美濃は瀬戸に勝る?

美濃・瀬戸   2000.9.15(金)〜17(日)

 久しぶりに飛騨高山に行って帰りは多治見、瑞浪、土岐、可児の美濃焼の里を訪ね、さらには瀬戸経由で赤津焼もという欲張り強行軍の2泊3日の旅に出た。阿房トンネルができて車が随分楽になった高山には午前中に到着、毎度のお馴染上三之町などの観光メッカと朝市を巡る定番コースで一日を費やす。今回新たに見つけた所を挙げるととしたら昼に入ったビストロ・ミュー、飛騨牛ステーキがメインの2500円のランチが美味しかったことぐらいかな。通りすがりにあった有名店蕎麦屋まさごの高山ラーメンは食べ損なってしまいました。泊りも山貴に予約を入れたら一杯ということで民宿の時代宿山下という所にしましたが、こちらは民宿と言っても骨董品を展示したりする旅館クラスの大型宿、しかしながら値段は7000円からとお得な宿でした。最近の高山は温泉が出て郊外に観光施設が出来ているようですが、やはり古い町を訪ねるのが目的という人が多いのでは。以前には5月の連休ここから飛騨古川、五箇山を通って富山は彫刻の井波、手漉和紙の八尾(風の盆が有名で僕も9月最初のその時期に一度は行って見たいと思っています)、そしてチューリップの咲く礪波などを廻りさらに金沢にも足を伸ばす旅をしたことがありますが、これもなかなか面白い旅でした。まあ高山は買物でも味噌(3年物赤味噌は旨い)、擬製豆腐、めしどろぼうなどの漬物、酒などの食べ物から春慶塗、渋草焼やイチイ一刀彫、飛騨刺子などの工芸品などお薦めのお土産もあり、町全体が観光資源となっていてやはり日本有数の土地だと思いますが、骨董屋などは観光客相手で東京より高いというように観光観光しているところが鼻につくというむきも居られそうですね。僕も祭見物も含めてかなり行っているのでこんなもので高山は切り上げて次の日の焼物紀行を楽しみにしましょう。

 美濃焼の中心は多治見、3年前の4月の第2日曜に木曽駒からの帰り、前から知っていた地元焼物卸販売の丸志げ陶器に寄ろうと電話したところ、今日は陶器祭(陶祖祭も10月にある)があってそちらに出店していると言うのでこれは面白いと場所を聞いていざ出陣。JR駅裏に駐車場が用意されシャトルバスで会場の通りの北端に到着、ここから駅まで戻る道筋両側にずらりと地元業者や個人作家を目指す若手達等のテントが並び、途中の大手販売店の花御堂前広場には飲食屋台も出てにぎやかなこと。値段はとみると益子や笠間の陶器市よりかなり割安感があり、少々難あり品などではパスタ用にピッタリといった赤絵手書き大皿など絵の一部がやや薄く飛んでいたって使うのにまず分からないというようなものが一枚400円、6枚まとめて2000円で購入したものです。美濃焼は古くは黄瀬戸、桃山以降からでは織部や志野が有名で、作家物でなければかなり良品でも一律値段で安いものが並んでいたのでついついぐい呑など数点を選んで買ってしまいました。

一枚400円の皿

 今回も中心部からはちょっと離れた丸志げ陶器の自宅兼ショールームへまず直行、応接室の奥の部屋に上がって展示品を見せてもらう。ここは高級料亭の器を御家庭でがキャッチフレーズで多治見周辺のかなり名の売れた美濃焼作家の作品を置いていて、以前駅の案内所で良い物を見たかったらまず何処がよいかと聞いたら教えてくれた店です。人間国宝鈴木蔵や加藤卓郎とか大御所加藤孝造や若尾貞則などはもう高過ぎてありませんが(自分が所有のぐい呑などは多少はあるようなので見るだけならお願いしてみたら)、その次のランクの作家物や主人がこれはと見込んだ若手(若手でも特にサラブレッドと主人が呼ぶ作家)などの作品を扱っていて、彼らとの付合いの深さが感じられる話を聞きながら品選びをする。こういう時の女房はかなり目が利いて、こういうものを買いたいという目的も無いままにこれはと思う物を抜き出していくとかなり高い物ばかりになってしまうのです。御眼が高いとお世辞を言われながらとても全部は買えないのでその中から絞り込むのに苦労する。林正太郎の志野の花器などかなり良かったがこれはかなり高い。迷った末に河合竹彦の志野の花掛の小品と今人気者の一人水野輝幸のコーヒーカップを買い上げ。我が家にはここで買ったコーヒーカップはもう3客あるが、その内では渡辺的矢の白地に丸と三角の単純線画練り込み模様の2客は僕のお気に入りなのです。多治見では美濃焼卸団地があって全体の展示販売所や各社のショールームがあるのでそちらも廻ると良いでしょう。また瑞浪や土岐、可児にも卸売団地や工芸会館などや資料館があり、車でないと廻れませんが焼物好きなら是非行ってみて下さい。特に土岐の卸団地は喜楽よいう店など作家者の品数が多くてチェックしておきたいし、周辺の陶器市も5月連休や10月にもあり見逃せられません。

 今日の宿はその土岐にある柿野温泉湯本荘あさひ館、この旅館は交通公社で予約したのだが、なんでこの時期こんな所に行くのかと窓口の人に女房は不思議がられたとか。丸志げの親父に泊る所を話したら泉質が良いですよと言っていたが泊り客は我々一組のみ、どうやら近在からの日帰り客が中心と見た。大浴場はただ一人、外風呂は夜10時迄で翌朝はまだ沸かしていないとのことでこれにも入って夕食に、松茸料理も入って料理はまずまず、もっと周辺の観光案内も充実させ市役所観光課あたりが宣伝してやったらよいのではと、ちょっとばかり宿には可哀想な気分でした。

 翌朝は車で30分ほどの道の駅どんぶり会館に朝のコーヒーをと立寄ったら2階のカフェラウンジは家族連れで一杯、おじいちゃんもおばあちゃんもでびっくり。後で聞くと中京地区は休日の朝食は喫茶店のモーニングに皆で行くのが習慣のようで、トーストとゆで卵がめっぽう安いんだそうです。

 多治見では昼をとるなら駅近くの駐車場側から少し歩いても行ける欧風食房魯庵がお薦め。雑誌に出ていたのを知っていたので探して行ったのだが駐車場もあり便利。ランチの2500円コースは11品をお箸で戴くが鄙には稀なというと失礼かな、1500円のセットも美濃焼の和風角皿に盛られて器も御馳走です (その後移転したらしくR19を超えた虎渓山に魯庵本店と電話帳に出ていた。R19から入った住吉町から虎渓山方面には他にも和膳のわさびやイタリアンのPAPA’zなどのシャレた店や豆工房灯屋など拘りのありそうな店がいくつかあり、また有名な虎渓窯やお寺を回って北側に行けばワインを作っているカトリック多治見修道院などの名所もある) 。TVにも出たうどんの信濃屋はこの斜め向い側にあり、常連さん優先席というのがあるらしくその旨張紙をしていた。瀬戸にかけてころうどんなるものが名物らしいのですが遠くまできてうどんでもないかとまだ食べてはいません。その他には鰻の老舗などもあるようですが、偶然入ったはなしょうという店、工芸ギャラリー喫茶となっており和風自宅を改装して始めたようで、着物を洋服に仕立てたものや小物類なども展示販売、軽食まで出来るので来た折にはちょっと寄って見たいところです。この周辺都市は焼物好きにはたまらない土地、多治見以外はまだ細かく歩いていませんのでどんな目ぼしい店があるかは分かりませんが、土岐、可児、瑞浪、関、美濃と陶器だけでなく刃物や和紙など工芸品に事欠かぬ地域であることは確かです。

 次は瀬戸に向かって小山を越えると30分ほどで瀬戸の北の端、品濃になる。品野陶磁器センターがあるほか窯元などを巡れる窯垣の小径の案内もある。この道沿いにはその先にもう一つ僕が好きな地酒明眸を造る柴田合名会社があって直売しているので開いていれば必ず寄る。(その後倒産したと聞くがどうなっただろう)

 さらに市内に向かう途中を左折し高台に登って行くと赤津焼の里がある。瀬戸では茶陶の高級品はここが中心地でまず赤津焼会館に行って各窯の作品を見ておこう。というのはここで自分の好きな作家を選び、場所を聞いて尋ねていくのがお薦めなのです。各窯元の展示室では相対で売ってくれ、値段もその時の調子で決まるのだが一般販売価格よりかなり安く買えるはずです。僕が初めて訪ねることになったのは合羽橋の田窯で織部のコーヒーカップやぐい呑など特に気に入ったものが10000円以上(それでも一般小売価格より安いはず)しているので、作家名だけ覚えておいて現地に行って買おうという魂胆からだった。中でも西山窯の山口正文の黒織部が好きで2階の展示場で値段交渉しながら黒織部のカップ、赤織部の皿と湯呑などを求めたのだった。その後クロワッサンに女性料理研究家がここの黒織部御飯茶碗(名古屋単身赴任の主人が買ってきたとか)の良さを紹介した記事も偶然でているのを発見。次の年にも行ってみると先方も覚えていてくれて、黒織部でも引き黒と普通の黒は違うのだとか、クロワッサンに出て最近は海外からも注文がくるという茶碗などは同じ形にロクロで苦もなく手が動き出来るものなので安くても良い(でも3500円でした)とか、ぐい呑は高いという相場ができているので手びねりに拘り箱も付けるという話などを聞き、最近窯を新しくし今まで唯一薪窯で焼いていた鼠志野も来年からは電気窯になるという話にそこにあった花入を即座に買ってしまった。その他御飯茶碗やプレゼント用湯呑なども購入、新窯のお祝いに配ったという左馬が書かれた黄瀬戸の湯呑をもらったこともあった。今回はぐい呑だけ気に入った形のものがあったので購入。ここでは他には作助窯や三宅紀保、花峰窯などが目に留りましたが皆さんは如何でしょう。

品濃陶磁器センター

多治見の焼物店街
  中心部の
   花御堂付近

 川筋を下り瀬戸市街には瀬戸陶磁会館があって赤津焼を含めて瀬戸全体の焼物を並べていたし、若手作家のみ置く太陽という小さな店もあったが、概して瀬戸物という通りの一般品販売の店が多いようだ。ここの陶器市もニュースで何万人の人手などとにぎやかなようですが廉売品中心で、山口さんの話では我々の品物は高過ぎて市では買う人はいないんじゃないかと、多治見とは大分内容が違うらしい。瀬戸の昼飯では無料の宮前駐車場が神社前にあり、その下は長屋風の小さな飲食店がいくつか並んでいるので行ってみて下さい。その端っこの方、裁いたばかりの鰻を炭火で一本焼きしている10人も入れば一杯という田代という店、あまりにも好い臭いに釣られ入って注文。一本丸ごと入る鰻丼肝吸付1600円、関西風に蒸さない蒲焼だが表面コンガリ中は柔か、浜松出身の僕でもおもわず旨いと言ってしまいましたね。また近くに行列が出来ている焼ソバの福助屋、独特に工夫調合したソース焼きソバは地元では有名だそうで、持帰りで1パック330円を買って途中で食べてみたがやや甘めのタレでこれはこれで結構ではないでしょうか。

 さて横浜に戻るには多治見に戻って中央高速にするか名古屋に下がって東名にするかですが、途中の渋滞や降りてから家迄の道のりや道中の寄道も考えて東名を使うことに。道筋で瀬戸の南にある愛知県陶磁資料館は猿投、常滑、渥美、古瀬戸、美濃の陶磁器が時代順に並べられゆったりと見学できるので、桃山時代最高峰の焼物を始めとした名品を見て是非目の鍛錬をしましょう。ここの売店に山口正文の作品がいくつか置いてありましたがやっぱり目に付きますね。焼物以外では犬山に寄れば日本で一番古い天守閣という犬山城があり、僕自身も長良川対岸から眺めただけですが、すばらしい景観で印象的でした。この城がちょっと前まで個人 (尾張初代藩主頼宣への家康からの付家老だった成瀬家が幕末も最後にやっと大名となりこの城を明治になってもそのまま所有)のものだったとは驚きですね。なお大正期の旧帝国ホテルの移築保存する明治村などに寄るのならそれなりの時間の予定が必要になりますから念のため。

 2時過ぎに乗った名古屋ICからの帰りは順調で夕方には我家に着きことができましたが、今回は焼津か清水に寄って魚を買うのは遅くなって料理するのもとあきらめました。焼物で金を使ったからこのあとはしばらく倹約に努めましょう。

 店データ他
   ビストロ・ミュー     高山市総和町 1・55       0577-36-0149
   まさご          高山市有楽町 31         0577-31-8907
   大のや醸造      高山市上三之町 13        0577-32-0122
   欧風食房 魯庵(その後移転) 多治見市上野町 1・27 0572-23-8287
   魯庵            多治見市虎渓山町 3・1・12    0572-21-6600
   信濃屋          多治見市上野町 3・46      0572-22-1984
   はなしょう        多治見市豊岡町 2・69      0572-24-2370
   丸志げ陶器       多治見市生田町 2・193     0572-23-8346
   ステージ 花御堂   多治見市本町 6・2        0572-23-4997
   PAPA‘s        多治見市住吉町 2・27・1     0572-22-7641
   わさび          多治見市住吉町 2・1・1      0572-23-8110
   灯屋           多治見市虎渓山町 3・100    0572-25-0515
   虎渓窯          多治見市住吉町 2・29       0572-22-0129
   岐阜県陶磁資料館  多治見市東町 1・9・4       0572-23-1191
   セラミックパーク MINO 多治見市東町 4・2・5       0572-28-3200
   市之倉さかづき美術館 多治見市市之倉町6・3      0572-24-5911
   美濃焼卸団地      多治見市旭ヶ丘 10・10
   多治見修道院      多治見市緑ヶ丘 38        0572-22-3373
   どんぶり会館       土岐市肥田町肥田 286・8    0572-59-5611
   美濃焼卸団地      土岐市泉北山町 2・2
   ギャラリー太陽      瀬戸市栄町 1           0561-84-8588
   田代            瀬戸市深川町 13         0561-82-3036
   福助屋          瀬戸市深川町 14         0120-068-988
   品濃陶磁器センター  瀬戸市品野町 1・126・2     0561-41-1141
   柴田合名会社(倒産)  瀬戸市品濃町 4・88       0561-41-1150
   照苑            稲武町大字夏字シホノタワ6     05368-2-2116

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