LosT wiNTer

room 9

鍵を開けて店内へ入る。ブラインドを上げ、窓を全て開けた。冷たい空気が店に流れ込み、僕は冷えた手を擦り合わせながらストーブに火をつける。やがてゆっくりと温もりが広がり、開店の準備をする間にはキッチンでお湯が沸き、加湿器の湯気と茶香炉の仄かな光が店を静かな柔らかい空間へと変えていった。お湯をポットに移して、窓を一箇所だけ残して閉める。引き戸の外に看板を出し、店を開けた。


LosT wiNTer room9より抜粋