これはどうだ!のおすすめ狛犬
No.92〜 2013.5

経文と狛犬〜戸石神社

                戸石神社(群馬県沼田市沼須694)


ネットで高遠石工の石造物を検索したところ、戸石神社(群馬県沼田市)の鳥居・石段・石垣・石造などは信州上戸村(現・長野県伊那市西箕輪上戸)の石工用助が弟子の与惣次達と造ったのだという。
狛犬も居るというので行ってみた。


社頭の石鳥居は稲荷鳥居で、右脇には自然石に乗った大きな亀と手水鉢。
亀と鳥居にには「
石工用助」の名がある。
鳥居の奉納年は見落としたが、手水鉢は「宝暦十一年辛巳歳霜月吉日(1761)」である。
目当ての狛犬は15段の石段を登った両側に居る。
太い丸太に足や耳をつけたような姿、尾にも見るべき細工は無いが表情の素朴さが嬉しい。
奉納年は、顔を45度傾けて…「
明和五戊子年九月(1768)」と読んだが石工名は無い。
だが
これも用助達の作としても良いだろう
さらに奥へ行くと県指定文化財である宝塔がある。
高さは631cmもあるもので、小林多左衛門本房の依頼で「明和四年九月(1767)」に石工用助と与惣次達が造ったものだ。



石工 用助の銘


これらの石造物が奉納されるきっかけは、小林氏宝暦九年(1759)発起人となって村民の喜捨(きしゃ)三百両をもって比叡山から「鉄眼禅師版の一切経」を勧請した事に依るようだ。
なお一切経祭りは現在も盛大に行われており、全33巻を治めた経文箱が各家を回り、人々の無病息災を願うという。



                                     (写真・文 山田敏春)