寸又峡 2001.06.09(土)〜10(日)
去年、今年と続けて新茶収穫が終わったこの時期に寸又峡温泉に出かける。そう言えば昔の広沢虎造の浪曲、清水の次郎長は旅ゆけば駿河の道に茶の香りで始まったはず。この頃からですか、高級茶の代表の宇治茶に川根産が送られ化けていたのが見直され、牧ノ原の番茶で量だけの普通茶のイメージから静岡にも高級茶があると切り替えだしたのは。その大井川上流には静岡では伊豆箱根以外は案外知られていないのですが、昔から武田信玄隠しの湯がありその後絶えていたのを、ダム建設の時にボーリングして再び湧出したという泉質の良い温泉もあるのです。その寸又峡温泉はこれももうかなり以前のことになりますが、金嬉老(彼は数年前に韓国で亡くなったと報じられました)事件があったなんて覚えている人はもう立派な老人と言ってよいでしょうか。そのまた前となれば徳川幕府が倒れ、将軍慶喜が駿府に移るのに従った旗本達が牧ノ原を開墾、お茶作りを始めたということも学校で習ったでしょう。静岡駅近くにあるその慶喜の屋敷跡には浮月楼という料理屋が今も格式を保っています。藤枝あたりに住む僕の祖母の代の人から、その嫁ぎ先の御舅さんは御家人の子供で江戸から籠でやってきたという思い出話をよくしていて気位の高い人だったなどと聞いたのも僕が小学校に入った頃でした。いや昔の話をするのは年寄りになった証拠、やめましょう、新茶と温泉、それに美術と花より団子?駿河路の旨い物を土産に、例の如く走り回ってきますか。
朝7時ちょっと前に我家を出発、東名高速にはすぐ乗れるので比較的に早く清水ICで降り、第一の目的地登呂遺跡(僕達が小学校高学年で代表的な弥生時代の遺跡と教えられ誰でも知っていましたね)近くにある芹沢_介美術館に9時前に到着、開館と同時に中へ。常設展示に加えて今回は暖簾展がテーマで柳井宗悦の民芸運動の一翼を担った作家の型染めの作品を見る。中でも目を引いたのはすずや所蔵という作品が多いこと、聞いてみたら新宿のお茶漬けとんかつで有名な店の先代の奥さんが好きで集めたものだとか、民藝運動の人達もよく訪れたという店のマッチのデザインも芹沢_介のものを展示、また見事な手の混んだ着物もその人から芹沢自信が買い戻したものだと説明してくれた。あらゆるものをスケッチ、それらを元に図案にしたというこれらのデザイン力は大変なものですね。
登呂遺跡
芹沢_介美術館
繁華街に入って常磐町にあるヴィノスやまざき(平成13年10月に渋谷西武にも出店しました、万歳!、平成17年には広尾店もこちらは日本酒も豊富)に立寄りワインを買う。ここは本来普通の酒屋だったのが、店を継いだ娘が酒屋というのが嫌いでなにかもっと酒に関してプラスアルファをと考えたのが大当り。フランスのまだ有名ではなかったラングドックの旨くて安いワインを造るワイナリーを自分一人で探して直接取引を始めたのがその道の人達に認められ、今やフランス各地やカルフォルニア(9月に東京出店記念パーティーが雅叙園で開かれ、その時一番旨かったのがターンブル・カベルネソヴィニヨン5000円だった、これはその時招かれていた山本益博も今日は新しく素晴らしいワインがあった、名前を隠して仲間に飲ませてみたいと言っていた)などのワインも扱って清水港には専用保冷コンテナまで作ってしまったとか。昨年買って旨かったマルゴー地区のセカンドクリュ、デュフォール-ヴィヴァンのそのまたセカンドラベル、ルレ-ド-デュフォール98年、2980円を買う。勿論アイスボックスは持っていってます。昼になったが食べようと思っていたフランス料理店ジャンティ(ここは野菜など限定栽培契約をしていて美味しいらしいが値段も高目とのこと)が貸切ということで180度変更、古い木造の元祖石部屋で安倍川餅を食べて行くことに、値段のレベルが格段に落ちました。でもここのは本当の餅なので一般に販売している品のようには日保ちしませんから、地元以外ではまず食べられません。
ジャンティ
石部屋
駐車はデパートを利用したのでその伊勢丹地下のふるさと品コーナーへも立寄る。ここは駿河、遠州の名産品で評判の高いものを取り揃えてあり、中には東京ではなかなか手に入り難いものも置いていますよ。遠州森の石松の故郷、その森町で有名な栄正堂の梅衣、これは女房がこの手のものでは熱海や水戸のものより断然美味しいと言う和菓子、数日は日保ちするというので買う。鮮度がいのちの海産物、農産物の地元有名どころも注文で送ってもらえます。僕が拘る醤油では栄醤油醸造の品が置いてありましたが、これも3年寝かすとか再仕込したとかで手をかけたものですから評判になるのですね。もう一つアサバソースは完熟トマトがタップリでこれも旨い。
もう一つの目的地は大井川から先になるが掛川の加茂の庄(先祖は桃山時代からの庄屋で家康の浜松時代の書状も残るという)なる所。その前に市内に新しく木造で建てられ話題になった掛川城の下に行き、小崎葛布専門店を訪ね2階の手織りを見学。日本3古布の一つで今は作るのはここ掛川だけ。布地は非常に丈夫で年月とともに茶色味が濃くなって艶がでてくるとか、最近は和風よりもアメリカからタペストリーやカーテンの注文が多いそうで、かなり幅広の織機では二人掛りで織っていました。確かに上下に巻取るスタイルで、あいだに竹などを組込んだカーテンは魅力がありました。
山内一豊が土佐の前に居た掛川城
加茂の庄はこのシーズン花菖蒲が有名で、観光バスも来ている。入場料1000円は以前に初めて行った時はこんな所で高いなと思ったが、中に入ればビックリで、園内一面に競って咲くいろいろな名が付けられた花々の並ぶ様は水郷の潮来などより見事なもの。ベコニアや観葉植物の温室展示館、ミミズク類の展示、その他に苗の販売、食事処まで揃っています。ここのベコニアの花の大きさはどこで見たものより大きく、ちょっとしたボタン、シャクヤクぐらいあって一見の価値ありです。
戻って島田から大井川沿いに上流に上って1時間半、SLが走る大井川鉄道の終点千頭を通って最後はかなり細い山道を寸又峡の宿、あの金嬉老事件の旅館富士見屋があった数軒上手に建つ甚平に。途中には品質の高いことで知られる川根茶の産地で家山地区などは特に有名、公衆温泉併設の道の駅やお茶のテーマ館もありましたが、前回寄っているのでパス。
甚平はここでは古くから続く旅館のようで、室内の梁材に民家風の名残があり、ややレトロでトイレ付ではありません。風呂は硫化水素単純硫黄泉でフィルターを使わずどんどん流れさせていて非常に濃いトロッとした肌当り、この濃さは泉質は異なるものの身延から川沿い山に入った奈良田温泉に匹敵する。木舟の浴槽で頃合の温度、好いですねえ。食事は棟続きの古い民家風座敷で山の幸中心の料理、贅沢品はありませんがこんな山奥に来ての食事はこれで十分でしょう。酒は確か藤枝だったと思う志太泉の冷(その後に浜北の花の舞に)、静岡県の酒も結構旨いものが多くなっています。
翌朝は朝風呂に入ってから朝食、メインには小振りな豊橋産ミズガレイなるものの一夜干(その後に他のものに変わってしまい残念)、アルミホイルに挟んであって自分で焼いて食べるのだが薄い身なので焦げないうちにと早めに何回か返して食べると骨まで全部食べられこれが美味、僕は浜松出身なのだが今までこの魚は知らなかった。今朝も御飯は二杯、隣の名古屋からの客は良いお茶なら一回入れただけであれば葉を味噌汁に入れて食べると美味しいといって旨い旨いとやっていた。
寸又峡の名所として宿を出てさらに上流を徒歩で散策するコースが有名で、往復長いコースなら1時間半はかかるものの、ダムサイトから長い夢の吊橋を渡って下に見える川の不思議な翠色を覗いて小高い山道を一回り、一汗かいてくろのも一度はやってみると良いでしょう。眺めだけなら吊橋からは戻るほうが楽チンですが、紅葉シーズンの土日は一方通行だそうですから、混みあう前に引揚げなければいけませんよ。遊歩道入口ではコーヒー無料サービスで客を集める土産物屋があり、各種山菜の加工品を叔母ちゃん達がいろいろ買っていました。
夢の吊橋
寸又峡
千頭に戻って道の駅音戯の里に寄りコーヒーを飲む。音をテーマにした有料見学体験施設があるがまだどんなものなのか見ていない。喫茶室にもコンクール作品で入賞した面白い音を出す玩具などが展示されているので、そういったものがあるんだろうと想像する。入口にはお土産や植物を売る店が9時から開きます。
道の駅 音戯の里
この後は静岡への別ルート362号に入る、山道を通ってかなりの坂道を降りていく道沿いはいかにも良いお茶の栽培地の雰囲気、降りきった地方道の合流点は本山茶の生産地(地図でみると久能尾か黒俣)、6月には共同製造所はもう締まっていた。ここらで本山茶を扱っているところを聞けば田舎の昔ながらのなんでも扱っているという尾崎商店が近くにあると教えられ、行けばそこのお婆さんが自分で生産加工したというお茶を売っている。値段はピンからキリ迄、どの位からなら本当に美味しいか、普段使いにはどれが良いかを相談して買ってください。
尾崎商店
ここから藁科川沿いの道になる。鮎で有名な川なのだが解禁直後で釣り人の駐車の多いこと、川も人だらけなのに驚く。焼津だと逆方向に戻ることになるので今日は静岡を素通りして清水に昼飯と今晩の魚を買いに行く。清水はマグロ冷凍倉庫日本一だそうで有名な寿司屋(末廣鮨)もあります。最近出来たエスパレスドリームプラザでも水産物販売店や寿司屋などが集まっていて、港の風景も良くて賑わった観光地になっていますが、今日は駅の海側にある清水ポートサイトマーケットが仮設テントから恒久市場に改築され、新たに河岸の市となったそうなのでこちらに。マグロから地魚を売る店を中心に、青果店、飲食店が入っています。焼津は観光客がメインで鮮魚を扱う店が少ないのに、こちらは規模は小さいものの地元客を集め鮮魚を多く扱い、種類も多いのです。磯料理のみやもとでミックス天丼700円を頼むとボリュームがあってまあまあ。TVにもでたことのある寿司のおがわは行列が出来ていました。ここでは何処で食べてもまずまずではないでしょうか。この季節はコチが旬なので皮まで挽いて貰って家で刺身にすることに、あとはマグロ、明日以降にとトロアジなる干物、塩鮭のカマなどを買って帰ることに、いつものワインは別の日に回し今夜は日本酒だな。1時半には清水ICに乗って3時過ぎには家に到着、この位早く帰れれば月曜からが楽ですねぇ、齢とりましたからね。
2002.05.25(土)〜26(金)
今年もこのシーズン、新茶も仕入れてこようと出かけちゃいました。まず静岡は今回は県立美術館のロダンの彫刻が最初の目的。9時開館を狙って行けばこれが10時に開くんだと、数人のご婦人方はバスで来たのかこのまま待つらしいがこちらはそれじゃあと去年と同様、登呂遺跡内にある芹沢_介美術館に回ってみることに。今回は芹沢と沖縄という企画展で柳宗悦と共に沖縄を訪問して影響を受けたという紅型の明るい色に倣った自作品と彼が収集した沖縄の紅型や筒描きの美しい染物から壺屋焼までが展示されていました。折しも登呂遺跡では弥生のグルメ料理体験とかで子供達が火起こしなどを教わっていて微笑ましいものでした。それで10時過ぎに美術館に戻れば駐車場はもうかなりの車、隣接の図書館やグランドなどに来ている人が多いのです。美術館は特別展は大トルコ展をやっていましたが今日はロダンがお目当て、常設展示見学だけなら300円という安さで公営施設はこれが取り得、でもこの美術館もバブル時の建築らしく外からは公園内を考慮して大きな建物には見せていないものの内部は豪華なものですね。ロダン館はここの目玉で代表作品が置かれた独立楕円形館内の中央にある地獄の門は世界で6体目の鋳込作品とか。その様子の写真と鋳込の説明があり、一度出来た鋳型に直接ではなくまず蝋を流し込みその後もう一度外側をしっかり固めてから熱で蝋を溶かして本番の鋳込をするんだそうで、その説明にほうっと感心してしまいました。有名な考える人を初めとするこれら作品の購入金額も相当高かったことでしょうね。
静岡県立美術館
昼は中心部のデパート提携駐車場に止めて前回貸切で入れなかったフランス料理のジャンティに行く。ビルの2階で厨房は客席側からは全く分離されているこじんまりした店内に入れば、今日はSBC(静岡新聞)がやっているワインとチーズのスクールとかでテーブル席は一杯、カウンターで良ければというので昼ならなんでもと座る。ランチのパスタは1200円、コースは2000円からで3000円と5000円まで。野菜など自分で郊外の畑で自家栽培していると聞いていた通りの拘った店で、静岡では高目のお値段設定のようですが、結構流行っているようなのです。カウンター前は洋酒がずらり、夜はバー風にも使えるのでしょうか。スクールの様子をそれとなく聞いていると、本日のフランスワイン銘柄から始まって北海道から直送の子供を産んだばかりの牛乳を使ってモッツェレラチーズを作ることまでやっている。講師はここの女性店長とかで、店内は色物洋服のオーナーの奥方以外は黒のホテルサービスと同じ出で立ちの女性ばかり、で奥方含め4人はかなりな揃えぶり。そう言えば桐生のファンベック鈴木はこの倍の広さで3人だったかな。昼だし始めてだしで2000円のコースを頼めばオードブルとスープの2品、パン、メインは鯛のポアレか地鶏のロ−スト、デザート3品にデミタスコーヒーというもの、あっさりとした品の良い仕立て方でした。途中、料理を待つ間、出来上がってきたばかりのチーズをこちらにもお裾分け、出来立てはなにか甘さを抑えたプリンみたいな食感で珍しさがトリエというものでしたけれどね。
デパートに戻って最近読んだ新しい日本酒の話という本に静岡県で一軒だけ載っていた藤枝の杉井酒造の酒を探せば、吟醸酒の高いのに混じって特別本醸造生貯蔵酒720mlで1100円があったのでこれこれ!と買込む。これは帰ってから飲めば完全に吟醸造りでフルーティ香が強く、最初はサラリ、やや置いて本醸造らしい引締まった味が分かるという酒でした。旅館甚平の吟醸生酒志太泉はここまで香り立っていませんでしたから、次回泊る時は値段も手頃と、これを持っていって宿に置くよう推薦してやろうかな。日本酒ではさらに島田の若竹鬼ごろしも捨てがたく、辛口ながらアルコール度が高くさらに吟醸造りをしていて、味わいがあって全国鬼ごろし名の酒の中で一番じゃないでしょうか。他にも藤枝には喜久酔、焼津の磯自慢、岡部の初亀、由比の正雪、三ケ日の花の舞など最近の静岡は二重マル。静岡はおでんの町とか、夜の巷に繰り出してこれらの酒で一杯というのも悪くないですね。
次も昨年と同じくR−1号バイパスと使って掛川に向かう。掛川城前の街並は昨年から更に城下町風に整備され、ゴールデンウィークに訪問した彦根のようになってきていましたが、それらの店の商売内容は観光を目的にするにはまだ来客数が少ないからか地元一般客用店舗がほとんどの様子、魅力発揮にはソフト面での工夫が必要です。地元客でも賑わっていたこだわりっ葉という地元土産屋の新茶アイス、並んで注文して食べてみるとこれは普通の抹茶アイスより香り、味とも茶の風味がずっと豊かでさすが茶所なのか新茶時期で良かったのか、葛湯とともにここの名物になっているようです。例の小崎葛布工芸では、我家の和室の障子を開けた時に外を透かして見える趣あるカーテンが前々から欲しかったのだが、ちょうどよい寸法のものがあったので女房を口説いてとうとう買うことができました。
さらに今年は暖かくなるのが速くもう見頃ではと、ここから10kmとナビが教える加茂花菖蒲苑にも回ればこの時期にきて涼しい日が続いたので平年並みになったそうで、花は4分咲き程度でした。まだ見物客でごったがえすことが無くゆっくり見れて、菖蒲以外にも温室内の花々が見事ですからこれはこれで良いでしょう。池には首の上半分は黒鳥、その下は白鳥という初めて見た鳥がいましたが何と言う鳥なんでしょう。
葛布カーテン
半分降ろした状態
ここを4時過ぎに出て宿まで、1号バイパスで金谷手前から大井川沿いに北上、ただただ飛ばして6時過ぎに到着。一風呂浴びての夕食は今回は部屋食、昨年より料理内容で値段設定が細かくなった由、メインは猪肉陶板焼に鹿肉刺身、岩魚塩焼、山菜などまでは山のもの、それにこういう山の中でも海のものが入ってくるのですがズワイ蟹などは止めた方が良いのでは。最後に御幣餅を食べればもう米の飯は要りません、流動食だけで済ましました。翌日の朝食はかなりのもの、ミズカレイ一夜干を初めとして、マス甘露煮、刺身コンニャク、味噌汁はタップリと、これに小鉢がいくつかついて品数豊富、これらが旨いこと。刺身コンニャクの酢味噌には摺胡麻が入っていて美味しいと女房は作り方を教わっていましたが、3年も続けて来ればややお馴染さん扱いになってきましたね。
ここで宿の人にこの奥にあって泉質が良いと聞く赤石温泉の話題にすれば、千頭に戻って接阻峡から林道風の細い道を井川に抜けその先の畑薙湖という約1時間かかる場所にあり、泉質は寸又、接阻峡のようなヌルッとした硫黄泉ではなく、サラリとして無色透明な温泉だそうです。休日にはそんな山奥にあっても無料と聞けばそれっとばかりやってくる輩が多く、かなり風呂は込み合うとか。無色透明サラリではそんなに有り難がることのないかと思いますが、まだ車では行けなかった頃の昔に井川は紅葉が素晴らしいよという営林所関係者の話を思い出し、そちら回りで静岡に通じる道がもうありますから風呂は別にしても、どんな所か何か目ぼしいものがないかと次はそのルートも取ってみようかとまた企んじゃいました。
夕食
朝食
食後に夢の吊橋まで散策してから出発、千頭では音戯の里でのコーヒーはいつもの通り。そして千頭から静岡方面へはやや整備が進みつつある362号の山道を登り、さらにくねくね山道を登り切ってからはかなりの勾配での下り道の最終は久能尾に降りきり、目的の本山茶を製造販売する尾崎商店へ。ここの60歳がらみのお婆さんが作るお茶は美味しく、今日はお馴染みさんというお爺さんの先客が100g当り800、1000、1200円のお茶を飲み比べているところに出くわし、一緒に講釈を承りながら利き茶させてもらう。お茶と一緒にお婆さんが仕込んだ餡子を使ってお嫁さん手造りの柏餅まで御馳走になりましたが、常連のお爺さんはこれは旨いと帰り際お嫁さんにお世辞の声をかけしっかりとお土産にして貰っていきましたよ。昨年は1000円のお茶を買いましたが、今年は出来が良くて800円が去年の1000円クラスとか。でも飲み比べると今年の1200円のお茶は思わず女房とうーん唸ってしまうようなトロッとしたお茶!お茶!という美味しさにこれは買います。一番上のクラスは新茶の大はしりという商品名で2000円とか、で最高級も味わってみなくちゃということでこれも一袋。それに普段使いにと無農薬茶200g1500円を仕入れる。東京で買えばどれも2〜3倍のお値段でしょう、電話注文も出来ますからどうですか。無農薬茶はよその畑から離れた場所の一つの畑だけで作るのだそうで、本当は有機栽培もしたいんだけれどそこまで手が回らなくてとの話。本山茶ではここより東の川筋の内牧にサライにも紹介されたお茶問屋さんがありますが、香りの強さではこちらの地区の方が上と自慢するお婆さん、こういう作り手が見えるものはお薦めですよ。またこの時期にはもう珍しくなった山ウドがあったのでこれも買込みました。なおこの近くに農産物直売所もあり、野菜や花、手作り饅頭や金鍔のほか本山茶の安いのも売っています。
左800円
右1200円のお茶
あとは今日も早く我家へ帰ろうと静岡は通り抜けて清水の河岸の市で昼食と買物に直行、これもお決まりのコースになってしまいましたが、いつものようにおがわはやはり行列です。今回はカツオ(モチガツオの書き札)が新鮮だったので刺身はこれに決め、アジ干物、シラス釜上、生サクラエビ、カサゴ、アナゴ開き、銀鮭と紅鮭半身づつ、アサリ、それに何故かここにある作りたての旨い豆腐などを求めて東名高速へ。今回も至って順調に3時過ぎには帰宅すれば、愛犬が散歩をおねだりして、喜んで迎えてくれました。
さて夕食はアナゴ、サクラエビ、ウドの天ぷらがメイン、それに刺身のカツオ女節は皮付きでそのコリッとした歯あたりがいい。僕の故郷浜松では舞阪港に昼にあがったカツオを夕食には食べられてこれよりさらにグリグリした身が旨かった。これは前日ものだと思うけど、カツオ臭さは全く無くて十分に合格の味でしたねぇ。茨城の岩倉鉱泉でいつも出されたカツオもこのくらい新鮮でしたが、鮮度が一番のカツオ、東京ではついぞ食べられませんものね。
<追記>
翌年の平成15年は5月というのに38年振りにこんなに早く日本上陸という台風による大雨の中、連続100mm以上になると通行止め(看板表示だけで閉鎖はしませんが乗合バスはストップします、その場合大井川鉄道利用者は宿のマイクロで千頭まで迎えにきてもらえるはず)となる山道をものかわ、またしても寸又峡に行ってきました。今回はこんな天候なので静岡の伊勢丹デパートにだけ立寄れば、静岡・話題の味と匠展が開催されていて僕の出身地ながらこんなに良いものが静岡にあるんだと再認識。駿河竹細工、然林房の鈴虫が入った竹籠がかなり安い値段で買おうという僕にすぐ無駄遣いするのねという女房、今回はお茶を買うお金だけしか用意してこなかったと言いながら浜松のレザークラフト、ライトシャインのバッグに目が眩んで自分の方がもっと無駄遣い。工房の奥さんらしい人に僕は浜松出身で今は横浜と話せば、まぁ私は横浜出身で今浜松とちょうど逆ねという話に女房が割込んで盛上げ、ちゃっかりとバッグに名前を焼き入れて貰いさらに巾着型小袋をサービスで貰っていました。味の方ではまず日本酒が17銘柄、吟醸酒を4号瓶中心で販売していましたがなんと僕はこれまでに10銘柄飲んでいましたよ。菓子類では沼津の今評判らしい冨久屋のロールケーキは整理券を限定数で出していて午後2時からの販売で時間的にこれは残念でしたね、奥方。さっといくつか試食した中ではサンサンファームで買ったことがある浅羽ソースなど売っている浅羽町生産者グループどんどこ浅羽の前田さんちのトマトは、思わず唸る甘さとコクでプチトマトを一回り大きくしたぐらいの小振トマトが一個150円。ファームでもトムトムという名前で結構いい値段で売っていたのは知っていましたがこの前田さんちのトマトは格別で、最近やっとこのグループにも卸してもらえるようになったとか。これは次回干芋を買いに出かける楽しみが増えましたねぇ。味の方はその日に食べた方がというものが多く試食だけの嫌な客を決込んで地下の食品売場に降り、かって知ったる静岡の名産品コーナーで今回も遠州森町の和菓子栄正堂の梅衣(これ以降ではここで見かけないがどうなったんだろう)と藤枝は杉井酒造の杉錦本醸造を仕入れる。強い雨の中を傘さして歩くのも億劫だからと、あとは宿に早めに宿に入ってゆっくりしようと道の良い島田から大井川を登る道で順調に午後3時には甚平に到着。甚平の食事は昨年とはメニューと器が変わり、行くたびになにかが少しずつ変わっていますねぇ。例の築150年の民家を移築した古めかしい広間で今回は鴨鍋と鴨のつくね(ニラを巻いてあった)がメイン。本日の客は全員で21人、山の幸中心にそれなりに結構、量も途中に小椀でも蕎麦が出るので米の飯までは届きません。風呂の方は新たに男女の露天風呂が内風呂とは別に出来ていて、翌朝まで含めると内外交互に計6度も浸かってタップリと頭から足先までトロリとした湯を十分に堪能。ここの湯は何回も入ると肌から脂肪分を取ってしまうくらい強力で乾くとキュッとした感じになる。こんなに宿でノンビリしたのは初めて、台風の大雨を逆手にとってダラリンとしてそのまま寝てしまう。
新設の露天風呂
ミズガレイから
黒はんぺんになった朝食
雨があがった翌朝は往復小一時間ほど夢の吊橋までの散策、濁流渦巻く川と雲が湧き上がる急斜面の森林の景色にこんな光景はめったには見られないぞと、何回か来ているとこんな変化もいいんじゃないですかね。散歩のあとの朝食時に秋の紅葉のことを聞けば、最盛期は平日でもイヤッと言うほど混みあうそうで、盛りが過ぎる頃どうですかだと。確かにこの山道が車で混んだらどういうことになるでしょうか。なんでも寸又峡の老舗旅館では今でも一番の格式と料理で地元でも評価が高いのが翠紅苑ですが、その先代がせっかくダム建設で出た温泉があるのだからと皆に呼びかけて昭和30年後半に開業したそうで、甚平の先代もそれに参加した古手だったようです。女将はその子供らしくこの土地に詳しいので何でも聞いてみましょう。今回は濁流でしたが普段のこの川の色は細かい粒子が水中にあって、青い光が散乱してきれいな青色をしているのですが、この濁流が静まってまだ水量が多い時には乳緑色に見えるんだそうです。今では吊橋はここと下流にもう一つがあるだけですが、昔は生活用に10箇所以上あったとか。夢の吊橋の名はここが温泉地になったのを記念して将来の夢を託してのことだったそうで、この橋の中央では若い二人の願いが叶うとは、これまた宣伝に努めましたね。
そういう訳で今回の旅行は新茶購入が主目的と宿をあとにし、いつも立寄る音戯の郷でコーヒーでもとやってくれば昨年までは時間前でも開いていた門が9時半からと徹底したのかまだ閉まっている。こんな徹底はヤメにして貰いたいと憤慨しつつもうここはパスと一直線でいつもの尾崎商店に向かう。この日はかなり対向車に遭遇する山道を越えて10時前には店を開けたばかりの黒俣の尾崎商店に到着。奥に入って見覚えのあるお婆さんにお茶を買いに来たと言えば、まぁ昨年もいらした方と僕の名前を姓だけでなく下まで正確に呼ばれてビックリ。時々案内状がくるので記憶があるんでしょうけどこんなことは初めてで、女房のほうが変に感心、感激していましたね。お茶は1200円以上1500と2000円は手摘だけ、800円と1000円は手摘と刈取が半々、それより下は刈取100%だそうですが、試飲した1200円はやはり旨いこと。なんでも静岡の有名な竹茗堂でもここのお茶をお婆さんの主人名で売っているとか、そんな銘茶なら今日は名前まで覚えられたからには1500と2000円も100gずつ買って飲んでみましょうやと相成ってしまう。試飲でのおしゃべりでは小お婆さんの娘さんはお茶のソムリエだそうで、昨年はドイツに指導にいったとか自慢していました。200g1500円の無農薬茶を含めて買い求めて出てきた表の田舎のなんでも屋という店先には喜久酔の蔵元直送がありますと書いてあるので、この酒も旨いねと話せば、その時ちょうど中にいたまだ元気そうな小柄な大お婆さんの実家がこの蔵元なんだそうで、そんな人が嫁いだこの家は道と川の両方が合流する地点にあってこの集落では格があるのでしょうね。そういえば今ちょうど家の冷蔵庫に入れて飲んでいるのはこの喜久酔と話が弾んでさらに薄暗い店奥を覗けばこんな所にと、フランスワインが10本ほど売られているのにはアレッと。どういう訳で売っているのか問えば若い人はここらでもワインを飲む人がいるそうで、時々酒販卸業者から仕入れているとかで最近入荷したという。中に出来が良かった’89年ボルドーものがあったのでラベルを見れば輸入元は僕も聞いたことがあるモトックスで、お値段1880円は10年以上の保管料を払ったと考えてもお徳と目論んでこれも買込む。あとは以前買った田舎豆腐が旨かったので聞けば、今日は豆腐屋が休みとか、その代わり近在の人が採ってきた山ウドが届いたところなのでこれも早速買う。最後に作ったばかりというコンニャクをサービスで貰ってまたねとサヨナラ。あとは清水の河岸の市だけにまた寄って昼飯食べて、早めに帰ろうと家路につく。今日6月1日は藁科川の鮎の解禁日というのに川のこの濁り様では釣り客はゼロで一昨年の駐車満杯がウソのよう、やはりこんな天気だったので道路は至って順調でしたねぇ。
後日ワインを開けるとコルク落ちしていてこれはダメ、店の責任ではないですが残念でしたねぇ。でも生芋から作ったというコンニャクは、5月の滋賀の旅行で買ってきたお料理いろいろ味噌で田楽風にして食べましたが、歯にあたる弾力感が適度で旨かったですよ。
<追々記>
静岡近辺と寸又峡周辺でその後に仕入れた情報や定番の観光地等を追加して紹介しておましょう。
・日本平
富士山の眺め日本一(確か徳川家康が本邦第一と言ったとか)をうたう昔からの観光地で、僕が小学校の頃はここと登呂遺跡はバス遠足の定番だった。これに浅間神社と久能山東照宮を加えて四大静岡名所となっている。確かにここから三保の松原の砂州を挟んで聳える富士山は絶景、絶景!お天気がよければ一見をお薦めしますが、他には動物園はお子様連れ用、久能山へのケーブルカーはご老人向きと大したものは有りません。なお久能山は海側から登る石段はいちいちご苦労さんと1159段あり、子供の頃は長くて大変だった記憶があったんですが、段自体は蹴上げが少なくてそんなに汗をかかずに登れます。
日本平からの富士山
久能山と駿河湾を望む
・接祖峡、井川ダム
僕が小学校時代、母方の伯父が営林署に勤めていて、大井川上流井川の風景をいたく褒めていたが、森林トロッコ列車で安全の保証なしを承知で行くしかなかった秘境にも今は道路が通じ静岡市内となっている。現在は千頭から井川まで約1時間半のミニ列車、トロッコ列車も人気となっていて接祖峡付近では高さ100mの鉄橋に一時停車のサービスが有名。道路は接祖峡、井川間だけは大型通行止めの細い道であるもののそれほど苦になる山道ではない。井川からもっと上流には畑薙に赤石温泉があって無料ではあるが、管理している白樺荘に寸志を払って入浴するのが礼儀だそうだ。
井川ダム湖
接祖峡は温泉宿1軒と数軒の民宿に木造温泉会館があるだけのこじんまりした場所であるが寸又峡より空が開け、下流からここまでの道路は整備されていて走り易い。井川は昔から曲げ細工のメンパで有名だったがダム周辺が観光地となって静岡からは湯ノ島温泉経由の県道の方が入り易くなっている。
・硯水泉
本山茶のもう一つの本場足久保に本で奇跡の水と紹介された硯水泉の販売所がある。ここは油山温泉の南西すぐ近くで、以前こちら方面を矢印で示し名水豆腐の看板があったがこの天然イオン水を使っているということである。販売専門の家があって10リットル280円、我々が訪ねた時にも購入の客が途切れずに車でやってきていた。すぐ奥に湯権現という硫黄泉の日帰温泉施設もあるが、こちらの販売水は無色無臭で美味しい水、これで二日酔、糖尿病、高血圧さらには視力や聴力回復から腎臓結石、膵臓癌にも効くというのにはビックリ、本当かなと思うものの、ポリタンクをいくつも抱えてやってくる人気ぶりにはかなり説得力があるじゃありませんか。
・清水のイタリアン
知人から奥さんが静岡出身で静岡県唯一のイタリア人シェフの美味しい店があると聞いて、いつも鮨、どんぶりでは芸がないと昼に立寄ってみた。奥さんは日本人で根っから港町清水のおっかさんといった風情。食後各テーブルにきてどうでしたかと話すシェフ、開店8年というのに日本語がいまひとつらしく我々の返事が細かい内容になると奥さんに質問している、それにイタリア語でペラペラと説明しているのがなんとなく違和感を覚えるのがご愛嬌。
店の名前はバール・スパゲッテリア イタリアで繁華街近く相生町のホテル サンルート脇の細い道を挟んだ向い側にあり、駐車場は2台分だけ。肝心のランチはセットメニューは1575円と2675円の二つ。もうあまり昼には腹一杯も出来ない年齢で安い方を注文すれば、シーフードが乗るサラダはバルサコ風味、アサリのスパゲッティは半分ぐらいの量でニンニクが効いたトマトソース味に貝への火の通りかたは適度で柔かくこれが絶妙、豚肉ロール巻はキノコのクリームソース風でとどれもなかなか美味しくバラエティがあり、パンとコーヒーが付いてこれは安い。店内に並べて値段表示しているワインを見ればイタリアワインの王様バローロでも8000円ほどというのも、普通原価の3倍がレストランでの目安とすればかなり安いのではないでしょうか。清水に出張でもあればサンルートに泊ってここでディナーとする方が鮨より安上がりで腹の満足感も大きいと思いましたね。
店データ
ジャンティ 静岡市呉服町 2・9 054-254-7655
石部屋 静岡市弥勒 2・5 054-252-5968
ヴィノスやまざき 静岡市常磐町 2・2 054-251-3607
小崎葛布工芸 掛川市城下 3・4 0537-24-2222
加茂花菖蒲苑 掛川市原里 110 0537-26-1211
甚平 本川根町千頭 324・2 0547-59-2988
尾崎商店 静岡市黒俣 1146 054-295-3005
河岸の市 清水市島崎町 149 0543-55-3575
バール・スパゲッテリア イタリア
清水市相生町 7・28 0543-53-3580