庭で色づいた葉を拾った 朱と、黄色と、それぞれが混じりながら色づいたもの 暖房のついていない、ひんやりとした部屋に持ち帰り、窓辺に置く ヒーターをつけ、コートを脱ぎ、湯を沸かす ありあわせのおかずで昼食を済ませ、 さて、と一息紅茶を一杯 チョコレートをひとかけら それからおもむろに、本棚から白く柔らかな紙を取り出した 掌の大きさに何枚か切り、 まだ仄かに水分を含んだままの葉と交互に ミルフィーユのごとく重ねてゆく 最後に白いワックスペーパーを置いて、 上から家にあるだけの辞書をかき集めて重石をした 翌朝、窓の外では冷たい風がガラス戸を揺らし、 太陽は厚い雲の向こう側だ 重石をよけると、白かった紙は淡く葉の形と色を吸い取り、 温かな色を宿している 葉は金色の糸を通し、窓辺のオーナメントにした カサカサと、隙間風に揺れて音を立てる それを眺めながら、短い小説を一つ書く 旅に出てしまった従姉を待つ、青年のある一日 晩秋の陽ざしが彼の生活を静かに照らす 印刷用にレイアウトし、生成色の紙に刷って束ねた 仕上げに、落ち葉の紙を表紙にする 出来上がった本にタイトルは付けずに、 テーブルの上に置いてしばらくながめた 誰の為でもない、自分の為だけの物語 色づく季節と共に、私は静かに本棚にそれを仕舞う