岐 阜 産 業 遺 産 調 査 研 究 会 会 報
No.80 2011年5月23日発行
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第86回研究会の報告
第86回研究会は、2011年3月23日(水)、先ず揖斐川町東横山の「道の駅」に6年前
展示された国産初の縦軸水車(旧西横山発電所で使われた水車)の展示状況を見学し、
その後イビデン東横山発電所を見学した。午後は「道の駅」に展示の縦軸水車の展示
改善を揖斐川町教育委員会文化課にお願いに行った。今回の参加者は9名でした。
東横山発電所の見学と縦軸水車の展示改善を教育委員会文化課に要望した件につい
て簡単に紹介する。 高橋 伊佐夫
1.東横山発電所の見学について
東横山発電所はイビデン鰍フ野原さんに案内していただき、約1時間半ほど見学した。
始めに赤レンガ造りの建屋の前に現存する大正10年送電開始の第1送電鉄塔を紹介して
いただいた。この鉄塔は歴史的稀少価値のある鉄塔で、いずれ会員の中住健二郎さん
が詳しく報告してくださる予定である。赤レンガ造りの発電所は送電棟・管理棟・発
電棟と3棟から成っており、送電棟内には大きな変圧器がいくつも設置されていた。管
理棟の1階には事務所があり、2階は見学者向け説明場所で発電所の説明資料が展示し
てあった。そこで約30分ほど「イビデンの歴史」紹介のDVDを見せていただいた。
イビデンの歴史は、揖斐川電力鰍ェ大正元年設立され、大正4年に西横山発電所を建
設し、4,000kWで発電開始した。大正10年に社名を揖斐川電気鰍ニ変更し、東横山発
電所を追加建設、12,000kWの発電を開始した。昭和57年には創立70周年を記念し、
社名をイビデン鰍ニ変更され現在に至っている。来年は創立100周年となる。発電棟
は4階に仕切られ、最下段の排水口(吸い出管)は見学できないが、その上の水車(渦
巻形ケーシング)4台を見学した。文献資料によれば、大正10年当初は電業社製2台、
スイスのエッシャー・ウイス社製2台とあるが、今回の現地調査では、渦巻形ケーシ
ングの鋳込み文字から電業社原動機製作所製が3台、エッシャー・ウイス製は1台だ
った。なおケーシングは大正10年当時のものと思われるが、ケーシング内部の羽根車
(ランナー)は12年程前の改修工事で全て東芝製にされたとのことである。水車の回転
を発電機に伝える回転軸は長い縦軸で、発電棟の最上段まであり、発電機を廻してい
た。発電機は発熱するので、放熱のため発電棟の天井はすごく高くしてあった。発電
機は4台並んでおり、4台とも当初はアメリカのジェネラル・エレクトリック社製発
電機だったが、これも12年程前、全て東芝製に改修し出力アップされ、現在は4台の
水車・発電機で13,600kWを発電し、自家用電力としてイビデンの各工場へ送電して
いるとのことでした。
2.道の駅に展示の国産初縦軸水車と発電機などの見学
及び縦軸水車の展示改善の要望について
国道303号線の揖斐川町東横山の「道の駅」に6年前の2005年に展示された国産初の
縦軸水車と発電機・調速機などを見学した。展示までのいきさつを簡単に紹介すると、
ここに展示されているものは、旧西横山発電所で1915年から1963年まで48年間発電し
た電業社水車製造所製1,800HPの縦軸単輪単流渦巻形フランシス水車と水圧調整器及び自
動油圧式調速機・(米)G.E.社製回転界磁型発電機である。この西横山発電所は、当初
揖斐川電力鰍ェ建設したものであったが、1942年の配電統制令により中部電力鰍ノ引き
継がれた。その後、中部電力鰍ヘ1963年、揖斐郡藤橋村の西横山に大きな13,600kWの
ダム式発電所を建設した。そのダム建設で、西横山発電所が横山ダムの湖底に沈んでし
まうことになり、中部電力鰍ヘ西横山発電所を廃止・撤去された。翌年の1964年、西
横山発電所で使われた水力発電装置1組を岐阜県立西工業高校へ教材用として寄贈され、
30年ほど西工業高校に保管されていた。当時、西工業高校に勤務の竹中美喜夫会員がこ
の水車は国産初の縦軸水車で、歴史的価値がある水車であることを見つけられた。ところ
が、肝心な水車の主軸や軸受は保管されていなかったのが残念だった。でも、揖斐郡藤
橋村の西横山発電所で使われた水力発電装置なので、村のシンボルとして藤橋村に保
存展示されることになった。国産初の貴重な縦軸水車であるので、産業考古学会と岐阜産
業遺産調査研究会が連名で1998年、当時の藤橋村村長に保存展示を要望した経緯がある。
現在「道の駅」に展示されている国産初の縦軸水車などの所有・管理は、市町村合併で
藤橋村から揖斐川町に変わったので、今回は所有・管理されている揖斐川町役場の揖斐
川町教育委員会文化課を訪ね、2005年に展示された水車のランナーが裏向きなので、水
車のランナーを正常にひっくり返し、水車に「縦軸を付け加える」展示と説明用看板の訂
正などについて文化課の川口さんにお願いした。どうして「縦軸を付ける」展示をお願い
する必要があるのか、その理由は、国産初の縦軸水車であることが歴史的にも技術的にも
稀少価値があり、縦軸が無くては「縦軸水車」と理解しにくい。見学者に縦軸水車である
ことを理解してもらうには「縦軸を付ける」ことが必要と思ったからである。
文化課の川口さんにお願いしたところ、水車のランナーは直ぐ裏返された。それなら直
径約170mmの塩化ビニールパイプを探して用意していたので、簡単にそれをはめ込めば
いいと思っていた。しかし、ランナーの軸穴が空いていると思っていたが予想外で、軸は
抜き取らずランナーの端面で溶断され、軸穴がふさがっていたので、簡単に軸穴に縦軸を
はめ込むことは困難であることが分かった。軸の据え付けについては、再度現地調査をし
て、縦軸の付け方を検討し欲しいとのことでしたので、再度現地調査の結果、溶断した突
起部分をディスクグラインダーで削り、直径(約165mm)の鉄パイプをのせ、アーク溶接で
固定してはどうかということになりました。但し、長い鉄パイプは屋根に仕えるので、50cm
程の長さの鉄パイプを探したところ、鉄パイプが岐阜市の梅村建工鰍ノあったので寄贈し
ていただいた。いずれランナーに鉄パイプを溶接し、ペンキを塗って縦軸水車であること
が分かる展示にされる予定である。
3.2011年度総会と第87回研究会の月日について
4月23日(土)、岐阜県庁前広場北側の喫茶店「シルクロード」にて、運営委員会を
行い2011年度活動方針などについて相談した。2011年度総会(第16回)は第87回研究会
と兼ねて6月11日(土)に行うことにした。なお会場と報告者・テーマは同封の第87回
研究会案内をご覧下さい。
4.研究会への寄贈資料紹介
◎ 産業考古学会『日本の近代を開いた産業遺産』推薦産業遺産1985〜2010
◎ 中部産業遺産研究会 会報 37号、38号
◎ 近畿産業考古学会ニューズレター 58号、59号
◎ 愛岐トンネル保存再生委員会活動レポート NO.1『今、蘇る"愛岐トンネル群”』
◎ 船頭平閘門管理所『KISSO』Vol.78
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