講談社学術文庫は、「学術をポケットに入れることをモットーとして生まれた文庫」だという。文庫版にしては値段がやや高めだが、価値ある古典や硬派な書物が読める貴重な存在。

塩の道 【著】宮本 常一  | おすすめ度★★★★★

 表題の「塩の道」は、信濃の山間部において、人々が「塩」を入手するためのドラマを描く。塩というものが山間部ではいかに貴重であったかが分かる。塩の運搬に牛を使った、塩サケは保存食というより塩のために購入した、など意外な事実が明らかにされる。宮本民俗学の入門編としてもおすすめ。

現代倫理学入門 【著】加藤 尚武  | おすすめ度★★★★★

 「10人の命を救うために1人の人を殺すことは許されるか」「他人に迷惑をかけなければ何をしてもよいか」など道徳的な難問やジレンマを提示し、倫理学に関心を向ける。当然、これらの問いに明確な答えは無い。功利主義やカントの思想を紹介し、さまざまな考え方を提示する。「ハーバード白熱教室」で議論されそうなテーマが満載。

 「読むに値する良書を、知的かつ積極的に読むための規則を述べた」と著者。どのように本を読むべきか、読書の意義とは何かを問う名著。

歎異抄 【著】梅原 猛  | おすすめ度★★★★☆

 浄土真宗の宗祖とされる親鸞の言葉を弟子の唯円が綴った「歎異抄」を著者が現代語訳と解説をほどこす。とても読みやすい。「善人なおもて往生す、いわんや悪人をや」という一説は有名。

氷川清話 【著】勝 海舟  | おすすめ度★★★★☆

 勝海舟が晩年、歯に衣着せず語った人物評や時局批判。自慢話が少々鼻につくが、西郷隆盛、伊藤博文などの偉人に対する人物評は面白い。単なる語録で、得るものが多くあるとはいえないが、勝海舟の言葉を再現したことに意義がある書。そして、読んだことに意義がある書。

信長の戦争 【著】藤本 正行  | おすすめ度★★★★★

 「信長公記」を読み解き、「桶狭間は正面からの強襲だった」、「長篠の戦で鉄砲の三段撃ちは行われなかった」など、これまでの常識を改める。

大久保利通 【著】佐々木 克  | おすすめ度★★★★☆

 大隈重信や前島密など、当時の人たちが「大久保利通」の印象を語る貴重な書。もとは報知新聞に掲載。西郷隆盛を死に追い込んだと批判されることも多いが、やはり、彼は偉大な宰相であったと思う。

菊と刀 【著】ル-ス・ベネディクト  | おすすめ度★★★★★

 アメリカ人女性による日本研究の古典。偏見に満ちた部分もあるが、当時の日本に対するイメージを、冷静に分析した結果と折衷しているようにも感じる。恩や義理に関する考察はとても面白い。著者は、日本を訪れることなく文献などを熟読しこの書を書いたというから、ある意味すごい。半面、批判される理由の1つでもある。タイトルのような矛盾(菊の優美と刀の殺伐)を併せ持つ日本人、恩にしばられる日本人、など感心する表現も多い。