上州から三国越え2002:後編法師温泉2005.4:続編法師栃尾又2006.3
新幹線上毛高原駅あたりは手作りガラス工場で有名な月夜野町、尾瀬への玄関口の沼田、日光金精峠越え方面は吹き割の滝や老神温泉がある利根村などには一回だけ足を伸ばしている。また月夜野から北へは水上とは別ルート三国峠方面のたくみの里や猿ケ京温泉のある新治村などに2〜3度出かけ、越後湯沢に抜けて関越で戻ってくるなんてことをしました。南魚沼では当然コシヒカリと地酒を仕入れ、日本海の魚直送直売店で鮮魚の品定めもし、枝豆の季節なら茶豆も買って帰りましょう。またこのルートを秋に走った時の紅葉は見事なものでしたよ。ただこのコース取りは帰りとなる関越道上り側の谷川SAでの湧水汲みが下りに比べ混雑していることだけが難ありですが。
まず月夜野の手作りガラス工場はかなり大きな施設で、作っている様子を見学させている。ガラス溶融窯数箇所毎にその日の製作品が決まっているらしく同じ製品が繰り返し作られていく工程を結構面白く眺められます。直売所もありましたがガラス製品は諏訪でもよく見ているし、御代田に別荘のあるガラス作家河上恭一郎が和光の厳しい納入検査ではねられたものを一年に一回だけ格安で売るのを買ってもいるので今回はやめておきました。でも伝統工芸技術士に何人かが認定されていて、特に華やかなデザインのグラスなどは1万円台で見事なものがあってちょっとそそられたのですが。その後日本橋三越でここの宮田高志の個展に出会う機会がありましたよ。
びーどろパークのガラス工場と製作風景
隣接の売店
たくみの里は街道を北上してさりげない普通の田舎道という左手に入る山道を登っていくと、忽然と平坦で小さな桃源郷が現れると言ったようななにかお伽噺の世界に来たという雰囲気に、初めて訪れた時はやや感動のビックリを味わったものです。村が工芸作家を誘致し、観光目玉に開いて軌道に乗せて何かの賞も貰ったというのも頷けます。貸自転車があって○○の家と名付けられた各匠の家を訪ね歩けば、直売はもちろん製作体験も出来る家もあって時間を掛けようと思えばいくらでも、でもお金も掛かりますがね。藍染の家、木織の家、急須の家、布遊びの家、マッチ絵の家などなどが適度に離れて配置され、作品レベルも熟練の工芸品から素朴な民芸物まであって、その落差も面白い。さらに村の物産直売所と食堂、貸自転車が一体となった豊楽館という施設があって、ここでは蕎麦打体験ができる。蕎麦打は人気があるので最初に空いている時間を確認して予約しておきましょう。お値段も1500円という安さ、これで2人分ができ、すぐ直後にゆでてもらいざるで食べられる。1回4人分までやれるそうですが、食堂のお母さん達が丁寧に指導してくれ、一番難しい水回しさえ見てもらえれば案外あとはかなりスムースに作れるはず、食べてみれば自分が打ったとは思えない旨さに蕎麦打を趣味にしてみようかとついその気になってしまうこと請合いです。まぁずぶの素人がいきなり蕎麦打ちに挑戦するわけですから、かなりウドン粉が多いはずなんですが、自分で打ってすぐに食べれば旨さも格別ということでしょうね。僕もこの後に擦り漆塗の捏ね鉢、それもロクロ引きでないチョウナ彫の見事なものを上野村で買ってしまいましたがまだお蔵入りしたまま。女房にはまだのし板や蕎麦庖丁を買っていないからと言い訳していますけど、そのうち本格的にやろうという心積もりはしっかり持っていますよ。季節が良い時期はサイクリングも楽しいし、日本の正しい田舎里がここにはあるとかなりお薦め、やはり賞はダテではありません (数年後の平成17年4月に短時間訪ねてみれば、たくみ達の家は少しずつ増えていて、村営の資料館や蕎麦打教室、農産物加工などの施設を加えてその数パンフレット掲載24の家にプラスアルファが農村集落の中に点在しています)。サイクリングで汗をかいたらここからちょっと奥に足を伸ばしてこれも村営の公衆温泉、奥平温泉遊神館でひとっ風呂浴びていきましょう。その際はたくみの里のどこか工芸の家で割引券を手に入れて行けば3時間500円が100円引になりますからお忘れなく。田園、畑風景に小さなせせらぎの農村風景に点在する手わざの民家とかなり出来すぎの感はありますが。
里の田園風景
布遊びの家
集落のメイン通り
片側に小川が流れる街道筋といった風景
特筆すべきはこの近くには泊まりたい温泉宿がいくつかあることで、最大の温泉地は猿ケ京ですが周辺には上原腱と高峰三枝子のJRフルムーンポシターで有名になり今や予約が獲りにくい法師温泉、ほかにも鄙びた川古温泉や三国峠を超え新潟側に入ったところにある目に効くという貝掛温泉などの一軒宿もあって一度は泊まってみようと狙っているのですが。法師温泉長寿館は外来入浴もできますが紅葉の素晴らしい秋の9時頃行った時はまだダメで、泊り客を虚無僧が尺八で送る光景に出くわしました。外来は10時半からだそうです。越後側には途中に公衆温泉の街道の湯があるほか街中に入っても数箇所共同浴場がありますが、泉質は群馬側に軍配が上がると思います。
小説雪国のトンネルを抜ければの列車での旅ではないけれど、昔からの街道で三国峠越えすれば地名詐称の感がある苗場スキー場を抜けて越後湯沢にでる。この地はバブル以来の別荘マンションが建ち並び、その後の観光経済を必死に頑張っているらしい。そういう訳で元は田舎だったにしては食事処が多く、僕も値段が安いうどんすきの森瀧、ピザで評判なラ・ロカンダ・デル・ピットーレには行ったことがありますが、加山雄三もお薦めの大寿司は昼には高いかなということでまだ行かずじまい。いずれもTVなどでよく紹介されているので県外からの客も多いようです。新幹線越後湯沢駅には新潟中の地酒が試飲できるぽんしゅ館では越の寒梅、雪中梅、〆張鶴、八海山などのプレミアム物も試飲できますがさすがに販売はしていません。駅1階には寺泊の角上が魚を並べています。甘党のお土産は笹だんごが名物、地ビール党には湯沢高原ビールがありますが僕はまだ両方とも味わっていません。アルプの里のロックガーデンはスキー場の夏用活用を図った施設ですが山野草好きの方には楽しめるはず、越後の山々の眺望も良いですし。ここから北については奥只見から会津の旅(上布と麺と斎藤清に出会った旅)で紹介しましたのでそちらをどうぞ。でも湯沢石打地区はバブル期にリゾート開発でマンションが立ち並び、いにしえの田舎の風情は失われてしまいました。でも、ちょっとばかりここから奥に入れば懐かしい光景がまだまだ残ってはいますけれどね。
法師温泉 2005.4.3(日)〜4(月)
土曜日泊りの予約は3ケ月前からすぐ一杯になってなかなか取れないという法師温泉の一軒宿長寿館にただただ湯を楽しもうと、朝日旅行が新聞広告して募集していた秘湯を守る会の宿に平日割安で泊れるプランにすぐさま予約をしてめでたく楽しんでまいりました。
朝は午前9時前にゆっくり家をでて関越道で月夜野ICまで、やはり日曜の朝はすこぶる空いていて十分昼前にびーどろパークに到着。工場棟は昔のままだが、製品の販売棟やレストラン棟の方には中央部だけが記憶には無いやや立派な二階建建物に変っていて、アウトレット以外の作品物だけを展示販売し、2階には企画展示サロンを設けられていた。そのサロンでは三越の個展で馬上杯型グラスを購入したことがある宮田高志展が開催されていて、お値段も同じようなものでしたが金粉の入り方があまりにも奇麗で買ったものと同じ作品は無く、やや近い雰囲気の線状色模様が細かく入いったものが中心でした。昼は街道筋の食堂で鍋焼うどんなんぞを食べてから北上、たくみの里にもせっかくだからと寄道する。前回からたくみの家が多少増えているのを知り、それらを中心に雲行きが怪しいからと車で見て回り、少しばかりの買物を奥方がした後はもうちょっとで雨が降りそうだし残りは前に見ているしでと、まだ素通りしただけであったここの公衆温泉に入って髪を洗って行きましょうとの突然のご提案。しっかりと一軒のたくみの家で100円割引券を見つけて村営の奥平温泉遊神館に。これが今日これから長寿館に泊ろうという女性には大正解だったのです。露天、ジャグジー、ハーブ、サウナなどの施設そのものが整っているのは勿論ですが、なぜかここで髪を洗いたいなどと思ったのかその直感は、歴史ある古い風情が売りの温泉ではシャワー設備は逆に期待しない方がいいと思ったらしい。本当にあのJRのポスターとなった鹿鳴館風木造大屋根架構の中にある木造浴槽の法師の湯は浴槽の周囲が幅2尺程の板張りの洗い場で石鹸と木桶が置いてあるだけ、で昔はさらに一段高い外周が着替え場だったという造り、新設木造の玉城の湯も専用洗い場には温泉が出る水栓と木樋だけでシャワーが無い。あとで小さ目の女性風呂長寿の湯はと女房に聞けば、そちらも古めかしくシャワー無しだと、私先見の明があるわねぇというのが女房の自慢でした。
遊神館
有名になった法師の湯は基本的には混浴で、夜の8時から10時が女性専用タイム、逆に玉城の湯は夜8時から朝の7時までが男性専用でこちらには露天風呂があり、露天はここの昔からの源泉43℃ではなくて27℃強の加温と書いてあった。やはりこの温泉の圧巻は法師の湯の底から湧き出している42℃の石膏泉(カルシウム・ナトリウム硫酸塩泉)で4っつに仕切った浴槽の川側は底からの湯だけでやや低め、入口側は上の岩の間から湧き出す43℃の同泉室の湯を加えやや高めと、それぞれが少しずつ湯温が異なっていて順繰りにじっくり浸かって入いれることにある。一番高い場所でも実質42℃、一番温いのは40℃程度だからその気になれば真中の丸太を枕に2時間でも入っていられそう。湯量も約2時間で全部が入れ替わるとのことで、絶えず浴槽周りの木製樋に掛け流しされている。小石に覆われた底からややほのかに硫黄臭がする泡と伴に何箇所からか湧き出していて、その一箇所にあった人の頭より大きい石の上に坐った僕の体の周りをまとわりつくように登って最後に湯面に小さく漣をたてる。日本人の温泉名利ここに極まれりというのはこんな風呂をいうのでしょう。さすがJRポスターになるはず、これだけの温泉は奥入瀬の蔦温泉以来だなぁ。
さて混浴の期待はと言えば、こちらも日本の古い美風を守って混浴が続くように配慮して下さいと男側の脱衣場に張り紙があったが、翌朝にはお婆さんが入るのを助けながら一緒に30代と思われる美人姉妹が男連中のいるのもかまわず、宿の小さなタオル一枚で入ってきたのにはビックリ、思わず湯に入るまで目をつぶってしまいましたよ、これ本当です。でも混浴するなら高峰三枝子より若い女性とのほうがいいですよねぇ。風呂から出れば廊下には山の湧き水が飲めるようになっていて湯上りの喉を潤せるようにと、秘湯を守る会の老舗宿はこういうこともちゃんと心得ている。宿の食事も山の中ながら新潟が近いので海の幸があったり中越地震の被害が大きかった山古志村の牛肉を拘って出したり、最後の鯉こくだって肝と一緒に筒切したのが入っていて旨いこと、安い料金にもかかわらずまことに結構でした。
我々一番安く泊ったと思うんですが、返って最も古い本館建物の部屋は天井下に古い大きな梁などが見えて趣があり、トイレも当然共用なのですが改装されて奇麗になっているのはいいですね。但し廊下を歩く足音を気にする贅沢な向きにはもっと高い部屋をとって下さい、トイレ付きの立派な新館も渡り廊下の向うにあったようですから、そういうのを我々は気にしないものですから悪しからず。宿の廊下などに作り付けられたショーケースには明治の与謝野晶子や若山牧水などからつい最近までの文人墨客、著名人の軸、色紙、写真などが展示されていて、中でも晶子一行が三国峠越えに出立するのに際し籠に乗った女性達とその背後の男達のいでたち写真などを見れば、不便も旅の楽しみと感じられませんか。この辺りは4月中旬まで雪が降ることがあるそうですが、夜半の雨は明け方前に雪になって3cmほど積もってなんとも風情のある雪見の露天風呂までも早朝6時に玉城の湯の露天で堪能しちゃいました。
法師温泉
長寿館
玄関脇の間
混浴大浴場
湧水飲み場
宿の夕食
一夜明けて完全に雪景色となった宿
今回は軽井沢に用事があって、帰りもたくみの里に寄って美味しい豊楽豆腐や夜の天ぷらはタラの芽、ふきのとう、マイタケとを買い込み中之条に峠越えする。多少狭いところはあるものの舗装されて昨夜の雪の影響もほとんど無く街中をかすめてR145に入る。ここから八ツ場ダムで沈むことになる吾妻渓谷沿いを走り長野原までは沢渡、四万、薬師、川中、川原湯、花敷尻焼、草津と温泉案内看板が目立つ。ここまでは雪が降った様子は少なかったのですがさすがに北軽井沢から軽井沢、道路の雪は無いものの周囲に広がる雪原の木々は雪の花を纏って、折りしも青空に回復してきた光の中で奇麗にキラメめき女房は初めて見る光景と感激しきり。真っ白な浅間山や反対側の遠い煙ったような色合いの山と青空とのコントラストの美しさ、間近い小さな山は雪の濃淡が細かく反射してあたかもかき氷を乗せたような木に覆われて、眺めるだけなら春の雪もいいもんだねぇと思わぬ景色に大満足、良い風呂と美しい風景に恵まれたのんびりドライブの一泊旅行でした。
北軽井沢からの浅間山
木々が雪の花をまとう道筋
店データ
・びーどろパーク 月夜野町後閑 737 0278-62-2213
・たくみの里 新治村須川 0278-64-2210
・遊神館 新治村入須川 378 0278-64-2626
・長寿館 新治村永井 650 0278-66-0005
・森瀧 湯沢町湯沢 357 0257-84-3600
・ラ・ロカンダ・デル・ピットーレ 湯沢町岩原スキー場 0257-87-3802
・大寿司 湯沢町湯沢 321 0257-84-2163
法師温泉・栃尾又温泉 2006.3.22(水)〜3.24(金)
またもや秘湯を守る会の冬場格安キャンペーンを活用して、昨年で味を占めた法師温泉長寿館に今回はさらに足を伸ばしてぬる湯の放射能泉で有名な栃尾又温泉自在館と連泊してみた。この道沿いはもうそんなには見てみたい見物場所も無いのであくまで温泉に浸かるのが目的と割り切って出かけたのです。
今回も朝ゆっくりと9時少し前に出発し昼前に月夜野びいろろパークに到着、お目当ての品がないので早々に切上げてすぐ近くの食堂で昼飯、そしてたくみの里にちょっとだけ寄って、売場の叔母ちゃんにどの生産者の米がいいのか聞いて電話などでもあとから一番注文が多いと言っていたミルキークィンの自然乾燥米とリンゴだけ買込んで猿ヶ京の新しく出来たまんてん星の湯と田舎芝居劇場などをどんなものか偵察して午後3時には早々と宿に入ってしまう。
秘湯の一軒宿長寿館は昨年4月でも雪が一面にあったのが、今年は寒かったにもかかわらず3月末でもうかなり少なくなったなという状況。でも今夜は雪になりそうな空模様で、実際に夕食後はみぞれが激しくなってきて露天風呂に入るのはヤメにした。相変わらずの底から泡と共に湧き出す温泉は温めで、ジックリと浸かればじみじみと日本人に生まれて良かったという気分になるというもの。伝統を守るこの宿の浴室は混浴法師の湯(文化財登録となっている)と女性用長寿の湯が昔のまま、新設の玉城の湯も更衣室に床暖がはいっているもののシャワーが無いのは承知しておきましょう。この宿だけはこの時期の平日でもかなりの客の入り、でも広い風呂場で混雑ということはありませんから丸太に頭を預けて半分居眠りもしながら1時間以上をグデンとしてしまう。隣客の会話が聞くともなしに耳に入るまま、多少印象深かったのは40年以上前にここでアルバイト的に働いていたという人の話、肺がんの手術をして抜糸1週間で来たのだがこの湯が傷に抜群の効能があることをよく知っていたからというのに続けて、その当時は夜遅く仕事の後に入るとヘビが天井から落ちてきてスルスルと一泳ぎして出ていくのを見たことがあるがヘビもどこか傷があったらしいとか、また寒くない時期は窓を開け放していて猿もよく中に入ってきたなどという本当に一昔前の山の湯らしい光景を思い出させてくれる話題から、この湯殿建物には戊辰戦争での会津藩敗残兵が会津西街道経由この地を回って越後へと逃れてようとやってきて、追っ手の官軍と戦った時の刀キズや鉄砲弾痕もあるはず、それで越後まで逃れ得た者はいなかったというような歴史上の伝え話まであった。建物前の池は旅人が足を洗ったもので、昔の徒歩の三国峠越えは新潟側の貝掛と法師の温泉宿あたりの間が一日の行程だったという。宿の展示コーナーの明治の文人墨客の旅姿や滞在写真、揮毫の書などでも郷愁を誘うものが見られますが、江戸から明治そして40年前を知る人の話の情景でもまだそんなには開けていなかったらしい頃の様子が伺えました。宿の食事は前回美味しかった鯉こくは出ませんでしたが自家製らしいがんも(飛竜頭ふう)と蕗、里芋の煮付けがなんとも旨かったですねぇ。
夕食
朝食
二日目はゆっくりと10時頃に宿を出て三国峠越えで湯沢に出る。夜に降った雨とみぞれ雪は止んでやや冬型の気候に逆戻りした新潟側は雪ならぬ煙り雨模様、この時期のメイン道路は除雪は完全であるものの両側には雪の壁が続く。道中いくつかの場所で痛んだ道路の舗装工事をこれからの本格通行前の比較的に車が少ないこの時期に済ますべく片側通行にしている。湯沢から塩沢、六日町とこのあたりも何回か走っているしその先は見るものもなく、今回は小千谷だけ回り道して一回だけ立寄ったサンプラザ内の小千谷縮と藍染片貝木綿など展示の小千谷織物工房を覗く。途中塩沢にも塩沢紬の展示センターはあったが、内容と質では小千谷の方は和の織之座と洋の匠之座の2コーナーがあって、洋服やシャツそしてバッグ類などモダンかつ独特のセンスあふれるものが多くあって、女房は時間をかけて見て回るもののさすがに高いわねぇと、かなり目の毒でしたかね。小千谷といえば中越地震の影響はどうかと心配したのですが、旧山古志村はまだ避難生活が続いているということの関連TVニュースをこの旅行中にもやっていたものの、市街中心部では何ら影響は見られませんでした。
小千谷織物工房
小出までR17号を戻って桧枝岐に抜けるR352に入ってすぐ旧湯之谷村、道路左手にあったゆのたに手づくり村が目に付き立ち寄ってお土産を買う。桧枝岐方面へのメインから分かれてから目的地に間もなくとなってやや上り勾配の道を進めば、両側斜面は雪の急勾配でなだれ注意の看板が突然に現れる。どう注意すればよいのか分からんよなぁと言いつつ抜ければ終点となる栃尾又温泉の宿自在館に3時少し過ぎに到着する。
宿の夕食は安いにもかかわらず最後の鴨鍋汁雑炊には具も残し御飯はちょっとだけでもう腹一杯というボリューム。中では専用炉で炭火焼したイワナはグルービーより軽めの焼きながら頭まで香ばしく食べられてそれに次ぐ旨さ。朝食も地元豆腐屋の朝作りの豆乳や自家製ヨーグルトなどが用意されていてかなりの量。また器でも気が付いたのですが、使っている小皿は明治大正の印判伊万里でこんなところにも老舗は感じさせますねぇ。ロビーにはコーヒー、温泉水、どくだみ茶などが無料で用意されているのは感心、感心。湯治客コースもあるようで、1週間泊っているという客は椅子式食堂のようでしたが、安いながら一般客の我々は和室食事処、また客室廊下に食べ終りの膳がありましたから希望すれば部屋食もできるようです。最後にトイレですが部屋にありますがかなりくたびれていますから、各階にある洗面トイレの方がウォシュレットで快適、僕などは部屋にない方がいいですね。
養老年間開湯から1200年という栃尾又温泉の宿は3軒だけで寄り添うように建っていて自在館は最大手のようだ。宿に着いて知ったがチェックインは午後1時からと随分早くから入館できるようになっていて、かなり温い温泉だけにジックリ長く入って十分に堪能してもらおうということらしい。その元となった泉温37℃の源泉湧出地近くにある川沿いのしたの湯とそれをポンプで汲み上げた大浴場のうえの湯は男女時間入替制で利用するようになっているが、これらは3軒の共有風呂となっていることも後で知った。そして創業が慶長初期で400年の歴史という老舗でもある自在館はさらに24.5℃の源泉をもっていて、その源泉を利用した無料の貸切内湯二つと露天風呂一つがこれに加わる。さすがにこちらは源泉そのままは冷た過ぎるので沸していますからそんなには長湯はできず、貸切にはちょうどいいでしょう。内湯の大きさは普通の温泉宿の一般浴室ぐらいの広さがありシャワーも完備、露天の方は小さめで洗い場はありません。自在館の建物は30年以上前に鉄筋コンクリートで建て直した本館に昔の木造3階建てが繋がっていてもうかなり年季が入っている。他の2軒のうち隣も同じようなもの、さらに上のほうにある一軒は木造3階を外観ともにリニューアルしてあるようだが、こちらの宿からしたの湯までは自在館からは70段といっていたから100段以上降りるはずでかなりシンドイけれど、足腰鍛えるにはもってこいかな。やはりこういう山中での一番の風呂はちょっとした渓谷風の川沿いまで階段を降りて行くしたの湯ですが、ここには洗い場蛇口一セットだけかつシャワー無しという伝統ある?造りとなっている。飲泉もできる無色透明な天然ラドン単純放射能泉は自然湧出源泉そのままで体温よりやや高いかなというもの、ただ入ってそのまま風呂から上がるにはこの時期は寒いはず。従って首まで浸かっていても何時間でも入っていられるため、外の景色を見たり客同士お喋りしたり気が向くままに長湯をして、あがりには隣接の小さな沸かし湯で少し暖まって出るというのが仕来りとか。でもこの日のお爺さん達の会話は方言で半分も聞き取れませんでしたけれどね。また皆さんペットボトル持参できていますねぇ、風呂中央から流れ出ている湯を汲んで、家で米炊きに使ったりするのだそうで消化器系に効き、毒素を出し、二日酔いにもよいんだそうです。直接飲んでみればこの湯はクセもなくて美味しい山の湧水をぬるま湯にしたという感じ、よくある渋くて臭いがあるという飲泉とは違うのでこれなら飲料水にもピッタリですね。夜は男風呂となる古風なしたの湯とは逆のうえの湯はタイル張り近代浴槽で早朝5時から入浴でき、そのちょっと過ぎにいけばお爺さん一人が先客、寝湯もあってイビキをかいて気持ちよさそうでしたねぇ。ペットボトルより大きいポリタンクなら下から延々と持ち上げなくてもすむこちらで入れるとか、でもポンプであげる分だけ濃度が薄いと地元客が言ってましたがそんなに違いますかね。
湯之谷の道(平坦部)
自在館(左手には別の宿)
3軒の最上部の旅館
谷底川沿いのしたの湯
自在館露天風呂からの眺め
朝食
夕食
イワナを焼く炉
とにかく今回は二湯で通算9回、6時間以上も湯に浸かっていたという温泉三昧を楽しんだ旅。温泉に入って適度な量の美味しい食事を安い料金で(それでも自在館ではもうかなりアップアップのボリュームでしたけれど)、旅館もこういう設定で食事はメイン1、2品にあとは適度な家庭的料理にし、食べ残すそうな勿体ないことをしないようなことを考えてもいいんじゃないでしょうか。勿体ないは世界後になりつつあるんですから。帰りはまた湯沢まで一般道、関越では谷川PAで水汲みして鶴ヶ島で降りてサイボクで食事と買物をして夕5時には帰宅と、今までの温海温泉から一気に帰るのと比べると随分と楽チンで、平日を活用できるようになったからには山形周遊旅行の帰りにはこの二つと中間にあるこれも秘湯を守る会の大沢温泉、貝掛温泉を含めどれかに泊ることにしましょうかね。
店データ
・サンプラザ(織物工房) 小千谷市城内 1・8・25 0258-83-2329
・自在館 魚沼市栃尾又温泉(上折立66) 025-795-2211
・ゆのたに手づくり村 魚沼市宇津野 57・1 025-793-1000
・貝掛温泉 湯沢町三俣 686 025-788-9911
・大沢館 南魚沼市大沢 1170 025-783-3773