岐 阜 産 業 遺 産 調 査 研 究 会 会 報
No.73 2010年2月10日発行
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第79回研究会の報告
第79回研究会は12月19日(土)岐阜県図書館で行った。最初に、大田博行さんから「廃線となった旧名鉄岐阜地区路線の運行を
支えた産業遺産」と題して報告を、次に高橋伊佐夫さんから「未展示産業遺産の展示進展状況について」報告、第3に田口憲一さん
より「小野川発電所跡と2つの最上川橋梁を尋ねて」の現地調査報告、その他広瀬泰正さんより「農業用水路を利用する小型水力発
電機の製作」の文献紹介、大橋公雄さんより「歩いてさぐる名古屋のモノづくり講座」の紹介があった。今回の参加者は8名でした。
1.「廃線となった旧名鉄 岐阜地区路線の運行を支えた産業遺産の紹介」 報告者 大田 博行 会員
見出しのテーマでA4−36枚もの資料を基に報告して頂いたが、会報への概要も 10頁に及ぶものですから、この紹介は別冊(同封)
でお届けする事にした。
2.「未展示産業遺産の展示・進展状況について」
報告者 高橋 伊佐夫
前回の例会で5件の産業遺産展示要望について提案したが、そのうち羽島市の「吉里排水機」と瑞穂市の「五六閘門」進展があっ
たので、この2件について報告する。
吉里排水機については、10月22日、会員の小西さんと友人関係の羽島市文化財審議会会長の虫賀勇一さんにお会いし、排水の役割
を終え21年になる吉里排水機が三川分流碑のそばに分解保管されている状況を確認し、これまでの保存要望経緯と保存価値を資料を
もとに話した。その結果、虫賀勇一さんより「保管排水機は羽島市が管理しているので、貴研究会として直接現羽島市長に展示の要
望を書面でお願いしてはどうか。」とのご返事を頂いたので今日の例会で要望書面を検討した。書面の原案は小西会員につくってい
ただいた。検討の結果、要望書面を訂正し日にちを決め、参加できる人で羽島市長にお願いに行くことになった。
五六閘門については、日本工営潟Rンサルタント国内事業本部(東京)が岐阜県河川砂防課より現況調査を受託され11月23日〜28日
までの6日間、人造石の強度・周辺の地盤など現地調査された。25日と27日には五六閘門関連資料提供の依頼を受けたたので提供し、
現地で五六閘門の歴史や保存価値などを約20名の調査作業員に簡単に説明した。岐阜県河川砂防課の職員なども参加され、このよう
な大がかりな調査をされたことは五六閘門保存の方向だろうと考えられる。話し合いでは、五六閘門についても再度河川砂防課や治
水課へ保存の要望を再確認に行くとよいとの意見が出され、進めることになった。
3.小野川発電所跡と2つの最上川橋梁を尋ねて 報告者 田口 憲一
小野川発電所跡地と2つの最上川橋梁を見学する目的で、この夏、山形県に行った。先ず小野川発電所跡地へは現地の小母さんと
老夫婦の案内でたどりついた。発電所跡と発電所用水路が見つかり水圧鉄管も残っていた。老夫婦は発電所跡をきちんと整備して残
したい思いもあったが頓挫した?。次に現JR左沢線最上川橋梁と山形鉄道フラワー長井線(旧国鉄荒砥線)の最上川橋梁を見学した。
この2つの最上川橋梁は一部東海道本線の木曽川に架けられた初代木曽川橋梁を大正10年頃分割・改造したものが使われていた。東
海道本線の揖斐川に架けられた初代揖斐川橋梁と同じ形のトラスだが、長さが200フィートでなく150フィートに改造されていた。
4.農業用水路を利用する小形水力発電機の製作 紹介者 広瀬 泰正
漆谷正義氏が『トランジスタ技術』2009年11月号に掲載の電気で農業と農村生活を快適に!第4回連載の「農業用水路を利用する
小型水力発電機の製作」記事を紹介した。
5.歩いてさぐる名古屋のモノづくり講座の紹介 紹介者 大橋 公雄
名東生涯学習センター主催「堀川沿いを歩こう〜松重閘門から景雲橋〜」の見学講座実施状況について見学会資料をもとに紹介した。
6.寄贈資料紹介
国土交通省中部地方整備局木曽川下流河川事務所調査課編集・発行の『KISSO』を昨年10月発行のVol.72から当研究会に寄贈して頂
くことになった。それ以前、木曽川文庫より寄贈いただいた1994年10月発行のVol.12からVol.71までの資料も保管しているので、見た
い方は事務局までお知らせください。
7.東京産業考古学会より
平井東幸さんより東京産業考古学会の新しいホームページに岐阜産業遺産調査研究会のホームページをリンクさせてほしいとの依
頼があり了承した。
8.その他
会報に掲載しピーアールして欲しい情報や報告などありましたら、事務局までお知らせください。研究会へのご意見や投稿も自由
に送信いただいて結構です。
事務局のメールアドレスはinoo@gifu-u.ac.jp です。
吉里排水機の保存・展示を羽島市長に要望
稲生 勝
2月4日、岐阜産遺研の会員4名で小西さんの知り合いの虫賀勇一さんにも立ち会って頂き、白木義春羽島市長へ吉里排水機の保存・
展示を要望しました。市長自ら要望を受けていただき、また、回答も保存・展示に向けて前向きでした。その後、岐阜農林事務所の職
員から事務局にメールが届き、羽島市長から吉里排水機の保存・展示について話があったことが伝えられ、早速、動き始めてもらって
いるようです。今後、県とも交渉していきたいと思っています。
なお、羽島市長にお願いした要望書は下記の文です。
2010年2月4日
羽島市長
白 木 義 春 様
岐阜産業遺産調査研究会
事務局長 稲生 勝(岐阜大学教授)
吉里排水機展示のお願い
羽島市民のため、日々のご奮闘に心より敬意を表します。わたしたち、岐阜産業遺
産調査研究会は、岐阜県内の産業の近代化の重要な役割を果たしてきた産業遺産につ
いて、調査・研究をしています。また、わたしたちは、重要な産業遺産についての保
存・展示を望んでおり、そのための活動も行っております。
このたび、お願い申しあげたいのは、羽島市南端の桑原川流末、三川分流碑の近く
に保管されている吉里排水機を現地に展示していただきたいということです。
羽島市南端は、木曽三川分流碑があり、我が国の治水史上の重要地点であります。
その羽島市南端にあった吉里排水機場は桑原輪中における最初の排水機場であり、長
年、桑原輪中の堪水防除の役割を担い、住民の生命、生活を支えてきた排水機場です。
吉里排水機場の跡には新しい排水機場が建設されていますが、桑原輪中最初の排水機
とセットにすれば、桑原輪中治水史をはじめとする地域の歴史やこの地域の自然環境
についての学習教材や観光客の見学にも活用できる貴重な文化財であると思います。
吉里排水機場の有った場所で、60年余排水の役割を果たしてきた排水機を組み立て
屋根などを付け、現地保存・展示がなされることを切に望みます。財政上の問題をは
じめ、難しい問題もあろうかとは思いますが、ぜひともご理解を賜りたく存じます。
今後の羽島市の発展をお祈りいたします。
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