原木椎茸の生産者が少なくなってきています。
オガクズに化学肥料を混ぜて育てる菌床栽培のきのこや
検出しにくい保存料添加の輸入物が多くなっています。
本物の原木(クヌギやナラの木など)から、きのこを生産する
人が減っているのです。
食の安全性を求めるなら、原木の方が優位だと思います。
私のきのこ山は、長野県南部の伊那谷、駒ヶ根市にあります。
背後にそびえる中央アルプスの麓、広くゆるやかな南東向きの
大地です。輝かしい朝日を浴び、晴天日数の多さでも注目されています。
朝の陽光は、あらゆる植物の生育に効果があり、最近は暖地のものとされて
きた洋ランの栽培が盛んです。雪国信州のイメージが強いのですが、ここは寒暖の差こそあれ、雪は多くありません。施設栽培とは違う自然の気温差こそ
伊那谷の果物や野菜の品質を高め、洋ランの花色をとびぬけて美しくすると
いわれています。
きのこ山の椎茸も同じです。朝は斜に、昼は風に揺れる木々樹冠を通して陽光が爽やかに差しこんできます。椎茸の生育に欠かせない湿度は、アルプスの地下水脈や清流でたもたれています。これ以上の栽培環境は望めません。私たちは恵まれた自然に生かされ、慈しみの心をこめた椎茸作りをしているのです。
そして、自然と生きる。
自然環境というサイドで捉えると、椎茸栽培は、原木の置き場所を作り
クヌギやナラの伐期があるので、必然的に山の管理ができるのです。
木を一つの作目として考えて、里山を維持する方法としては、最もいい職業の一つと思います。自然循環型・農林業に適していると考えています。
長野県が脱ダム宣言などを発表しましたが、広葉樹の働きはたいへんに重要です。
広葉樹を植えることによって、保水や土壌の保持もできます。広葉樹を一つの生業の柱にすることは、とても大事です。そういう意味での椎茸栽培は素晴らしい仕事と思います。当然、地域に密着して自分が動けば、幾らでも可能性が出てきます。
里山で暮らしている価値観や喜びが見えてくれば、こんなに楽しく生きていけます。若者にチャレンジしてほしいです。
四季折々生き物と接していると、自然のサイクルが見えてきます。
自分のサイクルときのこのサイクルが合えば、必然的に美味しいきのこが採れ、生活もできるようになります。価値観の多様性というのも農業の魅力のひとつです。
産業であり、環境経済ともいえます。環境・農林業・地域産業は一つなのです。
なによりも自然と生きる素晴らしさは、ほかには代わるものがありません。
百姓だからこそ
百姓は、100の姓(かばね)と言われる位、未分化な分野なのですが、考えている事を行動に移せば、百姓は懐の深い、限りなく広い創造世界です。
思い浮かべただけでも、森を育て・木を切る・運搬する・きのこ作り・販売・米作り・野菜作り・堆肥作り・炭窯もつくりました。家も自分達で建てました。この間、仲間と数えたら本当に百種類以上の仕事をしていることに気づきました。