安曇野 2002.
安曇野は松本の北西、中心の豊科、穂高、松川に周辺の明科、池田、堀金、三郷を加えるとかなり広い地域なのだけれど、こんな平坦な土地が北アルプスの直下に悠々と麗しく存在しているなぁという印象。南方海洋民族の安曇族が川をここまで登ってきて居を構えたことから名付けられたとか、彼らも山奥にこんな土地が開けていればさぞ驚いたことでしょう。中心地の穂高神社には舟が祀られているそうですが、その歴史の郷愁と何かしら文化的伝統の雰囲気を感じる土地柄で、加えて自然環境も素晴らしく丸一日を豊かに過ごせるところです。なにか原田泰治の絵の世界、それに直前に聳えるアルプスの景観、清冽な梓川の流れと豊富な地下伏流湧水をみれば、ほのぼのに加えてやや厳かな気分がしないでもありません。それはともあれ田園風景では山葵畑と双体道祖神がお迎え、碌山美術館を初めとする文化施設、安曇野ガラスなどの工芸品、蕎麦や川魚料理に地酒、各所に点在する温泉施設と盛りだくさん。僕は冬場の安曇野は知りませんが夏場には軽井沢からちょくちょく出向いて遊ばせてもらっています。
軽井沢からは三才山トンネルを通ってから市街に入らず行ける2コースがあって、一つは有料の松本トンネルが開通したのでこれで島内に出て豊科から安曇野に入るルート。もう一つは松本トンネル手前を左折してすぐに突き当たった所の信号を四賀村方向に右折し少し行って左折、湯ったり山の神という公衆温泉施設前を抜けて明科に出て穂高に入るコース。安曇野を北上してぐるっと松川村まで上って池田町経由の右回りをするなら前者、反対ルートをとるなら後者ですか。まぁどういう廻り方をしても良いのですが、アルプスの眺めは午前中の方が奇麗だということと、昼食をどこにするかを思案してどちらかに決めて下さい。
僕がこれまで行ってお薦めできる所を中心に紹介しましょう。まず一番南から三郷村は僕はちょっと通っただけでさいさき悪いことでごめんなさい、よく分かりません。ただここにはフラワーパークや山野草苑、温泉施設などを整備しているそうで、観光で周辺から取り残されないよう頑張っているようです。次の堀金村には村営の公衆温泉と宿泊施設ほりでーゆ四季の郷があり、割安で近代的ホテル風建物に宿泊できお薦めですが、温泉は外来と共用(最近はどうかな)ですから8時ぐらいまでは込み合うのは我慢しましょう。ほかには元庄屋だったかの屋敷と庭園や町中に農産物直売所がある程度の印象で、この二つの村は正直、あまり訪れていませんので悪しからず。
さて豊科町は行けば必ず寄るのがビレッジ安曇野、町営の観光施設でカフェレストラン、穂高周辺在住の工芸作家の作品展示即売、物産直売所、安曇野ガラス工房(町が美術大学の施設として誘致したもので、体験もできます)があって一服しながら目を楽しませて行きましょう。蕎麦挽水車が廻り、安曇野の湧水を汲み上げて飲めるようにしていますし、隣には宿泊施設もあります。2Fの展示場には菅田英一(その後神戸に戻られてしまった)の版画などもあるはずですし、並べられた作品にこのあたりに居を構える工芸作家が存外多いのにも驚かれるでしょう。併設のカフェは数席ですが展示場からオープンに続いていて、昼時などカレーのいい匂いが漂ってきますが、つられてあなたはここで昼にしますか。この周辺は夏場の観光シーズンは車が混雑するので僕はいつも抜道を狙います。事前にここまでのルートとこの先穂高方面への出方を地図で調べておいて下さい。豊科近代美術館に廻ってそのすぐそばの北上ルートを探すのも良いかと思いますが。
中心の穂高町には有名な荻原碌山の美術館がこじんまりながらあの趣のある姿で観光客を集めています。貸自転車で穂高神社から大王わさび園などに足を伸ばし双体道祖神巡りをするのも良いのでは。お土産はやはりわさび漬、ここのは静岡の茎ばっかりと違って根を刻んだものがしっかり入っていて、静岡県出身者としては恐れ入りました。僕は穂高神社近くの小笠原わさび店がお気に入り、ほかには花岡本店や就一郎漬本舗なでがありますが、駅前の渡辺わさび店は先代の頑固親父が亡くなってからはダメになってしまいましたね。あと旧道にある陶器店クラフト工房はこんな所にちょっとシャレた器がという店、実は我家の有田焼スイッチ版はここで買ったもの、長野で見たのより安かったのでここで10枚以上仕入れてしまいました。ここの主人は町に詳しいらしいから何かしら良いところを聞き出せるかもしれませんよ。それで食事ですがこの店の主人があそこの親父は凝り性だからという上條という蕎麦屋。最初はペンションで次に洋食屋、この時代には僕も碌山美術館近くということもあって昼に寄ってさくらカツなる馬肉カツとわさびドレッシングサラダを食べて結構旨かったのを覚えているが、蕎麦屋になってからは行っていない。更埴は稲荷山の有名蕎麦店つる忠で修行し、最近はTVなどでも紹介されるようになっているらしい。蕎麦でも数年でもう人気店(その後ラーメンもやりだしたらしい)のようです。穂高は山麓の有明方面までふくめるとかなり広くて、蕎麦、和食郷土料理、洋食など旅行雑誌に紹介されている店がかなりありますから自分で探してみてください。未舗装道路を入った奥にある舎櫨夢などはエコの宿と銘打っていますが、食事もできて半セルフ式で玄米ご飯や石窯ピザが評判でちょっと面白い店でした。今僕の触手が動いているのは料理研究家がやっているあづみの食卓(金〜月の昼予約のみなのでなかなか行けません)とこんなところで評判らしいすし処泰などかな。有明の山林の中には穂高温泉郷があって400円で入れる公営施設もありますが、ややくたびれた施設で登山帰りの汗臭いのと一緒になるかもしれません。またその近くには工房の森があって各種工芸教室が飛込み(ビレッジ安曇野で各作家のTELを聞いて確かめてから行きましょう)でも体験できるそうですから如何でしょうか。
さらに北、大町市手前の松川村は最近元気な町で、新しくできた岩崎ちひろ美術館は良く整備された広い庭園のような敷地内に建つメルヘンチックな建物。絵本になった少女、子供像は女性や子供に人気があって観光客でにぎわっています。村からかなりの援助を受けたんでしょうか。練馬の元自宅跡にも小さな美術館(確か最近になって改築され良くなったという記事を読んだ)がありますがこっちはかなり立派なもの、ちひろさんの亭主は元共産党衆議員議員の松本善明さん、その資産だけで息子が建てたとは思われませんものね。このすぐ道を隔てた隣には村営の温泉、レストラン、宿泊施設すずむし荘があり、ここの温泉は僕的にはかなり気に入っています。近くの山の上にある魔羅尾温泉から直接引いているとか、名前がちょっと卑猥な感じをそのまま名乗っているなんていいじゃありませんか。ラジウムを含んでいてヌルッ、ツルツルになる泉質。源泉だけの小さな浴槽の方は体温に近い38℃でいつまでも入っていれますが、数人しか入れませんから譲り合って下さい。宿泊すると宿泊客だけの内風呂(露天風呂は一般の方のみ)もあって、こちらは入浴人数が少ないのでさらに濃い感じがする湯です。併設のレストランも人気があって昼時はいつも待つ人が多く我々はまだ食べていません。メニューを見ると和食中心のようですが、宿泊した時の夕食もここで料理しているらしかったのですがそれは洋風、温泉には和風の方が良いのに、昼と変えないといけないにしても洋風は一部だけにしたらと思ったことでした。それで僕がよく行くのはR147沿いにあるヨーロッパ家庭料理のはなばんだ。昼のセットメニューは4種類で特別上々に旨いとは思わないけれど、もし別メニューにあるオックステールシチューが昼時間に間にあって出来ていたらそれを注文して下さい。これは本格的で旨くて安い、狂牛病を忘れて食べましょう。デザートも自家製ケーキが用意されていますよ。
ほかには少し離れた山側の道を南下するとハロー安曇野という公園施設の中にとんぼ玉博物館があり、古代からの珍しいトンボ玉が展示されていて結構面白いので一回は見学してみると良いのでは。逆に北に行けば大北農協松川支所の直売所があって、ここの松川米は美味しく、信州では浅科村の五郎兵衛米と共に人気があります。帰りはそれより手前を右折して高瀬川の東側、池田町の方の県道を南下するのが空いていて正解。安曇野のこのあたりは国道とこの県道に山側の道の3本南北に平行し、さらに農免道路が1本という道路状況に白馬に抜けるオリンピック道路が加わりましたから旨く混雑を避けてください。
川の東側の県道沿いにある池田町はハーブの町を謳っていて道の駅もハーブを売りにしていますし、まだ行ったことはありませんが夢農場というのもあるらしいです。でもここでのお薦めは池田町立美術館からの北アルプスの眺め。下の道路からは想像できない素晴らしさ。それこそ安曇野を前に置き、常念岳を正面に西側に聳えていますから写真に収めるなら午前中の方が奇麗という訳です。天気が良ければ遠くは白馬連邦までも見渡せられ、美術館には山容図に名前を入れた案内コピーがありますからそれと比べて山の名前を調べてみましょう。我が友人で山好きの奴は頂上の形をちょっと見ただけであれは○○岳、その先には△△山とよくもまぁ知っていたものでしたね。またこの近くには長坂にあるあの有名な翁で修行した安曇野・翁やオーベルジュ・メイヤの樹が出来ましたのでこれからが楽しみです。それとここの地酒(蔵元は見学や販売はしていませんが)、山の酒を謳う銘柄は大雪渓という酒は昔でいう2級酒でも安いのにかなり旨いですよ。
池田美術館
北アルプスの絶景が眺められる
あとは明科まで下って松本に寄るか、最初に往路で書いた山の神の温泉前を通ってショートカットするかは時間と相談になります。ちなみにこの温泉はこじんまりしたものですが、やたらにヌルッとした植物系のモール温泉みたいなものが入ったやや茶褐色の湯です。ここを通り過ぎて突き当りを左折すればもうひとつの上田方面に出るルートで四賀村を抜けて青木峠を越えるコース。四賀村にはアンシャンテ四賀という温泉と宿泊の施設(このあたりの公営施設では最初に出来たと思います)があるほか、秋は良質の松茸で有名な村。シーズンには松茸山荘で温泉と食事が容易されているそうです。
青木峠は昔よりは道路整備が進められて良くなっていますがまだクネクネの山道が延々で、時間的には距離以上にかかるので念のため。秋にはこの山は茸が豊富らしく、道路沿いにテープを張りまわして入山不可としている山林が続きます。峠最終の坂井、麻績村方面への石仏で有名な修那羅峠入口近くを過ぎればもう広い道路になっていて田沢温泉に一気に降りてこられます。ここの共同温泉、有乳湯も柔かい硫黄泉で泉質は良いですよ。こちらに来るとどこにでも温泉があって、我が小屋に帰って風呂になんぞはついぞ入ったことはありませんね。時には松本などの都市部を外してそれなりの自然とちょっとした文化施設を訪ね、温泉と旨いものを満喫というのもいいもんです。
店データ
HAMAフラワーパーク安曇野
三郷村大字温 6687・7 0263-77-6019
ほりでーゆ四季の郷 堀金村烏川 11・1 0263-73-8500
ビレッジ安曇野 豊科町南穂高 6780 0263-72-8568
碌山美術館 穂高町穂高 5095・1 0263-82-2094
上條 穂高町穂高 5268 0263-82-4411
小笠原わさび店 穂高町穂高 5978 0263-82-2414
あづみの食卓 穂高町有明 3089 0263-83-6797
すし処 泰 穂高町穂高 1796 0263-82-2247
舎櫨夢 穂高町有明 7958 0263-83-3838
安曇野ちひろ美術館 松川村西原 0261-62-0777
とんぼ玉美術博物館 松川村北ノ原 4335・1 0261-62-8600
すずむし荘 松川村川村西原 3363 0261-62-8500
はなだんだ 松川村細野 5212 0261-62-9189
池田町立美術館 池田町会染 7782 0261-62-6600
安曇野 翁 池田町中鵜 3056・5 0261-62-1017
オーベルジュ メイヤの樹 池田町中鵜 3056 0261-62-6796
アンシャンテ 四賀 四賀村大字穴沢 756 0263-64-3993
松茸山荘 四賀村大字穴沢 767 0263-64-2102