旅に失敗と拾い物はつきもの

 3連休ともなると俄然張り切って遠出の計画をたててしまう我々ですが、宿だけは手配してもあとは行った先での成行きまかせで、事前調査不足の失敗と思いがけずの拾い物が今回の旅行でもありましたというお話。早起きは年のせいで苦にならなくて、4時半にはいつものように愛犬の散歩も済まして出発。

信楽・伊賀・浜名湖

2001.11.23(金)〜25(日)

 ナビで約400km強の旅程でまず信楽を目指す。東名は至って順調に、で名古屋近くに行くと東名阪はもう既に各所で10数キロの渋滞のラジオ放送、ナビで高速を出るよう教える亀山IC手前も15キロ以上渋滞だと。5月もこちらは混雑していて下を走って逆に早かったので今回も混雑前のICで降りてと四日市で出てナビで一般道優先で探索したのが大間違い。亀山先の名阪自動車道に乗れば高速並に走れて伊賀方面に早々出られたのに、ナビがなんと鈴鹿スカイライン経由山越えで近江側から信楽に入るコースを選んだのに気がつかず、段々と山に入っていく道に?。そういえば到着時間が1時間程伸びていてこれは失敗あとの祭で、そのままおそらく45分は無駄をして11時過ぎにまず陶芸の森の案内看板が現れたのでまずここからと車を入れる。知らない地域への旅行はナビ頼りは止めましょう、小さな道路画面だけでは全体地形と道路条件は分からないので一般地図で大まかな把握をしておかないと思わぬ失敗になりまねませんね。ナビの悪いところはメイン道路中心でルートを選ぶこと、Uターンを教えないことなど特に注意が必要です。おかげで朝飯は女房が買って持参したドーナツにミカンだけで、中京地方はどこでも喫茶店のモーニングが盛況で寄ろうと思ったのにここまで来てしまいました。その代わりというか多くのハイキング客が目立った鈴鹿山では早くも紅葉の混じった良い景色が見られたじゃないと強がりを言う僕。自分では楽天家とはけっして思っていませんが(女房はウソウソだと)、こういう失敗は笑い話、どちらかというと拾い物の印象だけが強く残って懲りないというのが本当のところようです。

 信楽は5月はちょっと寄道しただけだったし、その前来た時からも10年ほどしていたので、この陶芸の森は初めて。公園風に整備されて産業展示館、陶芸館、創造研修館などが配されている。まず産業館で10数社の製品展示ブースを見て好みの窯元を品定めする。次の陶芸館は焼締の美への憧れとその軌跡という有料展示、鎌倉から現代までの信楽焼締の壺を中心に茶陶や二大巨匠の楽斎窯と直方窯作品、清水六兵衛など信楽を模した作品などを鑑賞していざ中心部へ。

まず腹ごしらえと周辺を見回すが以前と同じくここではたいした食事処は見当たらずどうということもない串揚屋で定食を食べる。雑誌などに出ていた良さそうなところは少し離れた所にあったり、旅館で食事は予約が必要とか窯元の体験とのセットなどと、ゆっくり出来る計画でなければ無理。過去3回とも中心部の表側だけをさっと見ての先を急ぐ旅だったので、今回は案内地図を伝統産業会館でもらって食事時間も惜しんで可能な限り裏道を歩いてみることに。先代が県指定無形文化財だった楽斎窯や直方窯は当代も無形文化財クラスで値段は高く展示館で作品を見るだけ。前回と今回で目に付いたのは文化財の下のクラス?の伝統工芸士の宗陶苑や忠六苑や高級茶陶のさがら、陶器屋では蓮月(女性作家のものも置く)、ちらっと見ただけだが土味、若手作家が多い陶成アートギャラリーなどなど。中心部から離れた地域まで広がっている窯まではとても全部は見切れません。陶芸の森なども一部の窯元の展示だけなので、どこかに一同に展示してくれる施設を設けて欲しいものです。益子や立杭はその点でいいですね。今回は下見と決め込んで珍しくあまり買わずぐい呑、コーヒーカップ、湯呑の安いものだけで打切り、その中では伝統的焼締と灰被り専門の忠六苑で買った火色の出が素晴らしいぐい呑は買い得だったかな。ここは前回も値段は高目だが信楽らしくて良いものが揃っていると目を付けていた窯元。表の展示室には2000円のぐい呑があったのだがやや物足りず、奥の屋敷玄関を入ってさらに見回すと灰釉を被った高そうなやつ、値段は10000円くらいからとのこと、さすがにと言いながら見るその前にこれがあったのです。灰釉が無いので安いのか3000円の値札、僕はこの方が窯の火の勢いが感じられてさっきの2000円からは格段上とこれだけはすぐ買ってしまいました。

いくつか店などを覗きながら町を歩けば女房は陶器ではなく和菓子をいつもながら買い込む。あとはMIHO MUSIUMにも行ってみたかったのですがこれはまたの機会にしましょう。 

宗陶苑

楽斎窯

忠六苑 焼締猪口

陶芸の森

 3時過ぎまで信楽で粘って伊賀焼の里経由で名阪道へ出て名張にある赤目温泉に向かう。ナビが告げる到着時間より多少は時間的的に余裕がありそうと、これも5月に寄った伊賀焼伝統産業館に行って明日少し廻る準備にと阿山にある窯元の案内図を貰う。おりしもここの前にある登り窯は火入れ開始した日で実物の焼きは始めて見物できました。地図で見るとここの窯元は信楽より広く分散しているので時間がかかりそう、産業館には主だったところは展示されているので絞り込んで廻るしかありません。

土鍋で黒釉の形の好ましかった土楽は注文で製作、案内には見学不可というのでここからすぐの長谷園にちょっとだけ立寄る。ここは大きな窯元で各種の趣ある品々をいくつかの蔵風展示棟で販売しているが、何と言ってもかまどさんという土鍋御飯炊が有名なんです。本当はこれを買いたいと思って来たのですが、女房はここまで来てどこでも同じ定価だなんて買うことはないと、ケチですねえ。3合炊きで10000円、隣にはほぼ同じ形で7500円の蒸器土鍋があって蓋を取ると中蓋が違い、全体の重さもかまどさんはかなり重い。かまどさんに蒸器の中蓋を付けて売ってくれるかと聞いたらかまどさんは始めちょろちょろ中ぱっぱとなるよう鍋の厚さなど工夫していて最初の温度の上がり方が遅く、蒸器には入れる水が少ないので別々なんだと。そんなのはちょっとの工夫で両用になりそうなもの、微妙に数ミリ大きさが違う中蓋を同サイズにすればあとは使う方の勝手でしょ。という訳でここは毎年5月2〜4日に窯だし市があって一律30%引になるのでまた来年こようかということで買わず仕舞い。

 赤目温泉には5時前に到着、細い道に逆向きの対向車がすこぶる多く、目的地周辺の駐車場はまだ一杯で観光客もゾロゾロ、何でこんなに観光客が多いんだと、これもビックリするような宿への急坂を登る。今夜の宿は滝本屋といって女房が中では安目だと選んだ旅館。途中の案内にトロン温泉と出ていたのでオヤッと思ったがやっぱり人工温泉で、ここ本来のラジウム温泉を模したもの、安い訳が分かりました。でも改装されたばかりのようで綺麗だし、料理の方もまずまず、値段はリーズナブルだと思います。着いて部屋に案内してくれた仲居さんに赤目温泉は関東では知れ渡っていなくて初めてなんだけどいつもこんなに観光客が多いのと聞くと、今年は特に多くて近くの室生寺とセットで来られる人が多いですよと。今年はテロの影響で飛行機旅行が減った分、京都などが人気だそうでこの時期は紅葉真っ盛りで女房が風呂で一緒だった人は京都を廻ってきて混雑で大変だったとか。そういえばここはもう奈良県にも近いし関西旅行圏でもあるんだ。室生寺といえば10数年前の冬、途中雪に会ってモタモタしたため寺に到着した時は閉山した直後で見られずガッカリしたことのある女房、明日は是非そっちを見てからあとの予定を決めましょうと。数年前の台風で壊れた五重の塔も修復できていることだしそれではと、明日は早めの朝食にしてもらってまず赤目38滝のさわり部分だけ歩いてから予定外の室生寺に行くことに即決する。

風呂に入ってからの食事は、関西に近いせいかやや手が混んだしんじょや煮物が多め、あとは味噌を旨く使った料理が特徴でした。またこのあたりは松茸の産地のようで土瓶蒸と炊込御飯にかなり大ぶりだったと想像できる切れっ端が入っていましたが香りは今一つ。高級旅館以外は売残りを安く買い取って使うことも多いそうなのでその口じゃろか。あとここの茶碗蒸は味といい柔かさといい最近では出色でしたね。

朝食も関西風で僕の好きな納豆は出ませんが、焼鮭はかなり旨いやつで見てすぐ分かりました。僕は朝には干物や塩鮭などのいいやつが食べられればご機嫌なのです。煮物の田楽風も薄味のネタにこれには名古屋の赤味噌が甘めに仕立てられ、丁度よい加減の味と風味でしたよ。

夕食膳

 食後すぐ軽くちょっと散歩くらいの気分で赤目渓谷へ行くと、まだ8時前で料金所は無人、で無料で中に入ると人もまばら、でも後からの人も含めて多くが登山の格好をしている通り、この4キロを往復するには4時間ぐらいかかりそう。アップダウンが繰り返すその段差部が滝になって中間は渓流、あたりは紅葉で見上げる山も赤黄の彩り。これは見事な景観の本格ハイキングコースで思わぬめっけものにあともう少しもう少しとほんのさわりだけが1キロほど奥まで足を伸ばしてしまいました。でも先の室生寺へも混む前にということもあって、いつかは全走破しようよと言いつつと引き返す。9時前の入口はもう料金所が開いていましたがなんの咎めもなく退場、そこに開いていたサンショウウオの展示室も見て無料とは、ゴメンナサイ、ゴッツァンでした。

 40分弱で室生寺着、有料駐車場に停めて門前まで続く土産物や食堂さらに山菜料理料亭などが並ぶ道を通って川に懸かった太鼓橋を渡ると目指す山門前、すでにモミジの紅葉が美しい。ここは女人高野と言う通り我が女房を含め女性へのイメージが良いようで、そういえば叔母ちゃん連中も多いですね。僕はここは奥の院だけは登っていないが2回目です。金堂と新たに修復された檜皮葺のバランスの美しい五重の塔は平安時代の建物、応仁の乱などの戦火で焼けた京都にはほとんど残っていない(確か清水寺の懸崖造のお堂は平安時代建立部分が残っていたはず)ので少ないこともあって国宝なのです。酒田の土門拳記念館で古寺巡礼を撮るきっかけがこの寺の仏像撮影だったとその時の思い出を写真と共に読んでいたので女房はしきりに感激しておりましたです。紅葉に佇むお堂を写真に収めて奥の院へ。すぐに現れた石段の見上げるような勾配、距離は短いものの(醍醐寺などのような山奥で延々というのに比べれば楽なものですが)これを登るのかと思うとやれやれ、信迎とはいえ昔の人は偉いことをしてくれたものですね。途中さすがに一回休みを入れて懸崖造のお堂にたどり着き回廊に立てば、さすがに良い眺め、絶景かなということでめでたしめでたし。今日は朝から上り下りの運動の大当たり、昼は大食いしてやろう。

 昼は阿山に戻ってもくもくファームで伊賀豚料理を食べようと、そのあと時間があれば伊賀焼窯元をもう少し見てもいいなという腹積もり。名阪自動車道は来る時もだったが、60キロ制限なのに皆んな100キロいやそれ以上でビュンビュン、速度自動取締機があってもバンバン走って行く。実態がこうなんじゃ制限速度をもっとアップすべきではないでしょうか、警察さん。ドイツのアウトバーンなどでは危険と制限速度が決められたところでは違反すればすぐチェックされるシステムだそうで、その代わり大部分は速度無制限で自分の車の性能で走るレーンを守っているとか、合理的ですねぇ。

 もくもくファームは子供連れなどで大盛況、隣接駐車場は満車で離れた駐車場ももうかなりの台数、そこからシャトルバスで園内へ。12時を廻っていたので入口すぐのレストランに混まないうちにと真っ先に入る。急いで見たメニューは豚、田舎家庭料理、豆腐、麺類と自家生産の伊賀米(白米、お粥、おにぎり)の組合せがいくつかあって僕はロース座という1500円の定食、女房はもくもく座という1000円の定食、頼んでからここで作っているというハム・ソーセージがあれば食べたいなと見れば盛合せ800円があったのでこれも注文してしまう。出てきた料理はなかなかのボリューム、さすがに腹一杯で御馳走さん。ハム・ソーセージ類は品のいい作り方で美味しいという味、ニンニクなど多く使ったワイルドで旨いという方が好きな人には物足りないかもしれませんが。

 奥の売店から先はファームゾーンで有料、起伏のある園内にはバーベキューと地ビールレストランの食事施設、パン工房 (天然酵母パン600円を買って帰りましたがこれは美味しかったです)やソーセージの手作り体験施設などがあって、各施設繁盛していますねぇ。また園内ではミニブタが放し飼いされ、食べ物をねだって歩き回っていて人気者になっています。触れば豚毛とはよく言ったものだと実感しますよ。またスロープの下には舞台があってミニブタのショータイムもあるとのことですが時間が合わず見損ないました。そんなに広いというわけではありませんが子供連れなら一日楽しめ、お父さんは地ビールでご機嫌、ママは帰りの車運転?という手はありますね。伊賀牛も有名な土地ですが、狂牛病騒ぎの昨今、伊賀豚も旨いのでお薦めのファームでしょう。またここで販売している米はその日の朝精米仕立てを売っていて、品種はコシヒカリを改良、ごーひちご(芭蕉生誕の伊賀ということで俳句の五七五から)の名で5キロ2750円と魚沼産よりかなり安いので買ってみました。  

そうこうしているうちに3時になったので丸柱の窯元には廻らず次の宿がある浜名湖は館山寺へ向かう。中京、関西方面に来た時は中間まで戻って一泊というのが最終日を楽にするので僕の故郷なんですが(浜松に居た時はそんなにも思いませんでしたが離れてみるとやはり)浜名湖は風光明媚でお薦めです。

自動車専用道から東名阪、名古屋経由東名の逆コースは至って順調で、三ケ日IC(浜松西ICの方が10分ほど速いのですが)で降りて5時過ぎには国民宿舎大草荘紅竹に。このルートは浜名湖北部をぐるっと廻り、途中渋滞もあるのですが、気賀駅前にはここらで評判の数日間湧清水で締った鰻白焼を売っている鶴見という目的の店があり、客が絶えずいる人気店に恥じずここの鰻がスコブル付きで旨いのです。

 最終日の朝は宿を出て大草山の下、ホテル旅館開華亭がやっている美術館に併設する喫茶室のラ・メールで2日ぶりのコーヒーを飲む。ここからは小さな湾内に面し白鷺や鴨、海鵜などの水鳥が眺められ、大草山へのケーブルカーや山頂の館山荘なども遠望でき一服するにはお薦めの場所です。

喫茶室からの眺め

 今日は夕飯の魚などを買って帰るだけと、勝手知ったるところを廻ってみようとまず新居へ向かう。浜名湖大橋を渡る有料コースで湖の眺めを楽しみながら鷲津駅近く、新居関所を覗いて本興寺に立寄る。それから買出しはまずシラス干で浜近くの製造販売カネ吉しらす加工所で釜上げ200g(300円/100g)と一緒に大き目のところを500g(260円/100g)仕入れ、次は浜名湖東側舞阪に渡って丸三堀江三郎商店でロシア産シシャモをここで干物にしたやつ1箱30匹1050円、これが旨いんです。浜松駅まで戻ってウナギパイと安倍川餅の女子供用お土産と奥浜名湖の酒花の舞を買い求め、やや早めながら駅前契約駐車場に入れて鰻の八百徳で昼飯にする。ここの名物は鰻茶漬2300円、お櫃に入った鰻飯を茶碗によそい、まず最初はそのままで食べ、僕は一杯半までそのまま食べ、あとは昆布出汁の効いた茶漬でサラサラッと食べる。軽めによそえば全部では4杯もあり、大の男でも腹は満足、女房もよく食べるもんですねぇ。

 浜松ICから焼津ICまで一気に走って降りてすぐのおさかなセンターへは高速では1時間もかかりません。ここは何回か着ていますが買う店は自ずと決まってくるものです。買物客は観光バスも沢山乗付けますから通路に一杯、通り毎に名前が付いていて全体配置案内図もありますから買った店をチェックしてみると次の参考になりますよ。僕がよく買うのはまず鮮魚と鮪のマルマン鷲野商店、それから並んである鮪のカネトモ2号店とまぐろの魚ニ、それにカツオ加工品の川直、塩干物のカネキュウ水産など、あとは鮨などの食事もでき、なんでも扱っているカク長渡仲商店などかな。今日は刺身にとイカと大鯵(これらは帰って自分で料理)に本鮪中トロ、焼魚にはエボダイと言っていたがもっと頭が小さく体が大きめの魚と鯵の干物、サラダに入れるカツオ生利節(作りたて燻し跡があって旨い)、掻揚用に生サクラエビ(掻揚には釜上げより生の方が美味しい)、ステーキ用鮪ホホ肉、味噌汁用に浜名湖産アサリ(浜名湖産は旨いよ)などを買い求め2時過ぎには今日は早く帰れそうと家路へと。

鷲野商店

川直

 遊んできたんだから今晩は家族に旨い魚を御馳走しなければね。あともう少しですよ。

店データ
  忠六苑          信楽町長野 1178       0748-82-0013
  陶成アートギャラリー  信楽町長野 1181・1      0748-82-2401
  宗陶苑          信楽町長野 1423・13     0748-82-0316
  さがら           信楽町長野 513        0748-82-1004
  伊賀焼伝統産業会館 阿山町丸柱 169・2       0795-44-1701
  長谷園          阿山町丸柱 569        0795-44-1511
  ラ・メール         浜松市館山寺町 1891    053-487-2510
  カネ吉しらす加工所  新居町新居 2715       053-594-1823
  丸三商店         舞阪町舞阪 2037       053-592-0465
  八百徳          浜松市板屋町広小路 1    053-452-5687

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