2012年8月8日、大阪市保護課と交渉を行った。保護課からは武市課長代理を含む4人が対応された。大生連からは17単組131人が参加した。私の要求アンケート数は190枚を結集。日本共産党山中議員が激励の挨拶をされた。
会場より、盆の墓参り、クーラーの電気代の補助のため、夏季一時金、老齢加算の復活などを求める発言がされた。
《鶴見区新区長暴言について》
【大生連】 鶴見新区長が生活保護費を「受給者による労働の対価と捉える」とホームページで暴言。憲法を「権利の主張に重点をおき、それにかかるコストをどう担保するかという視点についてはバランスを欠いている。」と非難も。現下は憲法と生活保護法を適正に実施する立場で保護行政に携わってこられたが、新区長の発言をどう思うか。見解をお聞きしたい。
【大阪市】 正しいかどうかコメントする立場にはないが、現下は生活保護法に則って仕事をするし、憲法順守は職に就くときに誓ったことだ。そこから外れることは基本的には出来ない。
【大生連】 現下は労働の対価については否定した回答をされているが、ボランティアについては否定されていない。ボランティアを拒否した場合どうなるのか。保護の停廃止になるのか。憲法18条「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない」に抵触するのではないか。この文言についてどう思うか。
【大阪市】 保護費は労働の対価ではない。ボランティアは強制できるものではない。本人が希望するものであれば紹介することもあるかも知れないが、指導指示でできるものではない。
【大生連】 橋下市長に任命された新区長が、区のサービス提供に協力してもらうと言明している。生活保護の分野で、区長権限で貫徹しようとする場合、課長代理は制止できるか。市の担当者として是正してほしい。
【大阪市】 区長はシティマネージャという新しい職階で、局長より上の立場。生活保護については全国一律の法に基づき運用している。法から逸脱したものがあるとすれば、私たちは指導できる立場。生活保護については指導できる権限がある。生活保護の決定は区の権限だ。本庁は実施機関ではないので廃止したり決定したりは出来ない。保護法の法律の中でやることと、窓口の運営をどうするかは分けて考えなければならない。決定の中身や基準が区によって違うということはあってはならない。決定が間違っている場合は本庁には指導権限がある。従前と変わるものではない。
【大生連】 区長は助役なみの権限を持つと言う。実施上の問題は各区で対応していくが、区に誤りがある場合は局は是正できるか。
【大阪市】 厚労省の通知に基づいて監査をしている。そこが変わらない限りは私たちの業務は変わらない。処分を取り消したり、78条以外は府知事に権限がある。そこはこれからも基本的には変わらない。区の個別の対応は区で、市全体の取り扱いにかかわるものは局にご連絡いただければ対応する。
【大生連】 「もらう100円とあげる100円」、負担するのは勤労者と書いている。企業の社会的責任については一切書かれていない。根底にあるのは相互扶助だ。大阪市の勤労者6人で1人の生活保護を賄うとなれば、ひとり当たり2万5千円を負担していることになると。大阪市の保護費総額は2900億円だが、これは国の負担であり、市の負担は150億円と聞いている。大阪市民が生活保護費を負担しているような誤解を与える。これは間違いだ。社会保障の理念は所得の再配分だ。
【大阪市】 生活保護の財政は国が4分の3を負担し、4分の1が市の負担です。全額税であることに変わりはないが、その中で、社会保障や最低生活の保障をしていることに間違いはない。
【大生連】 憲法25条には国の理念、責任が明記されている。国の財政は量出制入の原則(財政がないからと言ってほっておけない)だ。鶴見区構想は間違いであり、社会保障や憲法、生活保護法に基づくものに書きなおすように要望する。
【大阪市】 国が社会保障全体の枠組みをつくるものであり、税を運用するのが自治体であることを理解して業務に当たる必要があるとは思っている。
《資料要求》
2011年度の不正受給件数、金額、保護費全体に占める率 不正受給の理由のデータ
西成医療登録制問題について 重複診療の件数は全体の何%か
《扶養義務について大生連より質問》
【大生連】 扶養義務調査は保護の開始要件か。扶養義務者全員を調査するのか。
【大阪市】 扶養義務は開始要件ではない。扶養義務者が居るから保護がうけられないということはない。扶養するという申し出があった場合は保護に優先して受け取ってもらう必要がある。扶養義務者の対象や範囲などが実施要領で示されている。本来の業務の中でやっていこうと言うのが、今回の大阪市の調査の主旨だ。扶養義務者に調査をするのでなく、被保護者の方に扶養義務者の状況を聞かせていただく。つい最近、保護が開始された方や寝たきりの方などにお聞きしない。普段の家庭訪問時に聞く。その時に、高齢の方などには連絡先、行き来している家族の状況などを聞かして頂く。聞き取り調査の用紙はケースワーカーが保護世帯の方に聞いて書きこむ用紙です。
【大生連】 芸人K氏と母は生活扶助義務関係である。K氏と母と福祉事務所の3者で相談して扶養を決めた。これは正しいのか、正しくないのか。何が不正なのか。
【大阪市】 一般的な話だが、扶養義務者から毎月5万円ある場合、被保護世帯が収入申告でゼロと書けば、それは不正になる。5万円もらっていると申告した場合は不正ではない。扶養義務者に「いくら扶養しなさい」と命じたりできるのは家庭裁判所しかない。行政はいくらか扶養できるかくらいしか聞き取りはできない。現場の立場から言うと、お金の問題ではなく、高齢などで、入退院の際、洗濯物を届けたり、施設入所の際の申し込みの段取りなどをやっていただける親族の方を確保しておくことが大事。関係の悪くなっている親子関係でも調整させていただくのが本来の行政の仕事だと認識している。大阪市は実施要領からはみ出さないような調査にしようと思っている。
【大生連】 7月9日付扶養義務調査再調査実施要領の聞き取りに関する調査用紙について、収入の有無などを書き込む内容になっている。ファミリーツリー(家系図)も権利侵害ではないか。
【大阪市】 ファミリーツリーはわかりやすいので活用している。権利侵害の主旨でやっていない。
《助言指導について》
【大生連】 助言指導についての回答が不十分だ。助言指導書が出されているのが申請直後であり、被保護者ではない段階で出されている。これは誤りではないのか。長浜訴訟、新宿訴訟でも生活できなくて申請しているから、保護を開始したのちに、就労指導をするのが合理的と断じている。
【大阪市】 申請の段階では指導指示の対象ではない。申請の段階では助言に重きをおいている。
《不正受給の分析について》
【大阪市】 借金が収入の未申告・不正受給につながりかねないので、借金の有無をお聞きし、必要な方には法テラスの案内をしている。弁護士会とも協力して作成した債務整理プログラムも活用していただいている。
《参加者から出された事案》
■保護開始前の国民健康保険料等の滞納の徴収について
【大阪市】 担当課に申し出ることなどを指示して対応している。必ず払うようにとの指導はしていない。
■Aさんの事案
【中央区】 精神障害のAさんの事案。7月下旬、友人がAさんの部屋にきて、自殺。Aさんはパニックに陥り、どこかほかに引っ越したいとケースワーカーに電話を入れたが、対応してくれず、ますます精神が錯乱し家を飛び出した。2週間ほどして少し落ち着き家に戻ったら、部屋もなく荷物は処分され、保護は廃止されていた。荷物も服も住むところもなく、どうしたらよいかと相談があった。本人も訴える。
交渉途中、保護係長に連絡を取っていただき、中央区に再申請に行った。
■東成区の63条の返還問題について
【東 成】 年金59万円がまとまって入った。テレビが壊れているので、返還金の中から購入を控除できないかと言ったが、区からダメと言われた。今まで認めてくれたのに、扱いが変わったのか。
【大阪市】 自立更生に当たる場合は返還金から控除されることもある。区に確認する。
■住之江区の事案
【住之江】 6月1日入院中に保護を申請し、日用品費が支給された。同月16日に退院した。7月1日に7月分は支給はされたが、6月16日から月末までが支給されていない。
【大阪市】 区に確認する。
■家賃の代理納付について
【淀 川】 民間住宅で代理納付されている。全区で行っているのか
【大阪市】 当初は公営住宅の代理納付が先行した。その後民間住宅へと導入時期がずれた。すべて代理納付になるのでなく、滞納があり、放置すれば家をなくしてしまうおそれのある方に、家主に直接払う。すべての区で使えるようにシステムはなっている。市内で14件くらい。
■北区の事例について
【 北 】 保護費が支給されるまでのつなぎ資金について、民生委員を通さずに借りられるようになり、2万円貸してくれたのに、6月から貸付額が5000円に減らされた。なぜ変わったのか。
【大阪市】 制度が変わったということはない。
【 北 】 申請に行ったら、待ち時間に書くようにと「借金」「職歴」「住民票の有無」など事細かな質問項目の用紙を渡された。差し支えのない範囲でお書きくださいとあるが、抑制のための書類か。
【大阪市】 それを書かないと申請できないということではない。いずれお聞きすることでもある。抑制することのないように運用したい。
【 北 】 クーラーや冷蔵庫を家具什器費として認め、支給してほしい。
【大阪市】 今のところ、状況により冷蔵庫を支給している場合があるが、クーラーは支給していない。
■漏給について
【住 吉】 家賃3万2千円から4万2千円のところに転居した。契約書も示したのに、約6年間計72万円の漏給があった。行政のミスで最低生活費をわる生活を強いられた。2ケ月の遡及ではなく、全額返還すること。
■リバースモーゲージについて
【淀 川】 リバースモーゲージはローンなどがある場合、利用できない。どうしたらよいか。
【大阪市】 区に実態を聞き回答する。
■敷金、転居費用を申請したが却下
【東住吉、平野】 市営住宅に当選した。敷金、転居費用を申請したが却下された。
却下理由が「将来にわたって安定した生活が期待できない」と。しかし、なぜ却下をしたのか、説明を求めに行ったところ、@「相談もせんと勝手に移る人や」と。Aエレベーターのあるところに申し込まなかったと言われた。家賃は1割以上安くなるのに、却下は正しいのか。なぜ却下するのか理解できない。もう一人の方も市営住宅に当選したが、平野に転居して2年以内の転居だとして却下された。市営住宅に申し込む目的はそこを終の棲家にしたいという思いがある。区の却下は日常的な自立の観点がぬけているのではないか。
【大阪市】 市営住宅だからといって、無条件に敷金を出せるものではないと通知をだしたところ、混乱が出た。市営住宅であれ、民間であれ、出すべきものは出すということで、Q&Aで例示をした。再度区に確認して回答する。
■市立更生相談所について
【大生連】 西成区に市立更生相談所がある。違いについて教えてほしい。
【大阪市】 条例にもとづきせっちされた実施機関である。あいりん地域の安定した住居を持たない方を対象にしている。野宿やシェルターからの相談で、ただちに対応しなければいけないという特殊性がある。