Win Share による歴代打撃評価

  2012年3月に発表されたセイバーメトリクスレポートの発行の中心人物である岡田友輔氏により、NPBのWin Share が求められ、
  一部メディアで発表されてきたところである。
  今回、このWin Share に基づき、歴代の打者についてRSAAやXR+といった指標と似た試みを行い、歴史的な評価を試みる。
  守備位置補正は各年代に共通する補正値を設定することは難しく、守備能力についても時代の隔たりはクリアできるのかという疑問があるため
  打撃WSに特化して抽出してみる。RCAAなどとは少々異なる方向からの評価である。

 1 歴代累計WS表(2リーグ制施行以後:2011年末現在)
   Win Share とは、チームの勝ち星のうちどれだけが該当打者に起因するものなのかを累計したBill James氏考案の数値。
   RCAAなどとは異なり、平均以下にマイナスがついたりはしないので、
   標準的な選手よりもどの程度多くWSを獲得できたか、どの程度支配的な強打者だったのかの数値を抽出するためWS+の数値も記載した。
   WS+140Gとは、当該の打者が参加するリーグ戦がすべて年間140試合制だったと仮定してスケールを合わせた数値である。
   もしもシーズン100試合制でマークされた数値があれば1.4倍されることになるし、200試合制でマークされれば0.7倍される。
   150試合制の下で135試合に出場した選手は140試合制の下で126試合に出場したと評価される。
   「ベスト5年」「ベスト10年」の数値は、現役生活中の最も成績の良好だった5年間又は10年間の数字の合算で全盛期の能力を表示。
   また、その下に140Gの表示があるものはWS+と同様の考え方ですべてのシーズンを140試合制としてスケールを合わせている。   

名前 Win Share WS+ WS+
140G
WS+/AB ベスト5年 ベスト10年 ベスト5年
140G
ベスト10年
140G
王 貞治 708.0501 1 447.5161 1 471.9213 1 377 1 161.79 1 292.28 1 170.49 1 309.09 1
張本 勲 500.3045 2 259.9131 2 269.8022 2 234 5 101.88 4 184.65 3 106.70 3 190.30 3
長嶋 茂雄 429.2374 4 225.4666 3 237.2873 3 245 4 116.33 2 193.76 2 122.86 2 204.10 2
落合 博満 396.5304 7 206.3273 4 222.0744 5 223 7 97.07 6 170.42 4 104.54 4 183.39 4
門田 博光 415.894 5 206.2449 5 222.1099 4 200 10 93.43 7 157.49 7 100.62 7 169.60 6
山内 一弘 401.288 6 205.1459 6 208.2263 6 231 6 103.43 3 167.47 6 102.88 5 168.21 7
野村 克也 461.9052 3 202.5396 7 207.6917 7 169 98.42 5 167.82 5 102.08 6 172.57 5
榎本 喜八 355.3149 8 157.2824 8 159.149 8 175 81.54 129.48 9 82.22 129.86 10
清原 和博 339.9559 150.1223 9 159.0825 9 159 64.17 110.89 69.10 118.66
山本 浩二 349.4335 9 145.4639 10 156.6534 10 155 81.59 123.48 87.87 132.97 9
金本 知憲 348.2425 10 138.8828 138.4843 138 76.16 117.36 74.93 117.28
松中 信彦 279.1806 139.5429 146.1449 215 9 92.21 8 134.14 8 95.01 9 136.75 8
T ローズ 281.0943 136.9526 137.6926 187 87.78 127.02 10 87.41 127.80
江藤 慎一 306.6218 129.7754 134.6046 161 75.16 118.66 76.84 122.63
小笠原 道大 275.8302 125.424 125.859 167 76.51 117.55 76.18 117.83
福本 豊 332.8678 125.5012 135.1551 124 57.19 94.41 61.58 101.67
中西 太 225.4782 123.1713 126.9082 265 3 88.87 10 91.80 10
加藤 英司 284.2267 121.999 131.3835 154 73.82 112.44 79.50 121.09
松井 秀喜 235.4513 120.305 123.9755 219 8 87.01 89.11
土井 正博 324.7661 114.597 121.1185 116 63.54 103.00 67.17 109.65
豊田 泰光 272.9434 114.0634 107.0733 158 64.99 105.09 59.53 99.52
イチロー 192.4258 112.3177 118.887 274 2 91.79 9 97.72 8
大杉 勝男 280.541 92.64766 99.36919 107 65.07 93.00 69.72 99.62
谷沢 健一 250.0249 84.44015 90.93554 111 54.82 81.50 59.03 87.77
秋山 幸二 261.5907 83.39776 90.05904 92 54.13 83.51 58.30 89.94
広瀬 叔功 257.8402 77.54771 76.64838 94 56.38 87.22 56.23 87.20
衣笠 祥雄 281.5095 50.85408 54.66535 48 46.46 64.65 49.83 69.43
田淵 幸一 245.4376 99.79867 107.4755 145 68.57 92.93 73.85 100.07
掛布 雅之 242.1538 100.9265 108.6901 153 81.17 116.73 87.41 125.71
小久保 裕紀 250.2844 91.39351 92.27162 114 61.35 86.99 62.83 88.11

  現役プレーヤーの中で金本・松中・小笠原は流石に歴代上位にランクインしている。
  しかし残念なのは松井秀喜・イチローの両名である。
  NPBに残っていれば、ほかの指標と同様に歴代2位の座に2名が並んでいた可能性が高いが、それを見ることはかなわない。
  RCAAやXR+では見られなかったことだが、門田が一部の指標で落合を凌いでいる点
  べスト5年の数字では張本・落合・門田・山内・野村の5人がほぼ完全に横一線に並ぶこと
  強力打線でチームメイトの打力に恵まれていた山本浩二が、この評価方法では数値が伸びないこと
  長島の数値はこの評価方法でも相当に優秀であること
  張本が、レベルの高い活躍を息長く続けていたことが指標にもよく表れていることなど、様々な点で興味深い結果となったように思う。
  もちろん、この評価方法でもすべての面で王が突き抜けた最高の数値をマーク。

 2 シーズンWin Share
   シーズン別の数字で、優秀なものを選び出してみた。様々な名前が出現して面白いので、王の数字は別に外してある。
   1位から20位までの順位を表記したほか、20位に次ぐ3人を次点として「次」と表記した。
   その他、ランクイン組に劣らない優秀なシーズン成績も、順位は空白のままでまとめている。

Yr NAME WS+ 140G
1961 長嶋 茂雄 27.52 1 29.64 1
1986 バース 26.73 2 28.79 2
1985 落合 博満 25.42 3 27.38 3
1995 イチロー 24.50 5 26.38 4
2004 松中 信彦 24.12 8 25.39 5
2002 カブレラ 25.31 4 25.31 6
1957 山内 和弘 23.62 12 25.05 7
1959 長嶋 茂雄 22.90 15 24.66 8
1965 江藤 慎一 24.45 6 24.45 9
1965 スペンサー 24.15 7 24.15 10
1966 榎本 喜八 23.23 13 24.15 11
1950 小鶴 誠 23.84 10 24.14 12
1960 長嶋 茂雄 21.99 20 23.68 13
1963 長嶋 茂雄 23.64 11 23.64 14
1996 イチロー 21.72 23.39 15
2001 T ローズ 23.13 14 23.13 16
1981 門田 博光 21.38 23.03 17
1993 オマリー 21.57 22.99 18
1965 野村 克也 22.90 16 22.90 19
2002 中村 紀洋 22.66 18 22.66
1956 与那嶺 要 20.82 22.42
1975 田淵 幸一 20.76 22.35
1967 土井 正博 21.55 22.35
1969 ロバーツ 20.64 22.23
1962 野村 克也 21.02 22.18
1977 門田 博光 20.54 22.12
2001 松井 秀喜 22.12 19 22.12
1950 藤村 富美男 21.75 22.02
2006 福留 孝介 22.90 17 21.96
1958 長嶋 茂雄 20.20 21.76
1956 山内 和弘 23.92 9 21.75
1980 山本 浩二 20.16 21.71
1966 長嶋 茂雄 20.28 21.24
1966 野村 克也 20.11 20.91
1955 中西 太 21.08 20.74
1982 掛布 雅之 19.25 20.73
1954 山内 和弘 20.50 20.50
1985 バース 19.03 20.49
2001 ペタジーニ 20.39 20.39
2002 松井 秀喜 20.02 20.02
1964 広瀬 叔功 20.81 19.42
1950 別当 薫 19.50 22.75 20

  以下は王一人の数字。一緒にすれば上位は王一色となってしまうため別表にまとめた。
  表示してある順位は上の表に加わった場合に得られる順位である。
  やはり上位は独占しているほか、WS+でシーズン30を超えた経験を有するのも王一人である。
  本塁打55本をマークした1964年の評価が意外に低いなど、面白い数字が散見される。
  このシーズンの数値はRCAA等でもさして高いものではなく
  これらの数字を見て、いいかげんに誰かがこの55本の記録を超えていい頃なんじゃあないかという感想を持つのは私一人だろうか。

Yr NAME WS+ 140G
1973 王 貞治 33.85 2 36.46 1
1965 王 貞治 36.22 1 36.22 2
1966 王 貞治 32.52 3 34.06 3
1974 王 貞治 30.54 4 32.89 4
1970 王 貞治 28.66 5 30.86 5
1969 王 貞治 28.35 6 30.54 6
1968 王 貞治 26.89 8 28.17 9
1967 王 貞治 26.47 10 27.38 10
1972 王 貞治 24.42 17 26.29 13
1971 王 貞治 24.36 18 26.23 14
1964 王 貞治 25.44 11 25.44 15
1963 王 貞治 24.60 14 24.60 20


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