観音菩薩(アヴァローキテーシュヴァラ、アヴァローキタスヴァラ)
日本人にとても馴染みの深い菩薩である「観音菩薩」は、正式には「観自在菩薩」、あるいは「観世音菩薩」と漢訳
されている菩薩です。「人々が救いを求めるのを聞くとすぐに救う、自在に真理を見通して救う」という意味の慈悲深
い菩薩です。
「法華経」では現世の人々を救う姿が説かれ、浄土系経典では阿弥陀如来を補佐する菩薩として人々を浄土まで
運ぶとされます。また、「華厳経」では、南方海上の補堕陀落山の浄土に住むと説かれています。
観音菩薩は、 その名前からはシヴァ神と関係していて、一方、蓮華や水瓶を持つなどその姿からは、富・美・光の
女神であるラクシュミーやシュリー、あるいはペルシャの河の女神アナーヒターと関係していると考えられていま
す。観音菩薩は日本では女性的なイメージがありますが、インドでは王者的なイメージが強い菩薩でした。
観音菩薩は様々な姿をとって現れます。それらは多く手や顔を持つ密教的な姿をしていますが、これらを「変化観
音」と呼びます。日本では「変化観音」は奈良仏教の時から祀られています。主な変化観音には、十一面観音・千
手観音・如意輪観音・不空羂索観音・馬頭観音などがあります。これら変化観音に対して、普通の姿の観音を聖
観音と呼びます。観音は「六観音」や「三十三観音」など、複数の観音を1組にまとめて祀られることもあります。
観音菩薩は浄土宗のお仏壇の脇仏として祀られます。
しています。
弥勒菩薩(マイトレーヤ)
お釈迦様の次に如来の位につくと約束された菩薩で、「未来仏」、「当来仏」とも呼ばれ、如来として表されることも
あります。弥勒菩薩には「上生信仰」と「下生信仰」があります。「上生信仰」では、弥勒菩薩は須弥山の上空にあ
る兜卒天で神々や菩薩達に説法をしているとされ、弥勒菩薩の名前を唱えて念じると、死後、兜卒浄土に生まれ
変われるとする信仰です。阿弥陀如来の浄土信仰と似ています。一方、「下生信仰」では、 56億7千万年後に弥
勒菩薩が兜卒天から降りてきて如来となり、人々を救うとする信仰です。弥勒菩薩には少年神としての側面があり
ます。日本では兜卒天で瞑想にふける姿を描いた半跏思惟の像が有名です。
弥勒菩薩にはユーラシア全体に広がる救世主神話と共通した側面があって、その元祖にあたるペルシャのミスラ
神の仏教版であると考えられています。ミスラ神にも死後の天国の主宰神という性質と、未来の救世主という性質
があります。
文殊菩薩(マンジュシュリー)
文殊師利菩薩は、智慧を象徴する菩薩です。智慧の象徴である剣や経典を持ち、獅子の背の上に乗っていること
もあります。また、文殊菩薩にも勇敢な少年神としての側面があって、童子の姿でも表されます。
文殊菩薩は、その名前からはシュリー女神と関係が深く、一方、少年神としての姿からは、 シヴァ神の子スタンダ
やクマーラと関係していると考えられています。
臨済宗のお仏壇に脇仏として祀られます。
普賢菩薩(サマンタバドラ)
仏の慈悲(菩提心)の象徴とされる菩薩です。文殊菩薩とともに釈迦如来の脇侍として表されるように、有名な菩
薩で、『法華経』や『華厳経』でも重要な役割を果します。『華厳経』では限りない願いをかなえ、あらゆる場所に偏
在する菩薩とされます。また、密教では特に重要な菩薩で、金剛さったと同体と考えられるようになり、「本初仏」と
すら考えられるようになりました。白像の背に乗る姿で表されることが多く、息災や延命の祈願の対象とされます。
臨済宗のお仏壇に脇仏として祀られます。
勢至菩薩(マハースターマプラープタ)
智慧の光で人々を救う菩薩です。観音菩薩とともに阿弥陀如来の脇侍となり、阿弥陀三尊を形成します。また、力
持ちで、月と関係が深いという側面もあります。家内安全や除福招福の祈願の対象とされます。浄土宗のお仏壇
の脇仏として祀られます。
地蔵菩薩(クシティガルバ)
その名前から分かるように、大地を表す菩薩です。お釈迦様と弥勒如来の間の如来のいない世界を救う菩薩で、
地獄に落ちた人をも救います。あの世とこの世の境に立って説法をするとされるので、よく、墓地の入口や、村の境
界に祀られます。「身代わり地蔵」というように、人の苦しみを代わってくれる菩薩でもあります。また、子供の守り
神でもあり、安産の祈願や水子の供養、また延命にも頼りにされます。インドでは着飾った菩薩の姿で表されまし
たが、中国で僧の姿になりました。
虚空蔵菩薩(アーカーシャガルバ)
虚空とは地・水・風・火に次ぐ第5の要素としての空間のことで、この菩薩はさまたげのない空間に満ちる広大な智
慧を表します。日本では古来から山岳系の仏教(自然智宗)で重視され、空海も修した「求聞持聡明法」の本尊で
す。
また、芸能や手工業などの非農耕の民から信仰されました。芸能や技術の智慧、記憶力などを司る菩薩です。
金剛さった(ヴァジュラサットヴァ)
金剛(ヴァジュラ)は本来は雷神であるインドラの武器である稲妻のことであり、密教の法具にもなっている金剛杵
のことです。また、同時にダイアモンドでもあります。それが、煩悩を破壊する堅固な仏の智慧の象徴となりまし
た。
金剛さったは、金剛杵を尊格化した存在で、堅固な菩提心(慈悲と悟りを求める心)の象徴です。しかし、金剛杵と
共に金剛鈴を持ち、智慧と慈悲の統一を象徴しています。金剛サッタは、密教で菩薩の代表とされる普賢菩薩と、
金剛手(ヴァジュラパーニ)とを合わせて生まれた尊格です。金剛手や金剛サッタはお釈迦様や大日如来から密教
の教えを最初に受けた存在です。金剛さったは日本(中期密教)では菩薩ですが、後期密教では「本初仏」にまで
昇格しました。
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