正月明けからすぐ温泉旅行とはまったく好きですねぇ

伊豆・駿河     2003.01.11(土)〜13(日)

 今年は年末年始が9連休だったのでその直後のこの週は比較的に空いているだろうという読みがあり、昨年より一ヶ月早めて1月の3連休に再度伊豆から駿河をまわる。ほぼルートは昨年同様ですが今回はとくに見ようという催しが無いので、いつもは通り過ぎるだけのいわゆる観光場所を何か再発見できるかもとコースに入れる。レトロ温泉旅館大東館を再整備した伊東温泉、伊豆第一の温泉地としての修善寺、正月参りがまだ続く三嶋大社の3箇所をちょっとだけ覗いてみて、あとは行き当たりばったりの旅ということで出かけてみた。宿だけは昨年よりランクを少しばかり上げて、とは言ってもほんの少しばかりですが、さてどんなものでしょう、というわけで伊豆駿河の旅のバリエーションとして参考程度に簡単に記しておくとしましょう。

 今回も朝7時頃我家を出発、案の定いたってスムースにあっという間に伊東に到着。わが奥方は国道沿いの和菓子処石舟庵にまず立寄り、饅頭はその場でぐり茶サービスでパクリ。日持ちする菓子をお土産にして最初の目的地大東館に行けば駐車場が分からず、案内地図をよく見れば市営有料駐車場を利用するようになっているらしい。それでもと付近を巡りよくよく掲示版を見ていけば無料の臨時専用駐車場が近くにあるじゃないですか。国道の海側には市営駐車場の先にも港の無料駐車場がありますからケチなことをしないで市営も全部無料にすればいいじゃありませんか、ガラガラなところに料金番を付けておく方が無駄というものですよ。大東館は隣の今も現役の木造老舗旅館いな葉が5年前に市に寄付したものらしく見学は無料というのが嬉しいですねぇ。川沿いにレトロ温泉街の風情を一手に醸し出す見事な和風旅館で、中の造りも贅を尽くしていて、ただ展示するだけではもったいない、いい宿だったんですねぇ。昼過ぎからは大浴場にも500円で入れるのですが、大浴場は一つだけなので時間で男女交代となっていて夫婦連れには不便この上ない、小浴場も安くして同時利用できるようにしたらどうでしょうか。最上部の展望楼に登れば、目の前の屋根の上に青鷺が一羽。飾りかなと思ったのも一瞬、羽が風に揺れ、ギロッと目玉が動く。見学後川向こうに回ればもう一羽白鷺もとまっていて歴史建築を本当に飾っているみたい。はしゃいで眺めている我々を見た地元の人がいつもいるんですよ、本物ですよと自慢気に他の観光客にも話していましたっけ。もう一つの発見は街中で地元御用達らしい魚屋が何軒か見られ、土産を買うなら国道から入ってこちらで買うのがお薦めでしょう。

大東館

 次は伊豆高原手前右手の農協直売所でデコポンがないかと聞けばもう少し暖かくなってからということで、残念でした。そのまま進み本日の昼も稲取となり、でも前回に懲りて港前の徳造丸に直行。刺身定食と金目鯛煮付定食はどちらも2000円で結構なボリューム、女房の金目を分けてもらい、クチナシの実で黄色くしたこの地方の1月の御祝い御飯をお変わりすればもう腹一杯と相成りましたが、こりゃぁ当り前ですかね。なぶらととという町営施設ができて、魚介類の洋風料理レストランもあるらしいのですが、徳造丸は相変わらずの人気で帰りがけには待ちの列が出来ていて早く来てよかったですね。1Fは今でも鮮魚店で今や稲取、下田のブランドとなった金目鯛や新鮮なアジ、またそれらの干物を売っていますが、いつもまだ先への旅行の途中で買っていませんので確たることは言えませんが、まず美味しいでしょうと思いますが。最近すぐ手前に丼専門店も作り、下田にも支店ができたようです。数年前に稲取の国造沿いに開いた洋風レストランは存外高かったのですが今はどうでしょう。

刺身定食

椀は蟹入り味噌汁

 次は下田の手前を左折して爪木崎の自生水仙群落を見物、二回目になります。先端の駐車場は地区の経費として500円、手前にある駐車場は無料、今回はケチな我々ではありますがその先の灯台まで歩くんではややうんざりと有料に入る。以前より増し植えされている水仙群落はなんとも言えない香りが漂うのがなんとも良い雰囲気、さらにそれ以上に素晴らしかったのがコバルトブルーの海、他の観光客もこんなに真っ青と歓声を上げている。まだ日本も捨てたもんじゃありませんね。サッと一回りして下田市街へ向かう。

 下田の杉浦陶房はやはりいい作品が並びますがやはり高いので眺めるだけ、でも最近見かけなくなってどうしたんだろうと思っていたお爺さんが元気な姿を久しぶりに見せてくれて、足元はややおぼつかなくなっているようでしたがまずはなによりでした。ほんの寄道だけでさらに松崎に一直線に走る。松崎にももう何回か訪ねてあまり見る所も無くなったというわけで神社の清水だけを汲んだだけでここもすぐ切上げ、その南の海岸沿いのクネクネ道をたどって雲見温泉に早めに行くことに。

杉浦陶房

 最初の宿は雲見に着いて最初に左手に入る脇道のすぐにある雲見園という旅館。雲見は民宿が多く旅館は少ないのですが、小振りな旅館があるいうことでここに決めました、休前日は14000円からとのこと。というのも20年ほど前にここの民宿に泊まって、温泉なのに風呂の貧弱さとそれも順番待ちというのにうんざりしたからです。おそらくここの民宿はこの程度のドングリの背比べだろうと敬遠して以降訪れなかったのです。さてこの宿に入れば秘湯を守る会の会員というのでこんな密集地に何故と思わずビックリ。なんでもここ雲見は伊豆の中で一番奥の辺鄙な場所ということで会員になれたらしい。なにより3世代の家族だけを中心にやっているのが僕には嬉しいですね。まあやはり会員の宿というだけあって各所に工夫していることが分かります。スリッパのほかに竹皮草履や冬は毛糸靴下を用意していたり、いろいろな網籠をゴミ入や防臭炭入、花活けにあしらったりしているのです。部屋でも洗面には和風手拭を竹篭に入れてあったり、床の間には掛軸のかわりに手拭を飾りにした額を吊るし、図柄は1月で小さな羊の絵を配した寿の一字とは憎いですねぇ。この額があれば手拭を変えて季節を演出できるわけで、このアイデアは貰っておきましょう。また風呂は小さな男女の内湯に露天が一つ、特に露天は夜7時から10時の女性タイム以外は混浴ということ。で、女房いわく内湯は女性の方が着替場所を含めて1.5倍ほど大きくしているらしいというのもまず宿は女性客の評判第一と、これもよく考えています。泉質はカルシウム-ナトリウム塩化物泉で婦人病に良いらしくこれも女性を意識する理由でしょうか。食事は部屋出しで到着順らしく3番目だったので5時45分にはスタート。漁師の先代と現主人が獲ってきた魚を中心に、蟹、イセエビ、アワビが付くコースとランクがあるそうですが、そのボリュームは半端じゃありません。蟹のコースは15000円でしたが、一人にズワイ蟹一杯ずつは多すぎるのと、ズワイは伊豆で取れる蟹じゃありません、冷凍物になってしまいますからこれは別工夫をした方がよいのではありませんか。でも刺身は珍しいホウボウ、焼魚は見事なカサゴ、手の込んだ美味しい和風献立もあって、僕の好きなスタイルの男衆が作っているのでしょうか。最後には蟹の足半匹はもうダメ、とても御飯までは行き着かないというこれまで泊った宿のボリュームのさらに上とは恐れ入りました。酒は大吟醸の600cc壜、吟醸の4合壜が冷蔵庫にあって普通酒は無いというは、アッサリ速醸スタイルの味が嫌いな僕には値段ばかり高いだけと好みではありません。でも静岡の酒は最近はいいからと、今日は奮発して由比の正雪純米吟醸4合を食後までかけて空にしてしまい、これでは健康的ではありませんねぇ。でもやっはり本醸造も置いてもらいたいですね。

 翌朝はこれまた早く7時半に呼出があり1階の大広間で7組全員が一緒。漁師は朝が早いんで習慣ですかねこの時間は。味噌汁はイセエビの頭からも出汁を取っているとかでどの組かがイセビコースをとったのでしょうか、一組だけ汁椀が大きかったようです。それで9時かなり前に宿を出発、一路北上し土肥経由修善寺を目指す。

雲見園

夕食

朝食

本日は快晴で暖かく絶好のドライブ日和に女房はご機嫌。西伊豆からの駿河湾越しの富士山を満喫、絶景!絶景!だと。東京からの富士山は真っ白なのにこちらからは雪の白は放射状に筋に流れて見えるだけ、これもまた見映えする絵柄だと再発見。

 修善寺は郷土資料館の駐車場に停めて温泉街を歩いて一回り。独鈷の湯は昨年の台風で流されたとかで屋根は無く岩の間に湯だけが湧いている。最近公衆温泉施設として筥湯ができていたが12時からの営業とは遅くからですね。地名の由来、修禅寺はちょうど1200年の記念の年とか、境内の閼伽はぬるいから温泉らしい。竹林の小道は気持ちいい風景。温泉街はかなりレトロな雰囲気が残っているので観光客も多いようです。ロシア正教のハリストス教会なんていう擬洋風木造建築があるのはどうしてでしょうか。大型観光施設虹の郷はまたの機会にして街中だけを歩けば蕎麦屋とミニチュア細工土産の店がやたら多い。骨董屋が一軒、焼物などたいしたものは無いが、日本刀と鍔だけは立派なものを置いている。短刀と拵え物セットで28万円は安いと親父の言、保有手続きもしてくれるそうですからお好きな方は如何。ここの民芸品という藁細工の晨という店はTVにもよく出ているせいか小さな細工物がこんなお値段でという感じ。そういえば城崎温泉でもその地特有という藁細工、これより凝ったものではあったもののやはり高いなと買わなかったのを思い出しました。射的場なども何軒かあって全体に伊東よりかなり一昔前の温泉街の風情が狭い所に固まっていると言うのがここの売り、和風老舗旅館も風格があって今となっては逆にレトロが新鮮なんだなという印象でした。

修禅寺門前

川筋の温泉街

教会があったり竹林があったり

 昼近くなったので三島で鰻でも食べて三嶋大社にお参りへとさらに北上。前回諦めた広小路駅近くの桜家に行けば前ほどではないものの外にまで待ち客。せっかくだし、浜松とどう違うかの興味もあって店指定の近くの有料駐車場に車を入れる。ほどなく2階和室に案内されてやれやれと、でもテーブルに付いてからの待ち時間が結構ある。途中で分かったのですがこの店の客席は1〜3階まであって各階順繰りに客を入れているのでこうなるんです。鰻重で一番安い2200円を食べましたが、鰻が柔らかくややあっさりめの味付のタレでフワッと食べられるのが特徴。浜松八百徳や松本まつかのように身の表面をパリッとさせ濃い目のタレとは異なるタイプ。やはり水が良い所で締めた鰻は旨いことは確か。ほぼ食べ終わりに女房は濃い目の方が好きというので、テーブル上に補充用タレがあるのにと教えてやればそんなこと早くいってくれればとご不満顔に、ガサついて喰らいついているから気が付かないんですよ。サッと食べすぐ出ていく我々は模範的な客、時間分の駐車券をもらって店の前の更に多くなった行列にサヨナラ。

桜家

鰻重

 三嶋大社は正月参り出来なかった参拝客の車で駐車場に向かう側の道路は大変な混雑。そんなことは分からず空いた逆側を走り神社の裏手の道に入って裏門から中を覗けば馬場道という神社を貫く道が駐車場となっていて表から入るため渋滞しているんだと。こりゃ大変と裏道の違法駐車の縦列に仲間入りして駐車させ、そそくさとお参り。さすが源氏の棟梁頼朝旗揚が必勝祈願した神社、広い境内は立派なもの。成人式振袖姿の娘さんも多くてかなりの混雑。急いでいたので聞きませんでしたが熊手や恵比須という文字がやけに目に付きましたから武勇だけでなく商売の神様でもあるのでしょうか。

 二日目の宿がある静岡油山までは国道1号に出て、途中何か目に付いたものがあれば立寄りなどして行こうかとナビに従って進む。この道筋も富士山が大きく聳える姿を堪能。ルートはほとんどがバイパス通過の道路が出来ていて我々が興味を引くものが見つからないまま静岡手前で市街北側に分かれたので、少し早めだけれど直接油山に向かうことに。油山温泉は冬場凍結が心配な井川、梅ケ島方面のかなり手前、安倍川を渡って山間に入る手前すぐの場所にあって3軒(今では1軒はご老体となって跡継がなく廃業して2軒のみ)だけの宿がある。今川家御台所ゆかりの土地とかは後で知った。地図で調べてここなら冬場も大丈夫だろうと予約してみたのだ。昨夜が旨い料理と宿の工夫に大当りと言っていた女房は今日はガッカリするかしらと心配していたが、これから山への入口というような地形に和風建物が現れ雰囲気は昨日よりも秘湯のムードがあるではないか。宿の看板には猪料理の文字。旧館と新館共に木造で大女将に案内された新館2階の二間続きの部屋はバスユニットも付いた小奇麗な和室。食事は1階の別室で用意とのこと。早速風呂に行けば旧館裏手で古いながらも大きめの浴槽、沸かし湯らしく流しっぱなしではないがしっとりした湯。表にある露天風呂がまた大きめでこちらはやや流れ出さしている。あとで聞けば単純硫黄冷鉱泉を500m引き湯しているので硫黄の臭いがほとんど消えているんだそうで、それはちょっと残念でしたね。夕食はかなり広い和室で我々二人だけというのも良いような寂しいような。静岡なら海の幸もと思っていましたが看板に猪とあったように山の幸中心で、海のものは天ぷらのエビ一匹のみというのも拘りがあっていいじゃありませんか。おろしニンニクで食べる鹿刺しは結構いけるものでしたし、手の込んだ料理とヤマメ塩焼、豆乳鍋など温かいものが4品あってなかなか。最後におすましと軽く御飯8分目というこの程度で十分ですね。酒は浜北の花の舞生酒とか。で、注文取りにきた跡取らしい娘さんに静岡ならもっと近くに岡部の初亀、藤枝の喜久酔や志太泉それに杉錦(この蔵元で作る味醂も評価が高い)、焼津の磯自慢、由比の正雪など良い酒が一杯あるじゃないと言えば、今お酒も勉強中ですと初々しい返事。取引している酒屋がこれを薦めたのでというので、将来はワインも置くことにしてヴィノス山崎から仕入れたらと言えば、やはりワインならあそこで自分用に買ったりしています、ここ10年程で本当に有名になりましたと、やはり知っていました。

油山苑全景

夕食は山の幸中心

 翌朝も同じ部屋で御飯3杯ペロリ。食後ロビーで新聞を読んでいるとコーヒーのセルフ無料サービスがある。ちょっとしたことでもこれは嬉しいものですねぇ。跡取娘さんらしきに昨日の秘湯の宿よりずっと秘湯ムードがあるよ、鉱泉でも会員がいるから申し込んだらと話せば嬉しそうに本気になってしまいますよと。いろいろ教えて戴き有難うございましたの挨拶には、いい娘さんだ代替わりで益々良い旅館にして欲しいものと僕もやや鼻をうごめかしてニッコリ。もっと家族だけで切盛りするように努力してその姿をアピールしていけばドンドン良くなること太鼓判。

朝食

 今回の宿はどちらも合格、定宿に加えておきましょう。出発前に宿の先代夫婦がお見送り。魚を買って帰るのに焼津と清水のどちらが良いかと伺えば、夫婦揃って清水の河岸の市に軍配。焼津は昼間が業者専用で午後が一般客、存外安くないし鮮魚の種類が多いことや食べる所も清水の方が好きとのこと。でも焼津も一軒だけの本格鮮魚の店と生り節の店だけは捨てがたいのですが。

 静岡市街に戻ってJR駅ビル内アスティの駿河楽市に行けば市展示室ではちょうどコンクールがあった駿河竹細工の作品が並ぶ。駿河竹細工は工芸展で数回見ていますがやはり見事なもの。欲しいものはいくつかありましたが職人さんを訪ねて買いたいので今回は我慢。そういえば同業の職人さんらしい数人が写真を撮ったり、かざして見たり、仲間同士でなにか話し合っていたから何処で商売しているか聞いておけばよかったと、これはあとの祭り。

駅ビル内アスティ

 昼前最近ご無沙汰していた従兄弟の家を訪問、約1時間駄弁って清水河岸の市へ。1時半になっていましたがおがわはやっぱり行列で向かいのまぐろや安兵衛で磯盛丼1000円なり、こちらは酢飯にマグロ、ホタテ、ホッキ貝、エビ、イカ、生海苔、イカのマヨネーズ和えなどが乗り蜆味噌汁に小鉢と香の物が付いて手頃なボリュームで、これはこれで旨い安い早い。後はしっかり買物して我家へほぼ順調に、予定した通りの旅を無事終了しました。

安兵衛の磯盛丼

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<追記>

 平成16年2月下旬の木金土にも伊豆で稲取の吊るし雛や河津桜見物してから静岡まで足を伸ばし、今回は2日目に平日の沼津、最終3日目土曜に焼津から清水と3大市場を廻ってきました。松崎雲見と静岡の宿も二度目で同じだったのですが、少しばかり前回と違ったところだけ追記しておきましょう。
 朝は8時ごろとゆっくり出発、もう何回も伊豆に来ているし特に途中での目的も無くほぼ順調な道中で稲取まで直行。最近はここの吊るし雛は新聞やTVにも取り上げられているためか、平日というのにかなりの観光客、観光バス団体客も多くて改めてマスコミの影響力が大きいことを知らされましたねぇ。前回は物産販売所の一部を雛展示コーナーにしていたのに今度は新しくむかい庵なるやや大きくした展示施設を設けてシッカリ入場料を取っている。吊るし雛以外に江戸時代から明治、大正のお雛様も展示していて、おばさん達中心にゾロゾロと拝観客が混雑していて、ご繁盛結構でした。
 次の今回のメインに考えていた満開の河津桜は完全に空振りで今冬の厳寒の影響でまだ3部咲き、菜の花は満開に近いのに桜は祭りが終る3月10日ごろからが見頃となりそうで、祭り実行委員会はどうするんでしょうかね。平日でもかなりの人出でしたがいまいち盛上っていないのは仕方ありませんね。このあと下田に寄れば杉浦陶房はしばらくお休みしますの貼紙に、はてどうしたんだろう。それじゃちょっと一休みと平野屋に入ってコーヒーを飲み、展示されている薩摩切子の鉢や初代柿右衛門の小鉢などに溜息をついて宿に向う。
 第一日目の宿である雲見園は新たに無料の貸切露天風呂ができていて予約で30分間の利用とか、宿の裏側一番高い場所に設けられ階段で登れば2人が使える程度の小さい樽風呂が鎮座し、海が見えることを謳っている。また3Fにお休み処を増築して内湯と連絡できるようにしていて、そこにつながる3F部分もソファーや本棚など置いて滞在客が利用できるようにしているが、我々もノンビリ旅するようになったら使うようになるのかなぁ。食事は夕は部屋食だったのが今回は1Fの大広間で平日ながら5組が分散しての食事であった。冷蔵庫の酒も大吟醸は消えて生冷酒300ml菊川の小夜衣となっていて、これは当然ですね。
 二日目は午後から雨という曇り空で駿河湾越の富士山は望めず、松崎と修善寺にちょっとだけ立寄って北上、沼津では御用邸跡を見物して昼時を少しずらして魚市場に到着。昼は評判の丸天に行けばしばしの行列待ちで席に着く。初めて入ったのだが客の回転は速くて並んでもそんなには待たない様子、店内は魚河岸らしく活気溢れると感じるかガサツで騒々しいと思うかどちらでしょうね。近くの席にはその筋風サングラス姿でイカツイお兄いさんとハデなお姉さんの怪しき二人連れ、ジャンボ海老フライ、ジャンボ掻揚、鮪テールステーキ、刺身盛合など喰いつつビールを飲み、どんぶり御飯まで平らげている。また隣席の老夫婦は鮪尽し刺身定食、餅入りカキ雑炊のほかゲソ唐揚やイワシ刺身などテーブルに並べているのには皆さんの食欲は凄まじいばかりと脱帽です。我々は普通の天丼とフライ盛合定食でもう充分の量でしたけど。平日の市場内の鮮魚店はと少しばかり回れば、休日よりは開いている店は多いようなのだがバラケていてそんなに賑わって活気があるようには見えない。市場に着いた時から雨が降り出したこともあるがまぁこんなものかなと、あとは途中の由比などももう見たことがあるしで油山温泉まで一般道、バイパス経由で直行する。
 油山苑は二度目、受付ではこの前と同じく大女将と一緒に初めて見る若女将がお出迎え。今回はEメールで予約したのだが、ホームページにもう若くない若女将ですがと書いていて以前と同じポッテリした女性かと思っていたのだがもっとスリムで活発そうな女性に代わっていて、詮索するのもと訊かなかったのだがどうやらこちらが大女将の実娘らしい。宿の部屋、温泉、食事では特に前回に加えることもないが、30周年記念とかのお徳プランで申込んだので前の山の幸中心ではなく静岡らしい海の幸が多くなっていたものの、熱いものは熱くと順次供されて結構なものでしたよ。またここのお茶は自家栽培の無農薬茶だそうで、やや渋めながらよく出ていてさすがの味、しかし残念ながら売る程はないんだそうです。この宿は露天風呂の風情をコンクリートやブロックを石貼りなどで隠して修景し、温泉へのアプローチと浴室周りを改装すれば、前回も思ったのですが秘湯を守る会に入れるんじゃないでしょうかね。
 最終日はいつもの通りの買出しの旅、まずは宿の近くの百姓ハウスで安い野菜、花や本山茶を買込む。次は焼津に行き、まずいつもの酒屋で磯自慢本醸造と小夜衣本醸造を求め、近くの港前ツナコープに行けば冷凍生サクラエビの売切れには残念でした。焼津IC近くのさかなセンターに戻って川直でご近所からも頼まれていた鮭燻製を7本も購入、鷲野商店の鮮魚は大物が多くてお目当てのアジなどが無くてここも空振り、あとは小林食品で鰹節ふりかけ、カネトモで本鮪赤身だけを買い、それではもう一つ清水の河岸の市にも廻って鮮魚など買込もうということにして出発。途中静岡で芹沢_介美術館だけにはと立寄れば、本人が創作活動の一環として収集したという美術民芸品コレクションのうち今回は朝鮮の民画が展示されていた。いつものことですがこれだけの質と量の収集品には圧倒されますねぇ。最後の河岸の市では焼津で買えなかった駿河湾産のアジや冷凍生サクラエビ、浜名湖産アサリなど仕入れる。お値段は冷凍生サクラエビ100g当りを例にとれば焼津が600円に対し清水は450円とこちらの方が地元密着で安いのです。
 ということで毎度恒例の旅をしてまいりましたが、吊るし雛は伊豆から沼津までいたる所で見かけられ、人気をいいことに売物はちょっとばかりお値段が高過ぎるのではないでしょうか。