謙遜の狛犬〜神崎神社
神崎神社(千葉県香取郡神崎町神崎本宿1994)
久しぶりに大杉神社(茨城県稲敷郡桜川村阿波958)にいる太刀賣藤兵衛の造った狛犬に会いに行った。 平成の大造営で流麗な楼門「麒麟門」も再建されその前で狛犬も一段と見栄えが良くなったのだが、なんと正面石段は立ち入り禁止になり、狛犬に触れる事は出来なくなって、がっかりした。
「立入禁止」の麒麟門
それならばと気を取り直して利根川を渡って神崎(こうざき)神社にいる元禄の狛犬に会いに行くことにした。 荒い台座面には多くの奉納者の名前が刻まれているようだが殆ど読み取れない。 年号銘は「元禄八乙亥年(1695)□宕建上 十一月吉日」と刻んであり、一文字だけ判読できない。 この時代は未だ石の表面を平にならしてから刻字するという事が行われていないので、なじみのない字は読めない。 阿像は口の上部が破損、吽像は顔の正面が破損、前肢も失われて義足になっている。
千葉県最古は飯尾寺(長生郡長柄町)の寛文十年(1670)の狛犬だが、元禄八年はそれに次ぐものかも。 帰宅後画像を見ながら漢和辞典を引くとどうやら、「涓」と思われ「涓宕(ケントウ)建上」となるようだ。 おおよその意味は「神を敬って極めて謙遜しつつ献上致します」という事だと思われる。 狛犬を見るだけでなく、漢字の使われ方と意味を探るのも楽しい事だ。