ゆらゆらと、たゆたう水面に揺られている夢を見た。
ああそういえば俺、ザウデから落ちたんだっけ、とぼんやりと思いを巡らせて・・・


「生き・・・てる・・・!」


がばっと跳ね起きると、肌触りのいい布団が身体からずり落ちた。
勢いよく起き上がったせいで、ソディアに刺された傷が広がったのか、脇腹が酷く痛んだ。
しかしこの痛みも生きているからだと思うと、悪いばかりではない気がしてくる。


「やっと起きたね」
「え?」


声の方向に顔を向けると、よく見慣れた、
先程まで生死を共にし戦っていた幼馴染の姿があった。


「フレン」
「僕は怒ってるんだからね」
「・・・悪ぃ」


恐らく自分が一時的とはいえ、行方不明、生死不明になったせいで
かなりの心配をかけてしまったんだろう。
流石にお前の副官に刺されたからだ、とは言えず目を伏せて押し黙る。
しばらくの沈黙が続き、何か言おうと口を開きかけたところを震えた声が遮った。


「・・・あんなくだらないことで・・・君を失ってしまったかと思った・・・」
「・・・フレン・・・?」


確かにアレクセイの企みは、俺からしたらくだらないことでしかなかったが・・・
ザウデの一件をくだらないこと≠ニ纏めてしまったフレンに微かな違和感を感じる。


(らしくねぇんじゃねぇか?)


目の前で微かに肩を震わすフレンに向け、確かめるように名前を呼んだ。


「フレン」
「・・・すまない・・・食の好みにまで口を出すつもりはなかったんだ。ただ、昼食の後でプリン四個とシュークリーム二個とチョコレート二箱は流石に食べすぎだろうって・・・」
「・・・はい?」


プリン?
シュークリーム?
チョコレート?


「こんなくだらないことで喧嘩になって・・・君が道路に飛び出すなんて、しかも・・・トラックが・・・」
「・・・えーっと・・・」
「轢かれたかと思って慌てて近寄っても君はどこにもいないし、本当にどこに行ったのかと心配してたら、普通に部屋で寝てるし・・・」
「フレン、そりゃ一体何の話だ」
「何って、君の話だろう?」
「・・・ザウデの話じゃないのか?」
「ザウデ?なんだい、それは」




「・・・・・・・・・はぁ!?」





奇妙なものでも見るような、
多分俺はそんな表情をしていただんろう。
まじまじと目の前の幼馴染を見つめると、
彼は先程までの弱弱しい表情から打って変わって、
不機嫌そうに少しだけ眉を寄せた。
ころころと変わる表情がいつもより幼く見えて、俺ははた、と気付く。



「え?」




(そういやここ、どこだ?)



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それでもきっと自重している、スウィーツ