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新潮日本文学アルバム「山本周五郎」に書かれていた一節。
『庶民に暖かい眼を注ぎ、練達の手法で名作を描いた周五郎、あらゆる文学賞を辞退し、 読者からの励まし以外に何があるかと公言した反骨の生涯を浮き彫りにする』 これがこの作家のすべてを表しているような気がする。 |
この作家に興味をもったのは「柳橋物語」がドラマ化されたのを
見た時だったような気がする。遙か遙か昔である。白黒の時代 かもしれない。 このストーリーを語ると長い。長いが語ればいつも涙が溢れて やまない・・・。人の生き様や愛を描いた、読者の心の琴線に触 れる物語である。 その後、NHKの大河ドラマにもなった「樅の木は残った」を読み この作家に傾倒した。「おごそかな渇き」「季節のない街」・・次々 に読んだ本は秀作が多かった。 今回、久しぶりに古本屋で見かけた「夜明けの辻」を読了した のをきっかけに、山本周五郎のページを立ち上げた。 |
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江戸中期の尊皇論者、山県大弐と出会ったことから藩の内紛に巻き込まれた二人の青年武士
の、友情の破綻と和解までを描いた初期の中編「夜明けの辻」。元芸妓との結婚を望んだ若者 が、頑固一徹の国家老の伯父を説得するために機略に富んだやり取りをくりひろげる「こっけい 物」の作品『嫁取り二代記』。山本周五郎の文学的精進のあとを伝える全11編。 (解説から) ★★嫁取り二代記 ★遊行寺の浅 ★夜明けの辻 ★梅月夜 ★★熊野灘 ★平八郎聞書 ★御定法 ★勘弁記 ★★葦 ・荒涼の記 |
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この物語は伽羅(めいぼく)先代萩などで名高い伊達創動に取材して原田甲斐を描いた作品で
著者の代表作であるばかりでなく、戦後の文学史を飾る名作である。万治三年七月、藩主陸奥の 守綱宗は老中酒井雅楽頭より逼塞を命ぜられ、伊達六十に万石は騒然として内紛を生じた。 伊達兵部は酒井候と姻戚関係にあり、三十万石の直参大名になる野望を抱いて画策する。事件 の裏にいた原田甲斐は、藩内外のあらゆる陰謀に耐えながら、伊達藩安泰の道を求めて慎重な 計画を進める。 (解説から) 若き頃の平幹二郎が原田甲斐を、栗原小巻が相手役を演じて、大河ドラマの傑作となった。 |
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作者の最晩の短編6つと、絶筆になった未完の長編「おごそかな渇き」がおさめられている。
・滝口 ・醜聞 ・ひとごろし
・へちまの木
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・街へ行く電車 ・僕のワイフ ・半助と猫 ・親おもい ・牧歌調 ・プールのある家
・箱入り女房 ・枯れた木 ・ビスマルクいわく ・とうちゃん ・がんもどき ・ちょろ ・肇くんと光子 ・倹約について ・たんばさん |
小説
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・松の花 ・や竹 ・梅咲きぬ ・不断草 ・藪の蔭 ・糸車 ・風車
・尾花川 ・桃の井戸 ・墨丸 ・二十三年 |
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・おもかげ抄 ・三年目 ・風流化物屋敷 ・人情裏長屋 ・泥棒と若殿
・長屋天一坊 ・ゆうれい貸屋 ・雲の上の霜 ・秋の駕籠 ・豹 ・麦藁帽子 |
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・中央銀行三十万円紛失事件 ・海南氏恐喝事件 ・一粒の真珠 ・新生座事件
・眼の中の砂 ・夜毎十二時 ・毛骨屋親分 ・我が歌終る ・最後の挨拶 |
青べか物語・・ |
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1926年(大正15年) 東京生まれ。
出版社勤務を経て昭和33年寿屋(現サントリー)宣伝部に入り・ 「洋酒天国」の 編者宇社・コピーライターとして活躍する。 1962年 「江分利満氏の優雅な生活」で直木賞受賞。 1972年 「血族」で菊池寛賞を受賞。 1963年 「週刊新潮」で始まった「男性自身」は31年間1614回 に及ぶ。 シリーズ最終回は「江分利満氏の優雅なさよなら」 1996年8月 永眠。 |
優雅な生活 |
パトラッシュさんが師匠のように尊敬されている方だと言う・・。・・・・・・・・・・・・・・・・
昔一度読んだことがあったが途中で止めてしまった。あまり印象にのこらない作家 だったと思う。 今回読み直してみて・・独特の世界がある作家だとわかった。再評価した。 江分利の父親が切実にシビアに語られるところもすごい。 成功し財をなし、やがて不景気で没落。しかし、奇跡的に復活・・また・・ 【カバーの解説から】
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私たちの町にドストエフスキーという人物がいる。額が深く禿げあがり、頬と顎に
ヒゲが密生して、ロシアの文豪を想わせる。通称ドスト氏、その柔和な顔を見ながら 私は言った・・・。 「蒸発しましょう。」 妻や世間から逃れるための、気ままな旅への決意である。 ある時は甲州の山の湯につかり、ある時は宇治に月見の舟を浮かべ、秋田の美 人を探し、吉野の山に花と酔客を見る。 現代日本各地に、自然のあはれ、ユーモアとペーソスの豊かな風流膝栗毛。 (本の解説から) |
上・下 |
作者が実際上一番心をくだいたのは、井崎とホステス瑛子の関係にあったろう・・
ていって、これをたんなる情痴に耽溺した小説ととるのは当を得ない。瑛子という 尋常一様ならぬ魅力をそなえた女の描写は巧妙をきわめたものではあるが、それ は近松秋江的というよりは永井荷風的なのである。 (上巻解説より) 年齢の重みが人の心に与える苦渋を、「人殺し」は小説好きを堪能させるに足る
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昭和9年 東京浅草生まれ。早稲田大学教育学部国語国文科卒。
松竹大船撮影所演出部に勤務後、昭和40年にフリーの脚本家とな り、「岸辺のアルバム」「男たちの旅路」「ふぞろいの林檎たち」など 上質なドラマ作品を次々と発表してきた。 昭和60年、菊池寛賞受賞。 |
異人たちとの夏 | 主人公の原田は妻子と離婚し、仕事場にしていた7階建てのマンションに・
一人で住んでいる。東京環状8号線に面した、車の流れはあるが、閑散とし た所。主人公の仕事は作者と同じ脚本家である。 ある日気がついてみたら、他の部屋はほとんど事務所に使われていて夜 になると誰も住んでいないことがわかった。ただ一人三階に住む藤野桂を除 いては。この藤野桂が突然原田の部屋のチャイムを押したことから、出会い が始まる。 また、ある日、一人の誕生日の寂しさを紛らわすために生家近くに生き、ふ らり入った浅草演芸ホールで、父親そっくりと男に出会う。やがて男は原田 を自分のアパートに連れて行く。そこには母親そっくりの女がいた。 懐かしさと安心感で原田は、頻繁にアパートを訪ねるようになるが・・・。 懐旧とロマンと不可解さを漂わせて展開するストーリーの向こうにあるもの は・・・。 |
風が吹く |
映画の世界に惹きつけてくれると思って読んだが・・・
大部屋俳優で、台詞をほとんど言ったこともないも杉山が、資産を出しき って映画を造ってほしいと申し出る。かつてのプロデューサーと、古い監督 に。 素晴らしい展開になると思った。 しかし、杉山の映像を入れたいと無理やり、インタビューなどを(この本の主 役)・香子にさせてカメラをまわしたら・・・そこに映る杉山の顔にはどうみて も精気が感じられない。撮っている時にはそんな雰囲気はちっともないの に。 これはホラーものかと思ってしまった。 「異人たちとの夏」もそうだった・・・。 杉山が亡くなった後、監督やプロデューサーが香子に映画を作ろうと呼び かける。 夢と希望が待っているような終末だが、読んでいてそんな感じはしない。 -------------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 37歳、商社独身キャリアOLの香子は、このところ自分がどこにでもいる 女に思えてしまう。 ありふれた日常、ありふれた孤独、ありふれた屈辱。恋すらしていない。 そんなとき、60代の男中川から映画撮影の現場に誘われた。 生きることの意味を求めて映画に賭ける夢と熱気に共感をこめて描く傑 作長篇。 もう一度、この熱気を信じたい。37歳のキャリアOL香子と、人生の後半を
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読み始めたら、たちまちその世界にはまってしまい、最期まで読み切るはめ に陥った・・・・・・・・・・・。これは面白い。半村SFがコンパクトに現代風にまと |
この作家を読み始めたのは何がきっかけだったのだろう。
よくわからないが、はじめに読んだのは「妖星伝」である。この本の帯の 言葉に惹かれて・・・・・・・。 「神州纐纈城、蔦葛木曽桟・・・・。伝奇小説を手がけたからには、いつの
ところで、この作家は「雨やどり」で直木賞、「産霊山秘録」で泉鏡花賞を
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妖星伝 | 解説から
弱きを啖い、幸せを次の不幸の予兆と見る。予兆と見るが故に、一国も早くその幸せを取り除 き、不幸の中に生き抜くことを教える必要があるのだ。たたかいを休めばたちどころに敵の餌食 とされる。・・・・・・・この星では、生きとし生けるものすべてが他と争い、そして一瞬の勝利のの ちにはやがて他に啖われる運命とならざるを得ない・・・・・。(本文より) 江戸中期、腐敗した幕政をほしいままに操る田沼意次の陰に跳梁し、千年の闇の歴史をもち、
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雨やどり | 舞台は新宿裏通りのバー街。「ルヰ」のバーテンダー仙田を主人公に、彼の前を通り過ぎて行
く、いろいろな男と女の哀歓漂う人間模様を描き出す連作。 直木賞受賞の表題作をはじめ、「おさせ伝説ふたり」「新宿の名人」など八篇を収録。 (解説から) |
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雨やどりがよかったので、同じようなテーマの本をすぐ買ってしまった。
訣れるために出会いがあるのか。人生を素直に進みたくない「待つ女」靖子の前に、俯いた表
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隆夫と信子は南青山のマンションに住み、結婚して三年も経つのに新婚のように仲むつまじい。
二人は寝ている時間まで共有しようと努力し、ついに夢の中で二人きりのゴルフを楽しんだか・・・ ・・・表題作以下、現代を舞台に怪奇譚、幻想譚が縦横にくり広げられる。この世であってこの世 でない半村サイエンス・ファンタジー十二篇。 (解説から) |
平家伝説 | 自家用運転手浜田五郎は、ある春の日の午後、銭湯の主人から、自分の右肩の後ろにある大
きな痣が、「嘆き鳥」と呼ばれることを教えられた。嘆き鳥・・・・・それは、源平の昔、壇ノ浦の合戦 に敗れた平時忠を能登の配所に導いたと伝えられる鳥の名だった。 浜田と出戻りのお嬢さん敏子の運命をあやつる痣の秘密はなにか。 平家物語に想を得た、奔放なロマンのうちに、現代の若者の夢と生活を鮮やかに把えた傑作。 (解説から) |
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半村 良の本の隣にならべてあった「すすきの有影灯」。・・・・・・・・・・
たぶん「雨やどり」がよかったので、おなじような本を探して巡り合った のだろう。 この作家は、「木工場のボイラーたき、炭鉱員、魚の行商、バーテン。 暗い青春の軌跡の末に日本一の大キャバレーの専務となった男」と、 解説にあるから、本業は物書きではないようだ。 しかし、それにしても味のある話が書ける・・・・・。 |
すすきの有影灯 | 札幌すすきの。まばゆいネオンの下、女たちは夜ごと、屈託のない笑顔で男を誘う。
ドレスの胸の奥におびただしい人生をひっそりとかくしながら。 40年間彼女たちとともに生き、限りない優しさと重い哀しみをこめたまなざしで夜の 底をみつめつづけてきた男が拾い上げた「酒と涙と男と女」の物語66話。 (解説から) |
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昭和12年 愛知県生まれ。京都女子高中退。
48歳の時、「演歌の虫」「 老梅」で直木賞受賞 それまでは、五木ひろしの歌などの作詞家として有名であった。 第15回日本レコード大賞作詞(昭和48年) 第2回古賀政男記念音楽大賞(昭和56年) 第5回吉川英治文学新人賞(昭和58年)『プライベート・ライブ』 |
この作家は多才である。多才というよりは「深才」というべきかも
しれない。・ ネオン街に生きる場所を見つけたことから、そこの水に合わせて、 詩( 作詞 )と小説を書いているが違った場に落ち着いたならば、も っと多彩な仕事をしたかもしれない・・・・。 ともかくも、この作家が直木賞を受賞したのは何よりである。 ネオン街に棲む男と女を書かせたら、この人と張り合えるのは
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愛する嘘を知ってますか
いちばん言いたくなかった26項
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愛されかた知ってますか
他人が言わない29項
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椿の館
ネオンの街に棲む男と女が
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1964年東京生まれ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
日本大学藝術学部文芸学科卒。父は批評家・詩人の吉本隆明。 作品リスト 1987年 - 『キッチン』で海燕新人文学賞を受賞。 1988年 - 『キッチン』で泉鏡花文学賞を受賞。 1988年 - 『うたかた/サンクチュアリ』で芸術選奨文部大臣新人賞を受賞。 1989年 - 『TUGUMI』で山本周五郎賞を受賞。 1993年 - イタリアのスカンノ賞を受賞。 1995年 - 『アムリタ』で紫式部文学賞を受賞。 1996年 - イタリアのフェンディッシメ文学賞(35歳以下部門)を受賞。 1999年 - イタリアのマスケラダルジェント賞文学部門を受賞。 2000年 - 『不倫と南米』でBunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞。 2003年 - 筆名をよしもとばななに改名 (Wikipediaから引用しました。) |
TUGUMI | 登場人物・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・白河まりあ ・・物語の語り手。 父の愛人である母と一緒に旅館に住み、つぐみと出会う。 ・山本つぐみ 作者の言葉を借りればつぐみは私です「」ということになる。 生まれつき体が弱かったために我儘いっぱいに育てられ、周囲を困惑の渦に 陥れている。 ・つぐみの姉・山本陽子 ・武内恭一 ・まりあの母・・・愛人であることで落ち込むこともない芯の強い女性。 ・まりあの父・・・週末に東京から西伊豆にやってくる。まりあと母のために、先妻と 離婚しようと努力しついに成し遂げる。 |
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森瑤子
1940年11月 静岡生まれ。芸大・器楽科卒。ヴァイオリンを学ぶ。 1978年 「情事」により、第二回すばる文学賞受賞 「別れの予感」「さよならに乾杯」「イヤリング」 他。 山田邦子 1960年 東京生まれ。タレント。 主な著書 「あっかんベーゼ」「結婚式」 |
ホホホのほ | 笑いにもいろいろある。
爆笑、微笑、苦笑、嘲笑、作り笑い、泣き笑い、思い出し笑い・・・。 笑いのプロとプロの作家が、恋をめぐって対談したら・・・。 笑いのエッセンスがすべて詰まった、とびっきりおかしい、トーク& エッセイ。 |
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1970年 福岡県生まれ。熊本大学文学部史学科卒業。
「別れの予感」(第17回すばる新人賞受賞)で デビュー。 |
バスジャック | 不思議なお話を書く作家である。摩訶不思議な短編が散りばめられている。
・二階扉をつけてください
・幸せな光
・二人の記憶
・バスジャック
・雨降る夜に
・動物園
・送りの夏
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鼓笛隊の襲来 | 現実離れしているようで、どこか隣り合わせに存在するような・・・そんな
話が次々と繰り出される・・三浦亜記の本の印象である。 ・鼓笛隊の襲来
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これは難解。
「BOOK」データベースより引用させていただくと次のようになっている。 ある日届いた「となり町」との戦争の知らせ。僕は町役場から敵地偵察を 任ぜられた。だが音も光も気配も感じられず、戦時下の実感を持てないま ま。それでも戦争は着実に進んでいた―。 シュールかつ繊細に、「私たち」が本当に戦争を否定できるかを問う衝撃 作。第17回小説すばる新人賞受賞作。 戦争の場面はなく、主人公が役場から偵察員に任命されたり、役場の 係の女性と一緒に部屋を借りて隣町に住んだり、それに伴う予算措置の 話が出てきたり・・・。 主人公が隣町を脱出する時、スリリングな場面があるが、それも夜の闇 の中なのでよくわからない。いつの間にか戦争は終結。彼女の弟が戦死 したようなのだが、その実感もない・・・。 |
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1962年 北海道生まれ。沖縄キリスト教短期大学卒業
1988年 「出航前夜祭」で第14回新沖縄文学賞佳作 他に「鬼餅寒が駆けぬける」がある。 |
海の階調 | 三部作から成っている。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
明治時代になり、琉球が沖縄となったが、貧しい階層の暮らしは・・・・ よくならない。世の中をかえるために力を尽くす者たち。 ・海の階調 探訪人となった朝伸。 親友の恒有は朝伸の死に遭い、学問を学ぶことを決意する。 ・闇のかなたは 他人との接触が苦手な青山警部。「辻」でジュリとして働くナビー。 ・密告の構図 魚の行商をするチルーは、暗い顔で記憶喪失の5代直高警部補 に会う。 |
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1966年 福岡県生まれ。文教大学女子短期大学部文芸家卒業。
1992年 「ななつのこ」で第3回鮎川哲也賞を受賞してデビュー。 1995年 「ガラスの麒麟」日本推理作家協会賞を受賞。日常に潜 む謎を心温まる筆致で紡ぐ独特の世界は、読者にやさし い息吹を与えてくれる。「いちばんはじめにあった海」は 著者が新境地を切り拓いたひさびさの書き下ろし作品。 |
いちばん初めに
あった海 |
趣味人・・・読書関連の掲示板で最も印象に残った本としてあげ
られていたので、図書館で借りて読んでみたが、今ひとつしっくり こなかった。読み込みが浅いせいかもしれない。詩の世界のよう 雰囲気でちょっと臨場感に欠けるかもしれない。 内容(「BOOK」データベースより) 堀井千波は周囲の騒音に嫌気がさし、引っ越しの準備を始めた。 その最中に見つけた一冊の本、『いちばん初めにあった海』。読 んだ覚えのない本のページをめくると、その間から未開封の手紙 が…。差出人は“YUKI”。だが、千波にはこの人物に全く心当た りがない。しかも、開封すると、「私も人を殺したことがあるから」と いう謎めいた内容が書かれていた。“YUKI”とは誰なのか?なぜ、 ふと目を惹いたこの本に手紙がはさまれていたのか?千波の過去 の記憶を辿る旅が始まった―。心に傷を負った二人の女性の絆と 再生を描く感動のミステリー。 |
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放送作家を経て、1983年より作詞家。現在までの作品数は700曲を超える。
2006年、初の短編小説集「家族の言い訳」を上梓。 |
こちらの事情 | この作家が男性であるというのを「あとがき」を読んで知った。
冒頭に「こちらの事情を口にするとき、それは身勝手な言い 分になってしまうかもしれない。でも察してほしいとき がある。」とある。 この表題にあるような八つの短編が載せられている。 ・靴ひもの結び方 ・妻のパジャマ ・荷物の順番 ・葡萄の木 ・晴天の万国旗 ・甘噛み ・短い通知票 ・福は内 内容(「BOOK」データベースより) 『荷物の順番』―「老人介護施設に預けることにしたから、 母を送り届けてほしい」。兄に頼まれ、正文は辛い役目を 任される。割り切れず、思い悩む正文に、母は諭すように 言う。「正文、人の手はふたつしかないからね。もっと大事 なものができれば、先に持ってたものは手放さなきゃなら ない。世の中は順番なんだから」それでいいんだよと。当 日、施設の車寄せに着き、いよいよ万感胸に迫った正文 は―自分の中の「いい人」にきっと出会える作品集。 |
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1963年北九州市小倉生まれ。武蔵野美術大学卒業。
イラストレーター、ライター、エッセイスト、小説家、絵本作家、 アートディレクター、デザイナー、ミュージシャン、作詞家、作 曲家など多方面で活躍。 「東京タワー オカンとボクと、時々オトン」は著者初めての 長編で、「本屋大賞2006」の大賞受賞。 |
オカンとボクと 時々オトン ★★★ |
秀作である。
「泣き顔を見られたくなければ電車で読むのは危険」 このキャッチフレーズ、確かに的を射ている。 自由奔放に生きる息子を常に温かく見守り、息子のために常に自分を 二の次にしていたオカン。よくわからない職を転々としているオトンと別居 して、女で一つで息子を育て上げたオカン。 花札と料理好きで誰とでもいつの間にか親しくなっているオカン。 そのオカンは60歳を過ぎてガンになり、東京にいる息子とついに同居を 始める・・・。枯れてゆくオカンとみんなとの別れの場面が特に涙を誘う。 |
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1969年生まれ。三重県出身。中央大学法学部法律学科卒。
出版社での勤務やフリーライターを経て、 2008年に「風待ちのひと」で第三回ポプラ社小説大賞特別賞 受賞。 |
風待ちのひと | ペコちゃん・・・伝説の理容師? ペコちゃんに髪を切ってもらうと幸運が舞い込む・・
そんな場面から始まるこの物語。 ペコちゃんと哲司の出会いは、読み手の関心を高めるが・・・。 後半がちょっと惰性に流れる。二人の関係が進展しない。それは仕方がないとして 哲司の妻の動向も今一つ不可解。終末がストレートに繋がってほしかった。 --------------------------------------------------------------- 内容紹介から “心の風邪”で休職中の39歳のエリートサラリーマン・哲司は、亡くなった母が最後に 住んでいた美しい港町・美鷲を訪れる。哲司はそこで偶然知り合った喜美子に、母親の 遺品の整理を手伝ってもらうことに。 疲れ果てていた哲司は、彼女の優しさや町の人たちの温かさに触れるにつれ、徐々 に心を癒していく。 喜美子は哲司と同い年で、かつて息子と夫を相次いで亡くしていた。癒えぬ悲しみを 抱えたまま明るく振舞う喜美子だったが、哲司と接することで、次第に自分の思いや諦 めていたことに気づいていく。 少しずつ距離を縮め、次第にふたりはひかれ合うが、哲司には東京に残してきた妻子 がいた――。 |
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亡くなった妻の残したレシピが、残された夫と娘を力づけるというストーリー。
テーマと登場人物はよいのだが、何かが足りない。構成と文章力か・・・。 -------------------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 妻の乙美を亡くし気力を失ってしまった良平のもとへ、娘の百合子もまた傷心を抱え 出戻ってきた。 そこにやってきたのは、真っ黒に日焼けした金髪の女の子・井本。乙美の教え子だっ たという彼女は、乙美が作っていた、ある「レシピ」の存在を伝えにきたのだった。 |
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深夜バスの運転手・利一。定年も間近になり、余生をどう過ごそうか・・、そんな感じ
でスタートした話だったが、大学院卒で就職した息子は会社をやめ、突然の帰郷、 結婚間近と想われた娘は相手の家族と馴染めない、しかもコスプレに・・・。 そして別れた妻の憔悴ぶり・・・。 日々のくらしで気付かなかった問題に利一はどう取り組むのか。テーマは良い。 しかし、文に切れがないのか、どうにも読みにくい。山場がやってこないまま淡々と 進む。 読後感がしっくりこないのは私だけか・・・。 ------------------------------------------------------- 東京での過酷な仕事を辞め、故郷の新潟で深夜バスの運転手をしている利一。 ある夜、彼が運転するバスに乗ってきたのは、十六年前に別れた妻だった――。 父親と同じく、東京での仕事を辞めて実家に戻ってきた長男の怜司。
突然の離婚で一度ばらばらになった家族は、今、それぞれが問題を抱えて故郷に
家族の再生と再出発をおだやかな筆致で描く、伊吹有喜の新たな代表作! |
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1966年 大阪府生まれ。関西大学文学部独逸文学科卒。
2009年 数奇な運命を描いた「月桃夜」で第21買い日本ファンタジー ノベル大賞を受賞してデビュー。 |
アンチェルの蝶 | 悲惨な物語である。飲んだくれの父親が営む居酒屋で育った藤太は、父親の暴力と・・・
自分の不甲斐なさに苛まれながら育つ。優等生に見えた秋雄も父親のことで苦しんで いた。同級生の森川いずみも同様である。三人の父親は賭けマージャンを繰り返し、 借金に困ったいずみの父親はついに・・・。 やがて三人の父親と坊主が火事で焼死。それを境に三人は会わなくなった・・・。 ある夜、25年ぶりに姿を現した秋雄は、いずみの娘を藤太に預け行方をくらました。 いずみの娘・ほずみと暮らし始めた藤太の前にほずみの父親だという坪内が現れる。 二転三転しながら物語は進むのだが、それにしても救いようがないような悲惨さが漂 う。衝撃作ではあるが・・・。 ------------------------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 河口近く、殺風景な街の掃き溜めの居酒屋「まつ」の主人、藤太。客との会話すら拒み、 何の希望もなく生きてきた。 ある夏の夜、幼馴染みの小学生の娘が突然現れた。二人のぎこちない同居生活は彼の 心をほぐしてゆく。しかしそれは、凄惨な半生を送った藤太すら知らなかった、哀しくもおぞ ましい過去が甦る序章だった。 今、藤太に何ができるのか? 希望は、取り戻せるか? 圧倒的なエモーションで描く慟哭のサスペンス。 |
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1948年 札幌生まれ。
78年から93年までロサンゼルスで暮らす。 主な著書にサスペンス「妻を殺したのは私かもしれない」 「石扉」ベストセラー「借りたカネは返すな!」がある。 また、「あやつられた龍馬」「幕末維新の暗号」「舞い 降りた天皇」の歴史ミステリーはタブーを打ち破り日本 中を震撼させる三部作だが、隠れたベストセラーである。 |
★★★ |
「出版にあたって」(編集部)の一部に次のように書かれている。
【この小説は、奈落の底から這い上がって、深い洞察力と鋭い視点でベストセラーやヒット作を生み 出す作家、加治将一が自分の体験をたっぷり織り込み描いた、ヒーリング・ヒューマンドラマである。】 まさにその通りだと思う。主人公の相川文弥や妻が悩みを印崎にぶつける。それに対する印崎の言 葉の中に作者から読者へのメッセージが込められている。 -------------------------------------------------------------------------- 商品の説明・内容紹介から トラブルが大の苦手、かかわり合いを避け、何事によらず当たり障りのない暮らしを好む相川文弥。 そんな自信のない中年男に次から次へと問題が襲いかかる。息子のひきこもり、娘の放浪癖、突き つけられる離婚、そして突然のリストラ……。 どん底に喘ぐ文弥は、崩壊した家族とともに北海道・伊達への移住を決意し、再出発。そこで出逢 った印崎の言葉で相川家は徐々に立ち直っていく。 絶望の淵から相川家を這い上がらせた印崎の“奇跡のカウンセリング”とは何だったのか? 生きるとは何か? 幸せとは何か? アルトリ岬で出逢った謎の男・印崎学とのふれ合いの中で、文弥は 答えを求めてさ迷い、もがき苦しみながら見つけていく。 「三十点の自分を受け入れる」「自分を<行為>と<肉体>に分ける」などのアドバイスに思わず目から ウロコが落ちる。心がふっと軽くなり、幸せが舞い降りるカウンセリング小説。 |
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1973年生まれ。
著書に「食堂かたつむり」(2011年イタリアのバンカレッラ賞受賞) 「蝶々喃喃」など |
あつあつを
召し上がれ |
新潮社・本の紹介より
この味を忘れることは決してないだろう──運命の料理をめぐる七篇の物語。 母親から丁寧に伝えられたおみそ汁、離れて行く恋人と食べる松茸料理、何も 食べられなくなったお祖母ちゃんに食べてもらえた思い出の一品……。 ある時、ふいに訪れる、奇跡のような食卓。大好きな人と一緒に食べる歓び、 幸福な食事の情景を巧みにくみこんで、ありきたりでない深い感動を誘う、七つ のあたたかな短篇小説。 |
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1958年 福岡県生まれ。ライターとして様々な分野で活躍中。
日本に「本の町」ほ作るプロジェクトに関わる。 また、「ポストに届く分厚い手紙」を標榜するノンフィクション 専門誌「季刊レポ」の編集・発行人もつとめる。 著書に「裁判長!これで執行猶予は甘くないすか」 「全力でスローボールを投げる」 「裁判長!死刑に決めてもいいすか」 ほか多数。 |
学生寮 ★★★
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これは面白い。
ただ面白いだけでなく、自身を見つめ自己の生き方を求める主人公の苦悩も描かれ 読みごたえがある。 学生寮の小林ことコバ、矢吹、そして主人公の秀樹が「コバ部屋」で繰り広げる掛け 合いや肉体のぶつかり合いは抱腹絶倒である。尻の穴が大きいコバの個性も魅力 があり読者を惹きつける。 -------------------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 父親は、48回目の誕生日当日に死んでしまった。大学入学を目前に控えた伊藤は、 父親の会社が持っている独身寮に入寮することになった。ちょっと変わった先輩と、気 楽で楽しい毎日を過ごしつつも、「このままでいいのだろうか?」との思いが頭をよぎる。 そんな時、いつも思うのは父親のことだった。もっと仲良くしておけば良かったと後悔 しつつ、彼は自分の生き方を見詰めていく。著者初の自伝的小説。 |
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1964年 岐阜県多治見市生まれ。明治大学助教授。
1999年 「おばらばん」で三島由紀夫賞 2001年 「熊の敷石」で芥川賞 2003年 「スタンス・ドット」で川端康成文学賞 |
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やはり芥川賞作家である。
落ち着いた文体の中、に登場人物の心情を適格に書き込んでいる。 大きな事件や騒動がが起こったりしないが、読者の心に訴えかける短編が並んで いる。書道教室(送り火)は切ない話をオブラートで包んでいる。 -------------------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 山あいの静かな町、雪沼で、ボウリング場、フランス料理屋、レコード店、製函工場、 書道教室などを営む人びと。 日々の仕事と真摯に向きあい、暮らしを紡いでゆくさま、その人生の語られずにきた 甘苦を、細密な筆づかいで綴る最新短篇集。 川端康成文学賞受賞作「スタンス・ドット」ほか、雪沼連作全七篇を収録。 |
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東京都生まれ。
1998年 「雨女」で第37回オール読物推理小説新人賞を受賞。 2000年 「輪廻 RINKAI」で第7回松本清張賞受賞。一躍、注目を集める。 ホラーやサスペンスタッチの作品を得意とし、女の心理と狂気を描い た独特の作風はファンを魅了してやまない。 |
チャコズガーデン
★★★ |
内容紹介にある「最上階に住まう謎の女・・・」に興味を持って借りたのだが
出だしから中ごろまで、最上階の女ががテーマというわけではない。 夫・秋介に、「絶好のパートナーにめぐりあえた・・・」という理由で簡単に捨て られた?妻の渚。 渚は抜け殻のような生活を送っていたが、住み家であるマンション・チャコズガ ーデンにちっょとした事件が起こり始め、マンションの総会・臨時総会が開かれ ることになり、それらに関わらざるを得ない羽目になる。 ダイレクトメールの増加、不審者、深夜の不審な物音・・・。 そして、マンションの各部屋に立ち入り検査が始まることになった・・・。 これらの事件を通して、渚は幸せに見える人たちが必ずしもそうでないことに 気づいていく。同時にマンションではあっても、住人がそれぞれ協力していくこ との大切さにも。 渚はもとの仕事に復帰するようになり、7階の謎の女の素性も明らかになってい く。作者が新境地とを開いた一冊といわれているが、確かに読み応えがある。 ------------------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) この不可思議なマンションにあなたを引き寄せたのは最上階に住まう謎の女…。 東京・吉祥寺にある瀟洒な分譲マンション「チャコズガーデン」。幸せに暮らしてい るようにみえる住人たちだが、内実はそれぞれが孤独で、誰にも言えない秘密を 抱えていた。 そんなある日、小学生ケイトたちの一家が引っ越してきた。それを機に、マンショ ン内で奇妙な出来事が立て続けに起こった。それはある大事件と、大いなる真実 へと繋がっていく―。 『汝の名』の著者が切り拓く新境地。感動の書き下ろし長篇サスペンス。 |
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1968年 福島県生まれ。東京都育ち。國學院大學文学部卒。
2001年 「大踏切書店のこと」で第1回古本小説大賞受賞。 2011年 「あめりかむら」が第145回芥川賞候補となる。 著書に「月と菓子パン」 「踏切趣味」などがある。 |
きなりの雲 | 同時期に読んだチャコズガーデンと似たところがある。
恋人に去られ、気力の薄れている主人公だが、(編み物教室の先生として、)生徒たち との触れ合いを通して本来の自分を取り戻していく。 サスペンスものと比べるとインパクトに欠けるが、さすがに芥川賞候補の作品である。 文に説得力があり、自然に物語の中に入りこませてくれる。 ------------------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 古びたアパートの住人たち。編みもの教室に通う仲間たち。大切にしていた恋を失くし、 すさんだ気持ちから、ようやく顔を上げたとき、もっと、大切なものが見つかった。 傷ついた心だけが見えるほんとうの景色。愛おしい人たちとのかけがえのない日々を 描き、「群像」発表時から話題を集める著者初の長篇小説。第146回芥川賞候補作。 |
★★★ |
平易な日常を描いているようで、なぜか惹きつけられ読ませられる。
読後感が実に良い。 バスを待つ停留所に立ったり、バスに乗りたくなったりする・・秀作である。 ------------------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 町の景色と人情が心に沁みる石田千連作小説 <いちばんまえの席があいた。となりのおじいさんは、いそいで移動して椅子によじの ぼった。男のひとは、いつまでもあの席が好きでおかしい。> 夫をなくしたばかりのお年寄り、自分の進路に迷う高校生、上司とそりが合わず落ち 込むサラリーマン、合コンに馴染めないOL……、 季節、場所、人は違えど、バスにゆられて「明日もがんばるか」と元気を回復する二十 篇。 第一回古本小説大賞、2011年、12年芥川賞候補の石田千氏の最新小説。 「お洒落なイタリアンより酒肴の旨い居酒屋が好き」「流行のファッションより古着やナ チュラル系の服が好き」という女性を中心に人気を博している小説家・エッセイストの、 人情に溢れ、ほろっときたり、ほほ笑んだりしながら読める物語。 【編集担当からのおすすめ情報】
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1968年 東京生まれ。早稲田大学卒。
1990年 「リズム」で第31回講談社児童文学新人賞を受賞しデビュー。 同作品で第2回椋鳩十児童文学賞を受賞。 「宇宙のみなしご」で第33回野間児童文芸新人賞。第42回産経
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風に舞い上がる
ビニールシート ★★★ |
この作家は素晴らしい。
続けていろいろ読んでみたい。 以下的を得たコメントがあるので・・・・。 ------------------------------------------------------------ 「文芸春秋・担当編集者から一言」から引用 国連の難民事業に携わる里佳は、上司であるエドと恋愛し、7年間の結婚生 活の末、2年前に離婚した。 そのエドがアフガニスタンで死に、立ち直れないでいる里佳を、アフガンでエ ドが救った難民の少女に会ったという記者が訪ねてくる……。 表題作他、我儘なオーナーパティシエのために最高の器を捜し求める秘書、 捨て犬の世話をするボランティア、仏像に魅入られた修復師など、市井でこつ こつと懸命に生きる人たちを描く、ハートウォーミングでちょっぴり泣ける短編集。 |
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1918年 長野県生まれ。県立諏訪高等女学校卒。
1939年 気象庁勤務の藤原寛人(新田次郎氏)と結婚。 新京観象台に赴任の夫と渡満。 1946年 帰国。後、病床で「流れる雲は生きている」を 執筆。 著書に「灰色の丘」 「三つの国境線」などがある。 |
流れる雲は
生きている |
小学校高学年から中学生向けに書かれた本で読みやすかった。
大人が読んでも心に大きな衝撃を受け悲しみが沁み入る。 新京を出てからの一年に及ぶ信じられない程の壮絶な逃避行が 描かれている。 夫と離れ、二人の男の子と生まれたばかりの女の子を抱えて、 何としても日本に帰らなければと思う主人公だが、所持金もなく なり、傷ついた身体を抱え、幾度も死を覚悟する。 ------------------------------------------------- 出版社/著者からの内容紹介 昭和二十年八月九日、ソ連参戦の夜、満州新京の観象台官舎。 夫と引き裂かれた妻と愛児三人の、言語に絶する脱出行がここから 始まった。 敗戦下の悲運に耐えて生き抜いた一人の女性の、苦難と愛情の 厳粛な記録。 戦後空前の大ベストセラーとなり、夫・新田次郎氏に作家として立 つことを決心させた、壮絶なノンフィクション。 |
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1987年 東京都生まれ。東京電機大学工学部卒。・・・・・・・・・・・・・・・・
2009年 「ベンハムの独楽」で第5回新潮エンターテインメント大賞受賞。 |
夏休みの
拡大図 |
内容紹介に青春ミステリーとあったので、初めての作家だが読
んでみた。 印象は・・・「引っ越し荷物の整理」のお話かと思った。 なぜか同級生だった変人・木嶋も手伝いに来ていて、3人は、ち
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1945年帯広市生まれ 埼玉大学理工学部中退
翻訳家、詩人として執筆活動を始める 1988年 「スティル・ライフ」で芥川賞受賞。 1993年 「母なる自然のおっぱい」で読売文学賞を 「マシアス・ギリの失脚」で谷崎尚受賞。 |
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6分の1ほど読んだところで、次の予約の本が入りリタイアした。 |
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1955年 金沢市生まれ 金沢短期大学卒・・・・・・・・・・・・
銀行のOLなどを経て、 1984年 「海色の午後」で第3回コバルト・ノベル大賞受賞 2002年 「肩ごしの恋人」で第126回直木賞を受賞。 等身大の女性たちを主人公にした恋愛小説とエッ セイは多くの読者の共感を得ている。 |
★★★ |
この本は凄い。
プロの作家が壮大な構想を立て、読み手の興味を惹くことを重視しながら 丹念に描き切った力作である。 これまで読んできたミステリーや軽妙なタッチの本とは異なる。 さすがは直木賞作家と納得させられた --------------------------------------------------------- 内容説明から 1973年11月、浅間山での出来事が18歳の二人の少女と一人の少年の 運命を変えた。事故の重みを胸に秘め、大人へと成長してゆく三人。 著者が自らと同年生まれに設定した主人公たちの18歳から49歳までの人 生の軌跡を描く、すべての世代に贈る31年間のラブ・ストーリー。 |
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この作家の本は本当に読みやすい。
3回も結婚と離婚を繰り返す「るり子」と、それを冷静に見つめながら恋や 結婚に踏み込めない「萌」。今回は幼なじみで何故か離れ難い二人を描い ている。 この二人の考え方はちょっと理解できないところがあるが、こういう生き方 もありかと思いながら読んだ。 母が再婚したのを受け入れることができず家でした15歳の崇。 海老が食べられない男・柿崎。柿崎の出入りするゲイバーの文ちゃん。 書店経営のリョウなども登場する。 テレビドラマにもなったという。 --------------------------------------------------------- 出版社 / 著者からの内容紹介から 等身大の女性を描く、第126回直木賞受賞作。 女であることを最大の武器に生きる「るり子」と、恋にのめりこむことが怖い 「萌」。 対照的なふたりの生き方を通して模索する女の幸せ探し、新しい家族のあ り方を描く。 |
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1963年 山口県生まれ 広島大学医学部総合薬学科卒
1996年 「薔薇の妙薬」で第2回講談社ホワイトハート大賞 エンタテイメント部門優秀賞。 「長安牡丹花異聞」で松本清張賞受賞。 |
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7編の連作。
半分読み終えたのだが、そこそこの面白さ。 次の本の予約があり、リタイア。 --------------------------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 平凡なサラリーマンの「ぼく」こと海老野が勤める会社の近所に、突如できた小さな美術館。 居心地のよさと旨いコーヒー目当てに常連となった海老野は、引退した館長に代わってやっ て来た川原姉妹の姉・菫子に一目惚れする。 来館者から持ち込まれる不可思議な謎を解いて菫子を振り向かせようと、生意気でオタクな その妹・あかねの力を借りつつ奮闘を重ねるが…。 恋する一青年が、美術館専属の探偵となって活躍するほんわかミステリ連作集。 |
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1961年生まれ 岐阜県出身 会社員を経た後、
2009年、「さよならドビュッシー」で第8回「このミステリーがすごい」 大賞受賞でデビュー。 このとき、史上初めて二作同時に最終選考に残った「連続 殺人鬼カエル男」も後に刊行され話題を集める。 著書に「要介護探偵の事件簿」「贖罪の奏鳴曲」など |
おまかせ
★★★ |
お見事という感じ。
読んで面白い、謎が明かされるのをワクワクと待つ・・そんな小説の典型である。 「謎解きはディナーの後で」に似たところがある。 ミス・マーブルの小説のように、おばあちゃんが難事件の謎解きをしてみせる。 謎はわかってみれば大したことがない。 現実にはありえないような回答でもある。 ・自らの拳銃から発射された弾で殺人が行われたために逮捕された、かつての上司の
最終章で、葛城に協力してきた円、そのおばあちゃん「静」の秘密が明かされる。 |
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「しあわせなミステリー」に収録された一遍。
産業廃棄物の処理場を村に誘致し、活性化を図ろうとする地元の 会社や役場の職員と戦う教師の夏美。 工事が進められようとする時に起こる大風。 父親が鉱山技師、灰色でだぶだぶのジャケットを着た高田先生(産休の講師) に、夏美が言う。 「あ、あなたは、風の・・・」 これはパロディーかと思ってしまった。 |
ドビュッシー
★★★ |
この本を読んで、ドビュッシーやショパン、ベートーベンの世界、またピアニストに興味
を持たせられた。 ミステリーということで、最後に思いがけないドンデン返しが待っていたのも良かった。 それにしても、この本はやはり音楽の世界への誘いを目的に描かれた感じがする。 『楽器が同じで譜面が同じでも、作り出される音楽は全くの別もの・・』 この意味が全編を通して伝わってくる。 音楽ものの秀作である。 全身火傷から立ち直る遙を指導する岬洋介。司法試験に合格しながらピアニストに なったこの男を通して「ピアニスト」が語られる。この設定も良い。 ---------------------------------------------------------- 内容紹介より 第8回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。選考委員が大絶賛した話題の感動作! 行間から立ち上るドビュッシー「月の光」や、ショパン「エチュード 10-1」の美しい旋律。 ピアニストを目指す少女、殺人、そして驚愕のラスト! ピアニストを目指す遥、16歳。両親や祖父、帰国子女の従姉妹などに囲まれた幸福な
(最終選考委員コメント)
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ラフマニノフ ★★★ |
さよならドビュッシーが良かったので続けて読んでみた。
名器ストラディバリウスが紛失した。 警備の厳重な保管庫から忽然と姿を消す・・ここから物語が始まる。 ラフマニノフのピアノ奏者の第一人者である、柘植彰良が学長をつとめる愛知音大を 舞台に起こる事件と、 ラフマニノフのピアノ協奏曲の概要、演奏の盛り上がりなどが 主となっている。音大を出ても就職先は少ないこと、音楽の道に進むことのできる者が 非常に少ないことも語られ。 読後にクラシックを聴きたくなる、そんに一冊である。 ---------------------------------------------------------- 内容紹介・内容(「BOOK」データベースより) 第8回『このミス』大賞受賞作『さよならドビュッシー』の作家・中山七里氏の第2作目
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★★★ |
この作家の本はどんどん読ませられる。
何の変哲もない、夫殺し。妻は刺殺現場の浴室にいたところを義父に発見され 犯行を認める。凶器もある。動機は会社をリストラされ、働かず、自室に引きこもって しまった夫。インターネットを使った株取引の失敗。多額の借金。しかも家族に暴力を 振るう・・・。 最初の弁護士はほとんど力を尽くさず、減刑を望んだのみ。 この裁判の弁護を奪い取るようにして担当した御子柴は何を考えているのか。 初審で無罪を主張する御子柴。 それは作戦なのか真実なのか。 事件後、部屋に閉じこもってしまった長女、御子柴の事務所にやってきた行動力のあ る次女・・まだ少女の二人の面倒を見ることになった元教師の義父・・。 目を離せない公判。 最後のどんでん返し。 御子柴は実は・・・だったのだ。 ---------------------------------------------------------- 内容紹介・内容(「BOOK」データベースより) 少年犯罪の過去を持つ“悪辣弁護士”御子柴礼司が甦った!
豪腕ながらも、依頼人に高額報酬を要求する“悪辣弁護士”御子柴礼司(みこしばれい
書店員さんより大反響! 二転、三転する法廷が進むにつれ明かされる過去。
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★★★ |
凄いのひと言。
中山七里は傑作「さようならドビュッシー」を書いているが、この一冊も負けず劣らず。 物語の緻密な構成、ストーリー性、どんでん返し、そして、読み手を離さない文、 人間性溢れるテーマ・・・ 類いまれな書き手である。 冤罪がテーマなのだが、それだけにとどまらない。 容疑者の自白を無理やりさせた刑事・渡瀬。年配刑事の片棒を担いだだけなのだが 冤罪に関わったのは紛れもない事実。 その渡瀬と、正義派の検事・恩田、厳しく自分を律しながら裁判に臨む判事・高遠寺静を 絡ませ、法の番人の在り方を問う。 「権力を持つものは、真摯でなければならない」 青臭い正義・・・この言葉が見直されなければならないだろう。 「静おばあちゃんにおまかせ」が、この本に出てくる高遠寺判事の退職後姿というのに
正義とは? 真実とは? 人の真理を暴くのは、はたして法をつかさどる女神テミスが持つ
『連続殺人鬼カエル男』や『贖罪の奏鳴曲』などで中山ファンにはおなじみの渡瀬警部が
『どんでん返しの帝王』の異名をとる中山七里が、満を持して「司法制度」と「冤罪」という、
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2012年 群馬県生まれ 早稲田大学文化構想学部在学中に
「鳥に単は似合わない」で第19回松本清張賞受賞。 |
似合わない |
うーん!
年代的に読む本を間違えたか・・・。 松本清張賞受賞ということで、最後までしっかり読んだが今一つ臨場感と 盛り上がりがない。 時代設定と、架空の舞台は面白い。 それでどうなるのかと、先が楽しみで読み進めるのだが、意外な展開や 心沸き立つ展開がない。 最後は、こちらが望まないような括り方で終わる。(好みの問題だろう) 少女向けの劇画をみている感じだった。 -------------------------------------------------------- 内容説明 松本清張賞を最年少で受賞、そのスケール感と異世界を綿密に組み上げる 想像力で選考委員を驚かせた期待のデビュー作は、壮大な時代設定に支 えられた時代ファンタジーです。 人間の代わりに「八咫烏」の一族が支配する世界「山内」では、世継ぎであ る若宮の后選びが今まさに始まろうとしていた。朝廷での権力争いに激しく しのぎを削る四家の大貴族から差し遣わされた四人の姫君。春夏秋冬を司 るかのようにそれぞれの魅力を誇る四人は、世継ぎの座を巡る陰謀から若 君への恋心まで様々な思惑を胸に后の座を競い合うが、肝心の若宮が一 向に現れないまま、次々と事件が起こる。 侍女の失踪、謎の手紙、後宮への侵入者……。峻嶮な岩山に贅を尽くして 建てられた館、馬ならぬ大烏に曳かれて車は空を飛び、四季折々の花鳥風 月よりなお美しい衣裳をまとう。そんな美しく華やかな宮廷生活の水面下で 若宮の来訪を妨害し、后選びの行方を不穏なものにしようと企んでいるのは 果たして四人の姫君のうち誰なのか? 若宮に選ばれるのはいったい誰なの か? あふれだすイマジネーションと意外な結末――驚嘆必至の大型新人登場に ご期待ください。 |
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1975年 長崎県島原市出身。熊本大学法学部除籍。
元ミュージシャン。 2010年 「ある少女にまつわる殺人の告白」で 第9回このミステリーがすごい!大賞の優秀賞を受賞。 著書 「ある少女にまつわる殺人の告白」 「消防女子!!女性消防士・高柳蘭の誕生」 ※この二編の読者感想(Amazon)はあまり高くない。 |
★★★ |
読書の醍醐味と読後の清涼感が漂う、最高傑作である。
感動する本に入れた。 冒頭、高校生の主人公らが野球部の部室で喫煙する場面がある。
殺人容疑で逮捕された元エースと、控え投手だった新米弁護士。
人気プロ野球チーム「東京アストロズ」の監督・榊龍臣が殺された。
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知っている ★★★ |
これは面白い。
「落としの名人」楯岡の被疑者とのやり取りが圧巻。 相棒の西野刑事をもうまく取り込んで、被疑者を落とす・・・。 初めは占い師に自分のことを占ってもらい、その占いの見事さに 感嘆するところから・・・。 --------------------------------------------------- 本の解説から 仕草から嘘を見抜くキネシクス刑事・エンマ様こと楯岡絵麻。 人気占い師の予言通りに殺人事件が起こり、警察は占い師を疑 うが、犯行を否定し、動作からも嘘は感じられない。 自らに霊能力があると信じる被疑者に、絵麻はある可能性を見出 す・・。 |
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1960年生まれ。兵庫県神戸市出身。
筑波大学第二群比較文化学類卒 現在、長崎県五島市在住。 2012年 「おしかくさま」で第49回文藝賞を受賞。 著書に「競馬の国のアリス」「お洋服はうれしい」と いった競馬・ファッションに関するエッセイなどがある。 |
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うーん!作者の意図はわからないでもないが・・・。
それを読み手に感動を持たせて伝えることが作家の使命なのではないか。 高校の国語教師だったパパや、パパをおしかくさまの遣いと勘違いした老
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1976年 兵庫県生まれ。その後、福岡県、千葉県、宮城県などに住む。
明治学院大学文学部芸術学科卒業。 2006年 「風化する女」で第102回文學界新人賞を受賞。 2008年 「月食の日」で第139回芥川賞候補となる。 |
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直木賞候補になった作品も書いているので文に深みがあり、読み手に豊か
な情感を与えてくれる。 内容については、うーん!! 恋人が薬を飲んで自殺を図る(確かではない)。 その場で救急車も呼ばず立ち去った主人公は、人目を避け、次々と名前を 変えて生きていく。 まるで犯罪者の逃亡生活である。 恋人の死が事件になっているか、定かではないのである。 本業の美容師も辞め、連れ込み旅館の受付をし、自ら望んで絵のモデルも つとめる。 旅館の主の死を発見するが、そこからも去る。 「いままでもこれからも、知らない町から町へ流れ去っていくことだけは
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1957年 静岡県浜松市生れ。
1990年 「楽園」で日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞 1991年 「リング」反響を呼ぶ。その続編「らせん」で 吉川英治文学新人賞を受賞 |
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これが「リング」を書いた作者だろうか・・。
解説でこの作家の友達(作家)が言っている。 ここにある7つの話は家族の愛や絆を大切にするものである。 心優しい作家・・そんなイメージである。 ---------------------------------------------------- 内容(「BOOK」データベースより) 10歳で死んだ妹が人生を幸福に全うする過程を、兄はCGを駆使して 映像にし、悲嘆に沈む父に見せた…「枝の折れた小さな樹」。 両親を失った女子高生と、生後まもない娘を遺して妻に死なれた塾講 師。二人の前にあるシーンが立ち現れる…「サイレントリー」。 打ちひしがれた心が、輝いた瞬間の記憶を頼りに再生していく。人生 をいとおしむ静かな7つの物語。 |
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1956年 福岡県出身。
ミュージシャンなどを経て 2000年 「多輝子ちゃん」で太宰治賞受賞 主著に「青空のルーレット」「セイジ」「帰郷」「信さん」 「ラストシネマ」がある。 |
★★★
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短編風で短時間で読めた。
薄い本ではあるが、中身は濃い。 仕事、家庭、息子への接し方・・。テーマはどこにでもありそうで、格別 変わったものではないが、深く考えさせ、読後に生き方の方向を示して くれる、秀作である。 この作家・・・続けて読んでみたい。 ---------------------------------------------------- 商品内容・形態から引用 仕事中心に生きている宇田川勇一は、父・総太郎が病に倒れたことを 知る。妻、そして心を閉ざしてしまった息子とともに急ぎ故郷・広島へ 帰省するが、脳死状態と医者に告げられた変わり果てた父の姿に絶句 する。 一方で、実家の部屋が纏う空気や呼吸のリズムは、勇一のなかに新鮮 な風を起こし始める。ミシミシいわせながら昇る階段。黒光りする廊下の 板。ガラガラと懐かしい音を立てる古い引き戸。両開きの窓から入り込む 蝉の鳴き声。午後の風に微ぐ柿の葉。 「鳥はええぞお。わしは今度は鳥に生まれてくるけえの」そういっていた 父の言葉がふと胸にのぼる。 |
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1960年 愛媛県出身。
1986年 「白の家族」で第13回野生時代新人賞受賞。 1993年 「孤独の歌声」が第6回日本推理サスペンス大賞優秀作となる。 1996年 「家族狩り」で第9回山本周五郎賞受賞。 2000年 ベストセラーとなった「永遠の仔牛」で第53回日本推理作家協 会賞受賞。 |
★★★
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長編大作を読み切った。読むのにかなり手間取った。
作者の想いがぎっしり詰まった文と内容である。 入院した病院で死んでいく者を見続け、また医師として努力した親友が 過労死するという経験をした静人。 「多くの人々の死にふれ、悲しみを背負いすぎて倒れてしまう」 「何をする気にもなれず、ただ悼んでいる。」 そして、静人は悼みの旅に出る・・・。 作者が精魂を込めて書き切った秀作である。 静人の母がガンで次第に弱っていくが、作者は多数の文献を読み、 その経過を実体験のように子細に書き続けている。(文末に参考文献が 50冊ほど掲げてある。) この作家、名前から伝奇物を書く人と勘違いしていた。 続けていろいろ読んでみたい。 ---------------------------------------------------- 内容・内容紹介から 全国を放浪し、死者を悼む旅を続ける坂築静人。彼を巡り、夫を殺した女、 人間不信の雑誌記者、末期癌の母らのドラマが繰り広げられる。 聖者なのか、偽善者か?「悼む人」は誰ですか。七年の歳月を費やした著 者の最高到達点!善と悪、生と死が交錯する至高の愛の物語。 |
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1979年生まれ。
2009年 第4回ダ・ヴィンチ文学賞大賞受賞作「マタタビ潔子の猫魂」 (メディアファ クトリー)でデビュー。 著書に「海に降る」、「真実への盗聴」 |
★★★
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うーん! 素晴らしいのひと言。
読者のコメントの一説を借りると・・・ 「物語の舞台は日本有数のターミナル・東京駅。 普段あまり気に留めない駅員など鉄道会社のスタッフ、そしてお互い すれ違うだけの何百万人という利用客。無数の人生の物語がふと交 差するとき、新しい物語が生まれる。 確かに、そこには奇跡も含まれるかもしれない。」 東京駅を駅員の立場で見てみたい・・・。そんな気持ちにさせられる珠玉 の一冊である。 鉄道が好きな弟が、電車の最前列(運転席のすぐ近く)で、景色を見な がら倒れ、搬送された病院で亡くなる。 一流企業の女性総合職を目指していた若菜は、一転して鉄道員の道を めざし東京駅に採用される。 弟の危篤を知らされて、倒れた自分を励ましてくれた人が5人いた。 その人たちを見つけ、お礼をいうという目的もあった。 そして、その5人は、物語の中で次々に登場する。 自分を助けたのは、幸福な生き方をしているから・・・そう思っていたのに それぞれに深刻な悩みを抱えていることもわかり、若菜は人間の見方を 広げていく。 列車に飛び込んだ遺体の回収で、出社拒否に陥った犬塚。同期で鉄オ タクの犬塚を復帰させようとする若菜。 ホーム担当で上司?ヤンキーの藤原、改札の上司?由香子。 古顔の出雲、かつて運転士として事故をおこしたこともある助役・・・。 多彩な人物も登場する。 ---------------------------------------------------- 内容・内容紹介から 新人駅員の若菜直は、個性的な同僚たちとアクシデントに七転八倒。 それでも彼女はまっすぐ進む。彼の気持ちを知るために。 「大事なことを三つ言っとく。緊急時は非常停止ボタン。間に合わなけ
臨場感あふれる筆致で駅を支える人と行き交う人を描ききった、書き下ろ
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1978年 大阪府堺市出身。大阪芸術大学文芸学科卒業。
児童文学から一般文芸まで幅広いジャンルで執筆。 2013年 「ハルさん」が啓文堂大賞(文庫部門)受賞 |
★★★
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実に読後感の良い本。
秀作である。 内容紹介がとても詳しいので、概略説明はカット。 高田郁の本と勘違いしそうである。 終章・料理教室の愛子先生が自分の越し方を振り返る場面では、涙が出そう になる。こんな素晴らしい本を書ける作家に出会えて良かった。 ---------------------------------------------------- 内容紹介から 心の空腹、あたたかく満たします。 京都の路地にたたずむ古びた町屋長屋。
☆本書の処方箋(レシピ)☆ 第一話の一皿「縁を結ぶもっちり生麩」
第二話の一皿「頑なな心を溶かすデザート」
第三話の一皿「幸せになるための精進料理」
第四話の一皿「愛情尽くしの粕汁」
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★★★ |
これは良い。実に良い。感動する本に入れた。
妻が早くに亡くなり、幼子を男手一つで育てる物語。 どこにもありそうなお話で、すごい葛藤や快挙があるわけではないが 適当にスリリングであり、父親・ハルさんの戸惑いと心配は続く・・・る ・第1話 消えた卵焼き事件 幼稚園でふうちゃんの友達の隆君の弁当箱から卵焼きがなくなり、 ふうちゃんが疑われるが・・・。 ・第2話 夏休みの失踪 「自分の合わない場所に居るのは大変・・・」と思った4年生のふう ちゃん。 ふうちゃんは近所のおじさんの所から、花の苗を掘り出して・・・ ・第3話 涙の理由 中学生になったふうちゃんがいじめられているのでは・・・。 ハルさんは不安になる。虐められている場合のチェックシートの項 目はふうちゃんにいろいろ当てはまるのだ。そして、ある日、ふうち ゃんが目にいっぱい涙をためていた・・・。 ・第4話 サンタが指輪を持ってくる 高校生になったふうちゃんは花屋でアルバイトを始める。 クリスマスの日、指輪を忘れたお客さんがいた・・・。 ・第5話 人形の家 大学生になったふうちゃんが久しぶりに北海道から帰っていくる。 しかし、「人形がいなくなった」という依頼をうけたハルさんはオーナ へのもとへ出掛けて行く。ハルさんの作った人形が残されているが オーナーは違う人形だという。取り替えられたと・・・。その夜は夫し かいなかったという。誰がなんのために・・・。 人形作家として素晴らしい腕を持つハルさんだが人付き合いは全く駄
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1960年 山口県岩国市生まれ。明治学院大学法学部法律学科卒業。
雑誌記者、フリーライターなどを経て作家に。 日本推理作家協会会員。山梨県自然監視員。山梨県北杜市在住。 2008年 「約束の地」で第27回日本冒険小説協会大賞受賞。
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南アルプス山岳救助隊
★★★
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山岳小説として秀作である。
日本で二番目に高い北岳。 そこで救助活動に取り組む隊員たち。夏実は人の後ろに立ち上る「色」が 見えるという特殊な能力を持っているが、人にはあまり語っていない・・ 兄弟が父親の後を辿って山に入って迷う・・・その時、父らしき人影が現れ 帰り道を教える(サードマン)・・。兄はやがて救助隊に入り、妹は大学生 のアルバイトで山小屋で働く・・・。 それぞれの隊員の個性や想いも描きながら、山とかかわりあう人たちが 描かれている。 事故に遭った人や遺体の搬送に無関心の人、救助のヘリコプターの写真 を撮ろうと駆け寄る人々・・・自己中心な行動への警鐘もある。 ---------------------------------------------------- 内容・内容紹介から 軽装で山の中を駆け巡るトレイルラン。自信に満ち溢れた走りをする大学 生。 小さな気の迷いが大きな事故に――「ランナーズハイ」。 山小屋でアルバイトをは じめた女子大生は、マナー違反の登山客に愕然 とする。 ここは“命"を預かる場所でもあるのに――「ハルカの空」。 氷雪の山岳に消えた男。猛吹雪の中、それ を追う女性隊員が救助犬と ともに見たものは――「NO WAY OUT」。 汗光り涙伝う、犬とともにある本格山岳小説全5篇。 特別書下し短篇も収録。 |
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久しぶりに読んだ外国物。読書のコミュニティで一読に値する本として・
紹介されていたので、図書館で探してみたら英文と和訳された物があ った。英語は全然駄目なので和訳を選ぶ・・。和訳文は多少読みづら いものだが、この本はあまり感じさせない。描写がこまめで丁寧であ る。ストーリーはそれほど奇抜ではないが、読者を惹きつけてやまな いところがある。 以下、AmazonのDVDの商品・内容紹介にあったものを引用させて いただく。本よりも映画が有名になったようだ。(名作らしいがまだ見て いない。) 内容紹介 永遠の4日間-どんなに離れていても、あなたを感じる。 アイオワ州マディソン郡に屋根つき橋の写真を撮りに来たフォトグラフ
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