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時のゆりかご

第1回 「目印」


僕は、この公園のベンチにどれくらいの間,座っていたのだろう。。
ほんの一瞬のような気もするし、何日も座っていたような感じもする・・・・。

と・・、
ランドセルをしょった女の子が、つまらなそうな顔をして、僕の横に座った。

「・・・学校、行かないの?」

「・・・・」

「・・・学校で何か嫌なことあった?」

「・・・嫌なこと、言われるから行きたくないっ」

「そうなんだ。。で、
何?

すると、女の子は目に涙をいっぱい浮かべ、
自分のまぶたの下の
頬のホクロを指差した。

「これ」

「何?」

「この、ほくろ。バカにされるから行きたくないの。。」

「どうして、バカにされるの?」

女の子は下を向いて、ポツリと言った。
「・・・・鼻くそ・・とかって。」

「あはは!!
ごめん。ごめん、笑っちゃって。。
 でもさ。気にすることじゃ、ないと思うよ?」

「お兄さんみたいな、綺麗な顔の人には、
私の気持ちなんか、分からないよ・・」


「・・君の方が綺麗だと思うけど?
・・そんなに、ホクロが嫌だったら、取っちゃえばいいんじゃない?」

「そんな・・怖いよ。それに、ホクロをいじればガンになるって、ママが・・」

「う〜ん。ガンにはならないと思うけど?
っていうか・・
その、ホクロ、チャーミングだよ?」

「うそ・・」

「本当さ。それに・・・
そういう、ホクロがあると、僕は嬉しいよ。その、ホクロで君だって分かる。
君の”目印”でしょう?」

「め・・じ・・る・・し?」

「そう、目印。 
あのさ。。
僕って、何歳に見える?」

「う〜ん。。20歳くらい?」

「はずれ。。465歳なんだよ」

「うそ・・」

「・・・あのさ〜。その”うそ!”って言う口癖、やめようよ。。
”本当?”って言った方が、可愛いよ?
本当に、465歳なんだよ。
君の20年が、僕にとっての1年なんだよ。
君にとっての20日が、僕の1日。
だからね。僕は1週間に一度しか食事しないし、20日に一度しか眠らない」

「お兄さんって・・・怪物?」

「怪物か〜・・・。呪われた人種なんだ」

「どうして、呪われているの?」

「僕にとってこの体・・呪われているとしか思えない。
僕がやっと心を開いて友達になった人たち・・
皆、どんどん僕を置いて死んでいくんだよ?
・・・でもね。長い歳月の中で、
ひとつの法則を見つけたんだ」

「え?何?何?」

「普通の人間は、普通の・・一般的な寿命の中で死んでいくけれど、
”たましい”は、生き続けるんだよ。」

「”たましい”って・・?」

「う〜ん。
かな。。目には見えないけれど・・、
ここにある
気持ち。」

僕は握りこぶしを自分の胸に当てた。

「こころ?・・・・気持ち?」

「そう。
は、ずっと
”っていう”服”を変えながら、生き続けるんだ・・。
でね。僕は大好きな人に出会うと、その人の目印を探すんだよ。
例えば、君には、目の下にホクロがあるでしょう?
それは次に生まれ変わった時、
僕が君を見つけるための目印になるのさ。」

「ふーん。でも、目の下にホクロがある人なんて、他にも沢山、いるでしょう?
私の目印、もう一個あるよ?手首にアザがあるの!ほら・・」


「そうなんだ。(笑)」


僕が笑うと、女の子も大きな声で笑った。

「くっくっく。あ〜、何か不思議。。目の下のホクロも、手首のアザも
大嫌いだったはずなのに。。お兄さんの話を聞いてたら、好きになってきた。
私の目印だもんね。。」

「そうそう。あとね。
これから君が大きくなって、色んな人に出会うと思うけれど、
初めて会ったのに、凄く懐かしく感じる人に出会ったら。。
その人は、生まれ替わる前に、凄く親しかった人かもしれないよ。。
ごめん。僕、難しいことばかり言ってるね。。」

「そんなことないよ。大丈夫、分かるよ!
何かね。すごく分かるよ。
だってね。さっき、初めてお兄さん見たとき、懐かしかったの。。
お兄さん、もしかしたら、私のこと、覚えてる?」



僕は、彼女の声を遠くで聞きながら、
時の流れの”ゆりかご”に揺られていた。
果てしない流れの中で、
次に逢うとき。。。
この少女は、あの頃の君になっているのだろうか・・・。

END