(なんで俺は今こんなことになってるんだ?)


目の前には眦を吊り上げて何かを言い募るフレン。
話の内容といえば毎度のお説教のようなので、反射的に右から左へと聞き流してしまっている。
一応は神妙に正座の体勢をとり、嵐が過ぎ去るのを大人しく待っているわけだが。


「聞いてる?ユーリ」
「聞いてるよ」
「だったら説明してくれないか、この剣は一体どこから持ってきたんだい?」
「知り合いから借りた、つかお前もいただろ。・・・いや、いなかったのか?」


先程のやり取り、剣を突きつけた時にだが気付いたことがある。
やはりこいつは、俺の知るフレンでは・・・ない。
そもそも剣を持っていないのだ、どこにも。
見えないところに隠し持っているのかとも思っていたが、そうではない。
騎士であるフレンが帯剣していないなんて、まず有り得ないことだろう。
だが拭いきれない違和感はあるものの、目の前にいるフレンはどう見てもフレンでしかなくて。(長年の付き合いだ、細かい癖なんかまで把握してる)
そして俺はひとつの可能性を自分の中に提示した。


ここは、ヨームゲンの時のような幻の世界ではないか。


ヨームゲンの時と、今の状況はまるっきり違うが、
幻、という点だけ取れば可能性のひとつとしては大分有力な気がした。


(過去にフレンって名前のフレンそっくりなこいつが居たっていうのも考えづらい・・・とするとヨームゲンとは根本的には違うもの、か・・・?)
(例えば俺の記憶を反映している幻、・・・だとすればフレンに瓜二つで俺が最初間違えた理由も納得もいくんだが・・・)
(瓜二つなのは身体的な特徴だけだ。大体の性格も似た感じだが、こいつは・・・違う)
(そもそも俺から作られたフレンなら俺の記憶と誤差があんのはおかしくないか?)
(ああクッソ、わかんねぇ!・・・つかこんなふざけた真似しやがったのはどこのどいつだ!?)


「・・・―-リ」


一発ぶん殴るどころで済めばいいけどな、と小さく呟く。
声に幾分か険が入ってしまったのは仕方がない。


「ユーリ!」
「ッなんだよ・・・」


なんだよじゃないだろ、とまだ怒っているのかぶっきらぼうに呟くフレン、紛い。
成る程、こうした見目だけは本当に似てるな、と内心で感心しながら目を細める。
首筋には先程つけた切傷が痛々しいまでに赤い色をはなっているが、本人はさほど気にしていないようだ。


「首、悪かったな」
「え?・・・ああ、少しピリピリするけどそんなに痛くないし、大したことないよ」
「そういうとこもフレンなのな」
「ユーリ?」


ユーリ、と呼ばれるその音も長年聞きなれた心地よい柔らかさで、耳に馴染む。


(フレンなのか?俺の知るフレンじゃなくても、幻でも、お前も)


とりあえず原因の究明は一旦置いておいて、現状の把握から始めるか。
うっし、と掛け声をかけてベッドから立ち上がると、腕を大きく伸ばした。そのまま軽く身体をほぐす。
ずっと正座をしていたせいで正直身体のあちこちが固くなっていた。
座ってんのも性にあわねぇ、と呟くと君らしい、と呆れの混ざった声が聞こえた。


「なぁフレン、教えてくれないか」
「・・・君はさっきから唐突すぎるよ」
「そりゃお前だろ、突然怒り出したり半泣きになったり怒ったり」
「〜〜〜っっ!・・・・・・っそれで、・・・なんだい?」



「そうだな・・・とりあえず、ここはどこで、お前は誰だ?」



この言葉によって引き出されるであろうどんな表情の変化も見逃さないよう、
さり気なく目の前に佇む男を注視する。



(例えフレンだとしても、ここに居るフレンは俺の知るあいつじゃない。何か目的があってのことなら・・・さぁて、白状してもらいますか)


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ユーリは「見破る」スキルと「状況把握」スキルが異様に高いと予想\(^o^)/(クロームさんとかね!) でも今回は結構混乱気味です(書いてるこっちも←)