長野・小布施 2001.8.17(金)
軽井沢から浅間サンロードを西へ、朝早くからやっていてこの辺では一番安くて新鮮と地元客に人気の小諸滝原地区農家仲間の直売所たきばら駅(10時頃には品数が少なくなってしまうし、品薄人気野菜は6時頃には行く必要がある)に寄って朝採野菜を買って小諸ICから上信道に入って長野に向かう。長野は昼迄ぶらついて、あとは小布施を廻って帰りにはどこかの温泉に入って帰ろうという計画だ。
ヨーカ堂提携の有料駐車場に駐車して街中へ。長野市はそごうとダイエーが撤退、オリンピックが終わって景気が悪そう。もともと善光寺の門前町だからその参拝客だって新人類が多くなった昨今は減っているはず、何か新企画を考えないといけないですよ、田中知事さん。善光寺に向かう道筋はオリンピック前に遊歩しやすいようにに工事が行われ、何ヶ所かの特徴ある店先には街角美術館としてショールームふうに小さな展示品を見せている。蕎麦屋や土産屋以外にもこういった魅力的を店をもっと沢山並べてその紹介PRを積極的にやるべきです。天台宗と浄土宗二つの宗派の寺で大勧進と大本願が左右に並ぶ善光寺(東大寺に次ぐ世界2位の木造建築)には何回か行ったので今日は大通り突き当たりまでを歩いて戻ることに、こんな僕達と同じ観光客も多いはずで、本当は突き当たり石段から先が境内門前街の昔ながらの店並びなのですが似たような店ばかりであまり食指が動かないのです。以前御開帳の時にはさすがに大変な賑わいでしたがそんな行事の時以外は混雑に会ったことはありません。
そんな中でも我々がちょくちょく寄る店は、突き当たり西に入ってすぐの蕎麦屋の元屋、少し下って左右には唐辛子の八幡屋、藤屋ホテル地下の喫茶室、武居民芸店、さらに下ると右に文人に愛されたという元銀扇楼(今は亡きご丁寧でビックリするような言葉使いのお婆さんが主人だった)の跡にレストラン五明館、蕎麦の今むら、さらに左に家具の松葉屋などがある。もっと下って西に多少入るとメニューに変わったネーミングをつけたレストランのクエル・ド・クエル、また味噌のすや亀などもちょっと変ったものがお土産用に手に入る。案内書にはあまり乗っていないと思う店だけ紹介すると、元屋は地元客御用達で安い!ボリュームあり!旨い!のお得な店、藤屋地下はレトロなホテルに相応しいこじんまり落ち着いた雰囲気がグッド、武居民芸店は案内書には出ていますが店の奥から上がる2階でテーマ展示が行われていれば時にめっけものがあるかもしれません。家具の松葉も有名ですが、今回行ってみるとなにか商品展示が減っていて、以前あった陶磁器、テキスタイル、工芸品などほとんどなく、値段がもう少し安ければ買うのになといつも思っていた通りでやはり売れずに止めてしまうのかな。
今日の昼は坂道をほぼ降りきって東に曲がる権藤通商店街の中にある天ぷら屋魚とし、ここには毎年1回は訪れているこれも地元で教えてもらった店、カウンター席だけで目の前で揚げ立てを出してくれるのがうれしいのです。近くにフレンチのシェ・ヒロもあるがこちらはやや高めの料金設定、また安くラーメンなら権堂通を突き抜けた大通りの反対になるがヨーカ堂の提携駐車場すぐ近くに長野では有名らしい邦心があるがやはり一押しはこちら魚とし。12時からの開店で直後に入ると先客は一組、その向こうを見てあれっ??と女房と一瞬顔を見合す。カウンター内で迎えている主人の顔が去年と違うではないか。前はシャイな感じの亭主だったが今日はややコワモテ顔、お絞りを持ってきてくれた奥さんは去年と同じ、どうなったんだろうとヒソヒソ話。以前からやや気の弱そうだった主人と無愛想な奥さん、まさか養子で縁切られたのじゃないだろうな、今日の奥さんは何だか愛想が良いぞ、どうしたんですかと直接聞くのも気まずいかとあとは静かに料理を待ちながらもなにか落着かない。さて肝心の天ぷらはいつもどおりの11品1700円の定食コース(大食漢はこれに掻揚を追加すればまずは十分、さらに3000円のコースはもっと腹一杯)、以前とほぼ同じネタなんですが、やや衣が多く付けられているのか衣が勝った味、前の亭主の方がやはり旨かったなと二人で一致。店を出て次ぎに来た時も前の亭主が居なかったら近所でどうしたのか聞いてみなくっちゃで長野を引き上げる。
長野から30分ほどで小布施に裏側から入る。駐車場は無料駐車場を持つ店もあるが、休日などはかなり混み合うので100/Hの有料に停めてしまった方が楽で、中央の幹線道路は横切るだけにしたい。この町は葛飾北斎と栗菓子で売出し、今や町中心は蔵を曳家してまで修景し、有名店を集中移転配置させ、美術館などは周辺に配するなど観光への注力の執念はまことに見事としか言いようがない。20年以上前初めて訪れた時には北斎館が駐車場脇にポツン、栗菓子などの有名店などは離れ離れにあってそんなに観光客も居なかったのに、大手菓子屋などが音頭をとって町を挙げて一昔前の和の演出に徹底した成果がこの繁盛だ。竹風堂が夏は軽井沢に売店を開き小布施通信を出していて、その中にあった写真での風情が良さそうじゃないかと、当時小学校低学年の子供達も連れて訪れて竹風堂の無料駐車場に停めて散策。駐車場に落ちて転がっているイガ栗を子供達が拾って遊んでいる所に行くと、窓から竹風堂の女性従業員が「あのー、その落ちている栗はうちの畑のものじゃないんですけど」と。少しばかり拾ってしまった栗をまあこの位返すこともないかと持帰り茹でて食べると大きく実が詰まって美味しいのなんのということもあった。なんでもこの土地は川には魚が棲まないほどに酸性が強くて栗にはその酸性土壌が最適なんだそうです。その栗菓子を名物にする店々は栗お強もある竹風堂、老舗で栗御飯の桜井甘精堂、高井鴻山の子孫筋で蔵元でもある小布施堂、ケーキもある岩崎、それに風味堂、松仙閣などなど、栗お強では元祖寿々喜華壇、さらにこれらの菓子店が経営するケーキ喫茶栗の木テラス、カフェレストラン傘風楼、食事処蔵部ほかの趣ある飲食店などが集まる。工芸雑貨では竹風堂がやっている国内外の民芸品店や和紙の中條などの店もある。美術館等では北斎が描いたと言う屋台を展示する北斎館、高井鴻山記念館、竹風堂併設の日本のあかり博物館は中心部に、中島千波美術館、北斎の天井画八方睨みの鳳凰で有名な岩松院、盆栽美術館、フローラルガーデンなどは周辺にと盛沢山で、始めてでしたら見て回るのに一日中朝から晩までかかりそうです。
中心部で僕のお薦めコースは竹風堂をスタート、北斎館に向かい傘風楼を曲がって栗の木ブロックを敷き詰めた栗の木ロードを進み、鴻山記念館(有料)に入って反対側に出て右手に曲がり、やましち山野草店の脇から見事な山野草庭園を見せて貰って、桜井甘精堂の庭園に抜けながら私設美術館(無料)を見学というもの、途中の店などにも大いに寄道して行くと楽しいでしょう。大通りに面して一軒だけ骨董屋もあります。その道向いには始めて訪れた頃には確か原銅器といった手打出しの食器などを製造販売していたお爺さんの店があって、小型カンテラランプ風銅細工とコーヒーカップらしきものを買ったことがある。そのカップでコーヒーを入れて飲んだとたん、唇を火傷なんて笑い話ももう20年前ですか。さて帰りがけの温泉ですが、この小布施にもナトリウム塩化物泉の穴観音の湯(隣にもう一つ建設中の建物がありました)というのがあって、北信三山(飯綱・黒姫・妙高)と小布施を一望する高台の上というロケーションで露天風呂もあり、ここに入ってから一寸戻った所にあるトゥーエルでアイスクリームというのも女子供に喜ばれるはず。女房は東部町湯楽里館の方が牛乳の味が濃くて好きだそうだが、なにせ種類が多いので人気になっているようです。
栗の木ロード
やましち山野草店の裏庭
さて今日は菅平を通って帰ろうと須坂を抜けて行く。途中仁礼に新しく出来た公共温泉湯っ蔵んどに入ることにして果樹園が続く道を須坂温泉を通り過ぎて南へ進む。須坂は蔵の街を名乗っているように、豪商の館田中本家があるなど小布施と同じく北信の商業で栄えた町、いくつか老舗が残っているので時間があれば寄るところですが、町の端っこを素通りして温泉に到着。ここは大型施設で各種の趣向風呂があるのが人気のようですが、なんと観光バスの団体客まで来ているのにはこりゃダメダ。でもほかに回るのもと入浴料650円なりで単純泉の軽い感じの湯に入る。湯上りに南極室という初めての経験の部屋ががあって、湯ほてりを早くとるにはこれだけは気持ちが良かった。湯っ蔵んどを出て菅平への坂道に入る手前左手にはJA須坂の販売所があって、ここで売っている栽培シメジは天然ではないものの風味が強く、炊込御飯にお薦めです。さらに洞窟風呂で有名な仙仁温泉岩の湯はかなり前に予約しないと満室で断られるのほどの宿で、少々高い料金ですがそれなり納得のおもてなしと評判です。菅平へはかなりの急坂、登りきるとラクビー合宿のメッカ、ここにあるホテルでも外来入浴可能なところがあります。夏は一本だけのメイン道路はかなり混雑するので最近は渋滞ができる信号の手前で早稲田大学合宿所の裏側を通ることにしている。反対からの場合もここを抜けるようお薦めします。シーズンは抜道案内の看板も出ているようですから目を凝らして行って下さい。
<追記>
その後も小布施には毎年一回は必ず尋ねているが町は集積度は益々高まっている。あのやましち山野草店はサライにも紹介されていたのでまた寄ってみると、前からのもう一つの商売である衣料店を縮小して骨董と現代版画の啐啄堂という店を開いているではないか。何でも親父さんが好きでこれまでに集めたものをネタに商売替えしたんだそうで、比較的良心的値段付けにはバブルの頃には買っていないからとの返事。金継ぎ直しも自分でやるそうで、その直し代はサービスになっているというのには感心感心。この前サライで見たよと話し込めば、あの記事が出た直後から全国の愛好家からの電話が多くて大変だったとか。山野草売場も奇麗になって益々充実している。記事には庭の表土の下に砂利を入れたと書いてあったのでどの位の厚さで入れたのと聞けば、1mも敷き詰めたそうで、それからは雑草がほとんど生えず今の山野草ガーデンになったそうだ。小柄で人のよさそうなこの親父、見た目とは別人ただものではないぞ。
また増設された温泉はあけびの湯と名づけられ、まぁ新しい施設になったとは言えますが、やや硫黄の臭いがある温泉は穴観音と同じで、展望も北信濃三山を眺められるようになっていて料金も同一で500円。最近ここの奥の方にある草むらの駐車場に車を回したときに目の前の斜面に佇むカモシカとご対面なんてことがありましたが、こんな人里近くでお目にかかるのは初めてでビックリしました。かなり大きい雄でしたがあけびの湯ができてからはこちらに駐車する人はあまりいないので、ひょっとするとこれからも出没するかもしれませんよ。
温泉とは町の反対側、高速道路小布施パーキングエリアに隣接のハイウェイオアシスには一般道との共用のミュージアムや物産館が設けられ、併設の農家による農産物直売所では山菜の季節どれでも1パック100円、切花などや野菜類も同様に全て100円とすこぶる安いので是非とも覗いていって下さい。
たきばら駅
魚とし
店データ
元屋 長野市大門町 587 026-232-0668
八幡屋磯五郎 長野市大門町 83 026-235-4351
武居工芸店 長野市大門町 512 026-232-4111
藤屋ティールーム 長野市大門町 80 026-235-1580
五明館 長野市大門町 515 026-232-1221
松葉屋 長野市大門町 45 026-232-2346
魚とし 長野市鶴賀権堂町 2373 026-234-2196
クエル・ド・クエル 長野市南長野新田町 1535 026-235-2802
すや亀 長野市西後町 625 026-235-4022
シェ・ヒロ 長野市権堂町 2227 026-232-7467
萬佳亭 長野市東之門町 2502 0120-327-089
邦心 長野市権堂町 2208 026-232-0266
トゥエル 小布施町大字中松 138 026-247-2578
穴観音の湯 小布施町雁田観音下 1194 026-247-2525
栗の木テラス 小布施町中町 784 026-247-5847
BUD 小布施町伊勢町 735 026-251-4033
やましち山野草店(啐啄堂) 小布施町中町 781 026-247-2032