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 月夜の番人  

−2−

2次会は、いきつけの洒落たバーだった。
もちろん、彼女達を引き連れて行った。

僕はすっかり彼女に夢中になっていたけれど、あくまでも平静を装った。
僕は僕のスタイルを貫かなければいけない。

何気なく彼女の横に、いいタイミングで座わる事に成功した!
僕が言葉を選んでいると、彼女の方から声をかけてきた。

彼女 「お名前は?」

Gackt 
「・・・死神・・かな?月夜の番人の死神」

彼女は、また、ククク・・と笑った。・・僕はクールを装った。

「じゃ、私は月に住んでる魔女・・。よろしくね!」

「・・・よろしく!」

僕は手を差し伸べて彼女と握手を交わした。
彼女の手は、真っ白で、指は折れるように細かった。

「きれいな手だね!」

彼女は、ポッと赤くなって、真顔で答えた。

「手のモデルしてたの」

「本当?」

「あ、ごめんなさい。冗談です・・」

そう静かに呟くと、またククク・・と笑った


シークレット・ガーデンガーデンの「祈り」がBGMで流れている。。

「わ〜、私、この曲、好きなの・・。
何か・・今日は素敵な夜だわ。死神さんにも会えたし・・。
私・・小さい頃から、死神とか悪魔とか・・怖いけど、何か惹かれちゃうの」


「そうなの?」

「そうなの。・・・エクソシストってあったじゃない?
凄く怖いんだけどね。・・
(笑)リンダ・ブレアの代わりに、
悪魔にとりつかれてみたい!って思った事あったもの」

僕は心臓がバクバクしてきた。おまけに肝臓まで痛くなってきた。興奮してる。

「じゃ、僕が悪魔になって、君の心を操ってみようか?」

ククク・・・彼女は笑う
「凄いセリフ・・さらさらっと言えるのね。」

「って言うか・・僕、小さい頃から霊感体質なんだよね。
だから、何度か君が憧れる体験した事あるよ」

「本当に?」

「本当に」

「じゃ、『シックス・センス』観た時、どう思いました?」

「ちょっと複雑。でも、何か・・。嬉しかったのかもしれないね。
あの少年の気持ちは手に取るように分かったし。。。
”どうして僕だけ見えるの?”って本当に辛かったんだよ。
この映画の凄いところは、最後にちゃんと教えてるじゃない?
”霊が見える”実力・・才能っていうかな。それが、どうして芽生えたのか。
自分の役割って言うのかな。教えてくれるんだよね。
シックス・センス』は、「霊感体質者への応援歌」だと思うよ。
あと、”そんな人間が本当にいる事を世間的に認めさせる、
いいきっかけになったと思うよ。
でも、少年と僕とには、大きな違いがあるんだ・・。」

「何?」

「あの少年は最後、お母さんと理解し合うでしょ?
僕の場合、最後まで理解してもらえなかったから・・。」

彼女は、うつむきいて・・こっちを見なくなったので、
彼女の顔をのぞくと、目に涙を浮かべてる・・。
・・また肝臓が痛くなってきた。・・僕は静かに問いかけた。

「どうしたの?」

「死神君の小さい頃の事を想像したら・・ちょっと泣けた・・」

「それって、同情?」

「ちがぅ・・・・・!!!!」

彼女の答えを待たずに・・僕はキスをした。
彼女は、びっくりした様子で、目をパチリと開けたが、静かに目を閉じた・・。
僕と彼女は・・静かに溶け合う・・。

冷静を装ってるけど・・、心拍数はかなり上昇している。
カロリー消費も凄そうだ。今晩は、トレーニングいらずだな。
・・・真剣に盛り上がりながらも・・、冷静な僕がいつも遠くから、見てた・・。

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