G I H 会 報 
  No.85    2012年5月5日発行

「第1回木曽川桜堤・背割提ワークショップ」参加と 第92回研究会の報告   GIHとして参加を決めた「木曽川桜堤・背割提ワークショップ」(羽島市建設部土木監理 課主催の事業)の第1回が2012年3月22日(木)実施された。高橋伊佐夫会員がGIHの 代表として参加したので、その状況を紹介する。合わせて、第92回研究会として4月 7日(土)に実施した「濃尾平野南部の治水遺産見学」の状況も紹介する。今回の見学 会参加者は6名でした。  1.木曽川と長良川を分流した背割提     −背割提上流側(羽島)に国営公園建設−  高橋伊佐夫  2012/3/22(木)に実施された「木曽川桜堤・背割提第1回ワークショップ」に地元の人々中 心に21名が参加した。バスで羽島市南端の木曽川と長良川を分流した背割提と桜並木 を現地見学し、主催者の羽島市建設部土木監理課より説明を受けた。背割提・桜並木 の他、完成真近の国営公園(仮称:桜提サブセンター)や川島町の河川環境楽園施設を 見学した。その後、見学して思ったことや、これから計画される羽島市南端の公園に ついて、どんな公園にしたらよいのか自由に意見を述べるグループ会議があり、参加 者からいろいろ意見が出された。その一例は、「花壇をつくる・桜の木をきれいにす る・野鳥の楽園にする・水遊びができるようにする・トイレをつくる・ウオーキング 場にする・人がよく来るようにする」などであった。私は二つ意見を述べた。一つは、 桑原川流末に設置し近代治水事業(桑原輪中の湛水排除)に40余年貢献した最初の吉里 排水機(23年前、現地に保管)を計画される羽島の公園に展示されてはと。もう一つは、 高い所から木曽川と長良川を分流した長さ12kmほどの背割提がよく見える展望タワー を建設されてはと発言した。 展望タワー建設を要望した理由は、明治改修(木曽三川分流工事)が明治20年着手、 同45年に完成。着手から百周年を記念して昭和62年、海津郡油島に国営木曽三川公 園が建設された。公園内に建てられた高さ65mの展望タワーの上部から見ると、宝暦 治水の油島千本松締切提(木曽川と伊尾川の分流提)がよく見える。今年は明治改修着 手から125年、完成から百周年となる記念の年である。完成真近の国営公園か、これ から計画される羽島市南端の公園に、治水史上重要な背割提がよく見えるタワーを建 てらるとよいと思ったからである。  2.濃尾平野南部の治水遺産見学 −輪中のたん水排除の役割果たした旧排水機など−               報告者 高橋 伊佐夫 会員  2012年4月7日(土)午前10時〜午後5時まで輪中のたん水防除の役割果たした旧排 水機など下記の7ヶ所を見学した。一昨年2月GIH稲生勝会長より旧吉里排水機の 展示を羽島市文化財審議会長虫賀勇一さんの紹介で羽島市長にお願いした。その時に お世話になった虫賀勇一さんが今回の見学会に参加し、各地域の旧排水機の展示状況 を見たいと、ご一緒された。以下、旧排水機などの産業遺産を見学した順に紹介する。 (1) 大垣市入方の輪中館西側に展示されている旧鵜森排水機 この排水機は、大垣市浅西の鵜森排水機場で昭和11年から34年間、江西排水路流域の たん水防除の役割を果たした排水機。新潟鐵工所製ディーゼルエンジンの動力でポンプ の羽根車を廻し毎秒3.2トンもの排水ができる荏原製作所製横軸軸流ポンプ二基である。 エンジンは一基のみ展示。口径1.7m¢、全長23mの大きに圧倒された。 (2) 養老町に展示の旧五三排水機と笠郷樋門・大巻排水機場跡地記念碑  この排水機は、養老郡養老町小坪の五三排水機場で大正12年から80年間ほど、笠郷・ 池辺地域のたん水防除の役割を果たした排水機。新潟鉄工所製ディーゼルエンジンの動 力でポンプの羽根車を廻し毎秒1.5トン排水ができる奥村電機製横軸両吸込渦巻ポンプで ある。その展示排水機東側の五三川流末に明治43年築造の立派な逆水留樋門がある。更 にその東側には明治27年建設の初代大巻排水機場(岐阜県内最初)跡地の記念碑と2代目 の大巻排水機場、3代目の大巻排水機場が並んでいた。 (3) 海津市歴史民俗資料館に展示の旧福江排水機と金廻四間門樋  資料館中庭に展示の旧福江排水機は、海津郡福江川流末の福江排水機場で昭和2年から 56年間、高須輪中のたん水防除の役割を果たした排水機。明電舎製電動機でポンプの羽 根車を廻し毎秒1.8トン排水ができる荏原製作所製横軸両吸込渦巻ポンプである。ポンプ による機械排水以前の排水手段、揖斐川の干満潮を利用してたん水を自然排水した木製の 逆水留水門付き金廻四間門樋がシートハウスで覆い屋外展示されていた(有料)。   (4) 愛知県海部郡飛鳥村の大宝排水機場保存館  この保存館に展示の排水機は、飛鳥村の大宝排水機場で明治39年から65年間、大宝地 域のたん水防除の役割を果たした排水機。明電舎製電動機(当初は蒸気機関)でベルト掛 け2基のポンプを廻し、毎秒0.4トン排水ができる現存最古のドイツ製両吸込渦巻ポンプ。 ポンプ1基のケーシングが半分取り外し、ポンプ内部がよく分かるように展示され、また 実物排水機の6分の1程の模型(プラスチック製)もあり、電源のスイッチを入れると水が 流れ「水を吸込んで吐出す」様子がよく分かるとてもいい展示だった。 (5) 愛知県弥富市の立田輪中悪水樋門(中山樋門)  この樋門は、木曽三川分流工事で立田輪中の悪水を下流の鍋田川に排水するため、 明治34年につくられた長さ21m、8門のレンガと切石積みの立派な樋門。当初、樋門は 排水の目的だったが、鍋田川の水位が高くなり、逆に鍋田川から水路に水を取り入れ る役割に変わった。しかし、鍋田川の塩分を含んだ水を水路に取り入れることはよく ないし、鍋田川下流に土砂が堆積し取水困難となり取水も止めた。この樋門は、排水と 取水に失敗した異例の産業遺産である。現在、弥富町の文化財として保存されていた。   (6) 愛知県海部郡立田村の船頭平閘門とデ・レーケ像 この船頭平閘門は、背割提南端の立田村福原に明治35年建設された閘門である。明治 改修工事の一環として、分流した木曽川と長良川に水位差があるこの河川の間を船が往き 来できるように、8枚の鋼製水門で水位差を調節し船を往き来させる船通し水路(ドック) である。木曽川・長良川揖斐川の木曽三川では、他に見られない唯一の貴重な産業遺産 である。近くの船頭平河川公園に設置された「治水の恩人ヨハネス・デ・レーケ」(ドック設計者) の像も見学した。  (7) 羽島市南端の三川分流碑と旧吉里排水機の保管状況  三川分流碑は、三川分流工事(明治改修)の完成を記念して大正12年、羽島市の南端に 建てられた石碑である。この石碑の近くに以前、吉里排水機場で昭和3年から44年、桑 原輪中のたん水防除の役割を果たした排水機が分解され現地に保管されていたが、現在は 羽島市浄化センターに保管。排水機は明電舎製電動機でポンプの羽根車を廻し、毎秒4.4 トン排水ができる荏原製作所製横軸両吸込渦巻ポンプ2基である。また浄化センターには、 旧吉里排水機の他、小藪排水機場や桑原排水機場でたん水防除の役割を果たした排水機も 分解し一緒に保管されていた(下の写真参照)。この吉里・小藪・桑原3種の旧排水機が羽 島市南部の新公園に2〜3年後には展示予定とのこと。 3.その他、次回研究会の月日  第93回研究会は6月9日(土)の午後、岐阜県図書館2階の研修室で行います。   <GIHへの寄贈資料> ◎ 木曽川文庫より『kiSso』Vol . 82号を寄贈して頂いた。
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