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新国立劇場バレエ団
「ライモンダ」




 このバレエ団の「ライモンダ」は初演年に続き、2回目。
 初演時(志賀/山本ペア)は、主演ダンサーから群舞、衣裳・美術にいたる まで完成度の高く、素晴らしい舞台に感動した記憶がある。


 まずは、タイトル・ロールのさいとう美帆。
 最初は「硬いな〜」と思っていたが、第一幕3場の「夢の場」でジャンと 踊りだすころから、滑らかさを感じるようになった。愛し愛される恋人との 心のつながりが、幸福感に輝く踊りとなって豊かな表現になっていた。
 (それとも出だしは、恋人が戦地にいるのに能天気に踊っていられないわ、 という解釈だったのかな?)
 このまま良い調子で行くのかなと期待した矢先、ドキリとする場面が起こる。
 2幕開けてすぐに、転倒しなかったものの、ポワント技でミス。一瞬のことで よく分からなかったが、実に妙な具合で爪先がねじれた(ように見えた)ので、 怪我したんじゃ?と心配になった。(それでなくても、ライモンダはポワント・ ワークの多い役だし・・・)
 その後も踊り続けたので、大丈夫だったのかもしれないが、第三幕の 有名なソロでも、後半ポワントが落ちてしまった。
 なかなか踵を床につかせてもらえないこのライモンダの踊りでは、昨年の ABT公演でも同様のことが起こったし、ダンサーにとっては忍耐のソロだな〜と つくづく思う。(ステパネンコはやっぱり偉大だわ)
 でも、それら以外は、アダージオなども美しくて、良かったと思う。

 恋人ジャンの逸見は、すっきりとした気品漂う騎士。
 どこでだったか忘れたが、一箇所だけ空中での姿勢が崩れた他は、終始安定 しており、特に文句のつけようがない出来だったと思う。
 「夢の場」で彼と踊り始めるや、さいとうの踊りが活き活きとしてきたし、 物語上でも誘拐されそうになるライモンダを剣で救うので、この日は本当に 頼もしい「white knight」だった。

 アブデラクマンは、「まあ、こういう感じかな〜」という感じ。
 特に悪かったわけではないけど、強い印象もない。

 ライモンダのお友達4人衆は、クレメンス=高橋有里、ヘンリエット=西山 裕子、ベランジェ=グレゴリー・バリノフ、ベルナール=江本拓。

 上記4人に加え、ソリスト陣のレベルが高く、見応えがあった。

 「夢の場」の第一ヴァリエーション(本島美和)、第二ヴァリエーション (寺島まゆみ)はともに良い出来。伸びやかで余裕があった。このシーンの 終盤、本島と寺島が並んで同じ振りをするところは、驚くほど見事にシンクロ していて、目を見張った。

 第3幕グラン・パのヴァリエーションは、本島美和。

 同幕パ・ド・カトル、トレウバエフ、貝川、江本、中村。横に並んで アントルシャ、は個々人の足の動きが否応なく比較されちゃいますね。

 パ・ド・トロワは厚木、寺島まゆみ、丸尾。フェッテの競演は、大変ゴージャス。

 ドリ伯爵夫人に湯川麻美子、ハンガリー王アンドリュー二世にゲンナディ・ イリイン。イリインのアンドリュー二世は髪型といい、トランプのキングの よう。衣裳の裾も伯爵夫人のものより長く、身分の差でしょうかね?


 美術については、豪華な印象があるわりには、実際シンプルなことに今回 気づいた。どうも私は、前回気が付かなかったらしい。
 背景画が中世美術のようで、何だかありがたい気持ちになってしまうから だろうか? 舞台上にある大道具(?)としては椅子ぐらいで、噴水があるとか 大きな布が吊り下げられているとか、いうわけではなかったのだ。

 その背景画だが、「ランブール兄弟の『ベリー公のいとも豪華なる祈祷書』に よく似てるな〜」と思っていたら、舞台装置担当のスピナテッリは、本当に そこからインスピレーションを受けていたんですね。初演年に(私にしては 珍しく)買ったパンフレットをちゃんと読んでみると、明記されていた。
 2幕の決闘終了後に出てくるお城の絵は、インスピレーションを受けたんだな〜 と思うけれど、幕開けと幕間にも下ろされている沢山の人が馬に乗っている 絵は、「ベリー公・・・」の中の「5月」の絵とほぼ同じに見える。こちらは、 もうちょっとアレンジしても良かったのでは・・?
 3幕の星の絵も、イタリアのラヴェンナにあるガラ・プラッチディア廟堂の 円蓋モザイク装飾をヒントにしているのかなと思う。(これもどこかで見た、と 思ったら)
 このプロダクションの背景画が非常に美しく崇高なのは、こういった 中世美術の至宝から中世の美意識を取り出して、現代の舞台美術にうまく 反映させているからでしょうかね。

 最後に、プロローグで白地に赤い十字を描いた長い旗が出てくるが、旗手が 上手から下手に移動すると、旗の端が血のような赤に染まっているのが見える。
 ジャンは出征するも、無事に帰ってきて決闘に勝ち、最後はハッピーエンド なので、この旗にちょっと違和感を覚えた。(十字軍の旗を使うこと自体は いいのだけど、あの血染めが・・・)
 ジャンの戦場での苦難(があったのか、なかったのか、分からないが)は、 このバレエでは全く描かれないし、あんなに不吉さをアピールする必要も ないのにな〜とは思いました。

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