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Kalmia

窓越しに外を眺めると、いつも輝いて見えた街が無機質なものに感じた。
窓辺に飾ってあるカルミアは・・、
花びらが落ちて・・殺風景な・・奇妙な姿になっていた。

「あ、ごめんなさい。花瓶のお花、替えるの忘れてたわ」
「いや、いいんだ・・。このままで・・」


どこか・・僕は・・この花に親近感を覚えたのかもしれない。
昨日から、遠くで、近くで・・鳥の声だろうか?鳴き声が聞こえる。
その鳴き声は、確実に近づいていた。

「あまり食べられないけど、秘密で!キムチ鍋を作ったの。食べる?」
「ありがとう・・」


彼女は、キムチの椀を持ち、ベットに腰掛け、食べさせてくれた。

「美味しい・・。ありがとう、もういい・・」

ひと口・・・、喉を通すのが精一杯だった。
彼女は笑って僕を見た。大きな瞳の奥に深い哀しみを抱えて・・。

「大丈夫だよ。僕はいつでも君のそばにいるから。」
彼女の手首のオニキスのブレスレットを、両手で包んだ。

「そんな・・本当にいなくなるみたいじゃない。そんな事、言わないでよ・・」

さっきまで笑っていた彼女の顔が曇る。・・僕は静かに言った。

「君も覚悟してると思う。・・多分、もうすぐ、その通りになると思う。
でもね。僕の身体はなくなっても、心は・・いつも君といっしょだから。
君が楽しい時は、僕も君の心の片隅で楽しんいるし・・。
君が迷い悩む時は、いっしょに悩み・・でも、解決の糸口を君に差し出すから・・。
悩んだ時は、この窓から空を見上げて、僕に問いかければいい。

これから先、君に・・新しい出会いがあるかもしれない。
その時は、悩まないで、僕の事を忘れるとか、忘れないとかに、こだわらないで、
風の声に従えばいい。前に進めばいい。
もしかしたら、僕は・・君の子として、生まれ変わって、君の胸に抱かれるかもしれない。
その時はね。多分、何かのサインを残してると思うよ。

ごめん。ちょっと、しゃべり過ぎた。疲れたよ・・」


僕が眼を閉じると・・、頬に一雫の雨が落ちた。

僕は、長い長い夢の中を行き来した。
そこには、死んだおばあちゃんが居たり、若い母が怒っていたり、廊下に立たされていたり、
その夢は、一瞬だったのか、何時間もの夢だったのか、時間の感覚は消えつつあった。

僕が眼を開けると、優しいまなざしの君が僕を見ていた。

「喉が・・乾いた。お水くれる?」
「わかったわ。急いで持ってくるね!」


僕は、大きく息を吸って・・大きく息をはいて・・。

鳥の声に導かれ、空を飛んでいた。雪原が果てしなく続く中を・・。


飛び散るガラスの奏でる音色に
眠りを邪魔された冷たい月が泣き叫ぶ

最期の祈りは一雫の雨
夜明けのさよならは今の僕には哀しすぎて


END