ESSAY

 《思い出の監督達》 (4) 神代辰巳監督の濡れた欲情

 1984年、プロデューサーの三浦朗さんから神代組の仕事が入る。
 「一条さゆりの濡れた欲情」を撮った監督が「美加マドカの指を濡らす女」を撮る。監督はその頃、もう肺癌に侵されてて撮影中も咳をしていた。
 私の役は内藤剛志さん演じる役の愛人で、美加マドカに心いってしまった男を自分に振り向かせようというのか、美加マドカの産んだ赤ちゃんをさらって逃げる。延々赤ん坊抱いて走る。内藤剛志が追いかける。
 この生後6ヶ月の赤ちゃん、加藤チーフ助監督さんの息子さん。
 最初、赤ちゃんを紐で私の体にくくったが映ってしまうということで素手で抱いて走ることに。赤ちゃんのお母さん(加藤助監督夫人)の見守る中、撮影。
 両親はヒヤヒヤものだった事でしょう。後年、娘を産んでみて、恐ろしい撮影現場だったと思い知らされた。
 最初は大崎の線路際の歩道橋を走る。移動して駒込の線路脇を逃げ走って、赤ん坊連れたままラブホテルに。どろどろした男と女の性の欲情。
 狭い部屋の中、1カットで。私にはこの女の生理が演じきれず、ただわけわかんなくて動きまくった。
 神代監督は1シーン1カットをいろんな角度で撮るので、同じ芝居、動きを何度も演じるやり方。それを編集する。だから、カメラ回す前に、リハーサルちゃんとしないと駄目だし、台詞も覚えないと駄目なのだ。
 撮影終了後、監督は「お前はもう一度、俺とやらなきゃ駄目だな」と言われた。男と女のどろどろした三角関係?! 私の中に無い素材だなあ。
 でも、若いときなら演じてみたい役柄です。不燃症に終わって残念。
 その後、監督は一般映画やテレビの2時間ものを撮っていたが、再会することなく天国に召された。

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 (1) 浦山桐郎監督との酒談義

 (2) 小沼勝監督の執拗な演出

 (3) 西村昭五郎監督は飲み友達

 (5) 下駄男!? 相米慎二監督

 (6) 細越さんが縁結びの伊丹十三監督

 〜あとがき〜
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