岐 阜 産 業 遺 産 調 査 研 究 会 会 報 
  No.70    2009年5月10日発行

第75回研究会の報告    第75回研究会は4月11日(土)岐阜県図書館で行いました。今回はご案内のテーマとは別に、先ず「美濃手漉き和紙をめぐる 課題と展望−重要無形文化財工芸技術部門の視点から」と題して、岐阜大学大学院終了者長谷部涼子さんより14頁もの資料を もとに発表してもらいました。 次に「名鉄・(旧)伊自良川橋梁と(旧)津保川橋梁が撤去された状況」について小西利雄さんより報告がありました。下記に その概要を報告します。 今回の参加者は5名でした。 1.「美濃手漉き和紙をめぐる課題と展望−重要無形文化財工芸技術部門の視点から」について長谷部涼子さんの報告概要  文化財指定という外部の評価が、美濃手漉き和紙の産地の内部にどのような影響を与え、その後の産地の状況とどう関わっ ていったのかの問題意識を視点に、まず初めに美濃の手漉き和紙の歴史(近世まで)、次に手漉き和紙の原料および作り方、そ して日本の文化財行政・文化財保護法・無形文化財について・無形文化財の指定制度・保持者への視線・日本における「工芸」 という領域・柳宗悦の「民芸」・無形文化財と「工芸」と「民芸」・美濃の手漉き和紙の歴史(明治以降)・手漉き和紙の文化 財指定・文化財指定の影響・後継者たち、について調査研究された結果を約1時間半報告された。 その膨大な内容は割愛させていただくが、最後にまとめとして「本来生業として行われてきた美濃和紙づくりを文化財として 評価する事は困難が伴う。美濃市が和紙の産地として継承されていくには、文化財という枠を超え手漉き和紙の歴史や伝統その ものを有形・無形を問わず、どう受け継いでいくかということを今一度考えてみることが大切だ」とのお話しでした。 2.「名鉄・(旧)自良川橋梁(旧)津保川橋梁が撤去された」について 小西利雄さんの報告概要  岐阜市尻毛〜旦島間の伊自良川に1914年架設された名鉄揖斐線の伊自良川橋梁が2008年解体撤去された。全長約181mのトレ ッスル式橋梁である。現存するトレッスル橋脚の鉄道橋は2005年発行の「日本の近代土木遺産」によれば10件とあるが、その内 の1件が無くなり残念である。  また、岐阜市上芥見〜関市下白金間の津保川に1911年架設された名鉄美濃町線の全長約94mの津保川橋梁が2008年に解体撤去 された。こちらは鉄管柱橋脚であるが、百年近い歴史的な鉄道橋であるだけに無くなり残念だと、県外の鉄道橋梁めぐりされ現 存している鉄管柱橋脚橋梁の資料を添えてのご報告でした。 3.寄贈資料の紹介 (1)新潟産業考古学会より会報「新潟産業考古学会」第39号と第40号、および冊子「産業と文化」第5集を寄贈していただき ましたので、遅く成りましたが紹介します。新潟産業考古学会は日本産業考古学会と同年の1977年に発足。発足30年を記念し会 報第40号(2009年3月発行)に創刊号〜第39号までの内容をリスト化掲載され、また冊子「産業と文化」第5集を2008年10月に発行 された。 (2)近畿産業考古学会より「ニュースレター」第31号〜第41号を寄贈していただきましたので、遅く成りましたが紹介します。 産業遺産をカラー写真で紹介したきれいな「ニュースレター」です。 「ニュースレター」の他に冊子「近畿の産業遺産」も発行されており、近々第4号を発行されるとの事です。 4.『産業遺産を歩こう』の書籍紹介  日本産業考古学会創立翌年の1978年8月に黒岩俊郎・玉置正美共著「産業考古学入門」が東洋経済新報社によって発刊された。 それから31年経った本年2009年4月、30周年を記念し平井東幸・種田明・堤一郎3氏の共著「初心者のための産業考古学入門−産 業遺産を歩こう」が同東洋経済新報社より発刊された。その内、岐阜県の産業遺産については10頁分紹介してあります。チラシを 同封しますので、購読ご希望の方は書店でもいいですが、高橋伊佐夫会員(TEL058-231-2995)へご連絡されれば、1,600円でお届け できます。 5.産業遺産の新聞連載記事紹介  中部産業遺産研究会の石田正治さんが昨年4月から1年間、朝日新聞朝刊毎週月曜日の愛知県内版に「ふるさと産業遺産」とし て愛知の産業遺産を紹介してきましたが、今年の4月からは同朝日新聞愛知県内版が毎週金曜日の東海地区版にかわり、愛知・岐 阜・三重東海3県の産業遺産を「産業遺産をめぐる旅」として、石田正治他4名で執筆・紹介されている。最初の4月3日には岐 阜の「旧八百津発電所」が紹介された。 以後、毎週金曜日の「東海経済」欄に1年間連載されるのでご紹介します。
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