情緒と、旗本下級武士と家族の心根が伝わっ
てくる一冊。 乙川優三郎・海老沢泰久・宇江佐真理等の作家に通じるものがある。 結寿を中心とした7つの短編集。 御手先組から無役の御小普請に格下げになってしまった夫・万之助は 身籠った結寿を離縁しようとする・・・。 最終章の「夫婦」での結寿の決意と生き方が読み手の心を深く捉える。 この本は「狸穴あいあい坂」「恋かたみ 狸穴あいあい坂」の続編と思わ れる。機会があれば、この2冊も読んでみたい。 -------------------------------------------------------- 内容紹介より かつての想い人への恋情を胸に収め、夫・万之助との平穏で温かな日々を 過ごす結寿。 平穏に過ごしていたが、居候の老女のもとへ親戚を名乗る大男が転がり 込むが…。 人気時代連作シリーズ最新作。 |
お鳥見女房 |
大きな事件も起こらず、謎をはらんだ筋立てでもない。
身のまわりに発生する難事を、それなりに解決していく・・・という話。 しかし、この作家の文体は何だろう。知らないうちに半分を読ませられてい た。そして終末。読後感は悪くない。 -------------------------------------------------------- 内容紹介より 主が家督を譲り、“お鳥見女房”も引退することに。が、珠世を頼る者は引き も切らない。大人気シリーズ最新作。矢島家はおめでたつづきだった。お鳥 見役のつとめで遠国の密偵に出た嫡男は命からがら戻り、不妊だった嫁は 懐妊、長女も初子に恵まれた。が、来る者は拒まずで、誰でも受け容れる珠 世には、倫ならぬ恋や夫婦、親子の不和、不幸せな境遇ゆえに犯した罪の 解決など難題が持ち込まれる……。 知恵と慈愛に満ちた、円熟の連作短篇。 |
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作者は義仲を敬慕した芭蕉の墓が、巴御前、義仲とともに義仲寺にあるの
を知り、この物語を書いたという。 芭蕉が郷里の伊賀上野でも江戸でもなく大津の義仲寺を永眠の地に選んだ わけを、近江の女流俳人・河合智月(智月尼)との心の交流に絡めている。 女流作家だからだろうか。淡い恋の体裁をとって、延々と芭蕉と智月尼の交 流を描いている。同じような場面、同じような二人の心根が何回も描かれて いるという印象が強かった。 むしろ関心があったのは「巴御前」だったので余計にそう思ったのだろう・・。 巴御前が義仲と一緒に戦死したのではなく、別れて落ち延びたらしいといわ
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高知県生まれ。立命館大学文学部卒。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
小松左京主宰の「創翔塾」を経て、執筆活動に入る。 時代小説の名手として読者の熱い支持を受け、精カ的に作品を発表。 累計部数は300万部を超える。 代表的なシリーズにNHKドラマとなった『藍染袴お匙帖』『隅田川御用帳』 『橋廻り同心・平七郎控』『見届け人秋月伊織事件帖』 『浄瑠璃長屋春秋記』『渡り用人片桐弦一郎控』などがある。 (新潮社 著者一覧から引用) |
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これは人情話ということであるが、いま一つ、感動がほしい。
市井の不条理、うまくいかないこと、すれ違い・・・。 いろいろあるのだろうが、「それがどうなるのか」というのが大事なのである。 読者は現に生きている。悩みも多い。 その読者に「進むべき道筋」を示してくれるのが読書であると私は思っている。 ・百年桜 ・霞切 ・山の宿 5編あるのだが、3編を読んだところでクリア。 -------------------------------------------------------- 内容紹介より 真実を知るために、恋しい人に会うために、人は運命の川を渡る。新兵衛の 店に押し入って来た賊は、覆面から見覚えのある目を覗かせていた。満開 の百年桜の下で別れた幼なじみの伊助。義兄弟の誓いを立てた俺たちの 再会は、こんな形で叶うというのか――。 「書下ろし時代小説の女王」が田川の渡しに託して描く、五人の男女の切な い人生模様と新たな一歩。 おとなのための人情時代小説決定版。 |
橋廻り同心
★★★
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この作家への評価が一変した。
江戸のいろいろな橋を紹介しながら人情ものに仕立て上げる、その手法が 素晴らしい。 ・桜散る
・迷子札
・闇の風
・朝霧
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夜明けの雨・・聖坂・春
言い交わした女がいながら、奉公先の娘との縁組をした吉兵衛。好きだっ たおまつ女郎に身を落としていることを知る。商売もうまくいかず吉兵衛は 自分の行く末を模索する。 ひょろ太鳴く・・鳶坂・夏
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紅染の雨 ★★★ |
温泉で読んだ。
この作家。当たり外れがある。 短編よりはシリーズものの方が登場人物の情愛が現れてよい。 -------------------------------------------------------- 内容紹介より 武家を捨て、町人として生きる決意をした清七郎改め清七。与一郎や小平次 らと切り絵図制作を始めるが、絵双紙本屋・紀の字屋を託してくれた藤兵衛か ら、世話をしているおゆりの行動を探ってくれと頼まれる。 男と会って金を渡しているおゆりを見て動揺する清七だったが。 江戸の風景を活写する人気書き下ろし時代小説第二弾。 |
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1954年 埼玉県生まれ東京女子大学文理学部史学科卒業。
1977年 婦人画報社に入社する。 1980年 退社。7年間アメリカで暮らす。帰国後は建築関係 ライターとなる。 2003年 「桑港にて」で第27回歴史文学賞を受賞。 2005年 「三人の妾」で小学館文庫小説賞優秀作品入選。 2009年 「群青 日本海軍の礎を築いた男」で第28回新田次郎 文学賞を受賞 「彫残二人」で第15回中山義秀文学賞受賞。 |
★★★ |
感動大作である。
「医」のために邁進した人物の一生を生々しく描いている。 出産という、妊婦の苦しみと、人間の誕生、感動が直に伝わってくる周作である。 より多くの人に読んでほしいと思った本である。 -------------------------------------------------------- 内容紹介より 命の数だけ、生きていく意味がある。 出産が命がけだった時代、死産の際に、苦しむ産婦を楽にし、母体を救う「回生 術」をあみだした賀川玄悦の生涯。 独学で医術を学んだ玄悦には、わからないことが山のようにあった。赤ん坊はど こから出てくるのか。胎児は十月十日、頭を上にしているのだろうか。…… 不思議に思い始めると、きりがない。西洋医学がほとんど紹介されていない江 戸中期に、世界に先駆けて胎児の正常位置を発見した賀川玄悦の偉業は、 医学史の中で、燦然と輝いている。書下ろし長編小説。 |
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1923年 東京生まれ
戦後を代表する時代小説・歴史小説作家。 「鬼平犯科帳」「剣客商売」「仕掛人・藤枝梅安」「真田太平記」など、 戦国・江戸時代を舞台にした時代小説を次々に発表する傍ら、美食 家・映画評論家としても著名。 1957年 「錯乱」で第43回直木賞
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春の嵐
★★★ |
初めて読んだが、この作家の本は面白い。
剣の立ち会いの他に、人情や温かい料理が入り読者に多彩な読後感を 持たせてくれる。 剣客商売シリーズは続けて読んでみたい。 引退し、孫ほど年も違う「おはる」と鐘が淵の隠宅に暮らす秋山小兵衛の
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1922年 兵庫県生まれ
「魔界転生』や忍法帖シリーズに代表される、奇想天外なアイデアを用い た大衆小説で知られている。 「南総里見八犬伝」「水滸伝」をはじめとした古典伝奇文学に造詣が深く、 それらを咀嚼・再構成して独自の視点を加えた作品を多数執筆した。 幕末、明治を題材にしたもの、推理小説、時代小説も手がけた。 |
★★★ |
この作家は多彩である。
忍者ものとお色気ものを書く作家だと思い込んでいたがこの本を読んで、 評価を一新。 時代ものを史実をもとに各筆力が素晴らしい。 図書館にある、「正統もの?をいろいろ読んでみたい。 幕末妖人伝
ヤマフの逃亡
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できる殺人
★★★ |
この作家は凄いと思う。
昔、忍法帖シリーズをちょっと読んだときはお色気ものを書くだけの作家だと 思ったのだが。 6つの短編を繋ぐ緻密なネタと構成は素晴らしい。 かなりおどろおどろしい世界である。伝奇的な雰囲気が漂う。 それでも読まずにはいられない・・読んでみると思ったほど怖くもない・・。 -------------------------------------------------------- 内容紹介より アパート「人間荘」16号室の押入れから一冊のノートが発見された。そこには、 その部屋に住んだ代々の住人が書きついだ人間観察、人間荘で起きた6件の 犯罪―錯覚による殺人、出来心による殺人、善意による殺人、怠慢による殺 人、正当防衛による殺人、口ふうじのための殺人―の記録が綴られていた。 何故に、ひとつのアパートを舞台に住人たちの間で連鎖犯罪が起きたのか? その背後には恐るべき真実が…。 |
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1960年 福岡市生まれ 東京デザイナー学院九州校卒業。
漫画家、漫画原作者、映画監督、脚本家、小説家。 『狂犬ブギ』で少年ジェッツ第1回新人まんが賞佳作入選。
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両親から捨てられ、育ててくれた(大店を営む)養母ともそりが合わず、
旅に出た捨吉は死に行く男から「石松」という名前をもらう。森の石松の 誕生である。 この石松がヤクザの争いやいざこざに巻き込まれ立ち回る。痛快物。 登場人物の人間性や生き方を深く考えず、軽く読めた。 清水一家のことは出てこない。 孤児をたくさん引き取って面倒をみる黒駒の勝蔵が、大岩・小岩を引き連れ 次第に大親分になっていく・・。黒駒の勝蔵は悪役と思っていたが、ちょっと 見方が変わった。 -------------------------------------------------------- 内容紹介より 盗まれた名刀・池田鬼神丸を巡り、男たちの生き方が衝突する。森の石松、 黒駒の勝蔵、法印大五郎、武居の吃安……。時は嘉永六年。 鬼才・木内一裕が書き下ろす新・講談、“幕末侠客伝”が現代に浮上する。 売られた喧嘩は必ず買う。度胸だけを頼りに己の信じた道を進むだけ。
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1977年 京都府生まれ。同志社大学文学部文化史学専攻卒業。
大学院も修了。 2011年 「孤鷹の天」で第17回中山義秀文学賞を最年少受賞。 2012年 「満つる月の如し 仏師・定朝」で第2回本屋が選ぶ時代小説大賞、 第32回新田次郎文学賞受賞。 |
仏師・定朝 |
読みやすく、時代背景をしっかり押さえていていろいろ参考になった。
ただ、宮廷の政権をめぐる争いや、それを取り巻く女性の思いも細か に書いていてやや焦点がぼける。 定朝が隆範の指導を受けて、真実の仏の姿を彫り上げる・・・このあ たりをメインに大河小説にしてほしかった。 定朝は仏像づくりにたぐいまれな能力を発揮するが満足してはいな
定朝の父の代から庇護している道長。
事件の責任を一身に負おうとする隆範は・・・・。
時は藤原道長が権勢を誇る平安時代。若き仏師・定朝はその才能を
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小説とは何だろう・・考えさせられてしまう。
人生に希望を持てなくなった話、しがらみを抜け出さず行き詰まる話。 悔恨・・・そんな話をいくら書いても読み手にはストレスが残るばかり である。 そんな局面に立ったらどうするか・・何らかの指針を与えてくれるのが 小説だと私は思っている。この本は精緻な文で人々の困惑や悩みを 語るがそれ以上のものがない。 中山義秀文学賞・新田次郎文学賞を連続受賞した本なので「名作」な のだろうが。 商品の代金を受け取り、江戸に変える途中で紛失してしまった手代の
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1969年 大阪府豊中市生まれ。関西大学工学部卒業。
2009年 「スマイリング」で函館港イルミナシオン映画祭グランプリ受賞。 同年「海煙」で第13回伊豆文学賞優秀作品賞受賞。 2011年 「緋色のアーティクル」で第3回TBS連ドラ・シナリオ大賞入選。 同年「超高速! 参勤交代」で第37回城戸賞を同賞初の審査員 オール満点で受賞。 著書に『超高速! 参勤交代』がある。 |
マラソン侍
★★★ |
痛快無類の面白さ。
「超高速 参勤交代」の映画があったが、この作家の原作である。 この本を読んだ後であれば、絶対に見ただろう! 遠足(とおあし)・・ 藩主が命じた遠距離走行である。 50歳以下の96人の家臣がこの遠足に挑むのだが、本気で走る者 は少ない。 途中で道を外れ、江戸で知り合った女と会おうとする男は、料理が 不味い(と思わせていた)妻に見透かされていた・・・。 代々公儀隠密「草」を務めてきた男は、「殿、乱心」の報告をし、公 儀の反応を窺おうとするが・・・コースを外れて国目付のもとに連れ て行かれる男が見た者は・・・。 優勝候補?の足軽は、駆けのためにわざと負ければ10両やると 買収されるが・・・。 隠居していた栗田又衛門はかつての好敵手・槍の勘兵衛の一子 (9歳の伊助)が出場することを知り、何かとアドバイスをし、ついに は一緒に走る・・・。 藩主・板倉は藩士たちの行動をしっかりと把握していた・・
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参勤交代
★★★ |
マラソン侍が良かったので、図書館でかなり予約者が多かったが
申し込んだ。 文が平易で、どんどん筋を書くので読み進めやすい。ほとんど午前 中で読んでしまった。同時に読んでいた、伊藤潤「野望の憑依者」 はなかなか進まないのに。 これは面白い! こんな作りごとのどこが・・という人もいるかもしれ
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1927年 東京生まれ。東海大学附属旧制中学卒業。
目黒区役所係員から、東京都立大学理学部事務長、 広報室課長、企画関係部長、知事秘書、広報室長、 企画調整局長、政策室長を歴任した後、 1979年 退職、作家活動に専念。 在職中に蓄積した人間管理と組織の実学を歴史の 中に再確認し、小説、ノンフィクションの分野に新境 地を拓く。 |
(知的生きかた文庫) |
伊東潤「野望の憑依者」を読んだ後なので、この本で動乱の時
代をかなり整理できた。 目新しいことは少ない。尊氏が尊王の気持ちを持ち続けていたこと 優柔不断だが、ひとたび決意をすると勇猛果敢な武将であったこと などを再認した。弟の直義を好意的に見ているのは良いと思った。 楠正成の評価も高い正成は優れた武将であり策略家であったが 身分を重視する建武新政権のなかで、公家から低く扱われて活躍 の場がなかったことが悔やまれる。 新田義貞は尊氏にとって敵であり、尊氏は後醍醐天皇に反旗を翻 すというより、新田を側近から取り除くために戦う・・・これを理由とし ていた。 それにしても後醍醐天皇にはたくさんの皇子がいた。(護良親王と 2、3人かと思っていた。)北畠顕家、新田義貞・・・それぞれ後醍醐 天皇の皇子をいただいて地方に赴いたり戦ったりするのである。 この作家の文は現代文、武士の独特の言い回しなどは書いてい
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鹿児島県生まれ。熊本県の短大を卒業後、就職。
2009年 「梅と鴬」で第3回小説宝石新人賞を受賞。 『踊る猫』がデビュー作となる |
★★★
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さらりと書かれているようで奥は深い。
これだけの書き手に巡りあえて幸運であった。 ・蛍舟 蛍の季節に船頭・銀二が語る「法師」の話 「成仏できずにさまよう哀れな魂を一緒にあの世に連れていく それが私の務めなのです。」 精気を吸われながらも、対岸の人外の者が棲む場所に向かう。 ・いたずら青嵐 風は悪いものを運ぶ時もあり良いものを運ぶときもある。 蕪村の描いた絵が吹き飛ばされ枝にかかったおかげで、子ど もと出会い、何のために絵を描くのか考え直す・・・ ・虫鬼灯 ・燕のすみか 燕の落ちた巣の中から見つけた貝。おたかはそれをお守りに していたが、子が出来ずに悩む義姉に貸す・・・義姉は無事出 産を終えるが、貝は消えていた。そして・・ ・鈴虫 名刀は良き使い手に会うと鈴虫のような音を響かせる。 喜代は剣の試合をする佐々木に名刀を届ける。売られる寸前 に。 ・箱の中 亡くなった祖母の柳行季の中から見つけた小箱。絶対にあけ ないようにと父にも言われたのにおりんは開ける。現れた小鬼 は祖母の秘密を見せてくれる・・・。 ・鵺のいる場所 産んだ子を病で失い嫁ぎ先を追い出された女。実家からも追い 出されすっかり人間不信に陥り寺に身を寄せていたが、女と出 会った蕪村は自分に似たものを感じる。 ・ほろ酔い又平 絵に描けないようなものを描く、今にも動き出しそうな・・・。 無村は目の錯覚かもしれないが、そんな錯覚を起こさせる絵を 描きたいと思う・・。 ・恋する狐 無村は商家からもらった鮒鮨を、狐に化かされだまし取られる。 「鮒は惜しいけど、めったに見られんものやし・・・」 公達に 狐化けたり 宵の春 ふと句が浮かぶ無村・・。 ざっと概観して書いてみた。
うだるように暑い夏の日。
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1964年 東京都出身 早稲田大学第一文学部卒業後、
編集プロダクション勤務を経てフリーの編集者・ライター。 2013年 「八月の青い蝶」(「翅(はね)と虫ピン」を改題)で、 第26回小説すばる新人賞を受賞。 「逢坂の六人」は二作目。 |
★★★ |
六歌仙を自在に解釈している点が何とも興味深い。
少年・阿古久曾(あこくそ・・くそは「丸」と同じ意)は、母の住む逢 坂で、伯父のような存在の在原業平をはじめ、不思議な歌人たち にであう。幼き眼を通してみた未知と優美・隠微の世界が取り混ぜ て描かれている。 大友黒主が語る、大海人皇子と大友皇子との戦い、敗れた大友皇 子に繋がる大友一族の所業。天武の皇統が途絶え、天智天皇の 皇統の復活など・・・興味深い歴史も語られる。 喜撰法師は二種しか残していない謎の人物だが、これを紀貫之本 人としているのも面白い。 六歌仙の5人と逢坂の関で会ったことで、紀貫之がこの6人を古今 集の序文で取り上げ、すぐれて歌人としてクローズアップこさせたと いう説も面白い。六歌仙そのものは、それまでは全くの無名の人た ちで、紀貫之が何故この6人を取り上げたのも不明とされてきた。 ----------------------------------------------------- 内容紹介・内容(「BOOK」データベース)より 史上初のやまと歌の勅撰集、『古今和歌集』成立をめぐる物語。 紀貫之の忘れ得ぬ体験を描いた、小説すばる新人賞受賞第一作。 みかどの命により、紀友則、壬生忠岑、凡河内躬恒とともに、初の
『古今和歌集』成立の裏側に秘められた、俊才・紀貫之と、個性的
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1951年 横浜市生まれ。 国学院大学卒業。同大学博物館研究所助手、
編集者を経て作家に。 1994年 「大砲松」で芳川栄治文学新人賞。 2004年 「狙うて候ー銃豪 村田経芳の生涯」で第23回新田次郎文学賞。 2012年 「本朝甲冑奇談」で第6回舟橋聖一文学賞。 |
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巷間伝わる忍者のイメージは、闇を斬り裂き木から木へ飛び移ったり
水中深く潜ったり、城壁をよじ登って天守閣の上に立ったりする・・。 武家屋敷の屋根裏、床下を自在に移動し、煙の如く消えることも・・・。 そんな有る意味、華やかな面ではなく、地道な忍者像が描かれてい る。 場面に期待したほどの緊迫感がないが、忍者を考える上では参考に なることも多かった。 内容紹介がとてもくわしいので以下に長々と載せた。 ----------------------------------------------------- 内容紹介・内容(「BOOK」データベース)より これが本物の「忍(しのび)」だ! 史実だから面白い! 練達の筆致で描く傑作歴史小説集! 闇から闇へ――のはずが歴史の表舞台に現れた忍者の真実の姿とは!? 【収録作品】
「現実の忍者は諜報活動の他にテロ・ゲリラ戦・偸盗のプロであり、
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1948年 名古屋市出身。 早稲田大学政治経済学部卒業。
真宗大谷派の僧侶。 1977年 「変調二人羽織」で第3回幻影城新人賞(小説部門)を受賞 1984年 「宵待草夜情」で第5回吉川英治文学新人賞受賞。 1984年 「恋文」で第91回直木賞受賞。 |
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男女の情念を描く
著者はそういっていたと言うことだが、これは邪馬台国についての自説を 述べたものである。 江戸時代末期、邪馬台国と卑弥呼について研究を進めていた荻葉春生は 自説が本当だと思い込んでしまう。 そして、卑弥呼を蘇らせるために異様な行動に出る。 それは、子どもを作るため色街の女と交渉。 父なのに祖父と名乗り、その子に、邪馬台国であったと思われることを 吹き込む。 神がかりの卑弥呼だけでな、人間としての卑弥呼。
邪馬台国の場所、「月」を「日」と読み替える手法。
「序章を拝読したときに、どこへ連れて行かれるのだろうと驚いた」
戦後生まれの荻葉史郎の中にある東京大空襲の記憶。だが彼を診察した
衝撃の展開、男女の情愛……
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多彩な本を書く作家である。
直木賞受賞作ということで期待して読んだが・・・それなりではあった。 お人よしのひとが登場して、実際にはあり得ないような話が展開する・・・そん なイメージの短編集である。 もどかしいのである。登場人物の「誤解」などもスムーズに解決されず・・。 でも、読ませる文で飽きずに読めたのは良い。 ---------------------------------------------------- 内容紹介・内容(「BOOK」データベース)より マニキュアで窓ガラスに描いた花吹雪を残し、夜明けに下駄音を響かせア イツは部屋を出ていった。 結婚10年目にして夫に家出された歳上でしっかり者の妻の戸惑い。しかし それを機会に、彼女には初めて心を許せる女友達が出来たが…。 表題作をはじめ、都会に暮す男女の人生の機微を様々な風景のなかに描 く『紅き唇』『十三年目の子守歌』『ピエロ』『私の叔父さん』の5編。 直木賞受賞。 |
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1958年 兵庫県尼崎市市生まれ。 大阪府枚方市で育つ。
1999年 「しずり雪」が第3回長塚節文学賞短編部門大賞を受賞し、 同作を含む「しずり雪」でデビュー。 2012年 「春告げ坂 小石川診療記」が第18回中山義秀文学賞の 最終候補となる。 他に「夜半の綺羅星」日無坂」「いさご波」などがある。 |
★★★
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女流作家の描く歴史小説は温かみがあってよい。
村瀬家という、他から見れば平凡な家に起こるさまざまな出来ごと。 父の過去の所作、家族思い。隣家の同輩との付き合い。 幼友達との諍い、別れ・・・。 自分と妹(勝気で剣に優れている)の結婚、それらが波乱を含みなが ら、自然に流れる。決して豊かな暮らしではないが、家族が力を合わ せて、逞しく生きている。 館林藩の浜田藩への国替えという歴史的な事実はあるが、史実を追 いかけるようなものではない。 読後感が爽やかな秀作である。 ----------------------------------------------------- 内容紹介・内容(「BOOK」データベース)より 人の絆の大切さを描いた書き下ろし時代小説 館林藩の武士である村瀬家の長男惣一郎は、弟や妹、友人と塾や道
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