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ニューヨーク・シティ・バレエ
(Bプロ)





「コンチェルトDSCH」


 曲はショスタコーヴィッチの「ピアノ協奏曲第2番ヘ長調」。(ピアノ: エレイン・シェルトン) 50年ほど前に出来た曲で、19世紀以前のものに 比べ、新しい感覚の協奏曲。

 幕が開くと、ダンサーが舞台中央で輪になって立っている。音楽が始まると、 正面が割れて、青い衣装のホアキン・デ・ルース、続いてゴンザロ・ガルシア が元気一杯に飛び出してくる。輪がほどけると、芯にはシルバーグリーン(だろうか? とにかく ポスターに使われていたあの淡い緑)の衣装のウェンディ・ウィーラン。 (パートナーのダンチグ=ワーリングもいたか?)
 留まることをしらない第一楽章(アレグロ)では、ダンサーが縦横無尽に 舞台を駆け巡る。

 衣装の色で4グループに分かれており、渋い緑色のプリンシパル・カップル(ウィーラン &エイドリアン・ダンチグ=ワーリング)、青い衣装の女1男2の3人グループ。 (アナ・ソフィア・シラー&デ・ルース&ガルシア)、オレンジ男女6人、赤男女8人。  女性の衣装は、みんな同じで膝上の軽やかなフレアワンピース。男性は 緑と青だけ長いパンツで、コール・ド(オレンジ・赤)は膝上まで。胸元の デザインなど体操選手のよう。
 こういう衣装なので若々しく、青春群像といった趣。

 穏やかな第二楽章(アンダンテ)では、恋人たちの心のすれ違いを表すのか、 プリンシパル・カップルは最後に上手と下手に分かれていく。
 止まらず続けられる第三楽章(アレグロ)では、音楽は第一楽章に勝るとも 劣らず忙しい。ダンサーたちは音楽に良くのって躍動感にあふれ、賑わい の中でいつの間にかプリンシパル・カップルは仲直りし、幕切れの大きな 盛り上がりとともにカタルシスがやって来た。(ここで鳥肌がたった)

 完璧なウィーランは結構ベテランなのだが、周りの若いダンサーにすっかり 溶け込んでいる。フンといった感じで腕組みして怒ってみせる(?)ところ などかわゆい。
 ダンチグ=ワーリングはポパイを思わせる凄い腕。砲丸投げの選手みたい。
 デ・ルース、ガルシアはともに素晴らしい働き。特に、デ・ルースのキレは、 目が覚めるようだ。(彼はABTから移籍して正解だったな〜としみじみ思った)

 ラトマンスキーは、駆け抜けるような速いテンポの曲にひたすら明るく軽快なダンスを 振付けている。衣装(ホリー・ハインズ)のせいもあって、若々しく清新な印象で、 見ていて楽しかった。
 ラストも面白かった。プリンシパル・カップル含めみんなポーズに入って いる中、一番最後まで動いているのは青チームで、デ・ルースがガルシアの 背中に駆け上がって終わるという意表をついたものだった。



「バーバー・ヴァイオリン・コンチェルト」


 バーバーの「ヴァイオリン協奏曲」。(ヴァイオリン:カート・ニッカネン)  ものの本によると、作曲家自身が「演奏困難」と言ったほど難曲らしい。
 バレエ作品としては、マーティンスが振付を始めて約10年たった頃のもの だが、私はあまり好きじゃないな〜と思った。(好きな曲だけに・・・)

 出てくるのは2組のペア。
 女性がポワントを履き、髪も夜会巻き風に上げたクラシカルダンサーのペア。 (サラ・マーンズ&アスク・ラ・クール) 男性も長袖に白いタイツをはいて いる。
 対して、モダンダンスのペア。(ミーガン・フェアチャイルド&ジャード・ アングル) こちらは、男女とも裸足。女性は髪を下ろし、男性は上半身裸で ワイルド。

 最初はクラシカル・ペアだけのネオ・クラシック風の踊り。上手の照明が 明るく、背景も上手だけ青いライトが当てられ、下手側は暗い。
 次にクラシカル・ペアが去って、モダンペア。照明も左右が入れ替わる。
 その後、4人の踊りとなり、違うダンス言語の踊りが舞台上に共存する のだけど、私にはピンとくるものがなかった。

 第二楽章は、マーンズ(クラシカル女)とアングル(モダン男)。女がちょっと 悩んでいるような感じがするのは、非行の道に踏み外しそうな奥様といった 風情。そして、ついに女は倒れて髪を解き、一線を越えてしまった。(の?)  そこからマーンズはふっきれたように踊る。

 第三楽章は、フェアチャイルド(モダン女)とラ・クール(クラシカル男)。 音楽は無窮動に速く、この楽章こそが「演奏困難」な理由らしい。その音楽の 通り、うるさいハエのように女がちょこまか男にまといつき、男はイライラ しているようだ。フェアチャイルドとラ・クールの体格差もあって、まとわり つく娘を持て余しているお父さんといった風に見えなくもない。

 最後は拍子抜けするぐらいあっさりと終わったので驚いた。「これで終わり?」 という感じだった。



「タランテラ」


 これはブラヴィーだった〜。

 SABの学生時代のペックを見た友人が「そりゃ、キビキビ踊ってくれるよ〜」 と言っていたが、噂に違わず。今回の日本ツアーの事務局がメール配信した アシュリー・バウダーの映像インタビューでも、アシュリーがペックの名前を あげていたので(字幕に訳されてなかったけど)、バレエ団内でも期待されて いる人なのだろう。

 まあ、とにかくテキパキ踊る。速いテンポもものともせずアラベスクして、 脚折り畳んで・・・、とテキパキテキパキ。快感を覚えるほど。

 パートナーのウルブリクトも素晴らしい。跳ぶ、跳ぶ。私はNYで「くるみ ・・・」の「お茶」(中国の踊り)で彼を見ているけど、こういう役はお得意 だろう。

 タンバリンを持った二人が踊り比べをしていき、盛り上がりは最高潮。

 ピアノ演奏は、ナンシー・マクディル。



「チャイコフスキー・ピアノ・コンチェルト第二番」


 使用曲はタイトルそのままで、チャイコフスキーの「ピアノ協奏曲第二番 ト長調」。 (ピアノ:キャメロン・グラント) チャイコフスキーのピアノ協奏曲は 第一番が非常に有名で、クラシック・ファンでなくとも知っている人が 多いと思うけど、このマイナーな第2番もいい曲だと思います。この曲に 目をつけるなんて、通のバランシンらしい。

 まず、センターを踊るアシュリー・バウダーだが、彼女の音楽性あふれる 踊りは感動的だった。ピアノが高音域に駆け上がってゆくのに合わせて小走りに なる時も、絶妙のピッチで足を運んでいく。ジャンプからの着地、パ・ド・ブレ も全て心地よいほど音楽的だった。

 パートナーのスタフォードは、デ・ルースを見た後では重く見えるのだけれど、 悪くはなかった。美しい第二楽章の冒頭、手を繋いで横一列になった2本の コール・ド・バレエの鎖を、スタフォードが両手に握り、前に後ろに動かす様は 、柳が風に吹かれてたおやかに揺れるよう。(列の一番端、つまりスタフォード から最も遠い位置のダンサーは移動距離が長くて大変そうだけど)

 ソリストのレイクレンは、長身で手足が長く、いかにもバランシン・ダンサー という感じ。マリア・コウロスキーのような華のあるダンサーだが、今回は コール・ド・バレエを率いている観のある役なので、もう少し強さを出しても 良かったのでは? 心の余裕がなかったのか、自信なさそうに見えた。



 今回のBプロは「コンチェルトを一気に楽しむ贅沢!」と宣伝されていた。 確かに、ヴァイオリンとピアノの4人のソリストが演目ごとに入れ替わって、 立て続けに4つもコンチェルトを生演奏で聞く、というのはあまり出来ない 体験だ。開幕前、オーケストラに混じって、ソリストのエレイン・シェルトン が最初の演目のショスタコーヴィッチの「ピアノ協奏曲第2番」をガンガンに 練習しているのを見て、コーヒーのCMじゃないけど「ああ〜、贅沢〜」と 胸が高鳴った。
 演奏は、新日本フィルハーモニー交響楽団。指揮者はNYCBの音楽監督 であるファイサル・カルウイ。

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