●● 大名家の家督相続(養子について) ●●
大名家の家督相続は男系(父系)による長子相続が大原則でした。
しかし、実子がいなければ養子(猶子)を迎えて家督を相続せしめ、家名の存続をはかりました。

※ 天皇家、親王家は男系による男子相続しかあり得ず、この伝統と歴史を現在(いま)に伝えています。


一.同姓と異姓(男系と女系) 
 大名家は同姓、異姓という姓氏の違いを重要視しています。同姓は本家を同一とする家です。
 そして、血統上から見た場合、次男以下を養子に出し、誕生した孫も同姓としました。
 しかし、実女子が他家の男子と婚姻し、誕生した外孫は異姓としました。つまり、同姓は男系、異姓は女系ということになります(系図@参照)。
 
             

                 系図@ 同姓と異姓について

 したがって、大名家では実子がいない場合、まずは男系(同姓)から最も適当な養子を迎えようとし、それでもいない場合は範囲を広げて、女系から養子を迎え、何らかの形で血統上つながりのある男子を後継者としました。それでも男系(同姓)が基本ですから、経済的に豊かであった江戸前期の頃、大名家は家名断絶を防ぐために、たくさんの分家を創出しています。


二.養子を願い出る
  ● 養子を願い出るには…?
      条件:実子がいない十七歳以上の当主。
           ただし、通常は三十歳以上になって、幕府へ養子願を出すことができました。
           例外的に病弱であるなどした場合、三十歳以下でも養子願の提出は認められています。
       ※1 実子がいる場合、これを廃嫡しなければ、養子を迎える事はできません。
       ※2 江戸中期より、部屋住でも養子願の提出が認められましたが、これは当主からの提出を義務付けています。
  ● 養子願の提出先と発効日  
       ※ 江戸時代、養子を迎えることを「養子取組」と称し、「養子縁組」とはいいませんでした。縁組とは「婚姻」をさしました。
      養子願の内容:養子願を出す人、養子の姓名・年齢。同姓養子の場合には両者の続柄。
               異姓養子の場合には親類・遠類内に養子に願い出る男子がいない事を明記しました。
               そして、養方親類(養子に入る家の親類書)と遠類書を添えています。
      提出先:老中
      発効日:養子願が許された日。



三.養子の種類
 1.通常の養子
   ● 養子となる男子の資格(家督継承順位)
       条件:当主からみて最も近い同姓男子(嫡男に男子が複数いた場合、その長男が嫡孫とされます)。
        ※1 ただし、廃嫡された男子を除き、当主の年下であること。
        ※2 当主からみて嫡孫を養子とする場合、江戸後期より「嫡孫養子」ではなく「嫡孫承祖」として願い出ることとなりました。
        ※3 同姓の中に適当な男子がいない場合、異姓から養子を迎えることができました。
           この場合、同姓に男子がいない事を養子願に明記しなければなりませんでした。
   ● 養家との関係
      養子となった男子は養子願が許された日から養家の姓氏を名乗り、同時に嫡子となりました(系図A誕生)。
      また、養方親族に対し、養家の同一の親族関係が発生します。
      したがって、養父の実子とは兄弟姉妹となります。
      兄弟順は、男子との間では、養子に入る前に生まれていた実子は兄とされ、それ以降に生まれた男子は弟とされました。
      女子との間では年齢順です。ですから、養子と養方姉妹とは婚姻する事はできません。
              
                     系図A 養家との関係
 2.順養子
   ● 順養子の種類
       1)実子がいない場合、実弟を養子とする(系図B参照)。
              
          系図B 弟を養子とする例

       2)同じく、故兄の実子を養子とする(系図C参照)。
             
         系図C 兄の実子を養子とする例

       3)養子となった男子が養家の弟を自らの養子とする。つまり、養父の実子を養子とする(系図D参照)。
          ※ ただし、廃嫡された男子は養子とすることはできません。
          ※ 養家に弟がいて、仮に養子に実子がいた場合、これを廃嫡せずに、養家の弟を順養子にすることができます。
           
             系図D 養家での順養子の例

 3.聟養子
  ● 聟養子取組の条件
      将来、養父の娘と婚姻することが条件で取り組まれる養子
  ● 聟養子の配偶者の資格
      条件:当主の実女子もしくは養女。
      ※ 養父の姉、死亡した実子の嫁の聟養子は許されません。
         ただし養父の妹、死亡した実子の嫁を養女とした場合は許されます。
  ● 養家との関係
     聟養子となった男子は養子願が許された日から養家の姓氏を名乗り、同時に嫡子となりました(系図E誕生)。
     そして、将来結婚することとなった女子とは、縁夫縁女の関係になります。
     この時、結納は必要ありませんが、必ず婚姻の儀式を挙行しなければなりませんでした。
     また、養方親族に対し、養家の同一の親族関係が発生します。
     したがって、養父の実子とは兄弟姉妹となり、男子、女子に関わらずすべて兄弟順にしたがいました。
       
          系図E 聟養子の場合の養家との関係

    このように、聟養子は養家の兄弟姉妹の関係ですから、縁女が亡くなっても、養家の姉妹とは婚姻は許されませんでした。
    
    祖父が孫女子を養女とせず、これに聟養子を迎えた場合は、祖父と孫の関係は変化しませんが、
    祖父と聟養子の関係は養父子の関係となります(系図F参照)。
      
     系図F 縁女が養父の孫であった場合 

 ※幕府では「夫婦養子」認めませんでした。
  一般では夫が他家の養子となり、妻がこれに従って、養家に入ることと、夫婦養子といいましたが、幕府はこれを認めず、あくまで養父と養子の関係であり、妻は養父の養子でななくて、養子の配偶者とされました。