国鉄・JRの台車
ホームへ ホームへ 次へ
貨車台車編(その1)
   1. 菱枠台車−アーチバー(Arch Bar)台車
   菱枠台車は英語のダイアモンド トラック(Diamond Truck)を訳したものですが、米国ではアーチバー台車だけではなく、その後登場した、鋳鋼台車(国鉄ではTR41)もこのダイアモンドトラックとして総称 されています。
台車形式 揺れ枕 輪軸種別 軸距(mm) 製造
初年
主な使用形式 記   事
TR20 鋳鋼 12t長平 1650 S10 シキ80
TR20 鋼板リベット組立 12t長平 1750 S12 チキ800
TR20 鋳鋼 12t短平 1750 S17 トキ10、チキ4000
TR20 鋳鋼 12t長平 1750 S18 チキ3000
TR20 鋼板リベット組立 12t長平 1650 S18 シキ60
TR20 タキ3000形式 形式なし キ100系形式
2. スリーピース(Three-Piece)台車
アーチバー台車はボルトによる組付けだったため、緩みがおき、メンテナンスに手間がかかったのと、緩みが原因の脱線事故が多発しこともあり、側枠を一体鋳鋼にしたアンドリュー(Andrew)台車が開発されました。
このアンドリュー台車は従来のアーチバー台車の軸箱をそのまま使える構造になっていました。
その後軸箱を一体化した、ベッテンドルフ(Bettendorf)台車が登場しました。
このベッテンドルフ台車が両側枠とボルスターで構成されたスリーピース台車の嚆矢です。
国鉄では戦前、D52のテンダー台車にはじめて採用され、貨車は戦後トキ15000形式に初めて採用されました。
米国では、枕ばねにコイルばねが多く採用されましたが、国鉄では長年に板ばねが使用されました。
これは、コイルばねの制振装置であるスナッバー(Snubber)が特許で抑えられていたため、オイルダンパの使用せざるを得なく、コスト面からなかなか実現しなかったようです。
略史
TR41のプロトタイプとなったベッテンドルフ台車は1910年代に開発されました。
ベッテンドルフ社は特許を取得していましたが、独占せず台車製造会社に公開しました。
これに伴い第1次世界大戦後急速に普及しました。
初期のベッテンドルフ台車は、側枠がT字形断面でしたが、1920年代にペンシルバニア鉄道(Pennsylvania Railroad)がU字形断面側枠を開発し、これが米国鉄道協会(American Railway Association : ARA)の標準台車に採用されました。
ちなみにこのとき、軸箱が分離したバルカン(Valucan)台車が標準台車に採用されています。
初期のT字形断面側枠のベッテンドルフ台車は経年劣化によるひびわれが発生し1940年ごろにはほとんど使用されなくなりました。
各社から走行安定性や乗心地 −貨車に乗心地があるのか疑問ですが、「Ride Control」の良い訳語が見つかりません− を改善した台車が各社で開発されました。
<例> テーラー台車(Tailor Truck)、ダルマン台車(Dalman Truck)、ナショナルB台車(Nationqal B Truck)、バーバー台車(Barber Stabilized Truck)など
アンドリュー台車
軸箱をボルトと下部連結板で固定している。後に改良され連結板をなくしている。
ベッテンドルフ台車 上図 T字断面側枠、下図 U字型断面側枠
1922年版 Car Builder's Cycropediaより
ヴァルカン台車の側枠
アンドリュー台車の軸箱固定方法を改良し、ボルト1本で固定できる
2-1 TR41系
蒸気機関車のテンダー用台車として導入されたスリーピース台車は、戦後トキ15000に採用されTR41形台車となりました。
貨車用標準台車として1960年代後半まで製造されつづけました。
台車形式 枕ばね 輪軸
種別
軸受
形式
制輪子 製造
初年
主な使用形式 記      事
TR41 板ばね 12t短平 平軸受 鋳鉄 S23 トキ15000
TR41A 板ばね 12t短平 平軸受 鋳鉄 S26 セキ3000 TR41にTR41B用まくら梁を使用、ブレーキ梁強化
TR41B 板ばね 12t短平 平軸受 鋳鉄 S24 ワキ1000
TR41C 板ばね 12t短平 平軸受 鋳鉄 S28 トキ15000
セキ3000
TR41Aのまくら梁高さ低減
TR41C-2 板ばね 12t短平 平軸受 鋳鉄 S38 ホキ2100 TR41Cのブレーキばりの強化
TR41D-1 コイルばね 12t短平 平軸受 鋳鉄 S40 TR41をコイルばね化(荷重25t以下)
TR41D-2 コイルばね 12t短平 平軸受 鋳鉄 TR41Aをコイルばね化(荷重25t以下)
TR41D-3 コイルばね 12t短平 平軸受 鋳鉄 TR41Bをコイルばね化(荷重25t以下)
TR41D-4 コイルばね 12t短平 平軸受 鋳鉄 タキ5450 TR41Cをコイルばね化(荷重25t以下)
TR41D-5 コイルばね 12t短平 平軸受 鋳鉄 TR41をコイルばね化(総重量23〜39tまで)
TR41D-6 コイルばね 12t短平 平軸受 鋳鉄 TR41Aをコイルばね化(総重量23〜39tまで)
TR41D-7 コイルばね 12t短平 平軸受 鋳鉄 TR41Bをコイルばね化(総重量23〜39tまで)
TR41D-8 コイルばね 12t短平 平軸受 鋳鉄 TR41Cをコイルばね化(総重量23〜39tまで)
TR41D-9 コイルばね 12t短平 平軸受 鋳鉄 TR41をコイルばね化(荷重30t以上)
TR41D-10 コイルばね 12t短平 平軸受 鋳鉄 TR41Aをコイルばね化(荷重30t以上)
TR41D-11 コイルばね 12t短平 平軸受 鋳鉄 TR41Bをコイルばね化(荷重30t以上)
TR41D-12 コイルばね 12t短平 平軸受 鋳鉄 TR41Cをコイルばね化(荷重30t以上)
TR41D-13 コイルばね 12t短平 平軸受 鋳鉄 TR41Cをコイルばね化(荷重52t以上)
TR41DS コイルばね 12t短平 平軸受 鋳鉄 S51(改) TR41Dのまくらばね座・オイルダンパ変更
TR41E-12 コイルばね 12t短平 平軸受 合成 S48 タキ45000 TR41D-12を合成制輪子化
TR41E-13 コイルばね 12t短平 平軸受 合成 S48 ホキ8100 TR41D-13を合成制輪子化
TR41F 板ばね 12t短平 平軸受 合成 S48 タキ1900 TR41Cを合成制輪子化、押棒式スラックアジャスタ
TR41G 板ばね 12t短平 平軸受 合成 S48 タキ1900 TR41Cを合成制輪子化
TR210 コイルばね 14t短平 平軸受 鋳鉄 S42 タキ43000
タキ44000
工事中
TR41B ワキ1458 芝浦 1977-6 TR41C
TR41D TR41E
TR41F タキ1900形式 TR41G タキ1900形式
釧路臨港 TR210 タキ44000形式
TR41を14t軸に変更した。
2-2 TR209系 2006年2月11日加筆修正
TR41を改良し、ころ軸受にしました。枕梁、枕ばね、ブレーキ装置はTR41と共通部品を使用しています。
上辺が直線に近くなった側枠形状は1950年代中頃、初めて密閉型ころ軸受を採用したグールド(Gould)が最初と思われます。
また、顎形(Jaw)をした側枠形状は、バルカン台車が鋳鋼側枠に従来の平軸箱を使用するために開発したのが始まりと思われます。
TR214はTR210をコロ軸受にしたものです。
TR225は私有貨車用標準台車として設計され側枠と枕梁のしゅう動部にレジン摺板を採用し、磨耗を抑え蛇行動の発生を抑えました。
TR225は台車中心距離が8m以上の私有貨車に使用されましたが、後に私有貨車の台車はTR213に統一されました。TR225はTR213に比べ1台車あたり約60kg重かったことや走行安定性で劣ることが理由だったのかもしれません。
台車形式 枕ばね 輪軸種別 軸受形式 制輪子 製造
初年
主な使用形式 記      事
TR209 板ばね 12t短コロ JT9 鋳鉄 S41 トキ25000
TR209A 板ばね 12t短コロ JT9 鋳鉄 S42 トキ25000 TR209のクラ・側梁軸受部大型化
TR209B 板ばね 12t短コロ JT10 鋳鉄 S44 トキ25000 TR209AをJT10化、側梁変更
TR209C 板ばね 12t短コロ JT10 合成 S47 タキ1900 TR209Bを合成制輪子化
TR209D コイルばね 12t短コロ JT10 合成 S48 タキ1900 TR209Cのまくらばねをコイルばね化
TR214 コイルばね 14t短コロ JT11 鋳鉄 S43 タキ43000、44000
TR214A コイルばね 14t短コロ JT11 合成 S43 タキ43000、44000
トキ1000
TR214を合成制輪子化
TR214B コイルばね 14t短コロ JT11 合成 S48 タキ40000 TR214Aに揺れまくらすり板追加
TR214B-1 コイルばね 14t短コロ JT11 鋳鉄 TR214Bを鋳鉄制輪子化
TR225 コイルばね 12t短コロ JT10 合成(2F) S50 タキ38000
TR225-1 コイルばね 12t短コロ JT10 合成(2F) タキ1900 TR225のまくらばね座(内)変更(荷重大の形式用)
TR225-2 コイルばね 12t短コロ JT10 合成(2F) タキ8650 TR225のまくらばね座(外)変更(自重大の形式用)
TR225A コイルばね 12t短コロ JT10 鋳鉄 H11 TR225を鋳鉄制輪子化
TR225A-1 コイルばね 12t短コロ JT10 鋳鉄 H11 TR225-1を鋳鉄制輪子化
TR225A-2 コイルばね 12t短コロ JT10 鋳鉄 H11 TR225-2を鋳鉄制輪子化
TR228 コイルばね 12t短コロ JT10 合成(2F) S51 シム1 TR225のまくらばね・オイルダンパ変更
TR209 トキ25000形式 TR214
TR210をころ軸受にした。側枠はTR213に近い。
TR225

ホームへ ホームへ 次へ