石井 敏弘 

24才の史上最年少で江戸川乱歩賞を受賞
  
風のターン・ロード  講談社 ★★★
  

  愛車ZUが風をきって、遥かな蒼空に延びるロードを駆け抜ける!!
  
  この本は、オートバイの疾駆する姿とその爽快感を書くことが、もともとの 
 ねらいだったのではないか。そんな気もする。
  しかし、それはこの作品がミステリーとして価値が低いということを意味
 するものではない。緻密に構想を練り、読み手を謎解きの世界に誘ってく
 れる。
    
 

 
  
池田 雄一

「京都貴船神社連続殺人事件」  徳間文庫  ★★★
         

 
  料亭「加倉井」の二男章二の死体が大森の海岸で発見され、酔った上での事故死と処理され 
 た。その一ヶ月前に章二の母康代が自動車事故死したいた。双方の自己現場付近に貴船神
 社があり、死亡時刻が火曜日の午前二時と奇妙な符合が・・・・・。
 「すみれリサーチ」の所長石坂すみれは章二の姉由美子から自己の調査依頼を受けた。由
 美子自身もあやうく殺されそうになったというのだ。書き下ろし長篇本格ミステリー。
                                               (解説から)
 
  弘前市の取上に貴船神社がある。そこに立っている看板に本社は京都貴船神社であると書 
 かれていた。
  そこで、所用で京都に行った時、この貴船神社を訪ねて行った。幸運なことに宮司とお会いし 
 ていろいろお話を伺うことができた。(このことについての詳細は他のページで触れている。)
  
  そのようなわけで「貴船神社」という名前がついているこの本を、つい買ってしまった。ミステリ
 ーとしての中味より、貴船神社についての知識を得たかったのである。
  あまり期待していなかったが、意外や意外、この作家は京都に先祖の菩提寺があり、この作
 品を書くにあたって更に詳細に下調べをしたと考えられる。貴船についての博識は素晴らしい。
           
  展開も本格ミステリーにふさわしく読み手を惹き付けて離さない。
  映画やテレビのシナリオライターから転じた作家ということだが、ミステリー作家としても読み
 応えがある。
       
     

  
  
藤田 武嗣
 
「汽水の街へ」  早川書房 ★★★

愛する女は消え、友には謎の翳が・・・・。
フリー記者が踏み込んだ戦後日本の闇。
    

  フリー記者の津田は、フィリピン・バーから救って同棲していたマイ 
 ラが自ら姿を消したことを知った。どこか謎めいていた彼女の行方を
 追ううち、津田はフィリピン女性売春斡旋組織と松江で起きた火事事
 件を結ぶ、戦後から現在にいたる秘密の糸に辿り着く。
  だが、その糸をたぐることが、思いがけぬ人物を追いつめることにな
 ろうとは・・・・・。
  雄大な構想、迫力あふれるアクションの、ハードボイルド・サスペン
 ス。
               
   


山崎 洋子
 
京都府に生まれる1986年「花園の迷宮」で第32回江戸川乱歩賞を受賞。
以後ミステリー作家として活躍。作品に「熱月(テルミドール)」「柘榴館」
「ヨコハマB級ラビリンス」など。
「歴史を彩った恋人たち」「元気がでる恋愛論」などの評伝、エッセイも多数。
            
花園の迷宮

★★★

 石井敏広「風のターンロード」がすごく良かったので、前年に同じ江戸川
乱歩賞を受賞したこの作家の本を買ってしまった。
 この賞は西村京太郎、井沢元彦、岡嶋二人、高橋克彦、東野圭吾など
も受賞している。それなりの作家がここから認められている。
 花園の迷宮は珠玉の一編である。やはり賞獲りのために企画を練り上
げて精魂込めてかきあげたという感じがする。本格派と言われる人たちも、
このくらいやってくれればよいのだが・・・・・・・・。
香港迷宮行  美しいけれど愛されない女優、断層の幼女を連れた謎の女、怯えている
詩人の男等が、好人物風の添乗員に連れられて出発した。
 行き先は、楽しいマジックランド香港。しかし、遊ぶためのツァーとはいつ
わり。実は・・・・。
 ゲーム感覚の殺人騒動の中であばかれる、邪悪なたくらみ。話題の推
理長篇、待望の文庫化。                 (解説から)
 花園の迷宮が強烈だったせいか、インパクトが今ひとつ。
 
  


 坂本 光一
   
    
千葉県松戸市出身。東京大学卒業。・・・・・・・・・・・・・・・・・
大学時代は東大野球部の遊撃手として活躍。
デビュー作には、その野球経験が活かされている。
現在、三菱商事(株)に勤務。
情報産業グループ経営計画担当マネジャー。 
1988年「白色の残像」で第三四回江戸川乱歩賞を受賞し
てデビュー。
他に「ダブルトラップ」(「二重の罠」と改題)(講談社)、
「ヘッドハンター」(日経)
「幻のラリー復活への1000日」
(日経/本名で出版)など。  (自筆プロフィールから) 
               
   
白色の残像  甲子園の思い出は、いつも白い光のイメージに満ちている。・・・・・・
 この書き出しで始まる。
 東都スポーツの記者・中山はかつて甲子園の決勝で戦った相手
信光学園バッテリーの向井と真田が、それぞれ別の高校の監督と
して甲子園出場を決めたことを知る。そして、甲子園の特集記事を
書くことに情熱を燃やす。
 向井と真田は大学に進み野球を続けたのだが、練習中の事故で
向井の視力が落ち、プロの道を諦めた。やがて二人はプロ化してし
まった高校野球に疑問を持ち、一石を投じようとする。しかし、それは
あまりにも対照的な方法だった。
 野球賭博を利用する絡む向井、その道はかつての恩師の信光学
園監督柴田のやり方であった。一方真田は進学校と言われる高校
で弱小野球部でありながら豪腕の宮本を擁して真のアマチュア野
球を見せようとする。
 野球賭博に絡む暴力団の矢嶋。かつて信光学園で暴力事件を
起こし、矢嶋に仕事をもらっている国吉・・・。そして起こる殺人事件。
 読後感は悪くない。
 高校野球に対する作者の思いが伝わってくる。
 ただ、殺人事件の密室性がやや強引なことと、辻褄の合わない点
がいくつかあることで不満が残るがそれなりに秀作。 

   
   

   

 鳥井架南子
   
    
1953年 愛知県生まれ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
南山大学修士課程修了。人類学専攻。
1983年 「トワイライト」で江戸川乱歩賞候補。
翌年、「天使の末裔」で同賞受賞。
著書に「悪女天使」「埴輪の家」「女神たちの哀歌」
    「ドラゴン・ウィスパー」「竜宮警報」など。
               
   
天使の末裔  人類学専攻を生かした作品であろうか。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 岐阜県王御滝郡昭和村大字神守で起こった殺人事件から始まる。
 現場で血のついた出刃包丁を持っていたイチノミコ・高仲房江が
逮捕された。一週間ほど経って、高仲房江の赤ん坊を竹藪で拾った
と届け出た大学生があった・・・。
 房江の娘・衣通絵は、中垣内(なかがいと)純也を父として成長。
衣通絵は友人の結婚式に出るために赤坂のホテルにある美容院
でオーナーの女性に髪をセットしてもらった。結婚式後に、大学の同
好会の先輩である石田と一緒になった衣通絵は石田から、昔父が
書いた意外な論文を見せられ驚く・・・。
 新たに起こった事件「行者の佐山新蔵が王御滝山寒参の途中に
岩の割れ目の奈落に転落」、そして父純也の失踪と死。
 衣通絵は石田とともに、自分の生い立ち、実の母の行方、事件の
解明のために、今はダムの底になっている神守村の辺りを訪ねた。
やがて、石田の所属する学部の教授兼見がクローズアップされる。
      
  
  

   
 近藤 史恵
 
1969年 大阪に生まれる。大阪芸術大学文芸学科卒。・・・・・・
1993年 「凍える島」で第4回鮎川哲也賞を受賞してデビュー。
   複雑な女性心理を描く細やかな筆致に定評があり、
   「ねむりねずみ」「桜姫」「二人道成寺」など、歌舞伎を
   題材にしたシリーズで知られる。
   他著に「にわか大根」「ふたつめの月」
       「モップの魔女は呪文を知っている」などがある。
            
サクリファイエス

★★★

 趣味人クラブ本関連のコミュで「ベスト・・」で推薦して方がおられたので
読んでみた。
 自転車競技のことで始まったので、これは「ハズレ」かなと思って読み
進めたが、次第に引き込まれていった。
 陸上競技で華々しい成績をあげていた
 アシストは勝利をエースに託している。
 そして、エースはアシスト達の夢や嫉妬を踏み台にして行く・・・。
 だからこそエースはいい加減な走りはできない。まして、ドーピングな
どはもっての外。エースの石尾はそれを犯した袴田を許さなかった。
 半身不随となった袴田がエフェドリンを石尾のボトルと、もう一つに入れ
たことが分かった時、石尾は・・・。
 終章
 スペインのチームに引き抜かれた白石は、夢にみたヨーロッパで走り続
 けている。
 快晴のある日。
 チームのエースが落車したために、自由に走れることになった。
   ---------------------------------------------------
  ぼくは自転車にまたがった。ビンディングペダルにシューズをかちりと
 はめる。彼が行った気がした。
 「行けよ」と。
エデン
 サクリファイエスの続編だと思わないで借りた。
 フランスの地で四週間かけて争われる過酷なレース。
 白石はチーム・ピカルディの一員としてエースのミッコのアシスタントとして
 レースに臨む。折しもスポンサーが撤退しチームは解散の危機を迎えてい
 た。
 地元フランスから久々に誕生した有望株の新人・ニコラ、突然死をとげた
 ドニ・・・。彼らとのかかわりの中で過酷な楽園を走る・・・。
---------------------------------------------------
内容(「BOOK」データベースより)
 あれから三年―。白石誓は、たった一人の日本人選手として、ツール・ド・フ
ランスの舞台に立っていた。だが、すぐさま彼は、チームの存亡を賭けた駆け
引きに巻き込まれ、外からは見えないプロスポーツの深淵を知る。そしてまた
惨劇が…。
 ここは本当に「楽園」なのだろうか?過酷なレースを走り抜けた白石誓が見出
した結論とは。 
寒椿ゆれる

★★★

 堅物の同心・玉島千蔭。美貌の花魁・梅が枝。若手人気女形・水木巴之丞。
そして、千蔭の見合い相手のおろく。巻き起こる難事件の先に仄見える、秘め
られた想いとは?江戸の風物を効果的にあしらい、市井の息づかいを丁寧に描
き上げた傑作シリーズ、待望の最新刊!情感豊かな時代ミステリーの傑作。 
                 (「BOOK」データベースより引用しました。)
 はじめに読んだ「サクりファイエス」との違いに驚愕!!
 ここまで江戸の風情を描ける作家だとは思わなかった。
 高田郁「八朔の雪」と一緒に読んだが甲乙つけ難い・・。
 この作家は奥が深い。これから読み進める楽しみが増えた。
二人道成寺
 「サクリファイエス」「寒椿ゆれる」が良かったので三作目を読んでみた。
 前掲の二作が現代物と時代物にはっきり分かれているが、この本は
 どっちつかず・・。道成寺という題名から、時代物を期待したのだが。
  ---------------------------------------------------
 内容(「BOOK」データベースより)
不審な火事が原因で意識不明となった歌舞伎役者の妻・美咲。その背
後には二人の俳優の確執と、秘められた愛憎劇が―。「摂州合邦辻」に
託された、ある思いとは?梨園の名探偵・今泉文吾シリーズの白眉。 
ヴァン・ショーを

あなたに
 

★★★

 7つの短編集。
 一遍ずつ間をおいて味わいながら読めた。
 フランス料理店、ビストロ・パ・マルが舞台であるが、
 三舟シェフのフランス修行時代の話も入っている。

 料理と軽妙の推理。
 この作家は本当に多彩な引き出しを持っている。
 フランス料理店に行って食事をしたくなる・・そんな作品である。
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 内容(「BOOK」データベースより)
 下町のフレンチレストラン、ビストロ・パ・マルのスタッフは四人。二人の料理
人はシェフの三舟さんと志村さん、ソムリエの金子さん、そしてギャルソンの僕。
 気取らない料理で客の舌と心をつかむ変わり者のシェフは、客たちの持ち込
む不可解な謎をあざやかに解く名探偵。
 ・近所の田上家のスキレットはなぜすぐ錆びるのか?
 ・しっかりしたフランス風のパンを売りたいとはりきっていた女性パン職人は、
  なぜ突然いなくなったのか?
 ・ブイヤベース・ファンの新城さんの正体は?
 ・ストラスブールのミリアムおばあちゃんが、夢のようにおいしいヴァン・ショー
  をつくらなくなってしまったわけは?…
絶品料理の数々と極上のミステリをどうぞ。 

天使は

モップを持って
 

★★★

 これまでの近藤史恵の印象が変わる一冊。
 主人公・梶本大介は入社した会社のオペレータールームに配属され課長以
 外は女性という環境に置かれる。大介が出会う課内の出来事がメインなの
 だか、社内を清掃する、「キリコ」の存在が大きい。はじめは異様に若く突飛
 もない服装をした女の子だったのだか、大介の中でその存在感が増してい
 く。大介はいつもキリコの推理力と活動力に頼りきりになる。
  ・大介の机から大事な書類が消えた話
  ・星占いを届ける保険の外交員が殺される
  ・ホットライフ・・ネズミ講のような商売に入ろうとした、女子社員。
  ・ダイエットと摂食障害
  ・上司からセクハラを受けている女子社員の本心は?
  ・理想のお姫様を求める男が、キリコの掃除するトイレに墨液のようなものを
   ぶちまける。
  ・史上最悪のヒーロー・・僕は家庭の事情を抱え、結婚してしまう。
              しかし・・これが大逆転の終末だった。

 温泉の本棚で見つけて読んだ一冊である。
 軽い感じて、大した本ではないと思ったが、「掃除」に楽しく懸命に取り組む
 キリコの姿に魅せられた。終末がとても良く、読者を爽やかな気持ちにしてく
 れるのが良い。
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 内容(「BOOK」データベースより)
 深く刺さった、小さな棘のような悪意が、平和なオフィスに8つの事件をひきお
 こす。社会人一年生の大介にはさっぱり犯人の見当がつかないのだが―「歩
 いたあとには、1ミクロンの塵も落ちていない」という掃除の天才、そして、とて
 も掃除スタッフには見えないほどお洒落な女の子・キリコが鋭い洞察力で真
 相をぴたりと当てる。

タルト・タタンの夢
 

★★★

 「ヴァン・ショーをあなたに」を先に読んだが、この作品はシリーズの初めのも
 の。シェフの三舟さんの人柄とちょっとした推理が謎解きをする。
 主眼はフランス料理である。
 美食にあまり興味がなくても、フランス料理の素晴らしさと温かさに引き込ま
 れていく・・・そんな珠玉の作品である。
 謎解きをされた当事者が納得し、それなりの道を歩もうとする姿も良い。
 ---------------------------------------------------------
 内容(「BOOK」データベースより)
 カウンター七席、テーブル五つ。下町の片隅にある小さなフレンチ・レストラン、
 ビストロ・パ・マルのシェフは、十年以上もフランスの田舎のオーベルジュやレ
 ストランを転々として修行してきたという変わり者。
 無精髭をはやし、長い髪を後ろで束ねた無口なシェフの料理は、気取らない、
 本当にフランス料理が好きな客の心と舌をつかむものばかり。そんなシェフが、
 客たちの巻き込まれた事件や不可解な出来事の謎をあざやかに解く。
 定連の西田さんはなぜ体調をくずしたのか?
 甲子園をめざしていた高校野球部の不祥事の真相?
 フランス人の恋人はなぜ最低のカスレをつくったのか…。 

 

  


 篠田 節子?
       
 東京都生まれ 東京学芸大学教育学部卒業後・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 八王子市役所に勤務。1990年に「小説すばる新人賞」受賞後、作家活動に専念。
 官僚制、民主主義、サラリーマン社会、管理社会、家父長制、宗教などさまざま
 な主題をとりあげており、広義のミステリ、ホラーといったジャンルに分類されるよ
 うだ。   
              == 受 賞 歴 ==

 *1990年 絹の変容       第3回 小説すばる新人賞受賞 
 *1997年 ゴサインタン     第10回 山本周五郎賞受賞 
 *1997年 女たちのジハード  第117回 直木三十五賞受賞 
  (直木賞候補となった医学パニック小説『夏の災厄』、)
                           (ウィキペディア)を参考にしました。

              
 ゴサインタン

神の座

★★★

 名作である。
 山本周五郎賞を取った本を読み進めていて本当に良かったと思う。・・・・・・・・・・・・・・・・・
 前半は生神や宗教について、また、地方の名族としての主人公の行き方
 さらには財をなしたものの過去の悪行・・・について
 終末部分では、主人公が訪ね歩くネパールの村が臨場感を持って語られていく。

情報考学 Passion For The Future・・橋本大也 2007に的確な解説が乗せられてい
たので以下に引用させていただきました。

 地方の名士として代々続いてきた農家の後継ぎ結木輝和は40を過ぎて独身であった。
農家に嫁いでくれる嫁を探して見合いを続けたが失敗続き。そこでアジアの花嫁仲介業者
の世話になって、ネパールから若い妻を迎えることになる。彼女の名前はカルバナ・タミ。
輝和は耳慣れない名前を嫌って自分のかつての意中の女の名前「淑子」と呼んだ。淑子
は日本語も満足に話せぬまま結木家に入った。旧家の一族は彼女を日本の生活に馴染
ませようとするのだが、やがてそのプレッシャーが淑子の秘めていた「生き神」としての能
力を発動する。

文庫650ページの壮大な物語の冒頭はそんな風に始まる。農家へのアジアの花嫁お見
合いの話はニュースなどで耳にするが、実態が生々しく書かれていて、週刊誌の特集的
な好奇心で読み始めた。やがて淑子が不思議な力で家を滅ぼし、生き神教祖として変貌
していく部分はホラー作品風でもあり緊張感あふれる展開である。後半の淑子を追っての
ネパール行は魂の再生がテーマの精神世界の話になる。どれだけこの作家は知識のひ
きだしをもっているのだろうと感心する。

 
 
 


 重松 清?
           
 1963年 岡山県久米町生まれ。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業。
 編集者、フリーライター、ドラマ・映画のノベライズ、雑誌記者などを経て作家。
 学校でのいじめや不登校、家庭崩壊等を取りあげ脚光を浴びるようになった。
   *1999年『ナイフ』       坪田譲治文学賞を受賞
         『エイジ』       山本周五郎賞を受賞 
   *2000年『ビタミンF』     下半期に受賞直木賞
   *2010年『十字架』      吉川英治文学賞受賞
                           (ウィキペディア)を参考にしました。
                  
エイジ

★★★

 話題になった作家だったが、なかなか読む機会がなかった。・・・・・・・・・・・
 読書関連のMLで話題になったのを機に読んでみた。、中学生の心理に
ここまで迫れる本はなかなかないのではないかと思った。
 膝の故障でバスケットを休部している主人公は平凡などこにでもいるよう
な中学生である。何故か学級の委員の一人に選ばれたり、好きな女の子
から紹介された下級生とつきあったり・・。そんなエイジの日常が、同級生
の逮捕で一変する。高校教師の父をはじめとする優しい、物わかりの良い
家族の中でエイジの心が揺れる・・。

 以下は(「BOOK」データベースより)
 ぼくの名はエイジ。東京郊外・桜ヶ丘ニュータウンにある中学の二年生。
その夏、町には連続通り魔事件が発生して、犯行は次第にエスカレート
し、ついに捕まった犯人は、同級生だった―。
 その日から、何かがわからなくなった。ぼくもいつか「キレて」しまうんだろ
うか?…家族や友だち、好きになった女子への思いに揺られながら成長する
少年のリアルな日常。山本周五郎賞受賞作。  

十字架

★★★

   この小説は、「いじめ」に関わった者達のその後の人生を描いている。
 重いテーマであるが、読後感は悪くない。
 中・高校生に読ませたい必読書ナンバーワンである。
 フジシュンは、ありがとう、ゆるさない、ごめんなさいという言葉と
 それぞれに関係する者の名前を残して自殺する。
 親友でもないのに名前を書かれた主人公は、フジシュンがいじめられて
 いるのに何もしなかった。そして、中川小百合はフジシュンから誕生日の
 プレゼントを断ったために謝られている・・。

 Amazonの内容紹介から
あいつの人生が終わり、僕たちの長い旅が始まった。
背負った重荷をどう受け止めればよいのだろう。
悩み、迷い、傷つきながら手探りで進んだ二十年間の物語。

中学二年でいじめを苦に自殺したあいつ。遺書には四人の同級生の名前
が書かれていた。
遺書で<親友>と名指しをされた僕と、<ごめんなさい>と謝られた彼女。
進学して世界が広がり、新しい思い出が増えても、あいつの影が消え去
ることはなかった。

大学を卒業して、就職をして、結婚をした。息子が生まれて、父親になった。
「どんなふうに、きみはおとなになったんだ。教えてくれ」
あいつの自殺から二十年、僕たちをけっしてゆるさず、ずっと遠いままだっ
た、“あのひと”との約束を僕はもうすぐ果たす――。

人気作家が大きな覚悟をもって書き切った最高傑作!

その日のまえに

★★★

 ガンに侵され、余命がなくなった者たちをめぐる物語。
  ・ひこうき雲  クラスの嫌われ者だったガンリュウの死。
  ・朝日の当たる家 高校教師のぷくさんの夫は突然死。教え子は万引き
              の後遺症に苦しんでいる。
  ・潮騒 俊治はガンを宣告され、小学校の頃に住んでいた町を訪ねる。
  ・ヒア・カムズ・ザ・サン ストリートミュージシャンに熱を上げ始めた母は
              ガンの宣告をうけていた
  ・その日の前に
  ・その日
  ・その日のあとで

 Amazonの内容紹介から
 僕たちは「その日」に向かって生きてきた。
 男女が出会い、夫婦になり、家族をつくって、幸せな一生なのか。消えゆく
 命の前で、妻を静かに見送る父と子。感動の重松ワールド。 

ブルーベリー
 12の短編集 20年前の大学受験 その後の学生時代にかかわった人々の
ことを描いている。家庭教師、塾の講師、バイト先の同僚、片思いばかりして
いる相棒の梶本・・・ 
 その頃かかわった人々のその後が全くわからない・・・これもある意味良い。
幼子われらに生まれ

★★★

 離婚、再婚の多くなった現代。
 自分と血のつながらない子を、我が子として育てることの難しさ、新しく生ま
 れる子(夫婦の子)への、連れ子の嫉妬・・・。
 そもそも家庭とは何なのか・・。
 深く考えさせれる一冊である。
 長女の態度に、崩壊寸前だった主人公と家庭は、次女の幼い素直さ、別れ
 た妻のもとにいる娘の明るさ救われる。
 ハラハラものであるが、読後感が悪くはない。単なるハッピーエンドに仕立
 てられていないのも良い。

 内容紹介から
 37歳の私は、二度目の妻とその連れ子の二人の娘とありふれた家庭を築く
 努力をしていた。
 しかし、妻の妊娠を契機に長女は露悪的な態度をとるようになり、『ほんとう
 のパパ』に会いたいと言う。
 私も、長女を前妻との娘と比べてしまい、今の家族に息苦しさを覚え、妻に
 子供を堕ろせと言ってしまう―。
 血のつながった他人、血のつながらない家族--幾つもの絆、幾つもの哀し
 みの中に浮び上がる「家族」の姿を描く長編。
 「家族」とは何かを問う感動の長篇小説。 

   

    

  

  

 道尾秀介?
             
 1975年 東京生まれ。
 2004年 「背の眼」で第5回ホラーサスペンス退職後の大賞特別賞を受賞し
      デビュー。
 2007年 「シャドウ」で本格ミステリー大賞受賞。
 2009年 「カラスの親指」で日本推理作家協会賞受賞。
 2010年 「龍神の雨」で大藪春彦賞受賞。
       「向日葵の咲かない夏」は2009年に最も売れた文庫である。
                  
 光媒の花 
 4つの独立した物語だが、登場人物がどこかで繋がっている。
 それぞれの物語は複雑怪奇なものではなく、どこかにありそうなストーリーで
 ある。ただ、この作家の文体が読者を強力に惹きつけるので、どんどん読ま
 されてしまうという感じである。
 ・隠れ鬼
  印章店を営む主人公は今は認知症の母と二人暮らし。主人公は三十年前、
  別荘で女の人と出会った。その女の人と父が親しいことを知り・・・。
 ・虫送り
  両親が帰るまで妹と虫取り行っていた主人公はホームレスの男と出会い、
  虫の追い込み方を教えてやると言われた。そして妹の智香は・・。
  誰も見ていないと思ったのに川向かいのホームレス仲間が見ていた。
 ・冬の蝶
  ホームレスの男は中学の時、同級で貧しい家の娘・サチといつも河原で会
  っていた。ある夜、サチはブローチの入った袋を渡し・・。
 ・春の蝶
  隣の老人のところに泥棒が入ったという。出戻りの女と耳の聞こえない娘
  は・・。
 ・風媒花
  教師をしている姉が倒れた。食道にポリープがあるという。母と不仲の亮は
  病室の姉の枕元にあった絵を見て驚く。母が涙を流している。それはカタツ
  ムリのせいだったのだか・・。
 ・遠い光
  学校に復帰した女教師は、クラスの子で母が再婚するために姓がかわる
  女の子の心の葛藤に向き合う。
 
 
 
 


 


五十嵐 貴久
 
1961年 東京生まれ。・・・・・・・・・・・・・・・・
2002年 作家活動に入る。
著書に「交渉人」などの現代物。
         「安政五年の大脱走」「相棒」などの
    時代物がある。
            
誘  拐

★★★

 これは凄い!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 首相の孫娘が誘拐される。犯人である秋月孝介・関口純子と
 佐山総理と警察側の駆け引きが交互に描かれる。
 最後に警察官・星野と秋月が語る場面で出てくる意外な真実
 に驚かされるが、考えてみれば、さもありなんと思う。
内容(「BOOK」データベースより)
 韓国大統領来日―。歴史的な条約締結を控え、全警察力が
大統領警護に集まる中、事件は起きた。少女誘拐―。全く痕跡
を残さない犯人に、大混乱に陥る警視庁。謎が臆測を呼び、臆
測は疑念に変わる。ベストセラー『交渉人』の興奮再び!稀代の
エンターテイナーが贈る超驚の警察小説。 
安政5年の

大脱走

初めて読む作家だと思っていたが、「誘拐」も書いていた・・。
舞台が亀井姫と、津和野藩士51の監禁された場所で、広がりには
欠けると思ったが、最後の場面や、長野主膳の描き方など、読みど
ころはある。終末が「落ちるところに落ちている」のも良い。
内容(「BOOK」データベースより)
安政五年、井伊直弼に謀られ、南津和野藩士五十一人と、美しく才
気溢れる姫・美雪が脱出不可能な絖神岳山頂に幽閉された。直弼
の要求は姫の「心」、与えられた時間は一カ月。刀を奪われ、逃げ
道を塞がれた男達は、密かに穴を掘り始めたが、極限状態での作
業は困難を極める…。恋、友情、誇りが胸を熱くする、痛快!驚愕!感
動の娯楽大作。 
 相  棒 

★★★

 「誘拐」が凄く良かったので、図書館でこの作家を検索して見つけ
 た。題名が良かった。テレビで水谷豊の主演する番組と同じ。
  ここでの相棒は何と坂本龍馬と土方歳三。薩長同盟締結に暗躍
 したり、勤王浪士と深く関わっている坂本と新撰組副長とは犬猿の
 中である。
  しかし、大政奉還を進めようとする徳川慶喜を狙撃した犯人探し
 のために老中・板倉の命を受けた二人は一時休戦。手を組んで犯
 人探しに走り回る。薩摩藩邸での西郷の会見場面、人切半次郎の
 怒り・・。桂小五郎が土方の素性を知り切ろうとする場面。全編読
 みどころに溢れている。
  やがへて、新撰組を離脱し御陵衛士(高台寺党)を結成した伊東
 甲子太郎(かしたろう)を登場させ、後半へと続いていく。
  坂本が暗殺されず(身代わり)アメリカに渡ったのかも・・・とする
 辺りで終わるのも面白い。
交 渉 人

★★★

 これは凄い!夜の一時近くまで読んでしまった。
 内容(「BOOK」データベースより)
救急病院の患者を人質に立てこもる三人組。対する警視庁は500人
体制で周囲を固めた。そして犯人グループとの駆け引きは特殊捜査
班のエース、アメリカFBI仕込みの凄腕交渉人!思い通りに犯人を誘
導し、懐柔してゆく手腕が冴え渡る。解決間近と思われた事件だが、
現金受け渡しの時から何かが狂う。どこで間違ったのか。彼らは何
者なのか…。
 --------------------------------------------------
 コンビニ強盗の三人組が逃走途中、車のトラブルが発生して近く
の小出総合病院に逃げ込む。そこまでは予期できる展開でスリリン
グな局面を迎えた。警視庁特殊捜査班の石田警視正は、自分が到
着するまでの一時間程を埋めるために、かつての交渉の研修会で
教え子だった遠野麻衣子を呼び出す・・・。
 ・プロローグ     ・第一章「事件」    ・第二章「交渉」
             ・第三章「追跡」    ・第四章「真実」
バイクを三台用意させ、逃走を図る犯人たち。発信器を取り付けた
バイクは闇の中に走り出した。そして、何がおかしい・・・。
前半と後半が別な読み物ではないかと思うほどの展開となる・・。
交渉人

遠野麻衣子
最後の事件
 

★★★

「交渉人」で登場した石田警視正のその後の場面から始まる。
(前作のネタバレになるので、これ以上書けない。)

狂信的な宗教集団「宇宙真理の会」の御厨大善師は、地下鉄爆破
事件で逮捕され裁判中である。
その御厨を解放するようにという電話が麻衣子に入る。
要求を呑ませるために次々と爆破事件を起こす犯人・シヴァとは何
者なのか。警視庁が総力をあげて対策に取り組むが、シヴァに辿り
着くのは容易ではない。やがて、麻衣子が最初の爆破現場で見か
けた「高橋」が浮上する・・。
都民の不安を煽り、パニックに陥れようとするシヴァシヴァ。麻衣子
は相棒となった島本とともに、少ない資料の中から必死の推理を働
かせシヴァに立ち向かう。
---------------------------------------------------
 内容(「BOOK」データベースより)
銀座交番、桜田門、鎌倉新宿ライナー、二階建てバス…。都内の各
所で爆弾事件が発生する。要求は2000人の死傷者を出した“宇宙
真理の会地下鉄爆破テロ事件”の首謀者・御厨徹の釈放だった。
犯人から警視庁との「交渉人」に指名されたのは、広報課の警部・
遠野麻衣子。限られた時間の中で、真犯人を突き止め、広い東京か
ら爆弾を発見しなければならない。さもなければ、未曾有の大惨事
に見舞われることになる―。交渉人と真犯人の息詰まる4日間。
緊迫のクライマックスまで一気読み、かつてないスケールの傑作サ
スペンス。 

交渉人

籠城

★★★

交渉人3作目。すっかりこの作家に入れ込んでいる。
自分の経営する喫茶店に、客を人質にして立てこもった福沢。
交渉向かった岡部警視、遠野麻衣子警部、戸井田巡査部長。
しかし、岡部は携帯電話を福沢にドロップフォンしようとして捕らえ
られ肩を撃たれた。交渉の中心となった麻衣子と福沢の駆け引きが
続く。テレビ報道を巻き込んで、少年法の不合理を訴えようとする福
沢。
最後の衝撃が福沢の執念を物語っている。
---------------------------------------------------
 内容(「BOOK」データベースより)
喫茶店の店主が客を監禁・篭城する事件が発生した。交渉人に任
命された遠野麻衣子に、篭城犯は「テレビカメラを駐車場に入れ、
事件を中継しろ」と要求する。
過去に犯人の幼い娘が少年によって惨殺された事件に動機がある
と推察するが、麻衣子たちは要求の真意を計りかねていた。そこへ
さらに突きつけられたのが、警察としては決して呑めない前代未聞
の要求だった。
解決策を探ろうと必死の交渉を続ける麻衣子の耳に、いきなり女性
の悲鳴が聞こえる―。 
リミット
 安岡がディレクターを勤めるラジオ番組「オールナイト・ジャパン」
 パーソナリティーはお笑い芸人・奥田だ。
 このオールナイト・ジャパンが5周年を迎えた日、局に自殺を仄め
 かすメールが送られてきた。ールナイト・ジャパンを聴き終わった
 ら死ぬという・・・・。
 はたして悪戯なのか本気なのか。
 息子をいじめによる自殺で失っている安岡は必死に阻止しようと
 する。交渉人に比べると迫力は今ひとつだが、舞台が異なるので楽
 しめる。ネタバレになるので詳しく書かないが、最終章・「真実」では
 もう少し意外性がほしかった。
---------------------------------------------------
  内容(「BOOK」データベースより)
ラジオの深夜番組に自殺予告のメールが届いた。ディレクターの安岡は
放送のなかで自殺の翻意を呼びかけようと主張。だが、いたずらの可能
性は否定できないと、局の幹部は安岡の訴えを退ける。パーソナリティ
の奥田も「死にたいヤツは死んだらええ」と取り合わない。焦る安岡。
一年前、イジメを苦にして自殺した息子を救えなかった過去を持つ安岡
には、このメールにこだわる強い想いがあったのだ。同じ過ちは繰り返さ
ない。番組終了まで6時間半。狭いブースを舞台にラジオマンの熱き闘
いの幕があいた! 
 誰でも
よかった
 これも交渉人が活躍する。2011/3/17 発行だから交渉人4作目と
 言ってよいのだろうか。
 「秋葉原無差別殺人事件」のような感じでスタート。
 その後、犯人が近くの喫茶店に逃げ込むところが違っている。
 今回の交渉人は渡瀬警部補。犯人に同調し、人質10人の無事救出
 を図るが・・・。
 「誰でもよかった」・・・これは大量殺人を犯した高橋の心情を現した
 ものだと思ったが・・・ネタばれにならないようにここで止める。
 BOOKデータベースに驚「倒の結末」とあったが、そこまでは至らない
 と思う。
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 内容(「BOOK」データベースより)
「明日。昼。渋谷で人を殺します」インターネット掲示板“ちゃんねるQ”に
書き込まれた犯行予告。翌日、一台のトラックが渋谷のスクランブル交
差点に突入した。死者は11人。
惨劇の犯人は、人質をとり立て篭った。極限の緊張状態にある犯人に
対し、事件の早期解決を求める捜査本部。全ては交渉人・渡瀬に託さ
れた―。世間を震撼させた大量殺人事件、驚倒の結末。  
こちら弁天通り

ラッキーロード

商店街 
 
 
 
 

★★★

 これは面白い。
内容紹介がよく書かれているので、詳細を省く。
テンポの速い文章で、「御前さま」と勘違いされてしまった笠井武。
ポックリ死ねる祈祷を頼まれ、その最中に一人が心臓疾患で苦しみだ
したため、ますます「御前さま」として信頼されるようになる。
そして、商店街の木場にコーヒー代を100円にすることをアドバイスした
したことから予想外の展開が始まる。
やがて商店街全体が・・・。
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 内容(「BOOK」データベースより)
 印刷工場を経営していた笠井武は、友人の連帯保証人になったことか
ら莫大な借金を抱えてしまった。苛烈な取り立てから逃げた先の無人の
寺で一夜を過ごし、首をくくろうかと考えていた彼は、町の老人たちに新
しい住職と勘違いされる。
「ポックリ逝かせてほしい」と懇願された笠井が事情を尋ねると、彼らは
巨大ショッピングモールに客を奪われた老店主たちで、もう生きていても
仕方ないと言うのだが―。
老店主たちに頼られたニセ坊主の思いつきは、町と人々を再生できるの
か!?読んだら希望が湧いてくる、痛快エンターテインメント。 
キャリア警部・

道定聡の苦悩

 軽い感じで読めば退屈しない。
 交渉人、相棒などの刑事ものとは違った趣向。
 各事件の最後で真相が明かされるというパターンは「謎解きはディナー
 の後で」に似ている。
 容姿端麗だが性格がすごく悪い刑事・山口ヒカルの思い付きや、怠惰か
 ら事件が解決してしまうという、コメディーありの本。
  ・高層マンションの完全密室から転落した女。事故、自殺、他殺、いず
   れも考えられない。
  ・教祖が殺された。殺害された部屋はナンバー2・冴島の部屋を通らな
   いといけない。
  ・愛人を刺殺したと出頭した女。道定と山口は現場に向かうが死体が
   ない。そして再び・・。
  ・双子が住む家で殺人。どちらが殺したのか。
  ・栃木の山奥の村に逃げ込んだ殺人犯2人を追った道定たちは、山狩
   りで身元不明の死体を発見。地元の青年団の動きは・・・。
---------------------------------------------------
 内容(「BOOK」データベースより)
 東大卒で警察庁に採用されたエリート中のエリート、道定聡、25歳。
 将来を約束されたキャリア組として群馬県警に配属され総務課長を務め
 ていたが、ある日、部下の不祥事により責任を負わされることになる。
 異動先は、まさかの警視庁捜査一課強行犯三係だった。道定は新米刑
 事として、スタイル抜群の美人だがまったくやる気のない山口ヒカルとコ
 ンビを組まされることに。
 何も分からないまま、新宿で起きた高層マンションOL飛び降り事件の現
 場に向かうが…。(第一話「Gの密室」)
 ミチサダ&ヒカルの“迷”コンビが、完全犯罪と思われた5つの難事件に挑
 む! 
    
 

 
  

   
  
 雫井 脩介(しずくい しゅうすけ)
 
 1968年 愛知生まれ 専修大学文学部卒・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 2000年に第四回新潮ミステリー倶楽部賞受賞作「栄光一途」でデビュー
 第二作「虚貌」はクライムノベルの傑作として絶賛を浴びた
 他の著書に「白銀を踏み荒らせ」がある。
            
火の粉

★★★

 これは凄い!・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 スリルとサスペンス満ち溢れている本を久しぶりに読んだ。
 裁判官の梶間は、一家三人を惨殺したと思われる武内に無罪を言い渡した。
 武内の体についた傷が、自分で付けたとは到底思われなかったからである。
 やがて、裁判官から大学教授になった梶間の隣に武内が引っ越してきた。
 これは偶然なのか。
 息子の嫁を襲うドーベルマン、喉に食べ物を詰まらせて亡くなる梶間の母。
 梶間の妻と息子の俊郎は、武内の本性に気づかずに好意を持つが・・・。
 好意を喜んで受け入れている間は良いが、それを無にしたときに変貌する男
 に魅入られてしまった一家は・・・。
虚 貌
 

★★★

 火の粉が良かったので続けて読んでみた。これも凄い!
 ミステリーとスリルに満ちている。
 ガンを宣告され余命幾ばくもない滝中刑事は辻刑事とともに、21年前の事
 件と関わりのあった者たちが次々と殺害される連続殺人事件の謎を追う。
 坂井田、ヤクザになった時山、奥山、主犯として最も重い罪に問われた荒
 勝明。そしてカメラマンとなり滝中の娘とつきあう湯本。
 犯人は、荒なのか。出所した荒の面倒をみる山田なのか。生き残った気良
 一家の長男なのか・・・。謎の多すぎる事件に解決の糸口は見えない・・・
 ---------------------------------------------------------
 顔に青あざのある辻刑事。刑事の仕事にも疲れ切っている辻は北見という
 カウンセラーの治療を受けている。
 また、娘でかつてのアイドルスター滝中朱音は自分の顔に自信が持てなく
 なる「醜形恐怖症」となり、北見のカウンセリングを受ける。
 一見、事件と関わりのない事柄を微妙なタイミングで織り込みながら、読み
 手の関心を離さない。「変装」の技術もその一つ。
 ---------------------------------------------------------
 内容(「BOOK」データベースより)
 21年前、岐阜県美濃加茂地方で、運送会社を経営する一家が襲われた。
 社長夫妻は惨殺され、長女は半身不随、長男は大火傷を負う。間もなく
 従業員3人が逮捕され、事件はそれで終わったかに見えたが…。 
犯人に告ぐ

★★★

 2段組みで360ページもあるのだが、どんどとん読ませられてしまった。
 途中に、巻島の若い上司にあたる上草の邪恋が絡み、他放送局の美人ア
 ナウンサーが出てくる。上草は大学同期のこのアナウンサーと付き合いた
 いために情報を流し混乱を招く・・この部分がちょっと中弛み・・・。
 ここを除くと一気呵成に話は進む。
 テレビ局を利用する巻島の思惑、家族の想い・・。臨場感は高まる・・
 ---------------------------------------------------------
 amazonの「カスタマーレビュー」に的確な書き込みがありましたので引用さ
 せて戴きます。

 神奈川県警の警視,巻島史彦は県警本部捜査一課の特殊犯係の管理官
 である。赴任2年目の7月幼児誘拐事件が発生した。警視庁との合同捜査
 の中犯人に引き回された挙げ句,目の前で犯人を見逃したばかりか,被害
 者の幼児も殺害される・・・

 物語は,上記の事件を責任から左遷された巻島が,その5年後に発生した
 連続幼児殺害事件の特別捜査官として県警本部でマスコミを使った劇場型
 捜査の陣頭指揮をとる話が本筋となる。
 最近読んだ本の中では群を抜いて面白い話であった。始めの誘拐事件の
 場面では昔読んだ小説を彷彿させる場面もあり既視感をもったが,その6年
 後に県警に再登場する巻島の描写の印象的な場面から,物語は急展開,
 マスコミを利用した捜査から,獅子身中の虫そして,6年前の誘拐事件との
 絡みと様々な要素を取り込み物語が進んでいく。
 やや中だるみする場面も感じられたが,読み終われば,それも後半の物語
 の一気の終末へ向けてのものであった。それぞれの登場人物も印象的であ
 り,登場場面は少ないが津田長などは渋いキャラで特に印象的であった。 

検察側の罪人

★★★

 500ページを超える本だが眼が離せなくなる。
 事件とその後の検察の動きにダイナミックなものはないのだが、検事・最上
 と、若手検事・沖野の動き、沖野の退官・・息詰まるような状態が続く。
 最上が学生の頃下宿していた寮の娘が殺された。最上が勉強をみてやり
 可愛がっていた少女を無残にも殺した犯人。最上は許すことができなかっ
 たのだ。たとえ時効になっていたとしても・・。
 (中盤で、社長夫妻の犯人・弓岡、時効になった少女殺しの犯人・松倉がは
 っきりしてしまうので、ネタバレにはならない)
 検事の正義とは・・。自分は何を目標とすればよいのか、沖野は悩む。
 読み終えて
   疲れ切った感じ
   松倉が最初の少女殺しも検察に強要されたと言い出す・・
   無罪を勝ち取ることで有名な「白馬の騎士」白川弁護士の考え方・・
   沖野は何をよりどころに生きていけばよいのか・・恋人でかつてコンビだ
   った事務方の沙穂の存在がわずかに救いではある。
 ---------------------------------------------------------
 内容(「BOOK」データベースより)
 21年前、岐阜県美濃加茂地方で、運送会社を経営する一家が襲われた。
 社長夫妻は惨殺され、長女は半身不随、長男は大火傷を負う。間もなく
 従業員3人が逮捕され、事件はそれで終わったかに見えたが…。 
 検事は何を信じ、何を間違えたのか。

 東京地検のベテラン検事・最上毅と同じ刑事部に、教官時代の教え子、
 沖野啓一郎が配属されてきた。ある日、大田区で老夫婦刺殺事件が起
 きる。捜査に立ち会った最上は、一人の容疑者の名前に気づいた。
 すでに時効となった殺人事件の重要参考人と当時目されていた人物だっ
 た。
 男が今回の事件の犯人であるならば、最上は今度こそ法の裁きを受けさ
 せると決意するが、沖野が捜査に疑問を持ちはじめる――。

 正義とはこんなにいびつで、こんなに訳の分からないものなのか。
 雫井ミステリー、最高傑作、誕生! 

 
 


 三浦 明博?
    
    
 1959年 宮城県生まれ。明治大学商学部卒。・・・・・
  仙台市の広告製作会社コピーライターとして勤務。
 1989年独立。
  現在、フリーランスのコピーライター。
                      
滅びの
モノクローム 
 江戸川乱歩賞をとった本を読み進めて出会った本。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 作者の思いはわかるが、全体の構成、流れのテンポなど、不満は残る。
 太平洋戦争前夜。日本にいた外国人・・イギリス人に何があったか・・。
テーマを明確にして、もっと深く掘り下げてほしかった。
---------------------------------------------------------
 以下はAmazon.の商品の説明から引用
 骨董市で買った古い釣り用リール。それと共に入手した柳行李(やなぎごうり)に
昔のフィルムが入っていた。好奇心に駆られたコピーライターの日下哲は、フィルム
の再現を試みる。過去の映像が現代に蘇ったその時、日下の周りでは不穏な動き
が…。
 1個のリールが結ぶ過去と現代。日本人が封じてきた忌まわしい出来事は、今も
なお、人々の心の奥底に澱(おり)のように潜んでいた。  
 
 
 

    
  
 安東 能明?
     
    
 1956年 静岡県生れ。明治大学政経学部卒。浜松市役所勤務。
 1994年 「死が舞い降りた」で日本推理サスペンス大賞優秀作を
       受賞し、創作活動に入る。
 2000年 「鬼子母神」でホラーサスペンス大賞特別賞。
 2010年 「随監」で日本推理作家協会賞・短編部門を受賞。
      緻密な取材に基づくサスペンスで注目を浴びている。
                  
撃てない警官
 

★★★

標題が面白そうに思えたが、緊迫した場面が設定されているからで
はない。主人公が警察の「事務畑」を歩いてきたので、付けられた
題であろう。
偽電話で、拳銃訓練に出席させられた部下が拳銃自殺。(その部下
は精神的に病んでいて拳銃訓練に出してはならなかったのだ。)
課長に全責任を押し付けられ、綾瀬署に左遷された柴崎。
上昇志向の強い柴崎は、なんとか本庁に復帰しようとする。
そのためには、綾瀬署で起こった六つの事件?を何としても無難に
乗り切らないといけない。刑事経験のない柴崎の必死の立ち回りが
始まる。
なんとか事件を解決していく柴崎の姿が面白い。
ただ、終末でも柴崎は綾瀬署に残るので、続編が出るものと思わ
れる。
---------------------------------------------------
 (「BOOK」データベースより)
模範的な警官になろうと、誰よりも強く思ってきた。ノンキャリアながら
管理部門で抜擢され、エリート部署へ配属された。だが、待っていた
のは不祥事の責任を被る屈辱の左遷…。若き警部・柴崎令司が、飛
ばされた所轄署で体験する人生初の悪戦苦闘。他人には言えない
屈託を抱えた男が、組織と世間の泥にまみれて立ち上がる人気シリ
ーズ全七編。第63回日本推理作家協会賞短編部門受賞作「随監」
収録。 
死が舞い降りた  作者が物語の進行中に、どの程度、謎や全体解明のヒントを出すか
によって、読者の興味を惹き続けていくことができる・・・どなたかが言
っていた。それに従うと、この本は不親切である。かなり読み進めても
辿りつく先が見えないのである。(読解力のせいかもしれないが。)
 最初は単なる殺人事件か復讐劇かと思っていた。動機も全くわから
なず、最初の事件の手がかりがない。けれど、一方では宅配便に勤
め、外国からきたいる労働者にやけに親切にし仲間になる男がずっと
登場している。この男と事件の接点が全く分からないのである。
 やがて、環境破壊として、青森から秋田に抜ける青秋林道のことが
でてきたり、熊鷲が登場したりする。
 中盤に入ってようやく、物語の全容が少し見えてくる。熊鷲を使い
両親の復讐をはかる男。その執念と、鷹への思いは伝わってくる。
BOOK」データベースにあるように、朝もやにけむる街・・ジョギング中
の男が斬殺・・・こういうセンセーショナルな場面から幕を開けても良
かったのではないか。
----------------------------------------------------
 (「BOOK」データベースより)
 旋風とともに背後から襲い、喉を突き刺し、眼球を抉る。過去を忘れ、
何もなかったように生きる者こそ、わが標的。そう、これは「狩り」なの
だ…。
 朝もやにけむる街でジョギング中の男が惨殺された。死亡推定時刻
は午前六時。総頸動脈、後頸部に深い創傷。頸部椎間板亀裂。左鎖
骨部分骨折。眼球剥落。死因は外傷性ショック死。遺留品は殆どなく、
凶器も不明。
 行き詰まる捜査の果てに、やがて浮かんできたものは。森に棲む者
の復讐を描くサスペンス。第7回日本推理サスペンス大賞優秀作。
潜行捜査
 犯人の残した証拠品が多く、解決は時間の問題と思われた一家三
人が殺害された事件。
 しかし、上層部が大事な情報をマスコミに公表。これが裏目に出て
事件は長期化する。独自に行動し、検事の家族からも指紋を収集して
しまった幸本警部補は庶務係に異動させられ、5年後に杉並署勤務と
なっていた。
 そこで捕まえた大麻所持者の部屋から、5年前の事件の犯人の指
紋が見つかる。一人で5年前の事件捜査を再開した幸本。やがて、発
生した不動産屋・大貫が殺される事件が発生する。
 スケードボードの若者、ギターを弾く男、事件に影響を与えたといわ
れる劇団の新たなる公演。
 展開がスリルで、最後までどんどん読ませられた。
 ただ、希望を一つ言うと・・・やはり、途中で、犯人に辿りつくヒントを、
もっと読み手に与えてほしかった・・・。
----------------------------------------------------
 (「BOOK」データベースより)
 大晦日に判明した一家惨殺事件。その捜査本部で重要な任についた
幸本は、捜査方針の対立から、本部付を解任されてしまう。
 それから5年、膨大な物証に振りまわされ、事件は迷宮入りの様相を
呈してきた。所轄署の生活安全課へと異動となった幸本は、捜査本部
と異なる視点で、なおも事件を追っていた。そして偶然に手に入れたあ
る証拠物。捜査員100人を相手に幸本執念の捜査は実を結ぶのか。 
第U捜査官
 平刑事・神村と若い女刑事・西尾。西尾は神村の高校の教え子であ
 る。神村のくだけた刑事ぶりと真相究明が面白い。
 神村を信頼する署長のバックアップがあって、神村は刑事課長を無視
 して、神出鬼没の捜査をする。ヤクザの会合、事務所にも友達感覚で
 出入りし、西尾を青ざめさせる。
 事件に真相はどんどん予想外の方向に進み、最後は意外な結末。
 ただ、意外ではあるが言われてみれば、さもありなん・・と思う。
 ヤクザの内情や神村の「物理」が語られる。
 それらに関した参考文献が巻末に掲載されている。
----------------------------------------------------
 (「BOOK」データベースより)
 元高校の物理教師という異色の経歴を持つ神村五郎。並外れた捜査
能力から署ではナンバー2扱い。ついた呼び名が「第2捜査官」。
 ある日、勤務する蒲田中央署に新人刑事が赴任してきた。西尾美加―
なんと神村の元教え子だ。ドメスティック・バイオレンスに耐えきれず夫を
刺した佐竹朋子が、取り調べを担当した神村の同僚・樽井とともに忽然と
取調室から姿を消した。
 数日後、二人は死体で発見される。死因は青酸カリによる毒死。
 心中か?それとも―。元教師とその教え子、異色の迷コンビが事件に挑
む長篇警察小説。 
 
  


 五條  瑛 (ごじょう あきら)?
     
    
 女流作家。
 大学卒業後、防衛庁に就職し、調査専門職として勤務。
主に極東の軍事情報および国内情報分析を担当。
退職後は一般のOL職を希望していたが、フリーライターを
経た後、出版社の勧めにより、1999年に北朝鮮問題を題
材とした『プラチナ・ビーズ』で作家デビュー。
2001年「スリー・アゲーツ 三つの瑪瑙」で第3回大藪春
彦賞を受賞。
                  
ROMES 06

まどろみの月桃

 チベットから沖縄の与那国に流れ着いた男は大坂に出て、
密貿易にも手をそめ、財をなす。
そして、故郷に送金したり、日本にやってくるチベットの民
を保護していた。
 不当に弾圧され、抑圧されている民族の悲劇を世界に知
らしめるために・・・。
 ガンのために人生の末期に至った八角波夫はチベット弾
圧の先頭に立つ中国要人を空港で襲う計画を立てる。
 これに立ち向かう成嶋。最新鋭機ROMESとともに。
 
       

   


 玖村 まゆみ (くむら まゆみ)?
     
    
 1964年 東京生まれ。 中央大学在学中、体育連盟航空部に所属。
       卒業後、航空会社にCAとして入社。20代から作家を志し
       航空会社を退職後、ポルトガル、島根県と居を移しながら
       創作活動を続ける。現在、神奈川県在住。法律事務所勤
       務。
 2011年 「完盗オンサイト」(応募タイトル「クライミングハイ」)が初応
       募で第57回江戸川乱歩賞を受賞。15年ぶりの女性受賞
       者として脚光を浴びる。
                  
完盗オンサイト
 選評で内田康夫が次のように書いている。
人間の美意識、審美眼は千差万別であることを思い知らされた。この
作品の本質は「皇居内の盆栽」「ロッククライマー」「三人の病人」を三
題噺的に組み合わせたことに尽きる。・・・設定が絵空事で説得力に
欠ける。マンガの原作程度にしか評価できない。小説は所詮絵空事
だから何でもありということか・・・・・。
----------------------------------------------------
 読み終わって全くその通りだと思った。それぞれ細切れのように出て
くる人物や出来事が衝撃的だったり、興味を惹いたりするので、どんど
ん読み進められる本ではあるのだが、この本のテーマは何かと問われ
れば??しばし考えてしまう。
 はじめは「ロッククライマー」だと思っていた。しかし、國生地所の会
長・奇怪な風体の肇。弟で社長の環。この兄弟の関係は?主人公浹
(とおる)が居候することになつた寺の住職岩代。彼はもと高校教師だ
が教育現場に疑問を持ち退職。工事現場で働きながら寺を維持してい
る。この3人がそれぞれに抱えているものは重い。
 さらに、精神障害に陥り、大学の医師を辞めさせられた瀬尾。瀬尾の
両親は高校の時に事故で亡くなったらしいが、ここからが物凄い謎だら
けで、これだけで一冊の本になりそう。瀬尾のわかれた妻・愛子もよく
わからない存在だ。超虚弱児・斑鳩を岩代にあずけ行方がしれない。
瀬尾、愛子、岩代・・・主題とはほとんど関係ないようだが、途中に登
場して、読み手を離さないようになっている。
 これに「皇居内の盆栽」を盗み出すという話が加わる。まさに何でも
ありかと思えば、やはり主題は「ロッククライマー」なのだろう。

 内容(「BOOK」データベースより)
 報酬は1億円。皇居へ侵入し、徳川家光が愛でたという樹齢550年の
名盆栽「三代将軍」を盗み出せ。前代未聞の依頼を受けたフリークライ
マー水沢浹は、どうする?どうなる?
 不気味な依頼者、別れた恋人、人格崩壊しつつある第3の男も加わっ
て、空前の犯罪計画は、誰もが予測不能の展開に。最後に浹が繰り
出す、掟破りの奇策とは?

  
 

 

   

 川瀬 七緒
     
    
 1970年 福島県生まれ。文化服装学院服装科デザイン専攻科卒
       服飾デザイン会社に就職し、子供服のデザイナーに。
 2007年 小説の創作活動に入り、2010年に第56回江戸川乱歩賞の
       最終候補に選ばれた。
 2011年 二度目の応募で受賞。
       15年ぶりの女性受賞者として、注目を集める。
                  
よろずのことに

気をつけよ
 

★★★

 これは面白い。
 文人類学者の俺(仲澤)のところに、ある日、祖父を殺された砂倉真
由という十代半ばの娘が押しかけてきた。
 床下から出てきた短冊形の和紙(呪いの呪文らしきものがかかれて
る)を真由が持参したことから、二人の捜査が始まった。
 高知へ、そして福島の南郷村へ。
 呪術集団を追う二人。
 やがて明らかにされる祖父の過去の過ち・・・。
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 内容説明から
 第57回江戸川乱歩賞受賞作       
 呪いで人が殺せるか。変死体のそばで見つかった「呪術符」を手が
かりに、呪術の研究を専門にする文化人類学者・仲澤大輔が殺人事
件の真相に迫る、長編ミステリー 
 

 
 

 

    

 東川 篤哉 (ひがしがわ とくや) 
     
    
 1968年 広島県生まれ。岡山大学法学部卒
      
 2002年 カッパノベルスの新人発掘プロジェクトで、長編デビュー。
 2009年 「ここに死体を捨てないでください」が「2010本格ミステリ・
       ベスト10」の8位に入る。
                  
謎解きは

ディナーのあとで
 
 

★★★

 これは傑作である。
 Amazonのレビューで
  ・謎を解く楽しさが全くありませんでした
  ・会話にも人物にも魅力は感じません。「本格ミステリ」の意味がわかりません。
  ・「執事」+寒い会話とどこがで読んだような薄っぺらな謎解きだけで、
   「抱腹絶倒の本格ミステリ」と言われても...。
 かなり辛口の書き込みがあった。
 確かに言われてみればそうかもしれない。
 しかし、これらの批判は的を得ていないと思う。
 どこやら軽妙な語り口。
 見事な布石と執事・影山の理路整然とした推理。お見事のひと言に尽きる!
 気取らずにどんどん読み進められる・・・こんな本が案外少ないのである。
 「本格的」と銘打ったミステリーの中に、読者を煙に巻き、自分の世界に閉じこも
 ってしまい、わけのわからない内容になっているものもある・・・。
  ・殺人現場では靴をお脱ぎください
  ・殺しのワインはいかがでしょう
  ・綺麗な花には殺意がございます
  ・花嫁は密室の中でございます
  ・二股にはお気をつけください
  ・死者からの伝言をどうぞ
 6編の秀作が時を忘れさせてくれた。
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 内容説明から
 第8回(2011年) 本屋大賞受賞 執事とお嬢様刑事が、6つの事件を名推理! 

 ミステリ界に新たなヒーロー誕生! 主人公は、国立署の新米警部である宝生麗子
ですが、彼女と事件の話をするうちに真犯人を特定するのは、執事の影山です。
 彼は、いくつもの企業を擁する世界的に有名な「宝生グループ」、宝生家のお嬢様
麗子のお抱え運転手です。本当は、プロの探偵か野球選手になりたかったという影
山は、謎を解明しない麗子に時に容赦ない暴言を吐きながら、事件の核心に迫って
いきます。
 本格ものの謎解きを満喫でき、ユーモアたっぷりのふたりの掛け合いが楽しい連
作ミステリです。 

謎解きは

ディナーのあとで


 

★★★

 これはとくかく面白い。
 不合理な点やありえない展開・・・などを指摘するより、まずこの本の面白さやミ
 ステリーの世界に浸りたい。
 今回も6話
  ・アリバイをご所望でございますか
  ・殺しの際は帽子をお忘れなく
  ・殺意のパーティーにようこそ
  ・聖なる夜に密室はいかが
  ・髪は殺人犯の命でございます
  ・完全な密室などございません
 最後の話で、お嬢様がついに風祭警部のジャガーを運転し国立の夜を突っ走
 る・・・。
謎解きは

ディナーのあとで


 

★★★

 本のHPに描かれている紹介が懇切丁寧であった。
 今回も痛快にして鮮やかな謎解きが提示される。
 この作者は初めに事件現場と犯人を設定して、そこから事件発生前にさかのぼ
 って小説を書き始めるのであろうか。
 最後に明かされる影山の推理は見事である。読んでいる途中では予想されない
 ことである。
 楽しく一気に読める本である。
 以前このシリーズを中身がない、ミステリーとしても軽薄・・・という批判を読んだ
 ことがあったが、私は違うと思う。
 軽い文体のようでいて、読者の思考とマッチさせるテクニックがある。
 ともかくもミステリーはこんな調子で・・・というお手本のようなものである。
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 内容紹介・内容説明から
 国立署の新米刑事、宝生麗子は世界的に有名な『宝生グループ』のお嬢様。
 『風祭モータース』の御曹司である風祭警部の下で、数々の事件に奮闘中だ。
 大豪邸に帰ると、地味なパンツスーツからドレスに着替えてディナーを楽しむ
 麗子だが、難解な事件にぶちあたるたびに、その一部始終を話す相手は”執
 事兼運転手”の影山。
 「お嬢様の目は節穴でございますか?」
 ――暴言すれすれの毒舌で麗子の推理力のなさを指摘しつつも、影山は鮮や
 かに謎を解き明かしていく。

 文芸誌『きらら』に連載した5編
  「犯人に毒を与えないでください」
  「この川で溺れないでください」
  「怪盗からの挑戦状でございます」「殺人には自転車をご利用ください」
  「彼女は何を奪われたのでございますか」
 書き下ろし「さよならはディナーのあとで」を加えた全6編。 

 宝生邸に眠る秘宝が怪盗に狙われる?体中から装飾品を奪われた女性の変
 死体発見?続々と発生する難事件に、麗子ピンチ…しかしながら「お嬢様は無
 駄にディナーをお召し上がりになっていらっしゃいます」影山の毒舌と推理は絶
 好調!そして、ラストシーンでは麗子と影山、風祭の3人の関係にも大きな変化
 が訪れて―!?大人気ミステリ第3弾。 

魔法使いは

完全犯罪の

夢を見る
 

★★★

 これは面白い。
 深く考えず、謎解きにワクワクしながら、寝っ転がって読む。
 まさに「至福の読書」にぴったりの本である。
 今回は魔女が加わるという、さらに荒唐無稽な話で盛り上がる。
 メイド、野球場のビール売りの姿で・・・。
 4編の謎解きが面白い。
 「逆さまの部屋」」は、よくこんな仕掛けが考えられるものだと感心させられる。
 「失くしたボタン」」も同様。
 この作家の本を続けて借りたいと思った。
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 内容説明から
 解きはディナーのあとで』が本屋大賞を受賞した東川篤哉さん。お待ちかねの
 新シリーズは、なんと本格ミステリーと魔法の融合!?

 39歳独身の美人刑事《八王子市警の椿姫》こと椿木綾乃警部と、椿木警部に
罵られることを至上の喜びとするその部下、小山田聡介。
 八王子市警の名コンビが勇んで出向く事件現場には、いつもなぜか、竹箒を
持った謎の三つ編み美少女がいて――。
 本格ミステリーのトリックと、抱腹絶倒の掛け合いが最高の化学反応を起こす
ユーモアミステリー。
 毒舌美少女マリィ、結婚願望を捨てきれない椿木警部と、どMな部下小山田刑
事と、三者三様の強烈なキャラクターにも注目です。
「魔法使いと逆さまの部屋」「魔法使いと失くしたボタン」「魔法使いと二つの署名」
「魔法使いと代打男のアリバイ」の中編4作を収録。

はやく名探偵に
なりたい
 

★★★

 

 面白いが、ちょっとはみ出しすぎ?のところもある。
 「時速40キロメートルの密室」以下の4編は、奇想天外な真実が明かされる。
 現実的にはちょっとあり得ないが、謎解きとしては面白い。
 「なるほど、そういうことだったのか。」と思えばそれで良いのである。

 ・藤枝屋敷の完全なる密室
  完全殺人・・ドアチェーンに利用した完全殺人
  仕掛けが終わって、玄関に向かった犯人がみたのは悠然と腰掛ける探偵?

 ・時速40キロメートルの密室
  不倫現場から立ち去るために、運送屋に頼んで「箱型のベンチ」に入った男は・
  ・・。走るトラックの中で首を切られて死んでいた。
  探偵の助手はバイクでトラックを追いかけていたのだ。
  助手はトラックに近づく者を見ていない。完全な密室状態で何が起こったのか。
  探偵と助手は依頼人が孫と釣をしている海岸に「報告」に出かけた・・。
 
 ・7つのビールケースの問題
  酒屋から消えたビールケース。
  誰が何のために・・。
  普通の自動販売機とは逆に開くものがある・・・。
  
 ・すずめの森の不思議な夜
  お屋敷の庭で助手とその家の娘が、深夜に散歩。
  そして見たものは、車椅子とそれを押す男

 ・宝石泥棒と母の悲しみ
  ペットが見た宝石紛失事件。
  探偵と助手の謎解きは?
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内容紹介から
 はた迷惑な奴らリターン!! 名探偵の条件。気力・体力・変人あしらい。そしてい
かがわしい依頼が舞い込む町在住であること! 烏賊川市で探偵事務所をひら
く鵜飼のもとには、なんとも不思議な事件が持ち込まれる。
 探偵見習い・流平とともに、いい加減に華麗な推理と、ずっこけチームワークで
難事件を次々解決!!
 2011年本屋大賞受賞、東川篤也の大人気シリーズ最新作!!

私の嫌いな探偵
 この作家の本をずっと読んで来たら、ちょっとマンネリ気味である。
 ユーモアもあり、奇想天外な謎を見事に解き明かしてみせる。
 今回は探偵・鵜飼とビルのオーナー のコンビ。
 面白かったが、しばらくの作家の本は間をおいてから読みたい。 

 ・朱美のビルの地面に死体が・・。落ちたのでもない・・目撃の学生によれば
  ば速力で疾走し壁に激突したという・・・。

 ・探偵・鵜飼が浮気調査していて撮った証拠写真に写っていたのは・・・。
  折しも雪が降った日、近くの屋敷で大学教授が殺されていた。

 ・烏賊側にある神社で殺人事件が・・・。神社は正逆二つの祠があった。

 ・深夜の田舎道を帰る中学生の前に崖から男が落ちてきた。口から出た黄色の
  煙のような物体の正体は?
 
 ・浮気調査で見張りをしてる鵜飼、朱美、流平・・・。
  突然アパートが火事になり、調査対象の男がベットの上で死体に・・・。
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内容紹介から
 うら若き美貌のビルオーナー、二宮朱美。二十代半ばにして、ビルの最上階に
 住まい、家賃収入で優雅に日々を送っている…はずが、なぜか、気がつけば
 奇妙なトラブルに振り回されてばかり。それもこれも、階下に入居している
 「鵜飼杜夫探偵事務所」がいけないのだ!今日もまた、探偵事務所を根底から
 揺るがす大事件が巻き起こる。 

ライオンの棲む街
 深く考えずに読める。面白い。
 女探偵は眠らない
  恋人の浮気調査でアパートの一室を見張っていた二人
  男が入っていき・・・エルザは眠って・・しばらくして
  女がやってきて、やがて走り去る・・部屋には男の死体が・・
 彼女の爪痕のバラード
  行方不明の恋人の捜索を頼まれた二人・・不明の女の部屋に残されていたも
  のは・・
 ひらつか七夕まつりの犯罪
  二人が尾行していた女が、大学講師が殺した犯人なのか・・紫色のパーカ
  ーを目印に尾行していたのだが・・
 不在証明は鏡の中
  占い師の見せた鏡とは・・
 女探偵の密室と友情
  マンションの7階で起こった密室殺人
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内容紹介から
 「ライオン」こと美しき名探偵・エルザと天然ボケ炸裂の助手・美伽。
 もっとも危険な"格差コンビ"が湘南の片隅で難事件に挑む!! 
 本格×ユーモアミステリーの新シリーズ、スタート!! 

 27歳の川島美伽は東京でのOL生活に夢破れ、地元・平塚市に帰ってきた。
 それを聞きつけた高校時代の友人・生野エルザから「ウチの仕事を手伝え」と
 の誘いがくる。
 就職難の昨今、旧友の優しさに感激しながらエルザのもとを尋ねる美伽。
 しかし、そこには『生野エルザ探偵事務所』という看板が……。
 10年ぶりに再会した旧友は、地元の刑事も恐れる“名探偵"に成長していたの
 だった!! 

純喫茶「一服堂」の

四季

 蓮城三紀彦や北重人の本を読んだ後に読んだら・・・
 ちょっと軽すぎてついていけなかった。タイミングが悪かったのだろう。
 クリアしてしまった。
 機会があったら再チャレンジしてみたい・・・。ー
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内容紹介から
 古都・鎌倉でひっそりと営業する古民家風喫茶「一服堂」。エプロンドレス姿の
 美人店主は、恥ずかしがり屋で人見知り。しかし、事件となるとガラリと人が変
 わってしまう。動機には一切興味がない安楽椅子型の名探偵が「春」「夏」
 「秋」「冬」の4つの事件を鮮やかに解く、連作シリーズ! 
探偵少女
 
アリサの事件簿

溝ノ口より愛をこめて

 軽いタッチなのだが、今回は面白い。
 「謎」は、後から考えてみると、あり得ないような事なのだが、読んでいる時は
 納得させられてしまう。
  ・凶器となった額縁入りの絵、その絵は偽物??
  ・殺人があった駅から離れた喫茶店で、良太と有紗は犯人と思われる男と
   会っていた・・・。
  ・浮気調査でお屋敷を見張っていた良太と有紗は、謎の女がやってくるのを
   見た。何事もなく女が去ったと思ったのだが、その家の主人は銃殺されてい
   た・・・。
  ・グランドの真ん中で、ポーガンで胸を打たれて死んでいた監督。足跡は監督
   のものだけだった・・・。
 新しいコンビの誕生!。4つの話はとても面白く読めた。
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内容紹介から
 名探偵は小学生! ?
天才探偵少女とヘタレ三十男の迷コンビが難事件に挑む! 
東川篤哉、最新ユーモア・ミステリ! 

就職先のスーパーを誤発注した大量のオイルサーディーンとともにクビになり、
地元で「なんでも屋タチバナ」を始めた、俺、橘良太。 三十一歳、独身、趣味は
ナシ、特技は寝ること。そんな平凡な三十男の俺にある日、子守り依頼が舞い
込んだ。
報酬につられて出かけた豪邸で待ちかまえていたのは、ロリータ服の美少女。
わずか十歳にして自らを探偵と信じる無垢で無謀な少女、綾羅木有紗だった。

「ねぇ、おじさん、あたしのこと、ナメてんじゃないの?」

なんでも屋の良太の前に現れた、探偵を名乗る十歳の美少女?有紗。
有紗に殺人鬼の濡れ衣を着せられた良太は、事件を一緒に調べることになっ
て……。

天才探偵少女とヘタレ三十男の迷コンビが難事件に挑む、
東川篤哉、最新ユーモア・ミステリ! 

 


  
 

 法坂 一広 (ほうさか いっこう) 
     
    
 1973年 福岡県生まれ。京都大学法学部卒。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
       在学中に司法試験合格。現在福岡県で弁護士として活動中。
      保坂晃一として応募した「エンジェルス・シェア」が第10回「この
      ミステリーがすごい」大賞受賞。
      弁護士探偵物語は単行本化のために加筆したもの。
                  
弁護士探偵物語

天使の分け前

 

 面白いと思って読み進めたが、最後まで読んで満足感があまりな
 かった。
 ユーモアのための「減らず口」もだらだら最後まで続く。
 警察がはじめから緻密なきちんとした捜査をしないのも不満である。
 そのため、後追いの形で次々と矛盾が露出し、主人公の名推理?
  が披露されることになる。
 妻と子どもを殺された医師の寅田が登場するが、これが非常に中
 途半端な役どころ。寅田を活かしてくれるのかと期待したのだが・・。
 「大賞選評」が巻末に載っているが、この本への辛口コメントもある。
 司法と検察、弁護側の馴れ合いを糾弾する・・・・この点は良いのだ
 ろう。
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 内容説明から
 舞台は福岡。母子殺害事件の被告人を信じた弁護士の「私」は無罪
を主張するが、裁判所は聞く耳を持たない。被告人を救おうとした「私」
は業務を一年間停止する処分を受ける。
 復帰後、別居中の夫に生活費の請求をしたいという美女の依頼を受
けるが、連続する殺人事件に巻き込まれていく…。 
 


 井上 直登 (いのうえ なおと) 
     
    
 1959年 神奈川県生まれ。東海大学工学部卒。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
       会社員を経て、放送作家となる。
 1999年 「T・R・Y(トライ) 北京詐劇」で第19回横溝正史賞正賞受賞。
                  
T・R・Y(トライ)

 北京詐劇

★★★

 

 袁世凱を詐欺によって皇帝にし、その後引きずりおろすという・・・
 奇想天外な詐劇に取り組む井沢とその仲間たち。
 これは面白い。
 ただ、ちっょと長い。
 今の本に多い「すき間」の多い文を読みなれていると、びっしり詰ま
 ったページはきつい。
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 内容紹介・データベースから
 国家と時代を騙したあの天才詐欺師、伊沢修が帰ってきた! 
1916年、詐欺師と革命家が暗躍した熱き時代。混乱の中国、その
覇権と財宝をめぐり、策を弄する日本人がいた。
 横溝正史大賞正賞受賞の大ヒット作「T.R.Y.」の伊沢修、新たなるミ
ッションは北京「袁世凱を騙せ。」 

 総統に、皇帝の座を。詐欺師には、財宝を。甲骨文字に隠された謎、
壮大な宴席。華麗なる駆けひきが、中国の未来を変える!天才詐欺師、
伊沢修が帰ってきた!歴史冒険エンタテインメントの大傑作。 


 

 
  

 天野 節子 
     
    
 1946年 千葉県生まれ。短大を卒業後、20年間幼稚園教諭を勤め、
       20年間幼児教育教材会社に勤務。
 2006年 はじめて執筆した小説「氷の華」を自費出版。
      その後、文庫化され35万部を超えるベストセラーとなる。
2008年 「氷の華」がドラマ化された。主演は米倉涼子。

      62歳の大型新人として注目を浴びた。
      その他の著書に「目線」「烙印」がある。

                  
彷徨い人

★★★

 

 ミステリーとしては一級品である。
 ひき逃げ事件の被害者(妻)が、日光からの旅行後、行方不明にな
 った女の同級生だった・・・そんな偶然があるだろうか・・・清水刑事
 がもった違和感から始まる追及。全くの仮設をもとに真実に辿り着こ
 うとする刑事の姿、少しずつ真実が見えてくる・・・ミステリーを読む
 醍醐味がこの本にはある。
 認知症になった母、その母の思いを大切にする息子。(行方不明に
 なった片岡葉子は義理の妹)
 夫婦、友達のあり方・・、登場人物の考え方や行動も興味深い。
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 内容紹介・データベースから
 ベストセラー『氷の華』『目線』の著者が描く、慟哭のミステリー。
 高級住宅地で起きたひき逃げ事件、そして旅行先で起きた失踪事件。
 全く別の場所と時間で起きた2つの事件のつながりが、二人の刑事に
 よって明かされる。
 なぜ、母親想いの人間が、人を殺めたのかーー。その犯罪の裏に隠
 された悲痛な犯人の動機とは?
氷の華
 

★★★


























 

 飽きさせず読ませる手法は見事である。
 推理・サスペンスの見本のような一冊である。

 両親が残した遺産や、アパート・駐車場の賃貸料などがあり、優雅に暮ら
 す瀬野恭子。夫は叔父が重役を務めていた大会社の部長。
 何一つ不自由のない恭子のところに突然の電話があった。
 夫りの愛人・関口真弓と名乗ったその女は、恭子の不妊症を馬鹿にし、
 重役だった叔父が亡くなった今、恭子の利用価値はなく、夫は別れるつも
 なのだと言い切った。
 恭子は関口真弓を憎み、そのアパートに忍び込んで、ジュースに農薬を混
 入させた・・・。
 殺人を犯した恭子だが、証拠は何一つ残さず万全だった。しかし、それにし
 ても、写真を見た関口真弓は美しくはない。性格も地味で人づきあいが悪
 い。そのうえ、アパートに男の痕跡が少ない。夫は果たして関口真弓と関
 係があったのか。恭子の疑問は広がる。
 夫は外国に出張中だった。誰が自分をおとしめたのか・・・・。
 戸田刑事の執拗な調べと、さまざまな場所、場面の指紋調べが続く・・。
 やがて夫が結婚以前に付き合っていた「和歌子」が浮上。この女は?
 一転、二転。最終章も眼が離せない。
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内容(「BOOK」データベースより)
 女の意地と虚栄が作り上げた完全犯罪が… 
 「誰にも屈しません。もちろん警察という権力にも!」
 それが、犯人がこの世に突きつけた挑戦状

 鉄壁のアリバイ ゆるぎないトリック 息詰まる心理合戦
 
 練馬区桜台6丁目×番×号、グリーンハイツ205号室で発生した関口真弓
 毒殺事件。犯人を追う戸田警部補の眼差しは、いつしか彼女の上司であ
 る営業部長に注がれるが…。サスペンスが踊る本格推理小説。 


 


 斉木 香津 
     
    
 大分県生まれ。横浜市立大学文理学部卒業。
 2008年 「千の花になって」が第9回小学館文庫小説賞を受賞。
      「凍花」は二作目。
                  
 凍 花

(いてばな)

 小説を読む目的は何だろう。
 この本を読みながら考えてしまう。
 衝撃作である。一気に読ませられてしまったが・・・。

 近所でも話題の美人三姉妹。その長女が次女を殺害。
 大切な人形を投げられ逆上したのがその理由だという。

 長女の知られざる人間性が次々と明らかになる展開がこの本の
 中核をなしている。長女は真面目を絵に描いたような良い子だっ
 たが、友達は誰もいない。三女が見つけた長女の日記には驚く
 べき姉の性格や孤独感が書かれていた。
 人の思いを考えすぎ、自分を押し殺しすぎるため、誤解されて
 いじめを受けた日々。それは家族に対しても同じだった・・・。

 本を読み終わった後に何が残るか。
 「このようなこともあるのだ」
 「衝撃。人間の生き方について深く考えさせられた」
 「非日常的、こんな姉にも理解者はいる、殺人に至らなくても・・」
 いろいろあるだろう。
 私は『だから、どう生きればよいか』それが読書の最終目的であ
 ると思う。
 読後に生きる勇気と力を与えられる・・・そんな本を読みたい。 
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 内容紹介から
 なぜ、妹を殺したのか?3人姉妹の長女は次女を殺害した。長女は
自首し収監されるが、面会は断り心情は誰にもわからない。
 今まで当たり前にいた2人の姉を失った私はある日、1冊のノートを
見つける。それは長年、長女がつけていた日記帳だった……。
 サスペンスとミステリーが融合した書き下ろし長編小説。 

幻 霙

(げんえい)

 図書館の新刊紹介に
 「哀しく切ないミステリー」とあった。この文に惹かれた。
 「いつ切なくなるのか?」
 その想いを抱いて、諦めずに最後まで読んだが・・・切ないというより
 「何だろう、これは」という戸惑いと失望が残った・・。
 人間は暗く沈んでいくものだ・・・ということが?しっかり描かれてい
 る。
 生き方を模索している人、勇気と力を求める人には読んでも意味が
 ない本だろう。
 主人公の一人・桃里は自分の話に耳を傾けてくれる蒼太に好意を
 持ち、自分のアパートに入れる。蒼太がグラフィックデザイナーにな
 り、自分と結婚していることを夢見て。そして、自分も派遣をやめて
 ショップ店員として採用されることを望んでいる。
 一方蒼太は・・・。話を聞くのは誰にでもよく思われたいだけで、桃里
 を特別な存在と考えているわけではない。
 そして・・
 無差別殺傷事件の犯人・三浦のことを気にしだした蒼太。
 次第に驚愕の事実が明かされていく・・・。

 桃里の一途な姿に共感を覚え、願いが叶えられるようにと思って読み
 進めたのだか・・・。
 小学館文庫小説賞を受賞した作家というイメージも、違っていた。
----------------------------------------------------
 内容紹介から
 蒼太は、川崎の倉庫で派遣アルバイトとして働いていた。
 本来ならグラフィックデザインの会社に就職するはずだったが、人員
 に空きが出るまで待たなければならなかった。
 桃里は、川崎の倉庫へ派遣アルバイトとして働きにきた。洋服屋の
 ショップ店員だったが厳しい販売ノルマや人間関係がうまくいかず、
 どこのショップも長続きしなかった。
 蒼太と桃里は出会い、一緒に暮らし始めた。
 ある日、ニュースで流れた無差別殺傷事件の映像を見て、桃里はそ
 の犯人と蒼太が似ていると言う。
 思いがけない桃里の言葉に動揺する蒼太。自分と犯人の類似点を
 見出そうとする蒼太に、桃里は違和感を抱いていく…。 
 蒼太には、誰にも知られたくない過去があったのだ。
 デビュー2作目の『凍花』がベストセラーとなった著者の書き下ろし
 長編ミステリー。 


 
 


 西澤 保彦 
     
    
1960年 高知県生まれ。アメリカ・エカード大学卒業。
      大学卒業後帰国し、高知大学経済学部教務助手、
      土佐女子高等学校講師などをつとめる。
1990年 第1回鮎川哲也賞最終候補を経て、
1995年 「解体諸因」でデビュー。
                  
 ぬいぐるみ

警部の帰還

 稲葉博一・「忍者列伝」 佐藤青南・「ジャッジメント」などと並行して
 読んだら、ちょっと物足りなくなってしまい、途中でリタイア。
 躍動感のある、情感あふれる、または、深まる謎、続きを読まずに
 はいられない・・・そんな本を読んでみたい。
 上記二編に圧倒された後だったので・・・。
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 内容紹介から
 殺人現場にぽつんと遺されていたぬいぐるみ。ぬいぐるみは、何を語
 る?イケメン警部・音無の密かな楽しみは、ぬいぐるみを愛でること。
 遺されたぬいぐるみから優れた洞察力で事件解決の手がかりを発
 見する―。
 そしてその音無にぞっこんの則竹女史。さらにミステリオタクの江角刑
 事や若手の桂島刑事など、個性派キャラが脇を固める、連作短編集。
 「腕貫探偵シリーズ」でブレイク中の著者が新たに放つユーモア推理。

 


 川上 弘美 
     
    
1958年 東京生まれ。高校の生物科教員などを経て、
1994年 短編「神様」でパスカル短篇文学新人賞を受賞。
1996年 「蛇を踏む」で芥川賞受賞。
2007年 芥川賞選考委員として参加。
2011年 谷崎潤一郎賞、三島由紀夫賞の選考委員。
                  
 晴れたり曇ったり
50近くの短文を綴ったもの
日常の事、記憶、自然などへの思いを書いている。
小説に慣れたしまったので、インパクトが無く、リタイア・・・。
------------------------------------------------
 内容紹介から
 日々の暮らしの発見、忘れられない人との出会い、大好きな本、
 そして、「あの日」からのこと。
 いろんな想いが満載!最新エッセイ集。 

 「もういない、でもまだいる」 この前、好きだったひとを、みかけた。
 まちがいない。会いたいと思いながら会えなかった人に、ようやく
 会えた。そう思ったとたんに、その人がもうなくなっていることを思
 いだした。
 「ぬか床のごきげん」 ぬか床には四種類の期限がある。笑うぬか
 床、慇懃なぬか床、怒るぬか床、そして淋しがるぬか床。
 「真夜中の海で」 大学では生物を勉強した。私の卒業研究は、
 「ウニの精子のしっぽの運動性」だった。
 「晴れたり曇ったり」 大学時代、バスの窓越しに見かけた喫茶店
 「晴れたり曇ったり」。一度訪ねてみたいと思いつつ、いくことはな
 かった。 


 有栖川 有栖 
     
    
1959年 大阪府生まれ。同志社大学法学部卒。
1989年 「月光ゲーム」で作家デビュー。
      書店勤務を続けながら創作活動を行ない、
0994年 作家専業となる。
2003年 「マレー鉄道の謎」で、第56回日本推理作家協会賞受賞。
2008年 「女王国の城」で、第8回本格ミステリ大賞受賞。
      推理作家・有栖川有栖と犯罪学者・火村英生のコンビが活躍す
      る「火村シリーズ」は開始後20年を超える今も人気を誇るロング
      シリーズとなっている。
                  
 怪しい店
 図書館の新刊コーナーで紹介されていたので読んでみた。
 わりと有名な作家であるが、これまで読んだことがなかった。
 偏屈な骨董店の店主が殺される・・・謎が多く、十分期待がもてたが、どうにも
 スムーズに読むには向かない文体についてゆけず・・・リタイア
 特に森村誠一の、隙のない文を読んだ後だったので。 
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 内容紹介から
 骨董品店で起きた店主殺人事件、偏屈な古書店主を襲った思いがけない災難、
 芸能プロダクションの社長が挑んだ完全犯罪、火村が訪れた海辺の理髪店で
 のある出来事、悩みを聞いてくれる店“みみや”での殺人事件。
 「どうぞお入りください」と招かれて、時には悪意すら入り込む。
 日常の異空間「店」を舞台に、火村英生と有栖川有栖の最強バディの推理が冴
 える。極上ミステリ集。   

 


 新井 千裕 
     
    
1954年 新潟生まれ。男性。
      早稲田大学法学部卒業。新宿区役所職員、コピーライターを経て、
1986年 「復活祭のためのレクイエム」で第29回群像新人文学賞小説部門を受賞。
     著書に「忘れ蝶のメモリー」などがある。
                  
プール葬
 二段になっているが、薄めの本。
 淡々とした語り口。
 嫌になるくらいの世話焼きの看護師のもとでのヒモのような暮らしから逃げ
 した主人公。
 プール監視員の職を得てひと安心だったが・・・。
 別れたはずの女がしつこく追いかけてくる。
 ホームレスを使ってのプールへの嫌がらせ、プールでの猫の水泳・・・。
 最後まで読んだが、インパクトがなく印象の薄い作品。
 ゴミ屋敷の大屋。アパートに住む外国人の水道費無料を利用した洗濯商売
 など話題を織り込もうともしているが・・・。
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 内容紹介から
 猫をつれた放浪老人やひきこもり青年との日々を浮遊して、プール管理員の
 ぬるい生活は徐々に息を吹き返す。喪失と再生をたゆたう物語。

 ぬるい日々に漂う市営プールの管理員。ある日、猫を連れた放浪老人に出
 会い、彼のコーガンに異変が…