アダージオは重い。他の要素が良くても、颯爽・軽快でなければ、この作品
の魅力は半減してしまうだろう。
ソロはアダージオよりは良かったと思うけど、全体として気分が乗らなかった。
このペアは去年のマラーホフのガラでも見た組み合わせ。ガラの時は、
「エスメラルダ」と「ドンQ」で派手やかで技巧的な演目だったけど、
今回はちょっとラブリー系。
サレンコは、薄い青(それとも白か?)のチュチュ姿で、愛らしい。が、
トレードマークのバランス技を多様。(予想できたことだけど・・・)
コンヴァリーナはそつなし。
なんだけど、二人ともこじんまりしてしまったかな。
セミオノワとフォーゲルの強靭な美にため息。
始まってしばらくはフォーゲルだけで踊っているのだが、にわかに上手から
セミオノワが走り出てきて、フォーゲルに飛び込む。ダイナミック!
(二人とも衣装は下半身に長い黒の腰布を巻き、セミオノワは黒のブラを
つけているけど、フォーゲルは上半身は裸。これがまたエキゾチックなんだな〜)
アレクサンダー大王と妃ロクサネの踊りらしいが、どういうシーンなんだろう?
甘く愛を歌い上げるという雰囲気ではなかった。
映画「アレキサンダー」で、アレクサンダーの恋人(男)の存在をロクサネ
に知られてしまい、彼女との初夜が非常に緊迫感に満ちたものになってしまう
という場面があったけど、まさかそれじゃないでしょうね〜。
とにかく、二人の踊りは迫力があり、どこを切り取っても絵になった。
パ・ド・トロワの後に来るメドーラとコンラッドのラブラブなシーン。
レイエスはちょっとメドーラのキャラじゃないかな〜とは思っていたが、
しなやかで健康的にムード満点(?)で良かった。(こちらの頬が火照って
しまうほどお色気なムードになるダンサーもいますので・・・)
カレーニョはこのパ・ド・ドゥだとあまり跳んだり回ったりしないので、
ほとんど支え役。でも、これがとても安定感があって好ましいのだ。「パートナーは
踊りやすいだろうな〜」と思えて、見ている側も安心できる。これでこそ、
主人公たちの幸福感を観客がしみじみ味わえるんだわ。
このペアにはがっかりだった。「事前に打ち合わせしたの?」と聞きたい
ほど、二人の間に流れている(はずの)感情のやり取りが感じられなかった。
「ここは芝居シーン」というところでは演技をしているものの、それ以外は
プッツリ切れているように、私には見えた。王子はオディールにどういう感情
を持っているのか、オディールは王子をどうしたいのか・・・。結局、何の
踊りか分からなかった。
役作りや感情表現の前に、上野は舞踊的にもかなり不調だったのでは? 音楽
にもうまく乗れていなくて、カックンカックンした感じ。見ていて
しんどくなってしまった。
拍手も心もち寂しい。世界バレエフェスの「黒鳥」で、こんなに客席が盛り上がら
ないのもな〜。
若い二人のテクニシャンぶりは痛快無比! 前の「黒鳥の不調」を吹き飛ばして
くれた。
シムキンは期待を裏切らない・・・なんてものではない。スーパー跳んで、
スーパー回って、スーパー開脚。ピルエットもかなり回るのに、ゆっくり速度を
緩めていってゆとりを持って終わる、とか。「この子まだまだできる!」と
思わせる、空恐ろしいまでの余裕。見ていてこちらも浮遊感を感じるほどの
愉快さは、コレーラの若い時を思い出す。
コチェトコワもフェッテの最中に軸足がピョンと跳ねるという至難の業を
何回も入れるなど、観客を大いに驚かせる。また、技巧的な部分だけでなく、
フェミニンで優美な情緒も踊りに現れ、感心させられた。
終わったら、会場が割れんばかりの万雷の拍手。間違いなく、この日
一番の大きな喝采だった。
ここから第2部。私の席の周辺には、お子ちゃまが結構いたのだけど、
第2部は現代作品が多く、みんな退屈そうだった。(ちょっと難しいかな?)
「ナイト・アンド・エコー」。この作品は、あまり記憶に残らなかった。
ブシェがツートンカラーでスカートの衣装だったな〜、ぐらい? う〜ん、
おばちゃんにもちょっと難しかったかな?
ルテステュは白の変形チュチュ。(スカート部分がポテトチップスのように
うねっている) マルティネスは全裸に見える肌色の衣装。二人が着ると
かっこいい〜。
音楽は弦楽。(だったような?)
最初は面白いと思って見ていたけど、あまりにも単調だったので、後半になって
くると、集中力を引き戻すのに苦労した。
前回のオーストラリア・バレエの日本公演には行かなかったので、初めて
見るマーフィー版。古典の「白鳥の湖」とは全く別物になっているが、これは
これで楽しめた。
正妻オデットに心が傾いていく王子に動揺する愛人・男爵夫人(という場面
ですよね?)。この三者の心理がドラマチックに踊りでつづられていた。特に、
黒衣の男爵夫人(ルシンダ・ダン)の踊りからは、崩れてゆく自信・悲哀が
感じられて、とても素晴らしかった。
使われている音楽は、3曲。1曲目は他の版の「白鳥の湖」の終幕でも時々
使われていたっけ。(悪魔親子に騙された王子がオデットに湖畔で謝罪する
場面とか)
2曲目は、「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」のアダージオと
同じ曲。今回のような華やかなセット・衣装(のダンサー)で聞くと、ラストに
かけて高潮してゆく音楽が際立つように思えた。
3曲目はルースカヤ。哀切な前半と情熱的に盛り上がる後半が、男爵夫人の
ソロをよりインパクトのあるものにして効果的だった。
二人は息ぴったりで、全く乱れがなかった。ダンサー同士もだが、音楽とも 息ぴったり! 素晴らしすぎて、あっという間に終わってしまった印象。
この作品の背景とかは知らないのだけど、面白かった。
三つ編みにスカートのガーリッシュなギエムがズンズンズンとドアに
向かって歩いて行き、ガンガンとノック。ドアの向こうからは腕が出てきて
・・・、と後は赤いTシャツのル・リッシュとのコミカルで妙ちきりんな踊り。
波乱の展開とかはないんだけど、この先どうなるんだろうという好奇心が
おさえられない不思議な魅力があった。
昨夏のエトワール・ガラでアッツォーニ/リアブコのペアで見てたちまち
大好きになった作品。
今回は2回目だからか、踊り手が違うからか、初回ほどの衝撃はなかった
けど、デュポンとルグリも美しくて瞬きする瞬間が惜しい。時間が飛んで
逃げるように早かった。
カーテンコールでは、ルグリはデュポンを伴い、上手に移動してそちらの
観客にも挨拶。この長老らしい目配りとファンへの気配りに、とても暖かい
ものを感じました。
ここから第3部。この日、開場時間ぐらいに文化会館に着いたら、ファンに
とり囲まれている私服のサラファーノフを見かけた。「こんな時間にまだ
ここにいるなら、出番は遅いわね〜」と一緒にいた友人。やはり第3部でしたか〜。
さて、そのサラファーノフだけど、第1部でシムキンが観客を熱狂させ過ぎて
しまったので、やや大人しく見えたかな。もちろん、非常に質の高いパフォーマンス
だったのは言うまでもない。2年前の合同ガラの時の「海賊」は、同じ超絶技巧を
見せるにもヤンチャ坊主的な感じだったけど、今回は落ち着いた見せ方というのかな〜。
(うまい表現が見当たらない・・・)
ついついサラファーノフに目がいってしまうが、オシポワもサラリとすごい
ことをやっていた。この公演に出てくる皆さんは、フェッテなんてダブル入れるの
が当然といった様子だけど、やっぱり凄いことだもんね〜。
この間パリ・オペラ座がこの作品を日本に持って来た時、あまりのチケットの
高さに抗議の意味で行かなかった(平たく言えば、お金がなかった)のだけど、
今回見たパ・ド・ドゥは全幕が見たくなる面白さだった。誘惑でしたね。
キスしたまま男性が女性をぐるんぐるん振り回す(しかも長い!)ところには、
圧倒された。
でも、同時に色々余計な事も考えてしまった。遠心力もあるだろうし唇は
くっついたままなんだろうか、とか呼吸は大変だろうな〜とか。全幕で見ると、
このシーンまでの話の流れもあって、もっと感動して入り込めるんだろうか・・・。
マラーホフもカーテン・コールでヴィシニョーワを伴って、上手に移動して
そちらの観客に応えていた。私も上手側サイドに座っていたので、すごく
嬉しかった。ちょっとしたことなんだけど、ルグリもマラーホフも観客への
愛を感じるな〜。
ベジャールはいまだよく分からない。今回のように、人の頭の左右に
自分の首を振らねば舞台が見えないような悪い席だと、舞台が更に遠のく・・・。
フランス語の歌の意味が分かればもっと分かったのかな・・・?
第1部のコチェトコワ/シムキン「パリの炎」とともに、打ち上げ花火的な
景気の良さ。世界バレエフェスには、こんな息を呑むようなパフォーマンスも
必要でしょう。
ボネッリには悪いけど、黒と緑のチュチュを着たロホがすべてを持っていって
しまった。最初から最後まで、ロホの超絶技巧のオンパレード。
思わず頭の中でカウントしてしまった長〜いバランス。20秒ぐらいは
いってた? 2回目は、差し出されたボネッリの手を遂に取らず。(こんなに
余裕がある徹頭徹尾一人立ちバランスは、ビデオのデュランテのオーロラ以来
だよ〜!) フェッテには5回転が入っていて、それだけでも口笛ものなのに、
更に450度回転で正面が時計回りに90度ずつずれていく離れ技も入れる。
しかも、すべてクールにやってのけるところが凄い。(必死でやっている風
だったら、こっちも冷めちゃうけど)
人類ってスゴイな〜と思いました。いや、彼女サイボーグかも・・・。
前の「エスメラルダ」がかなり熱狂的に終わったので、「次の人は嫌かも〜」
と思ったのだが、全くそんな心配は無用だった。幕が開いてアイシュヴァルト
とバランキエヴィッチが踊り始めると、季節が夏から一気に冬になったように
空気が一変した。
このパ・ド・ドゥは3幕でも最後の最後に踊られるものだけど、1幕から
ずっと見続けてきたような感覚に陥るほど、濃厚な物語が味わえた。
「エスメラルダ」で上昇気流に乗って遥か上空まで昇ってしまった観客を、
ぐっと自分達の世界に引き寄せて繋ぎとめてしまうダンサー二人の集中力には
恐れ入る。
瞠目の超絶技巧に酔いしれた直後にこんな最高級のドラマに身を浸すことが
できるなんて、これぞこのフェスティバルの醍醐味だろう。感動した観客からは、
惜しみない大きな拍手が送られた。
どこといって悪くはないのだけど、見ていてワクワクしてくる気持ちの
高ぶりはなかった。これが大トリか・・・とちょっと思ってしまった。
ウヴァーロフは素晴らしく何も言う事はないのだけど、ザハーロワは
おっとりとお上品で、町娘キトリというイメージじゃない。踊りもキチンと
こなしているという風で、ぐぐっと惹きつけられる魅力は感じなかった。
容姿は大変美しいのだけど、キトリにはもっと熱いものを期待してしまう。
(不良っぽく踊って欲しいというわけではありません。念のため)
全体として、高い評判とチケット代に恥じぬフェスティバルだったと
思った。とても楽しみました。
会場のロビーには、出演者たちの舞台写真が高い天井から吊るされていた。
従来の写真パネルではなく、透明のアクリル板(?)の中に仕掛けられた
照明でスター達の姿がほんのり淡く浮き上がるような見せ方。時節柄、お盆の
灯篭流しの穏やかな明かりを思い出しました。大勢の人が携帯で撮影していま
したね。(私もウヴァーロフとサラファーノフを・・・)