◆ブラックフェイス
〜東武鉄道 U-LV324Lワンステップ車とその後〜

富士重工7Eが製造された1988〜2000年というのは、メーカー・事業者双方が車両の低床化に取り組んだ時代でした。
まずワンステップ車が製造されますが、富士重工7E架装の車両に限定すると、その第1号は1991年1月に2台が落成した東京都交通局向けの日デUA440HAN改になります。
これは同局が各メーカに製造させた特注車で、車内はフルフラットでした。しかし、駆動系が従来と異なり価格も高価ということで他には普及せず、同局向けに各タイプ計5台が製造されただけに終わりました。

一方、1988年に日野+日野車体が京浜急行電鉄向けに、中扉より前をワンステップとした車両を納入しており、こちらが車両低床化の本流となります。
富士7E架装の車両では、1992年9月に落成した東武鉄道向けの、いすゞU-LV324Lがその第1号となります。

この車両、通常の7Eと比べていろいろと特徴がありました。
前面のパネルに樹脂を使用し無塗装で黒い前面としており、他に採用例のない特異なものです。
また、左前方には視野拡大窓が設けられており、ウィンカーがバンパーの位置に下げて取り付けられています。
これは後年、ノンステップバスに引き継がれることになります。
そのほか、前扉のガラスの面積が通常よりも広くとられている点も特筆されます。

1992〜1995年までの4年間、毎年2両づつ合計8台が製造されましたが、その内容は少しづつ変化しています。

東武 前中引戸
 1992年と1993年に製造された車両は、扉配置が前中引戸となっています。
車内はハイバックシートを採用し、当時の東武の車両としては異質。全般的にグレードの高い車両となっています。

(2001年10月 東京都足立区(竹ノ塚駅))

東武 ワイドドア
 1994年と1995年に製造された車両は、扉配置が前中ワイドドアとなりました。
この年、一般車も前中引戸からワイドドアに変更されています。
また、1995年製の車両は、ハイバックシートから同社で一般的な背もたれが低いタイプになっています。

(2007年5月 東京都足立区(竹ノ塚駅))

この8台。廃車後、いずれもが全国各地に移籍しています。
この際に、前面の樹脂パネルの処理が各社各様で注目されます。

●1992年製
弘南 弘南
2台ともに弘南バスに移籍しました。
前面は、視野拡大窓はそのまま。中央の樹脂板もそのままですが、その周囲は車体色に塗られています。
右側の樹脂板は両車によって分かれているのが面白いところ。

(左:2008.5 右:2003.9 いずれも青森県弘前市)

●1993年製
藤田
1台は、北海道の藤田荷役に移籍しました。
苫小牧市でショッピングセンターの送迎に使われており、社名を削ったほかは、東武時代のままの状態で使用しています。

(2007.5 北海道苫小牧市)

常磐交通
もう1台は常磐交通自動車に移籍しました 前面の樹脂板は通常塗装され、視野拡大窓もなくなっているように見られます。
しかし、実際には、もとの拡大窓の上から塗っただけで、車内から見ると、そのままになっています。

(2012.7 福島県いわき市)

●1994年製
呉 広島電鉄
1台は、呉市交通局に移籍しました(左画像)。
前面の視野拡大窓等はすっかり埋められています。
2012年3月を持って呉市交は廃止になり、路線・車両ともに広島電鉄に移管。
この車両も広島電鉄の外装に変更(右画像)されています。

(左:2008.7、右:2012.10 いずれも広島県呉市)

南部バス
もう1台は、南部バスに移籍しました。
弘南バスの車両と同じく樹脂板・視野拡大窓ともにそのままで、その外周のみが車体色になっています。
一方、バックミラーの交換、側面の方向幕の大型化などの変更が加わっています。

(2011.9 青森県八戸市(ラピア))

●1995年製
エアー沖縄
1台は、エアー沖縄に移籍しました。
全日空の那覇空港での地上支援業務等を行っている事業者で、ランプバスとして使われています。
したがって営業ナンバーはありません。
樹脂板・視野拡大窓ともにそのままで、外周のみが車体色になっていますが、白一色なので、より目立ちます。

(2012.4 沖縄県那覇市(那覇空港))

鹿児島交通
もう1台は、鹿児島交通に移籍しました。
廃車後、暫く経ってからの移籍だったようです。
エアー沖縄と同じような感じですが、中央の樹脂板も白く塗っているのが異なる点。
この部分だけ、若干色調が異なっています。

(2012.5 鹿児島県鹿児島市(鴨池港))

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