snow snow
フワリと白い空気が鼻先を掠めた。
「雪か」
男は伏せた目をゆっくりと天に上げた。
目の先にハラハラとはかない音を立てて氷の結晶が零れ落ちてきてた。
いつから、自分はここにいたのだろうか。
街角でぼんやりと佇んでいた。目の前には雪がうっすらと路上に化粧をしていた。
「畜生」
ごしごしと目の前を擦る。まぶたにかかった白い雪が零れた。
目の前に雪が見せる幻がいた。
薄い服を着てがたがたと震えるまだ少年のころの俺。
腕からはぼたぼたと朱が零れ落ち、路上の処女雪に華を咲かせる。
薄汚れた赤い髪が、意識の中で炎のように揺らめいた。
その俺が恨めしそうに、俺を見上げていた。
サムイヨ、サムイヨ
涙を溜めて、暖を求めて。
「サラマンダー」
不意に声がかかり、ハッとして目を開けた。
ゆっくりともう一度視線を戻す。
そこに俺はいなかった。
女がいた。雪よりも白い肌に白い髪。薄い茶色のコートに紅いマフラーが揺れていた。
その紅に天から滑り落ちた氷の結晶がうっすら被ってた。
それは、幻で見た白い雪の中に咲く華の色に似ていた。
「フライヤ」
女の名を呼ぶと、目の前の吸い込まれそうな翠の瞳を細めて、女は笑った。
「どうしたのじゃ?急にいなくなったと思ったら、このような街角に突っ立って…」
そしてゆっくりと手を伸ばすと、フライヤはサラマンダーの肩に手を伸ばす。
そしてその細い手でサラマンダーの黒いコートの肩に乗った雪を払った。
サラサラと白い雪が、幻が零れていく。
俺の肩から。
それはまるで、何かの儀式を見るかのような仕草だった。
「すっかり冷えてしまって…」
フライヤはその手で鼻先を白い息が掠めた。暖かい。
そして思わず、女の細い体を抱きしめていた。
「…?」
一瞬フライヤは驚いたように体をこわばらせたが、おとなしくサラマンダーの腕の中に納まった。
「どうしたのじゃ」
ため息交じりにフライヤは押し付けられたサラマンダーの胸の上からくぐもった声を出した。
「いや」
ぐっとフライヤの体をもう一度抱きしめた。ジワリと暖かなものが胸の辺りから広がっていく。
あのときの俺が求めて求めてやまなかったものが今この腕の中にいる。
「わりい」
そして体を離すと、小さく唇を合わせた。そして小さく笑いあった。
胸の奥で、幻の俺が氷のように解けていく。
天からは雪。
それは聖なる光にも似て、俺の周りに零れ落ちていた。
ともやん様から11111hitのキリバン絵をいただきましたー!!
リクエストの内容は「愛いっぱいのサラフラ」です〜!!
イラストだけでも温まるのに短い小説まで一緒にいただきましたー!!
もうアレですね!羨ましいくらいのラブラブっぷりに暖房がいらなくなります!
ともやん様!ありがとうございました!!