敬老の旅は名所と温泉

2001.8.12(日)

軽井沢に遊びに来ている女房の叔母と義母を連れて、もう80歳になっている老人二人なので近くで温泉にも入れて食事と軽い名所巡りということであればもう別所温泉周辺が一番と車で出かけることにした。別所温泉は、かの枕草子にも好ましい湯として七久里の湯の名であげられている由緒正しき温泉なのです。浅間サンラインができ、上信越道もできて交通状況は昔に比べて格段に快適(昔は細いくねくねの抜け道をよく通ったものです)、まず途中の東部町の公衆温泉(循環温泉)と地ビールレストランのある湯楽里館OH・LAHO!に寄道。牛乳味の濃いジェラートを食し、今日の夕食用に朝採りのトウモロコシやトマトなどの野菜を買い、近くの山野草業者が出しているテント販売の岩植えを見物、叔母は松本センノウ草を買って再出発。

湯楽里館

左側OH!LAHO!

温泉棟本館

南面の展望 蓼科山を望む

別所温泉のスペイン料理店壺屋に12時前到着、昼食ということに。この店は上田では有名で、ここの他に丸子町音楽村のイタリアン杉屋や上田市街の洋食蔵屋と洋風居酒屋エル・ビノなども同系列店なのです。もう30年近く前になるか、車で通りかかった時、田んぼと竹薮の中にしゃれた一軒家を建設しているのを見つけ気になっていたので次の年に行ってみたらレストラン。さっそく昼を食べたのが最初、その当時は本格スペイン料理というより変った洋食屋というメニューで、確か馬肉カツステーキを食べて存外旨かった覚えがある。オーナーシェフは夫婦共々画家で絵を習いにスペインに行って、料理の美味しさに本場の味を習って帰国後、こちらを商売にしてしまったと何かで聞いた。そういうわけで料理を取分ける中皿などは全てオーナーが窯元で手描きしたもので、一皿として同じ絵が無く、食事の楽しさを増してくれるのです。  

一軒家のレストラン 壺屋

本日のご注文(老人二人ということに配慮して)は
    オニオンスープ4
    壺屋のサラダ1
    自家製ソーセージ1
    チーズとベーコンのトルティージャ1
    タパスはミノのトマト煮と地鶏のニンニクオリーブ煮各1
    魚貝のパエリア小1

 昼ということでワインも旨いのを置いているが今回はお預け、またデザート類も老人はもう入らないというのでこれだけに、〆て消費税込み1万円弱
 ここではスープ類はオニオンスープするかブイヤベースかの選択にいつも悩む。とにかくパエリアやブイヤベースなど一品でボリュームがあるのでコースでとると女性だけのグループでは食べきれないことも。僕はいつもアラカルトで頼む。でもパエリアなどは持帰りに応じてくれるので遠慮なくお願いしましょう。ワインも好みを言えばお薦めの銘柄をいくつか選んでくれますよ。料理の方はとにかくしっかりした味付けで僕好み、一年に数回は行ってしまうのです。

 次は名所巡り、まずは安楽寺の八角三重の塔へ、日本唯一の形状の塔で国宝とのこと。曹同宗の禅寺で十六羅漢堂の脇、剪定された槇の大木が頂点を尖らせて直立しているのが印象的ですが、本堂は茅葺の上をトタン葺してしまっています。

 さらに近くの川口松太郎が発想を得たという愛染桂で有名な北向観音まで歩く。善光寺の南面に対しているとのことで両方をお参りしないと片参りとか(もう一つ長野県には飯田に元善光寺がありますし甲府にも信玄が戦火を怖れて移築した善光寺があって、それぞれこちらもお参りしないと片参りだと案内に書いてありました)、小さいながらも似た姿のお堂に一同お参り、でも老人二人はクリスチャンなんですがね。ここは芸能人の参拝が多いそうで、ちなみに桂の葉の形はハート型なんですよ。また境内の閼伽はやはり温泉でそれもかなり暖かい湯なのです。

 このあとここの公衆温泉に入ってもよいのですが、池波正太郎の真田太平記で幸村と女忍者が結ばれたという設定で有名な石湯など熱い風呂なのと共同浴場風の脱衣場と浴槽だけの小さな風呂なので別な所で入ることにして、塩田平へ。なお石湯の奥には老舗の木造3階の温泉旅館柏屋別荘があり、5月連休後のツツジの時期は無料で館内を公開していて、一回見学しましたが、古木も多く風格を感じましたよ。

 塩田には未完成の三重の塔で有名な前山寺、四季折々の花も楽しめるこの寺の本堂は今でも茅葺で風情ある真言宗寺院、付け加えるとここの大黒さんが作るくるみおはぎ(市内にある刀花という喫茶店でこれを真似たものが食べられます)は有名で要予約とのことだが余っていればその時でも食べられるはず。周辺は中世塩田城をまわる散策路もあって、子供が小さい時はハイキングで、長野県最古の木造建築中前寺のお堂にも行ったのを思い出します。アジサイの季節には散策路沿いに連なっている場所もあってなかなかのものでは。また前山寺に隣接して、村山魁太など夭逝した画家のデッサンを中心に置く信濃デッサン館は一見の価値ありで、ここの喫茶からの塩田平の眺めはまことに素晴らしい。そのあとにできた戦没画学生の作品を集める無言館とかは入場料は本人が遺作追悼を勘案して決めて下さいとかで1円でもよいのですが、あまり恥ずかしいことはしないで下さい。ちなみにこの二館のオーナーは随筆なども書いている窪島誠一郎で若い頃画商をしていてこれらの絵を集めたとか。その理由なのかどうかは分かりませんが氏は父なし児だったそうで、親を捜し求めてついに訪ね当てたのがあの有名作家水上勉だったという話は有名でしたね。その他別所温泉からここにかけてはいくつかの神社仏閣、上田紬やその他の工芸品など扱う店など探せばまだまだ見所がある所です。

 その中でもこれから行く青木村の方角にはもう一つの国宝で、その美しさから旅人が何回も見返りの塔と呼ばれる三重の塔がある大宝寺も一度は訪れると良いでしょう。鎌倉時代後期に北条一門がここを根拠に数代に渡って睨みを効かせた所とあって、古くから豊かだったろうと往時が偲ばれる土地柄です。付け加えると塩田平周辺は松茸の一大産地(品質の東日本最高はこれも信州四賀村産だそうです)で、秋には城山園などの松茸狩りと松茸料理尽をセットにした所がいくつかあり人気のようですし、別所温泉奥の森林組合の施設でも手軽に食べられると聞きました。

 ささやか日帰り旅行の最後は青木村の方向に走って手前の標識を右手北側に数キロ入る、山と村の交流施設と言ったか、室賀温泉ささらの湯、泉質は単純硫黄泉ですべすべする湯に入って帰ることに。もっと先に行けば田沢温泉にも公衆温泉(ここは洗湯も温泉です)があって泉質は柔らかでこのあたりでは僕は一番好きなのですが、施設はこちらの方が充実していて、循環湯ではなく、入浴料400円でシャンプーも用意され、内湯、露天風呂、サウナと一応揃っているのがうれしいのです。地元客が中心らしく年間利用定期で通う常連も多いようで、行くたびに見たことがある顔ぶれがいる。露天風呂はやや温めでサウナのあと心地よい風に上半身を冷しながらゆっくり長湯、極楽気分。ここでも農家直売の枝豆など野菜をいくつか買って無事帰宅。

夕食は家でこれらを中心に一杯やらかす、かあちゃん!夕食の用意は全部おまかせ、有難うさん。

ささらの湯(秋)

塩田平の風景

店データ他
  OH・LAHO!湯楽里館   東部町字和 3875     0268-63-4126
  壺屋               上田市大字山田 553   0268-38-8550
  ささらの湯            上田市上室賀 1232   0268-32-1126

目次へ