貿易実務資料

 

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世界貿易機関(WTO)を設立するマラケシュ協定 特恵関税制度と原産地証明 
関税及び貿易に関する一般協定(GATT) 一般特恵関税(GSP)原産地証明 Form Aの実例
セーフガード  特別特恵関税(LDC特恵) 
経済連携協定(EPA=Economic Partnership Agreement) 経済連携協定(EPA)における関税制度
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インコタームズと信用状統一規則 食品等の輸入手続き 
Incoterms 2010 健康食品としての伝統茶の輸入 
Incoterms 2010における売主と買主の義務  秘密保持契約
Incoterms 2010とTHC  移転価格税制 
インコタームズとTHC − 新堀聡教授の見解  税関と国税庁の視点 − 現実支払価格と移転価格税制 
EBSとYAS   ドイツからの自動車部品輸入にともなう金型の代金 
インコタームズ2000 輸入貨物の課税標準と課税価格 − 関税定率法 
インコタームズの沿革 税関への提出書類 − 関税法
FOB−伝統的貿易の原点 貿易統計における価格の基準 
所有権の移転  関税法基本通達
FOB とFCA 中継貿易
FCAにおける危険負担 許可と承認
貨物のDelivery − 自動車専用船とオイルタンカーの場合 輸出の許可
UCP600 (信用状統一規則) 輸出の承認 − 別表第二貨物、北朝鮮向け貨物および委託加工貿易原材料
SWIFTシステム 輸出貿易管理令・別表第一 (リスト規制とキャッチオール規制)
プロジェクト・ファイナンス 輸出貿易管理令・別表第二 (輸出の承認が必要な貨物)
国際プロジェクト・ファイナンスの実務と法律問題 輸入の承認、輸入公表と輸入割当
償還請求権 (Recourse)、Forfaiting と Factoring

貿易における消費税

船荷証券の機能と法的性質 ISO 90001とISO 14001の実例
Surrendered B/Lの実例 ISO規格
貨物海上保険・協会貨物約款  
一般条項(裏面約款)  
 










































 インコタームズと信用状統一規則
 国際商業会議所(International Chamber of Commerce = ICC)は、インコタームズ(INCOTERMS = International Commerce Terms)と「信用状統一規則(UCP = Uniform Customs and Practice for Documentary Credits)」、「複合運送証券に関する統一規則」のような国際ルールを制定している。
 最新の「Incoterms 2010」は、2011年1月1日より発効している。
 信用状統一規則は、2007年7月より「UCP 600」が発効している。
 


Incoterms 2010
 国際商業会議所(International Chamber of Commerce = ICC)は、2010年9月16日、インコタームズ2000に代わる「Incoterms 2010」を発刊した。2011年1月1日より発効している。
 インコタームズは、International Commerce Termsの略称で、従来は、ICC Official Rules for the Interpretation of Trade Terms (取引条件の解釈に関するICC規則)という副題であったが、新しいインコタームズ2010の副題は、ICC Rules for the Use of Domestic and International Trade Terms (国内および国際取引条件の使用に関するICC規則)」に改称された。従来は、3文字に略した取引条件(Terms)の解釈が主眼であったから、それぞれを「条件」と呼称していたが、Incoterms 2010では、「取引条件を使用するための規則」という趣旨から、それぞれは、「規則(Rule)」と呼ばれることになった。また、「Incoterms 2010 Rules」という使い方がされている。
 Incoterms 2010では、DAT(delivered at terminal)とDAP(delivered at place)という2つの規則が導入される一方、インコタームズ2000の13条件からDDU、DEQ、DES、DAFの4条件が消えたので、規則の数は合計11となる。
 インコタームズ2000では、Eグループ(出荷)、Fグループ(主要輸送費抜き)、Cグループ(主要輸送費込)、Dグループ(到着)の4グループに分類されていたが、今回の改訂では、「いかなる単数または複数の輸送手段にも適した規則」と「海上および内陸水路輸送のための規則」の2クラスに分類されている。
 また、従来のインコタームズにおけるFOBの解釈では、売主から買主への「危険の移転」と「費用の分担」の分岐点はon board ではなく本船の手すり(ship’s rail)を通過する時点になっていたが、Incoterms 2010においては、“物品の滅失または損傷の危険は、物品が本船の船上に置かれた((on board)時に移転し、買主は、その時以降、一切の費用を負担する。”となっている。

いかなる単数または複数の輸送手段にも適した規則 (Rules for Any Mode of Transport)
EXW  Ex Works              工場渡
FCA  Free Carrier             運送人渡
CPT  Carriage Paid To           輸送費込
CIP   Carriage and Insurance Paid To   輸送費保険料込
DAT  Delivered At Terminal        ターミナル持込渡
DAP  Delivered At Place         仕向地持込渡
DDP  Delivered Duty Paid         関税込持込渡

海上および内陸水路輸送のための規則 (Rules for Sea and Inland Waterway Transport)
FAS  Free Alongside Ship         船側渡
FOB  Free On Board            本船渡
CFR  Cost And Freight          運賃込
CIF   Cost Insurance And Freight     運賃保険料込
 

     Incoterms 2010における売主と買主の義務

A 売主の義務

B 買主の義務

A1

売主の一般的義務

B1

買主の一般的義務

A2

許可、認可、安全確認およびその他の手続き

B2

許可、認可、安全確認およびその他の手続き

A3

運送および保険契約

B3

運送および保険契約

A4

引渡し

B4

引渡しの受取り

A5

危険の移転

B5

危険の移転

A6

費用の分担

B6

費用の分担

A7

買主への通知

B7

売主への通知

A8

引渡書類

B8

引渡しの証拠

A9

照合−包装−荷印

B9

物品の検査

A10

情報による助力および関連費用

B10

情報による助力および関連費用



Incoterms 2010とTHC 
 Terminal Handling Charges(THC)について、インコタームズ2000の序論に、イコタームズにはTHCについて権威ある定義はないとの記述があった。また、新堀教授は、インコタームズに規定がないため、売手と買手のどちらが負担するか売買契約において取り決める必要があるとの見解を著している。
 今回の改訂で、Incoterms 2010のまえがきに、THCについての第8項が設けられた。同項は、関連するインコタームズ規則のA6/B6項(費用の分担)においてかかる費用を明瞭に割り当てることで、売主、買主の間での費用の負担に関わるトラブルを回避すると述べている。 

 インコタームズとターミナル・ハンドリング・チャージ(THC) − 新堀聡教授の見解
 Terminal Handling Charge(THC)などコンテナ諸掛かりについて、揚げ地のTHCは買手が負担すべきというのが一般的な認識だが、必ずしもその通りに行っていないのが現実のようです。インコタームズに規定がないため、売手と買手のどちらが負担するか売買契約において取り決める必要があると新堀先生は著書の「現代貿易売買 最新の理論と今後の展望」(同文館)の中で述べています。
 以下は同書の88ページの記述です。

いわゆるターミナル・ハンドリング・チャージ(THC)について
 インコタームズ2000は、序論の第11節でいわゆるターミナル・ハンドリング・チャージ(Terminal Handling ChargeTHC)の問題に触れ、「若干の場合には、売主と買主は、定期船および傭船契約による取引における商慣習に言及している。このような状況においては、運送契約の下での当事者の義務と売買契約の下での相互の義務とをはっきりと区別することが必要である。不幸なことに、“liner terms”や“terminal handling charges”(THC)のような表現について権威のある定義はない。このような用語の下での費用の配分は、場所が違えば異なることがあり得るし、時によっても変わり得る。当事者には、かような費用がどのように当事者問で配分されるべきか、売買契約ではっきりさせておくように勧める」と述べており、契約で特に合意するよう勧告している。
 これは、欧州では、FCA条件において、積地でのTHCに物品の運送人への引渡し後の諸掛のみならず、空のコンテナの売主への搬送賃など、引渡し前の諸掛も含むことがあり、THCを引渡しの前後で分割することは困難なために、売買契約においてTHCを誰が一括して負担するかを定めることが望ましいとの考え方によるものである。この場合の具体的な契約上の表現としては、“FCA costs up to ship’s side (or ship’s tackle) for seller’s account unless included in freight.”などが考えられる。
 私見では、THC(Terminal Handling Charge Container Handling Charge Empty Container Chargeなどのいろいろな呼び名があるが、ここではTHCと総称することにする)は、コンテナが出現する以前には存在しなかった諸掛であり、本来は運賃の一部を構成するものと思われるが、船会社は、運賃本体の値上げが思うに任せないため、運賃とは別建てで徴収して、少しでも採算を良くしようとしているものである。THCは、日本では、まず輸入から導入されたが、最近では、定期コンテナ航路の殆どの同盟が、輸出入ともTHCを徴収するようになった。同盟のない航路・または同盟が休眠状態の航路でも、各船会社ベースでTHCが課されており、また、同盟がTHCを導入している航路では、盟外船もこれに追従している。THCは、いまや止むを得ない諸掛として、荷主に認知されつつあるのが、実状である。
 THCについて、インコタームズは、直接的には運送契約上の問題であって、売買契約の問題ではないというスタンスをとっている。しかし、運送契約に含まれているか否かによって、当事者の売買契約上の義務に影響してくる。  
  これをインコタームズのコンテナ取引条件のおのおのについて、分析すると次の通りである。なお、THCは、積地と揚地の双方で船会社によって徴収されることがあるが、世界の各地域、同盟によって異なるので、必ず徴収されるとは限らない。
 FCA条件では、買主は、物品が運送人に引渡された時から、物品に関する一切の費用を負担すべきものとされているから、物品の引渡し後に発生するTHCは買主の負担と考えられる。しかし、積地におけるTHCが運送契約上買主の負担とされておらず、運送契約から切り離されて請求される場合には、誰が支払うべきかについて、売買当事者間で争いが起こるかもしれない。したがって、THCの負担者を売買契約で明確に決めておくべきである。揚地におけるTHCは、当然、買主の負担である。
 CPTおよびCIP条件では、売主は、運送契約を締結し、運送契約から生ずる運賃その他の一切の費用を負担すべきものとされているから、THCは、運送契約上、売主の負担とされている限り、売買契約上も売主の負担と考えられる。
 揚地におけるTHCは、運送契約上売主の負担とされていない場合には、インコ夕一ムズでは、売買契約上、買主の負担となる。しかし、この場合の買主のTHC支払い義務について、売買当事者間で争いが起こるかもしれない。したがって、この場合もTHCの負担者を売買契約で明確に決めておくべきである。
 一方、コンテナ詰の物品が、本船への船積みに先立って、運送人の置場などで運送人に引渡されているにも拘わらず、伝統的な取引条件であるFOBCFRまたはCIFが使用される場合には、次のように考えられる。
 FOB条件では、売主は、物品が本船の手すりを越えるまで一切の費用を負担するので、物品が運送人に引渡されてから本船に船積みされるまでに発生する積地におけるTHCは、当然、売主の負担となる。揚地におけるTHCは、買主の負担である。
 CFRCIF条件では、売主は、船積みまでの費用と、運送契約で売主の負担とされている運賃その他一切の費用を負担するものとされているので、積地のTHCは、当然、売主の負担であり、揚地でのTHCも運送契約に含まれている限り、売主の負担となる。揚地でのTHCは、運送契約に含まれていなければ、買主の負担となるが、売買契約で明確にしておくべきである。
 要するに、THCが運賃の一部か否かという議論は別として、現実にかかる諸掛が発生し、船会社が支払いを要求している以上、後日の紛争を避けるためには、売主または買主の何れが負担するかを売買契約ではっきりと合意しておくことが必要である。



EBSYAS
 アドバイザー仲間の星野清さんが著した「TRADE TERMS雑感」によると、中国でのフォワーダーは貨物集荷の過当競争で売主からFreightを徴収せず、その埋め合わせに日本でEBS(Emergency Bunker Surcharge)YAS(Yen Appreciation Surcharge)等の名目で、Freightに見合う金額を買主から徴収している。EBSYAS等は税関ではFreightと解釈するが、船会社は国内費用との見解である。      
 











 


































インコタームズ2000
 
 インコタームズ 2000は、2011年1月1日よりIncoterms 2010に代わる。参考まで、インコタームズ 2000の13条件は、下記の通りである。  

Eグループ
出 荷 

EXW

Ex Works (工場渡し)  

Fグループ
 主要輸送費抜き

FCA
FAS
FOB

Free Carrier (運送人渡し)
Free Alongside Ship (船側渡し)
Free On Board (本船積込み渡し)

Cグループ
主要輸送費込み

CFR
CIF
CPT
CIP

Cost and Freight (運賃込み)
Cost, Insurance and Freight (運賃・保険料込み)
Carriage Paid To (輸送費込み)
Carriage and Insurance Paid To(輸送費・保険料込み)

Dグループ 
 到 着

DAF
DES
DEQ
DDU
DDP

Delivered At Frontier (国境持込み渡し)
Delivered Ex Ship (本船持込み渡し)
Delivered Ex Quay (埠頭持込み渡し)
Delivered Duty Unpaid (関税抜き持込み渡し)
Delivered Duty Paid (関税込み持込み渡し)



          インコタムズ2000における売主と買主の義務

A 売主の義務

B 買主の義務

A1

契約に合致した物品の提供

B1

代金の支払い

A2

許可、認可および手続き

B2

許可、認可および手続き

A3

運送および保険契約

B3

運送および保険契約

A4

引渡し

B4

引渡しの受取り

A5

危険の移転

B5

危険の移転

A6

費用の分担

B6

費用の分担

A7

買主への通知

B7

売主への通知

A8

引渡しの証拠、運送書類
または同等の電子メッセージ

B8

引渡しの証拠、運送書類
または同等の電子メッセージ

A9

検査−包装−荷印

B9

物品の検査

A10

その他の義務

B10

その他の義務

  Term:@期限、期間、期日 A術語、専門用語 Bpl.(契約・支払いなどの)条件、約定




インコタームズの沿革

インコタームズ2000」に代わる「Incoterms 2010」が2011年1月1日より発効している。「Incoterms 2010」の規則の数は、「インコタームズ2000」の13種類から11種類と少なくなる。
 インコタームズの最初の制定は1936年、53/67/76/80/90年と改訂を重ね、「インコタームズ2000」を経て「Incoterms 2010」となっている。

@1936年:ICC 11種類のトレードタームスの解釈基準発表
A1953年:改定 Free or Free Delivered は地域的慣習であるとして削除 Free…(named Port of shipment)も削除
     して
9種類
B1967年:DAF(Delivered At Frontier)DDP(Delivered Duty Paid)が規定された。(11種類)
C1976年:FOA(FOB Airport)が規定された。(12種類)
D1980年:コンテナ船等を対象にしたFree Carrier (FRC) Freight or Carriage and Insurance Paid To (CIP)を規定
     (
14種類)
E1990年:DDU(Delivered Duty Unpaid)が規定される一方、FRCFOT/FORFOA3種がFCAに統合、DCP
        CPT
と改称(13種類)
F2000年:13種類
G2010年 : DDU、DEQ、DES、DAFが削除、DATとDAPが新たに規定された。(11種類)


参考まで、1936年版と1953年版は、次のようになっている。
INCOTERMS 1936
1.Ex Worksex factoryex millex plantationex warehouseetc
2.FORfree on rail)…(named departure Point)FOTfree on truck)…(named departure Point)
3.Free…(named Port of shipment
4.FASfree alongside ship)…(named Port of shipment
5.FOB(Free on board)…(named Port of shipment
6.CF (cost and freight)…(named Port of destination
7.CIFcostinsurancefreight)…(named Port of destination
8.Freight or Carriage paid to…(named Point of destination
9.Free or Free Delivered…(named Port of destination
10.EX Ship…(named Port
11.Ex Quay…(named Port

INCOTERMS 1953
1.Ex Worksex factoryex millex plantationex warehouseetc
2.FORfree on rail)…(named departure Point), FOTfree on truck)…(named departure Point)
3.FASfree alongside ship)…(named Port of shipment
4.FOB(Free on board)…(named Port of shipment
5.CF (cost and freight)…(named Port of destination
6.CIFcostinsurancefreight)…(named Port of destination
7.Freight or Carriage paid to…(named Point of destination
8.EX Ship…(named Port
9.Ex Quay…(named Port























FOB − 伝統的貿易の原点
 FOBとはFree on Boardの略で、日本語では「本船渡し」または「本船積込み渡し」と呼ばれる。関税法施行令においては、「本船甲板渡し」という用語が用いられており、Free on Boardの訳語としては適訳である。
 船荷が甲板に降ろされた時点(on board)で、物品の所有権を表す船荷証券が船会社より発行される。船荷証券は、貿易取引の手段として長い歴史をもつ信用状取引の根幹をなす最も重要な書類である。また、貨物海上保険においても、FOBまたはCFR(C&F)契約の場合、保険期間の開始時期は、貨物が本船に船積みされた時となっている。FOBは伝統的な貿易の原点といってよい。
 CIF契約の場合は、Warehouse to Warehouse Clause(倉庫間約款)が適用される。

 FOBの同類にはC&FCIFがある。C&Fについては、インコタームズではCFRという標準略語を使用すべし、としている。
 
従来のインコタームズにおけるFOBの解釈では、売主から買主への「危険の移転」と「費用の分担」の分岐点はon board ではなく本船の手すり(ships rail)を通過する時点になっていたが、Incoterms 2010においては、“物品の滅失または損傷の危険は、物品が本船の船上に置かれた (on board)時に移転し、買主は、その時以降、一切の費用を負担する。”となった。
 FOBの解釈はルールにより異なる。アメリカ貿易定義では6通りのFOBがある。本船渡しとするときはFOB Vessel としなければならないなど、米国特有の使い方になっている。また商品によっては、船荷がon boardしないものがあり、その商品独自のFOB条件が使われる。下記は原油のTitleRiskの移転時点を規定する契約条項の一部である。
…..and Title shall vest to the Buyer, when the crude oil passes the flange connecting the pipeline or delivery hose of the Seller to the intake pipe of the tanker, at which point the Seller’s responsibility shall cease and the Buyer shall assume all risk of loss and damage, …




所有権の移転
 「所有権は、危険とともに移転する」というのが売買の原則であるが、所有権の移転についてインコタームズは特に規定していない。危険負担や保険事故の場合の求償、物品に対する当事者の権利と損害賠償について、他に規則や決まりがあり、あるいは取り決めていれば、所有権の移転について当事者はあまり関心を持たない。物品の引渡しと代金の支払いが終われば、いつの間にか移転というのが実務の実感である。
 「所有権は、危険とともに移転する」という売買の原則をインコタームズに適用させるならば、EXWとF類、D類の取引においては、所有権は危険とともに移転すると考えてよい。C類で契約した場合の所有権移転については、所有権を受益権と担保権とに分割するという考え方がある。受益権は本来の売買の原則通り、FOB時点で危険とともに移転するが、担保権は船荷証券によりひとまず売主に留保され、決済によってはじめて買主に移転される、という解釈である。
  参考:「貿易取引入門」新堀 聡著 日本経済新聞社








































FOBFCAFree Carrier
 コンテナ輸送が主流になった今日、貨物に対する危険負担の分岐点は、在来型本船のFOBからコンテナ・ヤード運送人渡し(FCA)が多数を占めるようになった。
 FCA条件の引渡しは、引渡し場所が売主の施設の場合、物品が買主の受取り車輌に積込まれた時に完了する。その他において、例えばコンテナ・ヤードの場合、物品が売主の車輌から荷下ろしされない状態で、買主または買主の代行(ターミナル・オペレーター)の処分にゆだねられた時に完了する。運送人に引渡す条件で、本船の船上で引渡しが行われる場合には、FOBを用いる。
 FOBFCAの一番大きな相違は、FOBの場合は必然的に積込船荷証券(On Board B/L)の発行になるが、FCAの場合はコンテナ・ヤードの受取り(Dock Receipt =D/R)であり、B/Lは受取船荷証券(Received B/L)である。信用状取引の場合、Received B/Lは拒絶されるので、船積後On Board Notationを付記することで積込船荷証券にする必要がある。
 コンテナ輸送は今や在来船利用の輸送を上回っているが、契約上ではコンテナ輸送型のトレード・タームスであるFCACPTCIPよりも在来型のFOBCFRCIF建てが多く使われている。これに対してインコタームズFOBCFRCIFは、物品が本船の船上に置かれた場合にだけ使用すべきものと強調している。
 


FCAにおける危険負担 
 アドバイザー仲間で現役の通関士である星野清さんが著した「TRADE TERMS雑感」に下記のような記事があったので、紹介する。

 FCAの場合、CYで売主から買主へ危険移転するが、売主の危険は完全になくなった訳ではなく船積まで残っている。
 売主は、CYから船積までの危険があることを想定して対処方法を考えなければならない。事故が発生した場合、買主側(買主、船会社等)だけで、船積前の限られた時間的制約のなかで、事故処理することは困難である。買主は売主側(売主、海貨業者等)に事故処理の協力要請をする。売主はFCAを根拠に拒否することは可能かもしれないが、慣習上、協力要請を受けざるを得ない。
 INCOTERMSにより買主へ危険が移転、契約上または法律においても買主へ所有権が移転しているので、売主は事故責任はないと主張しての非協力的な態度は、顰蹙、反発を受け、関係業界より何らかの制裁を受ける。事故発生時には当事者相互の協力が必要である。
 一方、事故処理を引き受けることは、危険負担を取ったことになる。事故処理に要した費用全額を売主は買主から回収しなければならない。買主との交渉が難航し、売主もある程度の費用負担することで妥協するのが実情と思う。 その費用負担の捻出方法がFCAの場合、下記のように面倒である。
1.保険で処理
FOBであれば、FOB保険をかけられるが、FCAの場合、CYで買主に危険が移転しており、売主は船積までの保険が掛けられない。
2.社内リスク
FOBであれば、船積までの費用/危険は社内において認知されているが、FCAの場合、CYから船積までの費用/危険を取ることの理解は得にくい。買主との交渉が不手際であると担当者がマイナス評価を受ける。

 FCAを使用している売主は船積地でのTHCをなぜ支払うのかも疑問である。CYでの引渡後の費用であると主張し、買主に負担させるべきである。FCAを使用しながら、費用/危険負担が曖昧で、FOBと差異はないと思えるのに、FCAにした場合、保険、社内リスクの点でFOBより不都合である。
 理論的には、FCAは船積前のCYで買主に危険移転するので、売主の危険区間はFOBと比較して空間及び時間において短いので売主にとっての危険が減るが、実務的には逆に増えると考えた方がいい。
 神戸地震で、FOBの売主は被害を受けたが、FCAの売主は貨物が損傷しても買主に危険移転しているので無事代金を回収できたとFCAを推奨した。売主の代わりに買主が被害を受けたのであり、その後の取引関係は続かない。売主/買主両者の損失を防ぐ為に保険等で対処すべきである。
 一般論であるが、当該国に住んでいる売主が輸出通関、本船手配、事故処理、貨物管理する方が実情に即している。
FCAの場合、理論上、CY−船積の間において買主が事故処理、貨物管理をすることになるが、地理的に離れている買主が遠隔地から行うのは困難である。 
 CY−船積の間は、理論上、買主の管理下であっても、実務上は売主の貨物管理下である。決済が前払い条件で、船積前に入金確認ができなければ、FCAであっても売主は船積前ならば船積を取りやめ、CYから貨物を引き取れる。
 FOBにおける売主と買主の危険移転の曖昧な区間(SHIP'S RAIL−ON BOARD)に比較して、FCAのCY−船積の曖昧な区間は、距離と時間が長いので事故処理の対処が複雑になる。

















































プロジェクト・ファイナンス
 最近は、あまり聞かなくなったが、オイル・ショック1970年代に始まり、90年代にかけて、プロジェクト・ファイナンスという融資形態は、大型の資源開発やプラント建設への資金調達手法として時代の寵児であった。
 1980年代初頭、私は、ノン・リコースとかオフ・バランス・シートという聞き慣れない用語を使った石油精製施設プロジェクトに取り組んだことがある。non-recourse financeoff-balance sheet financeも、プロジェクト・ファイナンスの形態から、そのように呼ばれることが多い。
 プロジェクト・ファイナンスとは、端的に言えば、「施設完成後の事業収益で借入れの元利を返済する融資方式」である。通常のコーポレート・ファイナンスの場合、一般には物的な担保を取り、加えて、ローンは遡及権(リコース)付きで組まれる。これに対し、プロジェクト・ファイナンスの場合、担保になっているのは、その事業の予想収益であり、ローンは遡及権を付けないノンリコース・ローンになっている。(実際には、リスク対応の諸々の措置を施すのが通常なので、limited recourse financeとなっている。)
 手許に東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)国際プロジェクト部法務室が纏めた「国際プロジェクト・ファイナンスの実務と法律問題」と題する小冊子がある。銀行がプロジェクトに参加するという立場での編集であり、おそらく1980年代の発行と思われるが、テイク・オア・ペイ契約、アン・インコ(nincorporated Joint Venture)などの用語の解説も含めて、プロジェクト・ファイナンスを理解するのに有用な資料である。






































償還請求権 (Recourse)ForfaitingFactoring

1. 償還請求権付信用状と償還請求権なし信用状

(1)償還請求権付信用状(With Recourse L/C)とは、手形の所持人(この場合買取銀行)が、不渡りのとき振出人に償
 還を請求できる信用状をいう。信用状は、償還請求権付信用状が通例である。

(2)償還請求権なし信用状(Without Recourse L/C)とは、手形が不渡りとなった場合でも、すでに買取りによって支
 払われた金額を振出人が償還しなくてよい信用状をいう。確認信用状
confirmed L/C)は償還請求権なし信用状で ある。

 取消不能信用状によって振出された手形の名宛人が引受けあるいは支払い不能となって手形が不渡りになり、買取銀行が手形振出人(売主)に償還請求するケースの事由は下記が考えられる。
(1)発行銀行の破産あるいは支払国における為替管理。
(2)信用状条件に不一致や疑義があれば、手形の発行銀行は手形の引受あるいは支払を拒絶することがある。

2. 買取銀行と売主の関係−手形償還請求権
 買取銀行は手形法上、手形振出人(売主)に対する手形所持人の権利を取得する。名宛人が手形の引受、支払を拒絶した場合、売主に償還請求し、売主は償還義務を免れない。
 英米手形法の規定では、Irrevocable Without Recourse L/C にもとずいて振出された手形面に無担保文句(without recourseまたはSans recours)の記載があれば、振出人は償還義務を免れる。日本の手形法第9条第2項は引受無担保文句を認めているが、支払無担保文旬の記載はないものとみなされ、同第89条は手形の方式については行為地法による旨を規定しているから、日本ではWithout Recourse L/Cの実効は乏しい。
 *無担保文句(手形上の責任を負わない旨の文言)

3. Without recourse to drawer (無担保文句)
 英米法による無担保文句(引受支払を含む)の為替手形への記載方法は次のようになる。
(1)本文にPay to (payee) or order without recourse to me (sans recours)(at his risk)
(2)または手形面余白にwithout recourse(to drawers)
参考:「貿易と信用状」旧東京銀行貿易課著 実業之日本社 
    「基本 貿易取引」大橋正瑠著 白桃書房

4. 振出人の担保責任
 手形法第9条の「振出人ハ引受及支払ヲ担保ス」の意味は、引受及び支払に責任を負うということである。支払人が満期に手形を支払わないとき、および支払人が引受けを拒絶したとき、為替手形の所持人は振出人に対して手形金額の支払いを請求できる。為替手形の振出人は、約束手形の振出人と違って、手形金額の支払義務者ではないが、償還義務または遡求義務がある。

*手形法
第九条 振出人ハ引受及支払ヲ担保ス
出人ハ引受ヲ担保セザル旨ヲ記載スルコトヲ得支払ヲ担保セザル旨ノ一切ノ文言ハ之ヲ記載 セザルモノト看做ス

第八十九条 為替手形上及約束手形上ノ行為ノ方式ハ署名ヲ為シタル地ノ属スル国ノ法律ニ依リ之ヲ定ム
2 為替手形上及約束手形上ノ行為ガ前項ノ規定ニ依リ有効ナラザル場合ト雖モ後ノ行為ヲ為シタル地ノ属スル国ノ法律ニ依レバ適式ナルトキハ後ノ行為ハ前ノ行為ガ不適式ナルコトニ因リ其ノ効力ヲ妨ゲラルルコトナシ
3 日本人ガ外国ニ於テ為シタル為替手形上及約束手形上ノ行為ハ其ノ行為ガ日本ノ法律ニ規定スル方式ニ適合スル限リ他ノ日本人ニ対シ其ノ効力ヲ有ス

*手形法における「手形」とは通例、為替手形を指す。
 約束手形は、振出人自らが一定金額の支払を約する形式の手形(手形法第75条以下)で、振出人は手形の発行者たるとともに、主たる債務者として為替手形の引受人と同一の義務を負う(同法781)。そのため支払人の存在を要せず、手形引受がなく、引受拒絶にもとづく遡求、参加引受、複本も存しない。しかし他の点は為替手形とだいたい同様なので、基本手形、一覧後定期払手形に関し特別規定(同法75条、76条、782)を置いているほか為替手形の規定を準用する(同法77)
 為替手形と約束手形は、いずれも手形上の権利は、原因債権の内容やその存否そのものと関係なく(無因性)、証券の作成によってあらたに創設され(設権性)、その内容も専ら証券の記載によって決せられ(文言性)、法の要求する事項の記載を欠くときは手形としての効力を生ぜず(要式性)、その譲渡は指図文句の有無にかかわらず原則として裏書によって譲渡することができ(法律上当然の指図証券)、権利の行使に当たっては証券の呈示を要する(呈示性)とともに、証券と引換えでなければ債務の支払を要しない(受戻性)ことなどは両者は同様である。それゆえに、手形法は、為替手形には詳細に規定し、約束手形については3ヶ条の特別規定を設けるのみで、その大部分は為替手形の規定を準用している。

フォーフェイティング(forfeiting)
 フォーフェイティングとは、L/C確認・引受と同じく、輸出者の売掛債権回収のリスクを軽減する目的で、買取銀行(フォーフェイター)が、為替手形の名宛人(L/C発行銀行や代金支払銀行等)による引受済手形であることを条件として、輸出者が振出した信用状付中長期延払い為替手形を、手形の遡及権(償還請求権)の行使を放棄して、すなわちノン・リコース(Non-Recourse)で買取る取引のこと。期日に万一不払い事故が発生しても、輸出者は買戻し義務を負わない。輸出手形の買取依頼人には支払期日までの金利が請求される。
 ジェトロ貿易投資相談Q&Aには、「フォーフェイティングについて」という解説が掲載されている。

ファクタリング(factoring)
 ファクタリングとは、顧客であるメーカー、商社などが取引先に対して持つ売掛債権を、償還請求権の行使を放棄して、すなわちノン・リコース(Non-Recourse)で買取ることにより、顧客に信用供与を行うと同時に売掛債権の回収を行う機能である。こうした機能を果たすことを業とする会社をファクター(債権買取業者)と呼ぶ。
 ジェトロ貿易投資相談Q&Aには、「国際ファクタリングの仕組みとメリットについて」という解説が掲載されている。

 



































船荷証券の機能
 船荷証券は次のような機能をもっている。
(1)船長または船主の代理人として正当な権限を与えられた者が署名した貨物受取証(Receipt of Goods)である。
(2)運送人と荷主との間で協定した運送契約(Contract of Carriage)を示す証拠書類である。船腹の予約のとき運送
 契約がなされたとみなされ、船荷証券は運送契約書そのものではない。

(3)船荷証券に記載された物品を代表する権利証券(Document of Title)である。権利証券の所有者は、券面に記載さ
 れた物品を自由に処分することができ、船荷証券以外には倉荷証券
(Warehouse Receipt)がある。英米では権利
 証券、日本では有価証券といっている。仕向地で権利証券としての機能を生かすために、船荷証券ではその正
 当な所持人
(bona fide holder)にこれと引換に積送品を引渡すことを約している。たとえば次のような文言が入っ
 ている。
  "One of the original Bills of Lading must be surrendered duly endorsed in exchange for the Goods or Delivery Order."

船荷証券の法的性質
(1)要因証券である。船荷証券は物品を船積または船積のために受取ったという原因があってはじめて発行される
 ものである。この点原因がなくとも発行される手形や小切手と区別される。

(2)文言証券である。運送人は、船荷証券の善意の所持人に対し、証券記載の文言に関して責任をもつ。逆に、そ
 の所持人は証券記載の文言に従って権利を主張できる。

(3)要式証券である。厳重ではないが、船荷証券の本質をくずさない程度の一定の事項を列挙しなければならない
。法定要件としては、@法定記載事項の記載、A権限のある者の署名、がある。

(4)債権的証券である。船荷証券の所持人はこれと引換に物品の引渡しを請求できる。権利の利用と証券の占有と
 を絶対に分離することができない。

(5)流通性(negotiability)を持ちうる。指図人式の場合は高度の流通性をもっており、記名式でも、裏書譲渡の禁止
 文言がないかぎり、裏書によって譲渡できる。


   出典:大崎正瑠「基本貿易取引」白桃書房

 




Surrendered B/L
 コンテナ船などの高速化により、中国や韓国、台湾などには出航後23日で本船が到着してしまう一方、B/Lは仕向け地に郵送されたり、決済のために日本や輸入地の銀行を経由して処理される結果、荷主は貨物をすぐに引取れないという事態が発生する。これが「船荷証券の危機 (The B/L Crisis)」または「速い船の問題 (The Fast Ships Problem)」と呼ばれる現象である。
 早く貨物を引き取りたい荷受人のため、荷送人の白地裏書を受けたB/L全通を、B/L発行会社の元地すなわち船積地で回収し、荷受人がB/Lを提示しなくても貨物を受取れるようにアレンジすることをB/Lの元地回収(surrender)といい、元地回収されたB/LSurrendered B/Lという。
 surrender[法律]<財産>を引き渡す;(期限前に) <権利など>を放棄する;降伏する
(1) Surrendered B/Lは、送金ベースによる貨物代金決済に利用されるが、いわゆる船積書類ではない。
(2)
担保権が無いから、銀行は原則として扱わない。
(3)統一規則でも定めていない。 

 具体的手続きとして、通常のB/Lが発行された後、荷送人からの元地回収の依頼により発行されたオリジナルB/L全てに“SURRENDERED”の印が押される。その際、荷送人の確認の意味で、原則荷送人に裏書きをしてもらう。オリジナルB/Lは船会社に提示(回収)され、荷送人にはFirst Originalのコピーが証拠として渡される。船会社はSurrendered B/Lであることを、陸揚港に対して電子メール等により連絡する。荷受人は必要な諸費用を払い、貨物を保税地域から受け取るために必要となるDelivery Order(D/O)を発行してもらう。Surrendered B/Lは元地で回収されるため、荷送人にとってはオリジナルB/Lの送付は不要であり、B/Lコピーを荷受人にFAXするだけでよく、荷受人もARRIVAL NOTICESurrendered B/Lであることを確認できる。荷受人は輸入貨物を引取るために船会社等に提出する書類はない。(資料:ジェトロ貿易投資相談Q&A No.A-010716
 下記は、“SURRENDERED”の印が押されたB/Lの実例である。

        

 
 











協会貨物約款 (Institute Cargo Clause)
 貨物海上保険は、ロンドン保険者協会(Institute of London Underwriters)が制定した協会貨物約款(Institute Cargo Clause = ICC)が一般的に使用されている。また保険証券にはLloyd’s S.G. Policy(SGフォーム)1982年改訂のMARフォームがある。英国ではMARフォームに統一されているが、日本では新旧両フォームが併用されている。旧約款の基本条件としてオール・リスク担保(A/R= All Risks)、分損担保(WA = With Average)、分損不担保(FPA = Free Particular Average)の3種類があり、全損のみ担保 (TLO = Total Loss Only)という保険条件もある。新約款では、A/RICC(A)WAICC(B)FPAICC(C)のように改訂されている。
 オール・リスク担保は、基本的なマリン・リスクの他、特殊な追加危険(Extraneous Risks)をカバーするものである。ただしオール・リスクといっても戦争危険、ストライク危険は担保しておらず、戦争危険、ストライク危険は特約条件として別途付保する必要がある。

S.G. Form本文記載の担保危険をイタリック書体約款で免責
 S.G.フォーム保険証券の本文は、英国における古い様式をほとんどそのまま踏襲しているため、古風で難解な文言が多用されている。貨物海上保険契約の実情に適合すべく、時代と共に補足・改訂が行われてきた。証券表面にイタリック書体約款等が加えられ、さらには裏面にも時代に応じた新しい約款が幾つも追加された。原則として、新しい約款が古いものに優先して適用されている。
 本文で列記されている保険者が担保する危険には、「海固有の危険」と並べていわゆる「戦争危険」に相当する危険も担保されているが、証券表面に書き加えられたイタリック書体約款では、「戦争危険」が免責となっており、加えて「同盟罷業、一揆、暴動の類(SRCC)」も免責されている。
*「海固有の危険(Perils of the Seas)」:英国海上保険法は「海の偶発的事故または災害(casualties) のみを指し、
  風波の通常の作用を含まない」と定義。
SinkingStrandingBurningCollision (SSBC)と風波の通常の作用で
  はない荒天
(heavy weather)による浸水・荷崩れ・貨物の波さらいなどが挙げられる。

S.G. Form本文 (Policy Body)
Touching the Adventures and Perils which the Assurers are contended to bear and do take upon them in this Voyage, they are of the Seas, Men-of-war, Fire, Enemies, Pirates, Rovers, Thieves, Jettisons, Letters of Mart and Counter-mart, Surprisals, Taking at Sea, Arrests, Restrains and Detainments of all Kings, Princes and Peoples, of what Nation, Condition, or Quality soever, Barratry of the Master and Mariners, and of all other Perils, Losses and Misfortunes that have or shall come to the Hurt, Detriment, or Damage of the said Goods and Merchandises, or any part thereof.

 本航海において保険者が満足して担保し、かつ引受ける危険は次の通りである。海固有の危険、軍艦、火災、外敵、海賊、漂盗、強盗、投荷、捕獲免許状、報復捕獲免許状、襲撃、海上における占有奪取、いかなる国籍・状況または性質であることを問わずすべての国王、君主および人民の強留・抑止および抑留、船長および海員の悪行、および上記貨物および商品またはそれらの一部に対して損傷を生ぜしめたか、または生ぜしめるであろうその他一切の危険、滅失および不幸である。
 Perils of the Seas=海固有の危険:英国海上保険法 (MIA)は「海の偶発的事故または災害(casualties) のみを指
  し、風波の通常の作用を含まない」と定義。
SSBC風波の通常の作用ではない荒天(heavy weather)による浸水・ 荷崩れ・貨物の波さらいなどが挙げられる。

Italicized Clause (免責クローズ)
1. Warranted free of capture, seizure, arrest, restraint, or detainment, and the consequences thereof or of any attempt thereat; also from the consequences of hostilities or warlike operations, whether there be a declaration of war or not; but this warranty shall not exclude collision, contact with any fixed or floating object (other than a mine or torpedo), stranding, heavy weather or fire unless caused directly (and independently of the nature of the voyage or service which the vessel concerned or, in the case of a collision, any other involved therein, is performing) by a hostile act by or against a belligerent power; and for the purpose of this warranty power includes any authority maintaining naval, military or air forces in association with a power. 
 Further warranted free from consequences of civil war, revolution, rebellion, insurrection, or civil strife arising therefrom or piracy.

2. Warranted free from loss or damage

 (a) caused by strikers, locked-out workman, or person taking part in labour disturbances, riots or civil
   commotions ;

 (b) resulting from strikes, lockouts, labour disturbances, riots or civil commotions.


1.捕獲、拿捕、強留、抑止または抑留、ならびにこれらの結果またはこれらに対する企図の結果を担保しない。 また宣戦の有無を問わず、敵対行為または軍事的行動の結果を担保しない。しかし本免責約款は、交戦国によ
 りもしくは交戦国に対して行われた敵対行為によって直接に(かつ当該船舶、または衝突の場合においては衝突
 に関係のある他の船舶、が遂行しつつあった航海または任務の性質とは無関係に)生じたのでない限り、衝突、
 固定または浮流している物体(機雷または魚雷を除く)との接触、座礁、荒天または火災を免責するものではな
 い。この免責約款に関する限り、「国」には、ある国と連係して陸海空軍を保持するあらゆる政権を含む。
 さらに、内乱、革命、反乱、またはこれらから生じる国内闘争の結果、または海賊行為を担保しない。

2次の事由による滅失または損傷を担保しない。
 (a) 罷業者、職場閉鎖を受けている労働者、労働紛争、暴動または騒乱に加わっている者によって生じたもの。
 (b) 罷業、職場閉鎖、労働紛争、暴動または騒乱の結果として生じたもの。

危険の種類
1.マリン・リスク =保険証券(S.G.フォーム)の危険約款(Perils Clause)に列挙の危険
(1) Perils of the Seas (海固有の危険)
 ア.Major Casualty (主要事故) SinkingStrandingBurningCollision
 イ.荒天による潮濡れ損等 (Heavy Weather due to Unusual Stress of Weather)
(2) Fire (火災)
(3)Pirates, Rovers, Thieves (海賊、強盗)
(4)Jettisons (投荷)
(5) Barratry of Master and Mariners (船長および船員の悪行)

2.特約約款
2−1 保険証券(S.G.フォーム)本文中の危険約款(Perils Clause)に非列挙の危険
Extraneous Risks (追加危険) ― All Risks (オールリスク担保)の特約
TPND = Theft, Pilferage & Non-Delivery (盗難、抜荷、不着)Rain and Fresh Water Damage (雨濡れ、淡水濡れ)HC = Hook, Oil, Grease, Mud, Acid, Contact with other Cargo (手鈎損、油濡れ、他貨物との接触)Breakage, Leakage, Shortage (破損、漏損、不足)Bending and/or Denting (曲げ、へこみ)Sweat and/or Heating (汗濡れ蒸れ損)Jettison and/or Washing Overboard (投荷、浪浚)Mildew & Mould (かび損)Rats & Vermin (鼠、害虫)Contamination (汚染)Rust (サビ損)Explosion (爆発)

2−2 保険証券
(S.G.
フォーム)本文のイタリック書体約款に規定された免責危険
(1)  捕獲拿捕不担保約款による免責危険 戦争危険を除外
(2) 同盟罷業、一揆、暴動不担保約款による免責危険 ― SRCCを除外

協会貨物・旧約款(S.G.フォーム)の場合

海損の種類

  損害の種類

填補の範囲の内容

保険の種類 

共同海損

共同海損

(1)共同海損犠牲損害(G.A. Sacrifices) 
(2)共同海損費用(G.A. Expenditure)
(3)
共同海損分担金(G.A.Contribution) 

F
P
A

WA

A/R

  

費用損害

損害防止費用(Sue and Labor Charges)/救助料 (Salvage Charges)/付帯費用

全損

特定分損

Sling Loss による1個毎全損 
Major Casualty(SSBC) による分損

荒天による潮濡れ損等 SSBC以外のMarine Risks に起因する分損 ( Franchise 付き)                

各種の付加危険

Extraneous Risks

 追加保険

  War Risks                                                         

 SRCC Risks                                                       

免責危険

(1) 被保険者の故意の不法行為                                        
(2)
航海の遅延 (Delay) に近因する損害または費用
(3) 貨物の固有の瑕疵または性質 (Inherent Vice or Nature) による損害
(4) 通常の損害 (Ordinary Wear & Tear)
(5) 荷作り不完全 (Insufficient Packing) による損害            

 (出所)輸入ビジネス教本 世界経済情報サービス

協会貨物・新約款 (MARフォーム)の場合                       

海損の種類

 損害の種類

填補の範囲の内容

保険の種類    

共同海損

共同海損

(1)共同海損犠牲損害(G.A. Sacrifices)  
(2)共同海損費用(G.A. Expenditure)
(3)
共同海損分担金(G.A. Contribution) 

 I
C
C

(C)

 I
C
C

(B)

 I
C
C

(A)

  

費用損害

損害防止費用(Sue and Labor Charges)/救助料 (Salvage Charges)/付帯費用

全損

特定分損

SSBCによる分損

SSBCによる分損(但し悪意による意図的損害)

全損

荒天遭遇による潮濡れ、荷崩れの全損

特定分損

荒天遭遇による潮濡れ、荷崩れの全損

Sling Loss による1個毎全損                

その他の分損

SSBC以外のMarine Risks、地震、焼失、落雷及び海固有の危険に該当しない水濡れ

荒天遭遇による荷崩れ

 X

SSBCによる分損(但し悪意による意図的損害)

 X

各種の付加危険

Extraneous Risks 

船会社の経済的破綻

   X

核兵器の使用による損害

   X

S.G.とはship and goodsMARmarineの略である。
Sling Lossとは、積込・荷下し・積替中の梱包1個ごとの全損をいう。(sling:つりあげ機)
*荒天遭遇による潮濡・荷崩れ:Sea-water Damage and Collapse of Cargoes by Heavy Weather
* Inherent Vice or Nature:固有の瑕疵または性質のこと。マリンリスクと追加危険に近因して発生する損傷は填補されるが、固有の瑕疵
 または性質
(バナナの腐敗など)は填補されない。

 


























 













ISO 9001とISO 14001
 EU市場との取引には取得が必要不可欠な条件といわれ、日本の企業にも広く浸透したISO 9001とISO 14001の登録証を下に例示する。
 登録証の両方とも、レターヘッドにPERRY JOHNSON REGISTRARS, INC.(PJR)とあり、右下にPJR、JAB、ANAB、RvA、UKASと記された5個のマークが表示されている。
 JAB(The Japan Accreditation Board for Conformity Assessment=日本適合性認定協会)、ANAB(The ANSI-ASQ National Accreditation Board=米国認定協会)、RvA(Raad voor Accreditatie=オランダ認定協会)、UKAS(United Kingdom Accreditation Service=英国認定協会)は、それぞれの国を唯一代表する認定機関(Accreditation Body)で、PJRは、数多くある検査機関(Inspection Body)の一つである。
  *ANSI(American National Standard Institute=米国規格協会)
  *ASQ (American. Society for Quality=米国品質協会)
 認定機関が国際規格を用いて、検査機関の能力を認めることを検査機関認定(Inspection Body Accreditation)と呼ぶ。PJR発行の登録証にはJAB、ANAB、RvA、UKASのマークがあることから、PJRはJAB、ANAB、RvA、UKASの認定を受けていることがわかる。ISO9001やISO14001などの登録書(認証証)が発給される仕組みにおいては、検査機関は認証機関(Certification Body)と呼ばれる。
 登録証の文面によると、ISO 9001の場合は、企業の製造プロセスの品質マネジメントシステム(Quality Management System=QMS)が、ISO 9001(規格)に適合しているとあり、ISO 14001の場合は、企業の製造プロセスの環境マネジメントシステム(Environmental Management System=EMS)が、ISO 14001(規格)に適合しているとある。製造プロセスではなく、事業所の環境マネジメントシステムが適合しているという例もある。
 マネジメントシステム規格(Management System Standard=MSS)とは、組織が方針及び目標を定め、その目標を達成するためのシステムに関する規格である。一般的に知られている規格とは、製品の形状や材質、単位や用語の標準化を意味するものなので、マネジメントシステム規格はなじみがうすいが、それでも、ISO 9001とISO 14001は広く知られるようになった。

     
     
 

ISO規格
  ISO規格は、電気分野以外のあらゆる分野の単位・用語などの標準化を推進する国際標準化機構(International Organization for Standardization)が定める規格である。電気分野の標準規格は国際電気標準会議 (IEC=International Electrotechnical Commission) によって策定される。
 ISO規格は、ねじや製図から鉄鋼、自動車、プラスチック、写真フィルム感度、あるいは食品、医療機器など多岐にわたっている。PL(製造物責任)法への関心の高まりを反映して、図記号・表示マーク、取扱説明書や警告などのISO規格あるいはISOガイドの重要性も増している。 
 安全分野におけるISO/IEC規格の重要性は、EU域内でのヨーロッパ統一規格(EN=European Norm)に基づくCEマーキングの強制添付措置が物語っている。ENのベースになっているのが、ISO/IEC規格である。CEマーキングとは、製品がEU指令の不可欠要求事項に適合しているかについて証明・表示するマークで、"ヨーロッパの法律に適合している"という意味のフランス語 "Conformite Europeenne" の頭文字をとった略語である。
 ISO/IECに、日本は日本工業標準調査会(JISC = Japanese Industrial Standards Committee)が加入している。なおISOは International Organization for Standardizationの頭文字ではなく、ギリシャ語で相等しいという意味の "isos" に由来している。



































 
 


ソフトウェアの輸出
 ソフトウェアを開発した個人企業より、“開発したソフトウェアを香港の日系メーカーに売る契約をしたところ、次の条件が課せられているが、どのように対処すべきか?”との相談を受けた。 

“輸出する技術が破壊兵器等に関係するもの(輸出令別表第1に掲げる貨物に関係する技術)に該当しないことの確認が必要である。そのためには、パラメーターシートを作成し、税関に提出しなければならない。ソフトウェア納品時には、そのパラメーターシートも添付すること。”

 輸出者の法令遵守(コンプライアンス)が契約条件になっていることから、相談者とともに経済産業省の安全保障貿易管理課に確認を求めた。
 
 大前提として、ソフトウェアが使用される貨物が、「リスト規制貨物(輸出令別表第1の1項から15項まで)」もしくは「キャッチオール規制貨物(輸出令別表第一の16項)」かどうかを確かめなくてはならない。当該ソフトはコンピューター・ソフトとのことで、コンピューターはリスト規制対象貨物(輸出令別表第1の8項)である。したがって、当該ソフトの仕様・明細を吟味する必要がある。
 ソフトウェアは、ソフトのみの輸出の場合と製品に内蔵されたソフトの輸出の二通りのケースがある。後者の場合、製品が非該当で「輸出の許可」が不要であっても、内蔵しているソフトについてのパラメーターシート(該否判定書)を税関に提出することがある。
 ソフトウェアのみの輸出の場合、ソフトを搭載したCDを郵送なり宅配便で送るか、あるいはダウンロードやメールに添付して送るかのいずれかで、貨物の場合のような通関を伴わない。従って、税関へのパラメーターシートの提出はないのが普通である。
 ソフトウェアなど技術の輸出入は役務取引であって、「特定技術」の場合、経済産業大臣の「役務取引の許可」が必要になる。ソフトウェアの輸出に係わる「役務取引の許可」とは、外為法第25条第1項によるもので、“特定の種類の貨物の設計、製造又は使用に係る技術を特定の地域において提供することを目的とする取引”については経済産業大臣の「役務取引の許可」が必要と規定されている。開発されたソフトウェアが、「リスト規制貨物(輸出令別表第1の1項から15項まで)」もしくは「キャッチオール規制貨物(輸出令別表第一の16項)」に使用されることを目的としているならば、製品に内蔵されている場合はもちろんのこと、通関を伴わないソフトウェアのみの輸出でも、経済産業大臣の「役務取引の許可」を取得しなければならない。
 「役務取引の許可」を必要とする「特定技術」は、「外為令別表」に表示されており、仕様・明細は「貨物等省令」(15条から28条)に規定されている。
 「役務取引許可が不要の取引」の場合でも、パラメーターシートは用意しておくべきである。代金を銀行経由で受け取る場合に、銀行より「役務取引の許可」の呈示を求められることもありうるからである。
 相談者の開発したソフトウェアは、コンピューターに利用されるソフトなので、外為令別表の八項(コンピューター)で定められている技術に該当する。独自に作成したパラメーターシートにより、「貨物等省令」第20条に規定されるスペックに合致していないことから、「役務取引許可は不要」と判定した。ソフトウェアは、電子メールの添付ファイルにして納品し、パラメーターシートは別途郵送した。

なお、マイクロソフト社は、自社製品を日本から輸出しようとする顧客に対しパラメータシートを無償で提供している。また同社の技術開発の本拠地が米国であるため、同社製品の輸出は、日本経由の米国からの再輸出とみなされ、日本法とは別に米国商務省産業安全保障局が管轄する米国輸出管理令の規制を受ける。




中国向けソフトの輸出
 アドバイザーの専用MLに、カメラに組み込み3D視点に加工できるようなソフトを中国向けに輸出したいが、安全保障貿易管理上、どのように対処すべきか、という質問があった。これに対する安保専門家の回答は下記の通りで、指摘された条文にリンクできるよう加工してみた。

カメラは、輸出令別表第1の10項(4)なので、この仕様を定めている貨物等省令第9条と現物の仕様をメーカーの仕様書でチェックする。ソフトについては、外為令別表の10の項と貨物等省令第22条が対象となる筈である。

 貨物・技術ともに特例があるので、これらに該当すれば、許可は不要となる。特例については、貨物は輸出令第4条を、技術は貿易外省令第9条を参照願いたい。特に、ソフトの内のプログラム(機械語)は貿易外省令第9条第八号、第九号及び第十号が適用できないかどうかチェックしてほしい。



ソフトの輸出−ソフトをプログラムに組み入れ
 ある貿易相談会において、自社開発のソフトウェアを外国企業が開発したプログラムに組み入れることになったが、留意すべきことは何かとの質問があった。
 ソフトウェアなど技術の輸出入は役務取引である。「特定技術」の場合、経済産業大臣の「役務取引の許可」が必要になる。
 当該ソフトが組み入れられる対象がハードであれば、そのハードが「リスト規制貨物(輸出令別表第一の1項から15項まで)」もしくは「キャッチオール規制貨物(輸出令別表第一の16項)」かにより、「特定技術」かそうでないかを判定できる。
 一方、ソフトが組み込まれる対象がハードでなくプログラムの場合は、そのプログラムが何に使用されるかをチェックする必要がある。
 当該プログラムは、リスト規制対象のコンピューターに使用されると考えられるので、「外為令別表」八項(コンピューター)と「貨物等省令」第20条に規定されるスペックに基づき、「役務取引の許可」が必要か、あるいは「役務取引許可が不要の取引」であるかを判定する。




キャリアメディアを媒体とするソフトウェアの輸入
 日本の関税法には、ソフトウェアそのものを定義する関税区分がない。関税定率法の基本通達4−5によれば、ソフトウェアの輸入の場合、課税対象はソフトウェアを記録している媒体(キャリアメディア)となっている。キャリアメディアとは、磁気テープ、メタルテープ、磁気ディスク、カードその他これらに類するものでソフトウェアを運搬又は貯蔵するための物品である。キャリアメディアに記録されている状態での輸入であれば、自己使用・販売目的を問わず関税は無税であり、消費税(5%)のみ課税される。 


関税定率法の基本通達4−5
 (データ処理機器に使用されるソフトウェアを記録した媒体の評価)

データ処理機器に使用されるソフトウェアを記録した媒体の評価については、次による。
(1) 価上の取扱い
 ソフトウェアを記録している輸入媒体(以下「キャリアメディア」という。)の課税価格は、当該ソフトウェアの価格がキャリアメディアの価格と区別される場合はキャリアメディアの価格とする。
(2)
用語の意義
 この項において用いる用語の意義は、それぞれ次による。
イ.ソフトウェアとは、データ処理機器の運用に関係する計算機プログラム、手順、規則又はデータ処理機器に
  使用されるデータをいう。ただし、データ処理機器に組み込まれているもの又はサウンド、シネマチック及
  びビデオ・レコーディングは含まない。

ロ.キャリアメディアとは、磁気テープ、メタルテープ、磁気ディスク、カードその他これらに類するものでソ
  フトウェアを運搬又は貯蔵するための物品をいい、集積回路、半導体及び類似のデバイス並びにこれらの回
  路やデバイスを組み込んだ物品を含まない。

ハ.キャリアメディアの価格には、キャリアメディア自体の価格、ソフトウェアをキャリアメディアに記録する
   ための費用等を含む。

(3) 税関における確認の時期及び方法
 ソフトウェアの価格がキャリアメディアの価格と区別されているか否かの確認は、原則として当該キャリアメディアに係る納税申告の時、仕入書等の関係書類に基づいて行う。













































許可と承認
 許可と承認の使い方として、一般的には禁止制限されている行為を、行政庁が例外的に解除して適法に行えるようすることを「許可」と定義している。「承認」の対象となる行為は、許可の場合と異なり、原則的に禁止されている行為ではなく、行政庁による同意もしくは承諾といった意味合いのものが「承認」である。

輸出の許可
「輸出の許可」を必要とする貨物は、安全保障貿易管理の下で規制される貨物に限定される。すなわち、外為法48条第1項に基づく「輸出令別表第一」に掲載される貨物のみが、輸出の許可を必要とする。輸出許可申請書には、外国為替及び外国貿易法第48条第1項の規定により申請するという文言が記されており、申請書の書面上に記名捺印されて、申請者に戻れば、これが「輸出許可証」となる

*外為法第48条第1項
 国際的な平和及び安全の維持を妨げることとなると認められるものとして政令で定める特定の地域を仕向地とする特定
 の種類の貨物の輸出をしようとする者は、政令で定めるところにより、経済産業大臣の許可を受けなければならない。
*輸出令第1条第1項
 外国為替及び外国貿易法 第四十八条第一項に規定する政令で定める特定の地域を仕向地とする特定の種類の貨物
 の輸出は、別表第一中欄に掲げる貨物の同表下欄に掲げる地域を仕向地とする輸出とする。



輸出の承認 − 別表第二貨物、北朝鮮向け貨物および委託加工貿易原材料
 外為法第48条第3項および輸出令第2条第1項の規定により、「別表第二」に掲載される貨物、北朝鮮向けの奢侈品および委託加工貿易契約に基づいて輸出する原材料は、「輸出の承認」が必要である。
 例えば、「別表第二」貨物の場合、「輸出承認申請書」には、輸出貿易管理令第2条第1項第1号の規定により申請するという文言が記されており、申請書の書面上に記名捺印されて、申請者に戻れば、これが「輸出承認証」となる。

*外為法第48条第3項
  経済産業大臣は、前二項に定める場合のほか、特定の種類の若しくは特定の地域を仕向地とする貨物を輸出
  しようとする者又は特定の取引により貨物を輸出しようとする者に対し、国際収支の均衡の維持のため、外
  国貿易及び国民経済の健全な発展のため、我が国が締結した条約その他の国際約束を誠実に履行するため、
  国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与するため又は第十条第一項の閣議決定を実施するために
  必要な範囲内で、政令で定めるところにより、承認を受ける義務を課することができる。

*輸出令第2条第1項
 次の各号のいずれかに該当する貨物の輸出をしようとする者は、経済産業省令で定める手続に従い、経済産業
 大臣の承認を受けなければならない。
  別表第二中欄に掲げる貨物の同表下欄に掲げる地域を仕向地とする輸出
 一の二 別表第二の二に掲げる貨物(別表第二の一、三六、三九から四一まで及び四三から四五までの項の中欄
  に掲げる貨物を除く。)の北朝鮮を仕向地とする輸出

  外国にある者に外国での加工を委託する委託加工貿易契約(当該委託加工貿易契約に係る加工の全部又は一
  部が経済産業大臣が定める加工(以下「指定加工」という。)に該当するものに限る。)による貨物(当該
  委託加工貿易契約に係る加工で指定加工に該当するものに使用される加工原材料のうち、経済産業大臣が指
  定加工の区分に応じて定める加工原材料で当該指定加工に該当する加工に係るものに限る。)の輸出


 輸出令21項一号に基づく「別表第二」には、“国際収支均衡並びに外国貿易及び国民経済の健全な発展”という目的に沿って、国内需給確保物資、輸出秩序維持物資、輸出禁制物資、国際協定等による規制物資などが表示されている。
 輸出令21項一の二号により、北朝鮮を仕向地とする「別表第二の二」掲載の貨物の輸出には「輸出の承認」が必要である。これは、北朝鮮に対する「奢侈品」の供給を禁止することを目的とする国連安全保障理事会の決議に基づいており、「別表第二の二」に掲載される貨物は、原則として「奢侈品」である。
 また、輸出令2条1項二号に基づく輸出貿易管理規則第3条は、「輸出の承認」を必要とする委託加工貿易の加工原材料を指定している。(革、毛皮、皮革製品・半製品の原材料)
*輸出貿易管理規則
 (指定加工及び加工原材料)
 第三条 令第二条第一項第二号 の規定に基づき経済産業大臣が定める加工及び加工原材料は、次の各号に掲げる 加工及び当該加工の区分に応じ当該各号に掲げる加工原材料とする。
   削除
   革、毛皮、皮革製品(毛皮製品を含む。以下同じ。)及びこれらの半製品の製造 皮革(原毛皮及び毛皮
   を含む。)及び皮革製品の半製品


輸出貿易管理令・別表第二(輸出の承認が必要な貨物)
 輸出令第2条第1項に規定される「別表第二」貨物の輸出には、「輸出の承認」が必要である。別表第二に掲載される貨物は、国内需給確保物資、輸出秩序維持物資、輸出禁制物資、国際協定等による規制物資等に分類される。

令、規則

 規制地域

    内容

国内需給確保物資

輸出令2条1項1号
別表第二

全地域

配合飼料、せん・かば・ならの丸太、うなぎの稚魚等

輸出秩序維持物資

全地域

漁労設備付き船舶

輸出禁制物資

全地域

国宝、麻薬、偽造通貨、風俗を害する書籍等

国際協定等による規制物資

全地域

一部品目につき米国

(34)冷凍あさり、はまぐり、いがい(米国との衛生協定)(3637)ワシントン条約、(352)バーゼル条約、(35)モントリオール議定書 等

別表第二貨物の概要

項番

対象貨物の概要

規制対象地域

ダイヤモンド原石

全地域

一九

血液製剤 等

全地域

二〇

核燃料物質及び核原料物質 (使用済燃料含む)

全地域

二一

放射性廃棄物等

全地域

二一の二

放射性同位元素

全地域

二一の三

麻薬、向精神薬の原材料となる化学物質

全地域

二五

船舶 (漁船)

全地域

二八

ふすま、米ぬか、麦ぬか、魚粉及び魚かす

全地域

二九

配合飼料

全地域

三〇

はっかの種根及び苗並びにしいたけ種菌

全地域

三一

からまつの種子

全地域

三二

せん、かば 及びならの丸太

全地域

三三

うなぎの稚魚

全地域

三四

冷凍のあさり、はまぐり及びいがい

アメリカ合衆国

三五

フロン等(モントリオール議定書関係)

全地域

三五の二

(一) 特定有害廃棄物等、(二)廃掃法で定める廃棄物

全地域(南緯六十度の線以北の公海を除く。)

三五の三

有害化学物質(ロッテルダム条約、農薬取締法、毒物及び劇薬取締法、労働安全衛生法、薬事法、化審法関係)

全地域

三六

ワシントン条約の対象動植物及び派生物

全地域

三七

種の保存法対象貨物

全地域

三八

かすみ網

全地域

三九

偽造、変造又は模造の通貨、郵便切手及び収入印紙

全地域

四〇

反乱を主張し、またはせん動する内容を有する書籍、図画その他の貨物

全地域

四一

風俗を害するおそれがある書籍、図画、彫刻物その他の貨物

全地域

四二

麻薬及び向精神薬並び大麻及びその用具、あへんけしがら並びに覚せい剤原料

全地域

四三

国宝、重要文化財、重要美術品等

全地域

四四

仕向国における特許権、実用新案権、意匠権、商標権若しくは著作権を侵害すべき貨物又は原産地を誤認させるべき貨物

全地域

四五

知的財産権等を侵害すると認定された貨物

全地域

別表第二の二〇項 “核原料物質及び核燃料物質”は、正式には次のように規定されている。
“核原料物質及び核燃料物質(使用済燃料(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和三十二年法律第百六十六号)第二条第八項に規定する使用済燃料をいう。以下同じ。)を含む。以下同じ。)”
 つまり、使用済みの核原料物質及び核燃料物質は、リスト規制対象の“核燃料物質又は核原料物質”に該当しないため、「輸出の許可」は不要、ただし「輸出の承認」は必要ということである。
 輸出の許可」を必要とする別表第一二項(1)核燃料物質又は核原料物質のスペックは、次に掲げる貨物であって、経済産業省令で定める仕様のもの(一)核燃料物質又は核原料物質”とあり、ウラン若しくはトリウム又はその化合物を含むものが核燃料物質で、ウラン若しくはトリウム又はその化合物を含む物質であって、核燃料物質以外のものが、核原料物質と定めている。


輸入の承認、輸入公表と輸入割当
 輸入の場合、輸入令第3条、第4条および第9条の規定により、経済産業大臣が定めて公表する非自由化品目についての「輸入割当
(IQ=Import Quota)」という制度がある。非自由化品目(IQ品目)は「輸入の承認」が必要である。この他「輸入の承認」が必要な貨物は、輸入令第3条および第4条の規定により、経済産業大臣が定めて公表する“輸入の承認を受けるべき貨物の原産地又は船積地域その他貨物”がある。
*輸入貿易管理令
 (輸入に関する事項の公表)
 第三条 経済産業大臣は、輸入割当てを受けるべき貨物の品目、輸入の承認を受けるべき貨物の原産地又は船積
 地域その他貨物の輸入について必要な事項を定め、これを公表する。ただし、経済産業大臣が適当でないと認
 める事項の公表については、この限りでない。

 (輸入の承認)
 第四条 貨物を輸入しようとする者は、次の各号のいずれかに該当するときは、経済産業省令で定める手続に従
 い、経済産業大臣の承認を受けなければならない。

   当該貨物の輸入について第九条第一項の規定による輸入割当てを受けることを要するとき。
   当該貨物の品目について、貨物の原産地又は船積地域が前条第一項の規定により公表された場合において
  、その原産地を原産地とする貨物を輸入し、又はその船積地域から貨物を輸入しようとするとき。

   前二号に掲げる場合のほか、当該貨物の輸入について必要な事項が前条第一項の規定により公表されてい
 るとき。

 (輸入割当て)
 第九条 第三条第一項の規定により輸入割当てを受けるべきものとして公表された品目の貨物を輸入しようとす
 る者は、経済産業大臣に申請して、当該貨物の輸入に係る輸入割当てを受けた後でなければ、第四条第一項の
 規定による輸入の承認を受けることができない。ただし、輸入割当てを受けた者から輸入の委託を受けた者が
 当該貨物を輸入しようとする場合において、経済産業大臣が定める場合に該当するとき、又は経済産業大臣の
 確認を受けたときは、この限りでない。

  前項の規定による輸入割当ては、貨物の数量により行なう。ただし、貨物の数量により輸入割当てを行なう
 ことが困難であり又は適当でない場合には、貨物の価額により行なうことができる。

経済産業大臣による「輸入割当てを受けるべき貨物の品目、輸入の承認を受けるべき貨物の原産地又は船積地域その他貨物の輸入について必要な事項の公表」、いわゆる「輸入公表」は、状況に応じて公表される。平成21年5月26日付け「輸入公表」には、下表のように「非自由化品目」、「二号承認」、「二の二号承認」、「事前確認及び通関時確認品目」という分類がなされている。「二の二号承認」とは、従来の「非自由化品目」より分離された品目(原子力関連、機械・武器、火薬類、化学品等、医薬品類、ワシントン貨物)で、輸入割当品目ではなくなったが、輸入承認は、引き続き必要とされるものである。
 輸入割当てを受けるべき非自由化品目は、下表に第1号(一号承認)として示されている水産物とモントリオール議定書規制物資のみとなった。

品目

対象となる主な貨物

第1号

輸入割当品目
(IQ品目)

・非自由化品目 水産物
・モントリオール議定書附属書に定める規制物質

第2号

輸入承認品目

・特定の貨物で特定の原産地及び船積地域とする
(例:中国、北朝鮮、台湾のさけ・ます・調整品等)
・ワシントン条約附属書U掲載動植物及びモントリオール議定書、化学兵器禁止法に定める規制物質等

第2の2号

輸入承認品目

・ 特定の貨物で全地域を原産地又は船積地域とする
(貨物例:原子力関連、機械・武器、火薬類、化学品等、医薬品類、ワシントン条約附属書T掲載動植物、バーゼル法及び廃掃法規制貨物、化学兵器禁止法規制貨物、化審法規制貨物、労安法規制貨物)

第3号

事前確認及び通関時確認品目

・治験用ワクチン、免疫血清、ウラン触媒、文化財、試験研究用化学物質、まぐろ、めろ、鯨と調整品、向精神薬等
・ワシントン条約附属書U・V掲載動植物及びモントリオール議定書に定める規制物質等