1978年 地味な最強打線

 私なりに最強打線を考えるとき、まず最初にチーム総得点が条件となる。他のチームよりどれだけ多くの得点を挙げられたかは最も重要と考えている。結局のところ、得点を挙げられない攻撃は有効な攻撃とは言えない。
 この意味からすると、このチームは非常に強力な史上最強候補の攻撃力を有していたわけであるが、実はこのチーム、非常に地味である。
 ○○打線のような異名はほとんど聞いたことがない。少なくとも余り一般的とは言えない。
 1978年の阪急ブレーブスである。

試合 得点 打率 本塁打 XR RC27 1ゲーム得点 失点 1ゲーム失点 年間評価
結果 乖離 結果 乖離 結果 乖離 結果 乖離 結果 乖離 1試合 総得点
阪急 130 700 0.283 176 55.33 703.8 152.5 5.576 1.295 5.385 1.238 482 3.708 -0.438 5.290 687.7
ロッテ 130 523 0.269 115 -5.67 531.8 -19.4 4.198 -0.083 4.023 -0.123 587 4.515 0.369 4.083 530.8
クラウン 130 497 0.268 109 -11.67 516.9 -34.4 3.974 -0.308 3.823 -0.323 582 4.477 0.331 3.874 503.6
近鉄 130 572 0.266 115 -5.67 570.1 18.9 4.475 0.194 4.400 0.254 449 3.454 -0.692 4.278 556.1
日ハム 130 534 0.264 131 10.33 559.8 8.5 4.322 0.041 4.108 -0.038 566 4.354 0.208 4.142 538.5
南海 130 408 0.239 78 -42.67 425.0 -126.2 3.186 -1.096 3.138 -1.008 568 4.369 0.223 3.167 411.7
平均 539 0.265 120.7 551.2 4.282 4.146 4.146

圧倒的な得点力である。XRも総得点もリーグ平均からの乖離は史上最大レベル。RC27も1ゲーム得点も他5チームの平均に対しては約 1.5のマージンを持っている。
1960年の大毎オリオンズを思い起こしていただきたいが、これだけの大差をつけるのは大変なことだ。で、下が代表的なチームオーダー。

名前 位置 打数 安打 打率 本塁打 打点 HR率 XR 打席/XR XR+ RC27 長打率 出塁率 OPS
福本 中堅 526 171 0.325 8 34 0.015 100.28 0.169 32.17 7.473 0.475 0.399 0.874
蓑田 左翼 423 130 0.307 17 65 0.040 83.31 0.171 27.45 6.845 0.501 0.371 0.872
高井 指名 377 114 0.302 22 77 0.058 67.54 0.159 19.00 6.336 0.517 0.356 0.873
マルカーノ 二塁 488 157 0.322 27 94 0.055 89.21 0.173 30.03 6.973 0.574 0.346 0.920
加藤 一塁 427 109 0.255 24 86 0.056 76.14 0.152 18.91 5.899 0.480 0.344 0.824
島谷 三塁 436 130 0.298 22 76 0.050 73.55 0.150 17.46 6.001 0.491 0.363 0.854
ウイリアムス 右翼 403 119 0.295 18 66 0.045 67.77 0.151 16.49 6.020 0.479 0.351 0.830
中沢 捕手 306 73 0.239 7 40 0.023 33.19 0.094 -7.22 3.334 0.343 0.314 0.657
大橋 遊撃 220 48 0.218 6 23 0.027 23.38 0.092 -5.70 3.211 0.345 0.276 0.622
河村 控え 145 41 0.283 9 32 0.062 24.12 0.155 6.26 5.886 0.538 0.321 0.858

このチーム、非常に理想的な構成となっている。
以前に小ネタで野球というスポーツの構成上、1番から出塁率順に打つのが基本であると書いたことがある。また、ランナーが溜まったところで看板打者が出てくるケースが多い形が得点効率を上げるが、この2つは大抵矛盾するとも書いた。
ところがこのチーム、多くの者が高いレベルを保持しながらそれが矛盾していないのである。
まず出塁率。最も高い福本が1番で2番目の蓑田が2番。最もアウトを与えにくい2人が最も多く打席の回ってくる場所に居る。
さらに福本のRC27が最も高くなっている。すなわち、アウトを奪うためには最も大きな代償を支払わなければならない打者が1番打席の回る1番打者である。福本の打席数が多いことはチーム全体のRC27を大きくしている。(2番の蓑田も高い)イチローのオリックスへと続く1番最強打線の原型と言えるかもしれない。
にも関わらず、長打率・OPS・打席当りXRの最も高い打者は福本とは別に居るのである。誂えたような都合の良い打線である。
出塁率や総合指標から、打順によりもうほんの少しだけ効率改善の余地はあるが、誤差の範囲内。それより看板の加藤を6番か7番にすることは現実には不可能だったろう。シーズン中においてはあくまで打撃成績は途中経過の形でしか見ることはできないのだ。
マルカーノがやや抜けて高いような気もするが、3番から7番まで高レベルで似通った攻撃力を有している様子はまるで金太郎飴打線。他に大熊・長池を使うことができたわけだから、非常にゆとりのあるチーム構成だったはずである。

3番からの5人で稼いだXR+は約 102だが特定の看板打者は見つけづらいような気がする。ちなみに今年の中日は福留・ウッズの2人でXR+が100に迫りそうである。
際立った成績に見える者が居ないせいで昨今の強力打線と比較すると落ちるように感じられるかもしれないが控え捕手の河村が絶好調だったこともあり、チーム全体の得点力から有力な史上最強打線候補と言っていいと思う。
しかしこれだけの攻撃力を誇りながら日本シリーズで敗退してしまったのだから判らないものだ。
このような計算をするにしても(また偏差値など他の数値を用いるにしても)対象は6チームだけのことであり、結果の偏りが個人成績より大きくなることは避けられない。数字だけでどのチームが最強打線なのかを特定するのは難しいが、それにしてもこのチーム、掛け値なしの強力打線。
もしも、好みを加味して良いからお前なりの最強打線を挙げよと言われれば、たぶん私はこのチームを挙げると思う。
RC27最大の者が1番を打つ打線の数的な美しさの魅力は逆らいがたいものがある。

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