本塁打のページ(二項分布ほかを使って)  

さて、歴史的スタッツにとって最も難しい本塁打です。なぜなら本塁打はリーグ平均との比率や得点の形に直した貢献度といった整理のしかたができないからです。
 野球という競技の構造から、攻撃方法は相手にアウトを与えない(塁に出る)ことと塁を多く進むことによって成り立ちます(得点を挙げることができます)。
 打率や出塁率であれば、相手にアウトを与えないことに成功した数と失敗した数を比較することとして捉えられます。その結果、すべての打席(打数)を評価することになります。長打率であれば塁をどれだけ多く進んだかの塁打数と失敗した打席の比較となり、これも全打数に対する評価となります。総合指標も同様に全打席が評価対象です。 ところが本塁打数は違います。総合指標などから見ると極端に偏った評価であり、数多い攻撃方法のうち、ただ1つのみに成功した回数をカウントするだけです。いわば一過性のイベント数を数え上げているだけで、30本塁打の打者といってもそれだけでは年間チーム得点の増減にどう関係しているのか不明です。最多安打・最多塁打が打撃タイトルの対象ではないのですから、本来であれば表彰されるべきは最高本塁打率のはずです。しかし、そうはなっていないというあたり、一過性のイベント数である点が昔から意識されていたもののようです。また、本塁打は他の攻撃手段とは違い物理的にはっきりとした相違があります。塀の向こう側に落ちるか、こちら側に落ちるかといった違いなのですが、達成するには諸条件の一つとして一定量以上の運動エネルギーを打球に与えなくてはならないという必要条件をクリアしなくてはなりません。結果が連続的ではない点がRelativity の適用を妨げています。
 また、戦前など、どのように打球をうまく転がすかといった点に打撃を特化させた選手が多数派でした(実際にもその方が得点期待値を上げられる)。その名残か、本塁打は1970年頃までは邪道くさい扱いを受けていました。それまで多く存在した年間本塁打0本のレギュラー選手はただ分母の数を大きくするだけの存在だったと言えるのでしょうか。本塁打数が長打力を現す指標とするならば、彼にもなんらかの数字が与えられなくてはなりません。また、年間本塁打1本の選手は、ホームでしか本塁打が打てないか、ホームでは全く打てない状況のどちらかであったことが言えます。このような選手が多くいた状況では傑出度での比較は無理です。チーム数が現代と同じになってから、それも1人の打者が活躍できる範囲の年代の幅程度であれば傑出度で整理することもできるでしょう。しかし、50年も離れると野球のやり方自体が変わってしまっています。Total Baseball にもRelative HRなどという表記はありません。
 そこで数学得意のSabermetrician はどう考えているのでしょうか。

 やはり彼らも本塁打を貢献度の形にはしておらず、分析方法として難易度の指標を適用しており、難易度(事象としての珍しさ)を現す指標を二項分布によっています。式はエクセルにも装備されているBINOMDIST公式で、(注1)たとえば袋に100個の白玉と10個の赤玉をいれ、10回取り出して3個が赤玉である確率を求めるような時に使われます。春先に日本のマスコミの求めに応じてビル・ジェイムズが松井の本塁打数を予想したときにも使用されていたはずです。まずこれによりシーズン本塁打難易度上位を算出してみましょう。(シーズン本塁打難易度一覧)この表は各シーズンにおける本塁打率の難易度を2004年のパシフィックリーグにおける500打数消化の打者に置き換えたものです。たとえば2002年のカブレラがそのままパリーグに在籍していたとして、2004年のシーズンと同等の本塁打の出方のシーズンを過ごした場合、500打数で61本の本塁打を放つことが予想されるということになります。また、別の見方をすると、2002年のパリーグにおいて447打数で55本の本塁打を打つことと2004年のパリーグにおいて500打数で61本の本塁打を打つことは同程度の珍しさ(記録としての難易度)であるという言い方もできます。
 ただし、他に有力な算式がない、というのは事実ですが、これらはあくまでも格付け的な意味合いの数字であり、通算成績を算出する場合やパークファクターを考慮する場合の数字としてはやや疑問があります。そこで、本塁打数を「本塁打による得点貢献」と捉えなおし、Runs Per Win 式を適用させて通算本塁打を試算しております。イニングを打数に、得点を本塁打に代入した数字から一度Winの数字を導き、これをリーグ本塁打率3%のシーズンの本塁打数に再変換して通算本塁打を算出してみました。(通算本塁打試算)
 またPFとHR傑出度を組み合わせて実質的なシーズン本塁打数も算出してあります。(状況を排除したパワーヒッター)


(注1)
 この公式は面白い構造になっています。たとえば、上記難易度一覧表を作った場合、
@500打数で50本塁打を打つ可能性
A501打数で51本塁打を打つ可能性(つまり@に本塁打を1本追加した場合)

@についてBINOMDIST式で算定した数字にAの場合の本塁打率傑出度の逆数(リーグ本塁打率/自分の本塁打率)を乗じるとAの場合のBINOMDIST式による数字となります。重力加速度の公式とよく似た構造になっておりますので、この二項分布による難易度を落下距離におきかえ、傑出度との関連を見ていくと真逆の構造があったりして面白いですよ。

HOMEへ戻る

シーズン本塁打・二項分布

本塁打・RPW式

状況を排除したロングヒッター