G I H 会 報
No.90 2013年3月10日発行
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第97回研究会の報告
第97回研究会は、2月9日(土)に岐阜県図書館の研修室で行いました。最初に高橋進
会員より「岐阜の産業遺産120選の編纂を終えて」と題して報告していただきました。
次に高橋伊佐夫会員より「産業博物館に展示されたい産業遺産について」提案があり
ました。その後「産業考古学・産業遺産とは何かについて」再び学びあいました。
今回の参加者は9名でした。
記
1.岐阜の産業遺産120選の編纂を終えて
−産業観光の振興に向けて− 報告者 高橋 進 会員
岐阜の産業観光の発展を目指し「岐阜の産業遺産 120選」の編纂を終え、その内
容を9頁もの資料を基に報告された。報告の概要は、添付資料(1頁分)をご覧下さい。
2.「産業博物館に展示されたい産業遺産ついて」
提案者 高橋 伊佐夫 会員
3年前の第81回例会で「夢としての産業博物館の設立を」稲生勝会員が提案された。
その時の資料(会報No.75)によれば、産業博物館の設立は、岐阜県博物館・旧八百津発
電所資料館・サイエンスワールド・旧揖斐川橋梁周辺の4案が提示された。
今年度も活動の一つとして「岐阜の産業遺産展示博物館(仮称)建設を追求する」
ことを総会で決めたこともあり、建設を追求することと関わって、今回は「産業博物
館に展示されたい産業遺産」を3案、下記のように提案された。
(1)岐阜県内に、旧八百津発電所(本館と放水口)・長良川発電所・小宮神発電所・
旧土岐川発電所・佐見川発電所・旧小里川発電所・旧古川家自家発電所・旧西横山発電
所・旧茶屋野発電所・御母衣発電所・旧大井発電所などで活躍した水力発電装置(水車
と発電機)が各地域に単品で保管・保存・展示されている。これら11ヵ所で使われた水
力発電装置を「博物館」に集積し、館内に並べて展示し、説明看板を付け、水力発電機
が県民に果たした役割と、その歴史及び水力発電技術の発達が学べるようにしては。
(2)岐阜県内に、旧逆川排水機・旧中須川排水機・旧鵜森排水機・旧脇野排水機・
旧福江排水機・旧福束排水機・旧五三排水機・旧吉里排水機・旧小藪排水機・旧桑原排
水機など、各地域の湛水防除の役割を果たした排水機が単品で保管・保存・展示されて
いる。これらの排水機(10基)を「博物館」に集積し、館内に並べて展示し、説明看板
を付け、排水機が田畑の湛水防除に果たした役割と、その歴史及び排水技術の発達が学
べるようにしては。
(3)岐阜県内には、岐阜の梅林公園・高山のポッポ公園・大垣のスイートピアセンター・美
濃加茂の古井小学校の校庭に、蒸気機関車が展示(4輌)されている。また旧美濃駅・
旧谷汲駅・岐阜市金公園に路面電車が展示されている。「交通博物館」をつくり、これ
らの車輌(9輌)を集積し、館内に並べて展示し、説明看板を付けて、SLや電車が鉄道
交通に果たした役割や輸送の歴史、輸送技術の発達が学べるようにしては。
「県内の産業遺産を展示する産業博物館づくり」もいいが、これらの産業遺産を紹介する「マップ」づくりや「パネル展」を企画し集会場や図書館などに展示し、県民へのPRをやってみるのも良いのではとの意見がありました。
3.産業考古学・産業遺産とは何かについて再考
最近、「産業遺産」の捉え方・解釈が幅広くなってきた。12年前の第21回研究会で「産
業遺産とは何か」を学習したことがある。その時の資料「会報No.21」を参考に、再び「産
業遺産とは何か」参加者で、その思いを出し合い再び学びあった。その一部を紹介する。
※産業考古学は、考古学・歴史学・民俗学や産業史・技術史・経済史・地方史などと
共通点はあるが、「産業考古学」の特徴的視点から区別も必要ではと。
※「産業遺産」と「歴史資料」の区別も必要では。文献・古文書・古美術・写真・
絵画・図面などは「産業遺産」でなく『資料』ではないか。
※産業遺産は、産業革命以後の遺物・遺構・遺跡など現存物であり、産業革命以前の
古代の物や現代の物も産業遺産に含めるのはどうか。実物の修復や改修はよいと
しても、複製や模型など新たに制作した物を「産業遺産」とするのはどうか。
※産業遺産は単品の視点だけでなく、総合的に捉える観点も重要では。
※産業考古学と産業遺産の概念は、名古屋大学名誉教授佐々木享さんの論文(中部産
遺研発行の産業遺産研究第13号6頁)に『「産業遺産」は、超歴史的な概念とし
て捉えるのではなく、「近現代産業の形成・発展に貢献した機械・工具・構築物等
で、今日残されているモノ」を指し、その時代範囲は産業革命期以降とすると提案
されている。』と紹介された。
4.次回(第98回)研究会の月日
次回の研究会は、2013年4月13日(土)、豊川市の「産業とくらし発見館」など
の見学会になりました。詳細は、第98回案内をご覧下さい。
<公園に桑原輪中の3排水機展示について>
2013年2月19日、羽島市で「国営木曽三川公園づくり」第9回ワークショップ(最終回)
が開かれた。このワークショップに、GIHとして2012年3月の第1回から参加することを
決め、高橋会員が参加した。そして公園に桑原輪中の湛水排除の役割を果たした吉里
排水機を治水の歴史が学べる教材として展示されたいと要望した。また木曽川と長
良川を分流した背割提がよく見える展望タワーの建設も要望した(GIH会報85号に
紹介)。その後、明治改修から百年となる2012年、背割提を国の文化財に指定される
よう申請してはと提案した(GIH会報87号に紹介)。第9回では、公園内に吉里排水機
だけでなく、桑原輪中の治水の歴史を語る吉里・小藪・桑原3ヵ所の歴代排水機を
並べて展示されるよう再度要望した。2013年3月に国土交通省に提出される「公園
づくり提言書」にその要望が盛り込まれることを期待している。
<「木曽川水力の歴史」が学べる資料の紹介>
八百津発電所が発電開始から100周年となる2012年、八百津町教育委員会と発電
所資料収集展示研究会は『加茂地域にある木曽川水力の歴史〜国指定重要文化財・
近代化産業遺産の旧八百津発電所を中心に〜』と題した冊子を出版された。
その内容は八百津発電所の歴史・大正初期から昭和初期の町村営電気事業・今渡
発電所とダム建設の歴史・兼山発電所とダム建設の歴史・丸山発電所とダム建設の
歴史・新丸山発電所の歴史・愛知用水の歴史など、八百津だけでなく加茂地域の水
力発電の歴史が総合的に学べる資料です。
<中部産業遺産研究会の第31回シンポジウム紹介>
中部産業遺産研究会が「技術史を学ぶことと今後の技術革新とは」のテーマで2013年
3月24日(日)、名城大学 名駅サテライト(名古屋駅前)で開催されます。
詳しくは、同封のチラシをご覧下さい。会員でなくても参加できます。
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