よく行く町でのいつものブラブラ

松本   2001.8.15(水)

 松本は僕のお気に入りの町、ほどほどに文化的で工芸品を扱う店などが多く、また旨い店があるし、中心部は歩いてまわれるし、自然景観も川があるとか北アルプスも望めるなどでいいところです。軽井沢から車で2時間まではかからないので、こちらに来た時は特に目的が無くてもよく出かける。

 今日も松本まで行ってみようか程度のノリで朝9時過ぎに出て11時には井上デパートの駐車場に入れて市内散策に、とその前に一服とこれもご贔屓の喫茶店無伴奏に寄る。ここはコーヒーが旨いのと奥さんが版画の展示販売を作家単位で定期的に行っており、常連客が多い店です。今日は安曇野の版画家(この数年後にもう歳と故郷の神戸に帰られた由)、菅田英一板絵展の初日(これは実は日吉の自宅の方に盆休み出発後に届いた案内状で分かったのです)で10点に満たない作品がまだ売約済みマークも無く架けられている。お得意の猫の絵が多い中で縦長の板に描いた小品、田舎のプレスリーなる絵とさらに小さい仁王様、案内状に印刷された空中を飛ぶような猫の2号大元絵の3点を選んで見比べ、それぞれ12000、5000、15000(版画でも普通は3番目の大きさで20000はしている)という安さもあってプレスリーの絵を購入、午後に作者が来所とのことでサインをもらうよう頼み込んであとで引き取ることに。ちょうど昼になったのでここのカレーも旨いのだが、隣のビルにあるズッカでパスタランチを食べることにした。

菅田英一作

田舎のプレスリー

蒲鉾板に紙を貼って描いた絵

 次はいつもよく行く中町通方面へ、最近区画整理が進み綺麗になってきている街路を歩く。途中、老舗の菓子処開運堂であまりに暑いのでソフトクリームロボットなるものが作ってくれる本日のモモソフトをいただく。大小同一値段というので大盛を注文、モモの香りと味がしっかり効いたソフトを楽しみ、普段は食べ残すコーンもカリッと思いの外旨く全部食してしまった。

 中町通ではまず数年前に移築して出来た蔵シック館を訪れる。ここではほぼいつでも何らか催しや個人作家の工芸品等を中心にした展示即売をしている。本日は1階で個人収集のブータンとインドの写真と布販売コーナー、それに古民具家具中心の骨董店コーナー、2階で若手工芸作家の手作りガラスコーナーが開かれていた。ガラスの方はいまいちかな、骨董屋はここでちょくちょく展示販売していたことがある見かけた顔で、今回は伊万里物が比較的安かったのだが4日前にも買ってしまっていたので染付角大皿で良いものがあったけれど我慢、我慢。布の方は現地でかなり安く買ってきたようで、なかでもインドの刺繍による動物などの小さな柄を全体に配したサリー生地は見事なもので、既に40000円で売約済みとのこと、この値段だったら僕もすぐ買ったのにな。ブータンの織帯のようなものを2000円で買い(その後家ではテーブルセンターに使っています)、次はすぐ前の市ケ瀬ミシン商会で奥さんが集めた古着物生地を使った洋服を妻が眺める。この手の趣味がある方には安くて穴場です。趣味で始めたらしいが各地の骨董市で古布を集めているらしく、聞けばいろんなことを教えてくれますよ。この前も裂織を組込んだチョッキがあったので信州では小谷村の土産品のボロ織はものすごく安かったといえば、あそこは布団地などなんでも染めたりして使っているので色がケバケバしくていかにも観光用で安物なんだけど、資料館の隣の○○さんだけは良いのを作っているなどと詳しいのです。全国に古布仲間が居るらしいので好きな人はそれらの情報も是非伺ってみては。

中町通

蔵シック館

 次は近くの中央民芸へ。ここは松本民芸家具の製造販売店で去年だったか亡くなった先代は柳宗悦に共鳴して松本の民芸運動を指導した人である。10数年前我家を建て替えた時にはバブルだったこともあってここの家具をいくつか買って家まで当時自分の乗っていたワゴン車に積んで運んだものです。自分で運べば1割引だったものですから。家具はほとんど伝統的に形が決まったもの(一つの家具は一人の職人が全て造る方式とのこと)で何回もみているのでよしとして、各地の陶器、ガラス、染織りなどの工芸品やギャッベなどの絨毯も展示販売している1、2階をひとまわりする。どれも目の肥えた先代が仕入始めたものを今も取寄せているらしく、センスの良い品揃えで見るだけでも結構なものです。

中央民芸店内

 中町通はこの他に和風工芸ではちきりや工芸展(このあたりの民芸品店の草分)、ほんごう(織物屋が始めたそうで柚木沙三朗の染絵を置いています)、新しくはマエストロ(ここはかなり良い品を置いていますが値付がちょっと高いので買ったことはありません)等、東南アジアの民芸骨董のサザン(ここではチベットの曼荼羅やインドネシアの染織を買ったことがあります)、西洋民芸雑貨の寒山(ここの亭主は家具職人で注文製作してくれますから店を守る奥さんに写真などを見せて貰うといいですよ。実は我家のナラ材のダイニングテーブルと椅子はここで作ってもらったものなのです)など、骨董屋や木工品店、陶器店が並び、美味しい食べ物の店では和食の草菴、蕎麦の野麦、小布施が本店の竹風堂や漬物のみづしろ、老舗和菓子屋の翁堂の支店ほか特徴がある店が多く、蔵作りの建物もいくつかあって、ここを道草しながら川を越えて縄手通まで足を伸ばすのをお薦めします。縄手通かっぱ横丁の店は女鳥羽川をコンクリートから石組の親水堤への改修工事がこの場所だけ済んで装いも新たになった。例の田中県知事の松本訪問時、昔の古いままの方が良かったと言う一部の人がいて、皆に喜ばれない公共工事などもってのほかと言わしめたそうだが、観光客としては以前より川としての美観が魅力を増し町の風景となって行くのではと、私は改修賛成派に廻りたいですね。

改修中の女鳥羽川とそこを泳ぐカルガモ親子

 一通り中心部を廻ってデパートに戻り安曇野の地酒大雪渓ほかなにがしかの買物をして車を出し、市内にある湧水が湧き出る源智の井でペットボトルに水を汲む。井戸の向いにはこれもコーヒーとチーズケーキの美味しい半杓亭(寺の敷地の一角に店、寺の娘がやっているらしい)があるが今日は時間が遅くなったのでよらずにこの地の味噌を買って帰ることにした。NHK先の信号を東に入った八百屋のおやおやはお盆でお休みなので、その近くに石井の3年味噌もあるけれど、よりコクのある玄米麹の3年味噌(おやおやではこの味噌と醤油を売っています)を求め里山辺の大久保醸造に廻る。1.5kg入りで1500円なり、これで作る味噌汁は抜群、醤油も2種類あって家ではもっぱら薄い色の紫大尽を購入しているが、もったいないので付け醤油にしか使わない、我家の拘りの調味料なのです。ちなみに主人は濃い溜り醤油の方は青身魚の刺身に使って欲しいと言っていた。

 帰り道では三才山を越えてすぐの鹿教湯温泉(温泉街に分岐した道の入ってすぐ近くに無料駐車場があります)の小さいながらも昨年改築され綺麗になった文殊の湯に立寄り、スッキリして家路に。今日も一日遊び尽くしてしまいました。松本の美味しい店の紹介はあとにしておきますが、ただ、特にお気に入りだった日本料理のかじかが閉店してしまったのだけは残念です、僕はここのステーキ定食が好物だったんですがね。(その後の情報ではかの親父は麻績村でそば屋をやっているとか、そういえばちょっと変わり者の感じだったものね。そのあとにできたのが花とびらで、同経営の創作和食の店でちょっと気取った内装の扉が中町通にもあり、ここのランチはお値打ちもの、経営母体は扉温泉の老舗旅館明神館である)

扉の店内

扉のフレンチキュジーヌランチセット

 松本での食事処レストランあれこれについて行った店、行きたい店で挙げてみると、蕎麦では僕がちょくちょく寄るのは浅田、かの有名な翁で修行したとかで実に品が良くキリッとした蕎麦が食べられます。10割蕎麦は一日限定15食で1000円なりです。鰻は老舗のまつか、ちょっとした料亭風建物の座敷に上がり一串700円で何串かを注文するというもの、4串の鰻重は中段に刻んだ鰻を挟んでボリュームもたっぷりで旨いのなんの。ここは持帰りの客も多いので午後3時頃にはその日のネタは終了となる。駐車場も前面に3台程度しかないし、昼時は地元客で一杯になるので早めに行きましょう。信州は特に伊那地方が九州熊本と並ぶ馬肉で有名な土地ですが、ここの三河屋は松本でも有名店。馬肉なんぞ赤身であっさりしたそれなりのものと思っていた僕もここの馬刺定食を食べてみてビックリ。本当に旨い霜降肉は正に大トロをさらに豊潤にした味わい、認識を改めさせられましたね。それでさくら鍋もと頼んだのですが、こちらは煮すぎたのか和牛のようなわけにはいかず、ややパサッとした食感で残念でした。あとフランス料理は地元では澤田が有名ですがやや高くて昼にはもったいないような気分があってまだ食べていません。それで昼に手軽に洋風料理という時はポンヌフ、ここは若夫婦二人で始めた本当に小さな欧風料理の店でカウンターのほかは4人用テーブル一つだけ。2500円ぐらいの昼のコースがありますが、大概の地元客が注文しているのがカレー、これがかなり本格的欧風カレーで美味しいのです。女性にはデザートもいいですよ。地元客でなければ分からないような怪しい場所にあるのが地元PR誌で紹介されていたアベニュードリベルテ橋倉。本来は夜向きのダイニングバーだと思うのですが、昼はランチの料理からニンニクの利いた臭いを道路まで漂わせていましたが、犬を連れて行ったときに見つけたので食べられませんでした(その後昼に立寄れば客は我々だけ、パスタランチと気まぐれカレーなるものを二人で食べましたが味はかなり大人向き、黒板にブイィ・フュメやカオールなどのフランスワイン銘柄が書いてありましたから夜はきっと旨い酒とというのでしょう)。もうひとつはビストロ・ブランシェというこれまたややこじんまりした店、ここは昼は3種ぐらいの安いセットメニューのみなので物足りない感じですが、夜はかなり手間暇かけたコース料理がリーズナブルな値段で食べられます。さらに夜の飲み処を兼ねてというのなら、松本の営業所にいる会社の知人の情報ですが川佳という割烹、ここの料理は何でも旨くて一番、で客の接待はここと決めているそうです。ほかには和食でも昼に3000円位だそうというのであれば草菴がよく紹介されています。あとは和洋両方あって割安なのがホテル花月1Fのレストラン、立派な店内に比べ料金は至って庶民価格なのが嬉しいのですが、休日はそれに輪をかけて特にお得な平日ランチメニューが無いせいか空いているのですぐ食べられますよ。

追記
 平成14年4月に訪ねてみると、市内中心部の整備はほぼ完了、あの中町通も道路が整備されて空家だった所もいくつか新しい店舗になっていたりで、約半年で変わるものですねぇ。その中に無伴奏の版画ギャラリーが新たにこちらにできていて、開設展ということで松本出身の草間彌生展が開かれていました。また立派な美術館もオープン、さらには市民会館も建設中とか。現存国宝天守閣では犬山城に次いで古い松本城や擬洋風木造建築の開智学校だけでは観光客も増えないというわけで、長野オリンピックで長野市街が先行整備されたのに刺激され松本も負けじと頑張っているのでしょうか。そういえば上田市の中心も電柱を取り払ってお化粧中。この不景気に長野県はお金持の町が多いのですねぇと聞く女房に無伴奏の主人は、なんでも借金でやっているそうですよ、あとでツケが回るんじゃないですかですと。確かにこれで活性化しないようだと大変でしょう、我々も微力ながら手助けにちょくちょく訪れてお金を落としていきましょうか、なんてね。
その後平成16年に扉に立寄れば創作和食からフレンチキュイジーヌのJ・キュイジーヌ 扉となっていてお箸で気軽にフレンチをという内容に変っていた。懐石花とびらが井上デパート傍にあるのでこちらは洋風料理に限定し、和洋両方の客を獲り込もうというんでしょうね、どちらもランチは1000円からと確かにお値打ち、人気店になっています。

源智の井

浅田の蕎麦

松本美術館

店データ
    無伴奏         松本市深志 2・1・21      0263-36-2964
        (喫茶は2003年に閉店、画廊は中町通で営業)
    ズッカ           松本市深志 2・1・21      0263-33.8975
    開運堂          松本市中央 2・2・21      0263-32-0506
    中央民芸         松本市中央 3・2・12      0263-33-5760
    翁堂 本店         松本市大手 4・3・13      0263-32-0183
    サザン          松本市中央 3・5・11      0263-35-4404
    おやおや        松本市埋橋 1・2・2        0263-33-4128
    浅田           松本市深志 3・10・11     0263-33-0826
    まつか          松本市中央 3・2・29     0263-32-0747
    三河屋          松本市中央 3・8・14     0263-39-0810
    半杓亭          松本市中央 3・7・12     0263-33-6187
    川佳           松本市中央 1・5・18     0263-35-8425
    ポンヌフ         松本市深志 1・2・3      0263-35-3995
    ビストロ ブランシェ   松本市深志 1・4・11      0263-34-8420
    石井三年味噌     松本市埋橋 1・8・1       0263-32-0534
    大久保醸造       松本市里山辺 2889      0263-32-3154
    レストラン 澤田     松本市沢村 2・1・2      0263-32-0786
    アベニュードリベルテ 橋倉
                   松本市中央 4・3        0263-33-4427
    草菴           松本市中央 3・2        0263-36-3023
    扉             松本市中央 2・5        0263-38-0088

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