地道な資料整理や、現地調査で緻密なノンフィクション小説を描く吉村 昭。史実にこだわりも見せることでも有名。淡々とした記述が多いが、しっかした裏づけがあるので、迫力がある。彼の作品は安心して読める。

赤い人 【著】吉村昭  | おすすめ度★★★★★

 北海道開拓史の暗部を描いた作品。赤い囚衣の男たちが石狩川上流に押送され、囚徒たちの労役で原野が切り開かれていく。これだけ酷使されても、人間とはそう簡単に死なないものなのか。タコ労働ともに、北海道に住む者は、囚人開拓の歴史を知る必要がある。

破獄 【著】吉村昭  | おすすめ度★★★★★

 4度の脱獄に成功した無期刑囚佐久間清太郎と、それを防ごうとする刑務官たちの闘いを描く。実話を基にした小説だが、登場人物は仮名。脱獄の手口や、用意周到さに驚かされる。戦中・戦後の時代背景に重ねた物語の進め方は見事。

高熱隧道 【著】吉村昭  | おすすめ度★★★★★

 昭和11年に着工した黒部第3ダムの隧道工事を描くノンフィクション。摂氏150度もの岩盤を掘り進める工事は過酷を極める。自然に立ち向かう人間たちが、いとも簡単に命を落としていく。国策として進められ、300余人の犠牲を強いられた工事など、今では考えられない。

羆嵐 【著】吉村昭  | おすすめ度★★★★★

 日本の獣害史上最大の事件である「苫前三毛別事件」を描いた作品。3日間のうちに1頭のヒグマが農家12軒を襲い、6人を殺害、3人に重傷を負わせた。飢えたヒグマにとって人間はエサでしかないのか。ヒグマの賢さと執念深さに恐怖する。

熊撃ち 【著】吉村昭  | おすすめ度★★★★☆

 熊撃ちとクマの対決を、実際の事件を題材に描いた7篇の作品。ストーリーはほとんどが仇討ち形式で単調だが、描写が素晴らしい。例えば「顔の横に、羆の頭がのしかかっている。今にも自分の頭蓋骨が羆の逞しく鋭い歯でかみくだかれるような恐怖におそわれた」という一節。背筋に震えが走る。

間宮林蔵 【著】吉村昭  | おすすめ度★★★★★

 間宮林蔵の偉業を、吉村昭特有の淡々とした表現で物語りは進行する。歴史小説と割り切って、キャラを立てて描けば、もっと面白かったと思う(司馬遼太郎のように…)。しかし、林蔵の男気あふれる行動には、ほれぼれする。間宮林蔵を丁寧に描く傑作。

関東大震災 【著】吉村昭  | おすすめ度★★★★★

 20万の命を奪った関東大震災の惨状を克明に描く。資料を基に事実を積み上げていく手法はさすが吉村。地震よりも、そのあとの風評被害などの2次災害の恐ろしさが印象に残った。

ポーツマスの旗 【著】吉村昭  | おすすめ度★★★★☆

 ポーツマス講和会議を中心に小村寿太郎を描く。彼のような外交官は、今の日本に存在するのだろうか。