G I H 会 報 No.94 2014年1月15日発行 |
第101回研究会は、12月14日(土)岐阜県立図書館研修室2で行った。最初に「岐阜の産業遺産」のパネルづくりについて 稲生勝・高橋伊佐夫会員より報告していただき、次に「岐阜の産業遺産」のDVDづくりについて大田博行・高橋伊佐夫会員 より報告いただき、最後に「東濃の砂防堰堤」について田口憲一会員に報告していただいた。今回の参加者は10名であった。 1.「岐阜の産業遺産」のパネルづくりについて 提案者 稲生 勝・高橋 伊佐夫 会員 A.パネル展で紹介したい産業遺産の選定は?
@近代化初期の産業遺産として県内に存在する希少価値のもの。 A県内の産業発展や県民の文化生活に役立ったもの。 | B岐阜県の特徴「飛山濃水」「利水と治水」に関連したもの。 C見学者が「是非現物を見たい」と思われそうなもの。 |
@誰がいつ何処に何のためにつくったのかを明記する。 | A明記する説明文は保存場所・遺産の特徴。視点などを簡潔に記す。 |
@パネルは何点作るか。 | A写真と原稿作成担当は。 |
旧水車は明治40年(米)モルガン・スミス社製、横軸単輪複流フランシス水車、水筒形ケーシング。 | 発電機は明治40年(米)ジェネラル・エレクトリック社製300kw |
旧水車は明治41年(独)フォイト社製、横軸双輪単流フランシス水車、円筒形ケーシング。 | 発電機は明治41年(独)ジーメンス社製2,330kw。 |
水車は大正12年東京電業社原動機製造所製、横軸単輪複流フランシス水車、渦巻形ケーシング。 | 発電機は明治43年(米)ジェネラル・エレクトリック社製、大正12年芝浦製作所がコイル巻き替え。 |
水車は大正3年東京電業社水車製造所製、国産初の縦軸フランシス水車、渦巻形ケーシング | 、 発電機は大正元年(米)ジェネラル・エレクトリック社製1,000kw。 |
水車は大正9年日東電機製、横軸単輪単流フランシス水車、椀形ケーシング | 、 発電機は日東電機製と奥村電機商会製の2台、出力1kw |
この排水機は荏原製作所昭和3年製口径114cmの横軸両吸込渦巻形ポンプ2台に富士電機 |
製造製250馬力の電動機を直結した排水機。 |
この排水機は荏原製作所昭和29年製口径170cmの横軸プロペラ形ポンプ2台に歯車変速機 |
を介して新潟鉄工所昭和29年製300馬力のディーゼルエンジンを直結した全長23mの排水機。 |
この排水機は大正15年荏原製作所製口径89cmの横軸両吸込渦巻形ポンプに明電舎製220 |
馬力の電動機を直結した排水機。 |
この排水機は大正13年三菱造船所神戸工場製口径91cmの横軸3連渦巻形(ケーシングが三つ |
の渦巻室に仕切られた珍しい形式)ポンプに220馬力の電動機を直結した排水機。 |
この排水機は荏原製作所昭和2年製口径71cmの横軸両吸込渦巻形ポンプ | に明電舎製80馬力の電動機を直結した排水機。 |
この排水機は奥村電機大正11年製口径95cmの横軸両吸込渦巻形ポンプに歯車変速機を |
介して新潟鉄工所昭和18年製8気筒150馬力のディーゼルエンジンを直結した排水機。 |
五六閘門は瑞穂市牛牧の五六川流末に明治40年築造された逆水留樋門で、106年経った |
今も現地に残る県内唯一の人造石樋門である。五六川の樋門造りの歴史は250年である。 |
この手動転車台はわが国現存最古級のもので、明治35年アメリカ製、橋げた長さ15mの上路 | 式転車台である。現地に保存展示されており、平成17年国の登録有形文化財となった。 |
この橋梁は明治19年に大垣市新開町と安八郡安八町西結間の揖斐川に架けられた東海道 | 本線最初の単線式ダブルワーレントラス5連の鉄道橋である。平成20年国の重要文化財となった。 |
この美濃橋は大正5年、美濃市上有知と前野間の長良川に架けられた支間116mの渡り橋 |
である。名古屋鉄工所製、わが国最古の吊り橋。平成15年国の重要文化財となった。 |
大田橋は大正15年に美濃加茂市と可児市間の木曽川に架けられた長さ217mの大阪鉄工所製三連のトラス橋である。 |
国道248号線として87年経った現在も道路交通に利用されている。 |
大井ダムは大正13年、恵那市奥渡の木曽川に建設された長さ260m高さ53mのダムである。 |
大同電力が建設した日本最初の鉄筋コンクリート製ハイダムで、89年経った現在も健在である。 |
このつり橋は大正15年、加茂郡白川町河岐の飛騨川に架けられた長さ116mの鋼鉄製二連 |
の道路橋である。日本現存3番目の吊り橋で87年経った現在も健在てある。 |
(1)なくなったものも入れてほしい。 旅館、酒蔵は産業遺産になるのか。 (2)まず作る。土木・電気・機械の世界が基本。 周辺も少しずつ視野に入れていけばよい。 民家でも提案してもらえばよい。 国会図書館へ送っておけば著作権は確保できる。 | (3)なくなったジャンルも別枠で「産業遺産資料」とする。 (4)消すとか訂正は大田さんの方へ。 |
岐阜産業遺産研究会は20年ほど前から県内の産業遺産を調査し、新聞・HP・会報など に掲載・紹介し所有者に産業遺産の保存も要望してきた。その中で保存・展示が実現した 遺産もあるが、撤去・廃棄された遺産もある。また、産業遺産とは言いがたい物件も含ん でいた。GIHの例会で「産業遺産とは何か」「産業遺産と産業考古学」を学習してきた ことを踏まえ、今回GIHのHPを参考に県内の主要な産業遺産100件をDVDにする件に ついて検討したい。 | は1994〜1996年に岐阜産業遺産研究会として中日新聞岐阜版に掲載した50件。地域別 に記載した下記の産業遺産名(物件名)・所在地(又は保存場所)・保存価値(特徴)な どを再検討し、これ以外に貴重な産業遺産があれば追加して、選定基準はないが幅広い視 点から検討して、全体として100件程?の産業遺産を選んではどうか。HPを作り直すこと も共に考えなければならないが、とりあえずDVDづくりから。(以下は地域別の産業遺 産名のみを記述し、保存場所・保存価値については省略した。) |
<飛騨市>@神岡鉱業所鹿間工場 A神岡鉱山の坑道 B土第一水力発電所 C神岡鉱山自家水力発電所 D神岡鉱山の道具類 E鉛精錬用除滓鍋 F神岡鉄道の線路 GKM-DE101ディーゼル機関車(撤去) H池の俣水力発電所の旧ペルトン水車(移設) <白川村>@御母衣ダム A御母衣水力発電所の旧水車ランナー B白川郷合掌造り集落 <高山市>@キ132号ラッセル式雪かき車 A19648号SL B下切水力発電所の旧水車ランナー C茶屋野水力発電所の縦軸水車 D天神水力発電所の取水口 E天神水力発電所の旧水車ランナー Fウイングポンプ GM36年造山岳資料館 H風力発電機 I旧三星製紙工場 J高山陣屋・フライヤ紡車など5点 <下呂市>@保井戸トンネル A瀬戸水力発電所 <中津川市>@賤母水力発電所 A対鶴橋(吊り橋)? B賤母水力発電所のT8年縦軸単輪単流渦巻型フランシス水車 C賤母水力発電所当初の横軸双輪単流渦巻型フランシス水車1基(撤去) D旧北恵那鉄道の木曽川鉄橋 E神坂の風穴 F絵に残る飛騨索道 G9ミリ映写機 <恵那市>@大井ダム A大井水力発電所 B 大井水力発電所初の縦軸フランシス水車ランナー C大井水力発電所2代目縦軸フランシス水車ランナー(蛭川) G大井水力発電所2代目縦軸フランシス水車ランナー(恵那) H寒天大釜 I小里川の興運橋 J旧小里川第三水力発電所の水車・発電機 K岩村の電車道と変電所 L静波水力発電所の旧水車ランナー <東白川村> <白川町>@上麻生堰堤 A白川橋 <七宗町> <八百津町>@旧木曽川水力発電所 A旧八百津水力発電所の水車・発電機 B旧八百津放水口発電所 C旧八百津放水口発電所の水車・発電機 D落合発電所で使われた励磁用水車・発電機 <御嵩町> <川辺町> <富加町>@酒槽と佐瀬式プレス <瑞浪市>@水車トロンメル A千本杵搗き大型水車 B回り続ける水車(?) <土岐市>@旧土岐川水力発電所(解体) A旧土岐川水力発電所の水車・発電機 <多治見市>@旧国鉄中央線トンネル2基 A根本の連房式登り窯 <可児市>@D16形電車の台車 A小渕ダム <美濃加茂市>@佐見川第二水力発電所の旧水車・発電機 A太田橋 B今渡ダム C電動上路式転車台 D兼山橋(解体) <関市>@山崎式ベルトハンマー A油圧式ねじ転造盤 B剃刀生産用具 C各務用水 D各務用水の伏越水路 E中濃用水取水口 <美濃市>@長良川水力発電所 A長良川水力発電所の旧水車・発電機 B旧美濃橋(吊り橋) C井の面水力発電所 D井の面水力発電所取水口 E生き返った越美南線 F曽代用水 G住吉灯台(上有知川湊灯台) | <各務原市>@YS-11形プロペラ旅客機 A短距離離陸実験機「飛鳥」 B旧犬山橋 C人車製薬機(複製) <郡上市>@北濃駅の手動転車台 A旧古川家の水力発電用水車・発電機 A八幡水力発電所遺跡 B松根油乾留釜 B畑佐鉱山跡(不明?) C郡上製紙工場(解体) D郡上製紙工場で使われた蒸気機関ポンプ <山県市>@野久尾用水隧道 <本巣市>@真桑席田用水取水口 A根尾水力発電所の水車・発電機 B樽見鉄道 C樽見鉄道の第6根尾川橋梁 D住友セメント岐阜工場 E樽見鉄道のレールバス F英式八尺切落旋盤 G手動消毒ポンプ <揖斐川町>@旧西横山水力発電所の水車・発電機 A旧西横山水力発電所の取水堰堤と取水口跡 Bイビデン東横山水力発電所 C東横山水力発電所の水圧鉄管と眼鏡橋 <大野町><池田町><神戸町><垂井町> <関ヶ原町>@大日本紡績関ヶ原工場と塵突及び事務所(撤去)A東海道本線今須トンネル <養老町>@笠郷組合閘門 A五三排水機 B養老鉄道 <輪之内町> <安八町>@旧中須川排水機 A樽見鉄道の揖斐川橋梁 <大垣市>@旧東海道本線揖斐川橋梁 A旧東海道本線揖斐川第2橋梁の橋台 B旧時第二水力発電所の水車・発電機 C旧鵜森排水機 D西濃鉄道市橋線 EC11ー155蒸気機関車 F鐘紡大垣工場 Gウオーシントンポンプ H住吉灯台 I揖斐川橋梁(大垣市) J摂津紡績大垣工場 K同工場内の蒸気ポンプ L走行式ガントリークレーン M旧近江絹糸の自家用火力発電所 N犀川制水樋門 O酢酸製造水化塔 P旧矢橋亮吉邸 Q後藤毛織建設(解体?) R河合石灰の土中炉 <海津市>@旧脇野排水機 A旧福束排水機 B旧福江排水機 C金廻四間門樋 DP形ディーゼル機関車とトロッコ E羽根谷第一砂防堰堤 H木曽長良背割堤 I油島千本松締切堤 J高須輪中の堀田 K宝暦治水碑と治水神社 <羽島市>@旧逆川排水機 A旧吉里排水機 Bアーク式映写機 C竹鼻のからくり人形 <瑞穂市>@五六閘門(逆水留樋門) A東海道本線二代目の長良川鉄橋 B天王川伏越樋 Cナベトロとディーゼル機関車 Dレンガ造りトンネル <岐阜市>@小宮神水力発電所の旧水車・発電機 A旧ポンプ室とトエンジン室 B旧揚水ポンプ C水中モーターポンプ D忠節用水と樋門群 Eロボット水門 F旧今泉排水樋門(忠節用水の排水樋門)(解体) G特種堤 H忠節橋 I消防自動車(消防用蒸気ポンプ車) JD51ー470蒸気機関車 K汚水処理用ポンプ L城田寺隧道 M空穂屋 N岡本家住宅主屋 OKSターボサイレン P旧天菊織物工場 Q岐阜県総合庁舎(岐阜県庁) R岐阜県教育会館(旧県図書館)(解体) S川島紡績正木工場(解体) ?日本毛織岐阜工場の倉庫(解体) ?二挺天符の和時計 ?揚水ポンプ2組(撤去) ?入船用水堰(水門) |
昨年見学した山神堰堤を含めて、文化庁の登録有形文化財(9250件 半分弱は建造物 岐阜県は202件登録)に登録されている3つの砂防関連遺産について報告。 |
なお、参考として近隣の古いと思われる砂防堰堤も紹介する。 |
登録有形文化財(建造物・治山治水)に2013. 9現在179件が登録されている。その中で 173件は砂防関連施設である。北海道・九州は無し。東北北部・南関東・近畿・四国は無し か少ない。無しとした都道府県に砂防施設がないのではなく、登録されていないだけか。 国交省地方事務所の姿勢次第か? 別の指定などを受けているものもある。登録されている砂防施設の大部分は大正〜昭和の 期間に作られているが、明治期や江戸時代のものもある。大正初期までのものには特徴的 |
な構造・工法のものが多く認められる。昭和のものは規模の大小はあっても切石の空積み
や練積みで、谷積みが多い。
県内では羽根谷砂防堰堤、同第一堰堤は明治期の築造。デ・レーケが指導したとされ、巨石
積みの大規模なものとして有名。奥飛騨の岩坪谷第1、第2、第3、足洗谷第1、日影第1と東
濃の3件である。羽根谷砂防堰堤以外は、見知石練り積みや、表面石張りの重力式である。
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@所在地 浦山第二 土岐川(庄内川)支流妻木川支流浦山谷 土岐市妻木町上郷 山神 木曽川支流中津川支流四ツ目川 中津川市中津川恵下(えげ) 二ケ滝第一 木曽川支流中津川支流正ケ根支流二ケ滝谷 中津川市中津川川上(かおれ) A緒元〜C構造(省略) D特徴・現状等 浦山第二砂防堰堤 昭和10年代〜20年代に、間知石を矢羽積みで積んだ空石積みの堰堤 は全国的にも希。この地方に高度な石材加工・石積技術の存在を示す。戦中戦後のセメン トなどの物資不足や運搬が困難な中でも石工の技術の高さを示している。 現状はほとんど破損個所もなく判定している。右岸には妻木城跡と思われる立派な野面積 みの石垣がある。250 mほど下流にある浦山第一も同じ工法で作られており、損壊のため 破断したところから内部構造見ることができる。 山神砂防堰堤 四ツ目川災害後に計画された砂防事業において、最初に築かれた砂防堰堤。 国の直轄事業。副堰堤と一体的に作られている。扇状地形の扇頂部で川が屈曲したとこ | ろに築かれている。 現状はほとんど破損個所もなく安定している。近隣が市街化しつつあるので付近を親水 公園風に加工している。 二ケ滝第一砂防堰堤 昭和10年代〜20年代に、間知石を矢羽積みで積んだ空石積みの堰 堤は全国的にも希。この地方に高度な石材加工・石積技術の存在を示す。戦中戦後のセメント などの物資不足や運搬が困難な中でも石工の技術の高さを示している。戦中戦後で予算不足 のため途中で工事は中止となり、水通し部はなく全体を越流する形となっている。 他に比べて間知石の形状が大きく、合端の目地がぴったり合っており整形程度が高い。二 ケ滝谷は岩盤の上にわずかな表土が載った急峻な谷のためか、上下流に大規模な新しい堰堤 が作られて挟まれた格好になっている。左岸の一部が崩壊しているが補修の形跡は認められ ない。なお、ここだけは登録証が川上の人里、道路脇(ウエストン碑の下方)に設置してある。 |
●国土の歴史的景観に寄与している 山神砂防堰堤 第21ー0103号 市中心部を貫流す る木曽川水系中津川支流四ツ目川の中流域に位置する、堤長42m、堤高8mの重力式練積堰 堤を、護岸とむくり付の副堰堤と一体的に築き、表面は全体を谷積とする。四ツ目川災害後 に計画された砂防事業において、最初に築かれた砂防堰堤。 ●再現することが容易でないもの 浦山第二砂防堰堤 第21-0105号 市を南北に貫流す る庄内川水系妻木川の支流浦山谷川に位置する。堤長28m、堤高5mの重力式の堰堤で、表 |
面は谷積、法勾配は上下流とも5分とする。切石の空積を用いながらも、天端幅3.5mと堤
体を厚く築くことで、土砂圧に耐える。
二ケ滝第一砂防堰堤 第21-104号 市の南部を流れる中津川支川正ケ根谷右支二ケ滝に位
置する。堤長26m、堤高5m規模の重力式の堰堤で、上流側法勾配5分、下流側法勾配4分
とし、表面は谷積で築く。切石の空積を用いる全国的に類例の少ない構造形式が特徴。
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@嫌谷(やんたに)砂防堰堤群 中津川市加子母(デ・レーケ指示) A境谷(さかいだに)砂防堰堤群 中津川市坂下・川上(デ・レーケ様式) B吉本谷砂防堰堤群 中津川市付知(デ・レーケ様式) |
C東の巣川砂防堰堤群 中津川市坂本(デ・レーケ様式)
D大崖砂防堰堤 南木曽町大妻籠(デ・レーケ指示)
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