岐 阜 産 業 遺 産 調 査 研 究 会 会 報
No.71 2009年7月15日発行
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第76回研究会の報告
第76回研究会は6月13日(土)岐阜県図書館で行いました。最初に「岐阜の電源開発と石造物について」大同工業大学の茂吉雅典
さんより報告してもらいました。次に「2009年度(第14回)総会」を行いました。最後に「産業遺産として価値ある木曽川水系の
4発電所について補足・電力系統の考察」と題して広瀬泰正さんより報告がありました。以下にその概要を報告します。
今回はHPを見て初めて参加された方があり、参加者は8名でした。
1.「岐阜の電源開発と石造物について」茂吉雅典さんの報告概要
報告は、中部産遺研2009.5発行の「産業遺産研究」第16号に掲載の『庄内川水系の発電所の石造建造物に関する調査報告』(21頁)
を資料として配布され、プロジェクターを使って1時間ほど報告していただいた。初めに世界初や日本初の電源開発も紹介されたが、
それは割愛させていただく。1906(明治39)年という日本でも早い時期に開発された多治見電灯の土岐川水系4ヶ所の発電所と石橋に
ついての報告を紹介する。
多治見電灯は1902年加藤喜平によって設立、中部電力鰍ノ統合されるまでに土岐川とその支流小里川に4ヶ所の発電所を建設した。
この4ヶ所の発電所はすべて石づくりであるのが特徴である。最初に建設されのは土岐川中流域の土岐津町の土岐川発電所(多治見電
灯第1発電所)で、出力260kWを発電し多治見と豊岡両町に送電した。なお、この土岐川発電所の取水堰堤は木板でつくられており
他では見られない堰堤であった。2番目は1918(大正7)年土岐川上流の小里川に出力130kWの「多治見電灯第2小滝発電所」を、3番
目は1922(大正11)年その少し下流に出力180kWの「多治見電灯第3発電所」を、4番目は1925(大正14)年第2小滝発電所の上流に出力
200kWの「多治見電灯第與運発電所」を建設した。第與運発電所へ渡る小里川には石造3連アーチの魅力的な橋が架けられている。橋
の全長は約20m、幅2.7m、高さ約4mあり、中央のアーチは半径4.35mと大きく、左右両岸側のアーチはその半分の大きさである。
『與運橋』というこの人道橋は花崗岩の自然石をモルタルで接着する工法で造られているのが特徴で、県内では他に存在しない貴重な
石橋である。2003年山岡町「道の駅」に修復再建し展示された。
小里川に設置の4ヶ所の発電所のうち3ヶ所は1993(平成5)年に廃止となり多治見電灯「第2小滝発電所」の水路には3ヶ所の石造
水路橋があったが撤去された。「第與運発電所」で使われた水車発電機は、與運橋と共に2003年山岡町「道の駅」に移設展示された。
また土岐川発電所も2001(平成13)年に廃止となり、堰堤・発電所建屋など撤去されたが、95年間水力発電し地場産業の発展の役割を果
たした水車発電機のみ土岐市へ譲渡され現在保管されている。またダムに水没しなかった「多治見電灯第3発電所」も残されている。
2.「2009年度(第14回)総会」報告概要
下記の(1)〜(5)について、運営委員より提案し、若干訂正しご了解を得たので、その結果を報告する。
(1)2008年度活動報告
@ 2008年度研究会は、当初の方針通り隔月に6回(うち1回は見学会)実施できた。
A 会報はNo.65〜No.70まで6回発行し、研究会の内容の概略を報告した。
Bその他
・研究会の次回案内や会報はその都度全会員に発送し、会費もほぼ集約できた。会員は今年度3名退会、1名入会され現会員数は
26名である。
・研究会のHPも次回案内や会報ができ次第、HPを更新できた。
・運営委員会は1回実施し、08年度活動と会計、09年度活動と予算等について相談した。
・3年前の06年8月、登録文化財にと大垣市長に要望した東海道本線初代の揖斐川鉄橋が昨年12月、国の重要文化財となったことは
よかった。
・07年〜08年にかけて調査した木曽川水系4水力発電所のまとめ作成中。
・「岐阜の産業遺産ガイドブック掲載物件リスト」づくり再検討中。
・産業遺産を観光ブランド振興課に働きかけことに一定の成果があった。
(2)2008年度会計報告
(3)2009年度活動方針
1.例年通り、ふた月に一度程度の例会を開催することを目指す。
2.見学会を開催することを目指す。見学会は例会とみなす。
3.木曽川水系の産業遺産の調査を踏まえて、木曽川水系の水力発電史をまとめていく。
4.「岐阜県の産業遺産ガイドブック(案)」は、掲載物件リスト(案)を改善するとともに、ガイドブックの完成を目指す。
5.観光を観点に入れ、産業遺産が観光にも活用されるようにはかる。そのため、岐阜県の観光関連部署などに働きかけることも考える。
6.産業遺産の保存を関係各所に訴える。
7.会員の増大に努める。
8.関連する研究団体との交流を図る。
9.会報の充実を目指す。
10.その他
(4)2009年度予算
09年度会費は2,000円です。払込取扱票を同封しますので、郵便局にて払いこんでください。
(但し09年度会費を既に納入されている方は同封してありません。)
(5)2009年度役員・運営委員
会長:松田 之利 副会長:高橋 伊佐夫 事務局長:稲生 勝
運営委員:稲生勝・黒田隆志・小西利雄・鷲見有知郎・高橋伊佐夫・田口憲一・広瀬泰正・松田之利・横山悦生の9名
(前年度と同じメンバーで認められたが、会員数の割には運営委員が多過ぎるとの意見はあった。)
3.「産業遺産として価値ある木曽川水系の4発電所について補足・電力系統の考察」報告概要 広瀬 泰正
(1)周波数問題
明治時代に当時の東京電灯(現東京電力)はドイツから50Hz用の発電機を、大阪電灯(現関西電力)はアメリカから60Hz用の
発電機を採用した。それ以来、富士川以東の関東、東北及び北海道は50Hz、富士川以西の中部、関西、中国、四国及び九州は
60Hzで運用している。
大正時代の周波数問題については東京付近が50Hz、名古屋、京都、大阪付近が60Hz、九州は50、60相混交、電気鉄道、
八幡製鉄所が25Hz、九州三井炭坑が40Hzであ った。昭和初期の頃の周波数変換への対応は、水車は両サイクル別々にランナ
ーを備える。発電機は千鳥星形に巻線の接続変更可能にした。現在の電気的対応に比べると手動的対応とも言える。
≪討論≫ヨーロッパ系とアメリカ系の技術の違いについては今後研究を。
(2)送電の条件と交流送電、直流送電など
○送電の条件
三相3線式送電線路において、電力損失が生じ、主なものとして抵抗損とコロナ損がある。
送電電圧は電線費用と絶縁費用の交点から決定される。送電電圧を高くすると抵抗損が少なくなるため、電線費用は少なくて
すむが、コロナ損により絶縁費用は多くなる。
○直流送電について
蹴上発電所などに見られるように、当初は直流発電であったが、送電電力、送電距離などの支障により発展しなかった。現在
では1954年にスウェーデンで100kV、20MWの直流送電がなされて以来、関心が高まっている。交流を直流に変換させる
(コンバータ)と直流を交流に変換させる(インバータ)という交直変換装置の開発により直流送電が実用的に可能となった。
(3)木曽川4発電所の現状
@旧八百津発電所・放水口発電所
1949(昭24)年12月予備機(4号機)を足羽(あすわ)発電所(北陸電力)へ譲渡、稼働中。
1964(昭39)年中央に2台あった励磁機撤去。新励磁は交流を整流器により直流に?。
1998(平10)年5月発電所施設及び敷地すべてが国重要文化財に指定。
A賎母発電所
○発電所の歴史を物語る施設や遺構・・・「発電所紀功碑」「貯水槽篇額」「佐治儀助
翁台座」「対鶴橋」「ボービング社製水車展示」
B讀書発電所
○発電所の歴史を物語る施設や遺構・・・@日本一の規模を誇った讀書発電所、建物、
水圧鉄管等、紀功碑 A復元された桃介橋 B柿其水路橋C福沢も燃す毛記念館
C大井発電所
改良工事により、認可出力も建設当時の48,000KWから52,000KWへアップした。
○発電所の歴史を物語る施設や遺構・・・現地紀功碑(紀工碑、工事記念碑)、福沢諭
吉翁のレリーフ、大井ダムと大井発電所、新大井発電所、ダム湖と恵那峡
(4)八百津発電所の事故について
『加藤博雄論文』、『名古屋電燈株式会社史』、『近藤 茂氏論文』、『小山 朝佐発言』等に明治44年11月14日、事故の状況
やその原因が述べられているが、ほぼ共通している点は、「事故原因はウオーターハンマ(水撃作用)であった。」ということである。
その事故の起きた経過など詳しい状況については、それぞれ専門の立場から、種々多様な意見が出ている。
(5)横軸形と立軸形の特徴
(内容省略)
4.寄贈ビデオ紹介
(1)会員の滝本正二さんよりビデオを寄贈して頂いた。今年NHK-BS1で4月〜5月に放映された「にっぽん木造駅舎の旅」九州15駅、
四国5駅を5分づつ100分で紹介するビデオです。明治・大正・昭和にかけて築造された駅舎の他、蒸気機関車・給水塔・転車台・
スイッチバックなど残されている鉄道遺産を見ることができ、駅舎の変化など鉄道の歴史が学べるビデオです。九州と四国への鉄道
の旅をした気持ちになります。何れ当研究会で観賞してもよいですが、個人的に是非見たいという方は事務局にご連絡下さい。
(2)大同工業大学の茂吉雅典さんよりビデオを寄贈して頂いた。木曽川文化研究会制作“木板のダム”『土岐川発電所のあゆみ』
を記録した15分のビデオで、土岐川のダムは珍しい木板堰堤、その設置と取り壊し状況が分かるビデオです。何れ当研究会で観賞し
てもよいですが、個人的に是非見たいという方は事務局にご連絡下さい。
5.産業遺産の新聞記事紹介
朝日新聞朝刊毎週金曜日「東海経済」欄に愛知・岐阜・三重東海3県の産業遺産が「産業遺産をめぐる旅」として紹介されている
事を先の会報No.70で報告した。7月末〜8月末は高校野球のため休刊だが、9月から再び紹介される予定です。
6.その他
会報に掲載してPRして欲しい情報や報告などございましたら、事務局までお知 らせください。研究会へのご意見・投稿も自
由に送信いただいて結構です。
事務局のメールアドレスはinoo@gifu-u.ac.jp です。
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