これはどうだ!のおすすめ狛犬
No.79〜 2012.4

神崎神社の狛犬

              鷲宮神社/神崎神社(埼玉県久喜市鷲宮1-6-1)


鷲宮神社(埼玉県久喜市鷲宮)の本殿は珍しい事に2棟あります。
由緒書きによれば、神代の昔に、天穂日命
(あまほひのみこと)とその御子である武夷鳥命(たけひなとりのみこと)とが東国を治めん為に武蔵国に到着し、出雲族27人の部族と地元の部族が当地に鎮守として神崎(こうざき)神社を勧請し大己貴命(おおなむじのみこと)を祀ったのが始まりで、後に天穂日命の御霊徳を崇めて別宮を建てて奉祀しました。
この
別宮が現在の鷲宮神社の本殿です。
ちなみに神崎神社の本宮は千葉県香取郡神崎町にあります。


平成10年頃だろうか、鷲宮神社に行って拝殿の左脇にある門内を覗くと神崎神社と書かれた提灯と狛犬が見えるので、せめて奉納年だけでも知りたいと社務所に行って尋ねると、なんとお祓いもせず安易に見せて頂けるというので、宮司さんの案内で中に入った。

宮司さんと台座の銘を読むと奉納年は「
安政三年丙辰正月吉日」だが安政の政の字は「正」の下に「攵」の字がある異体字だ。
奉納者は「
願主 埼玉郡 加藤文吉」でその他多数の名が刻まれている。
残念ながら石工名はなかったが立派な江戸狛犬だ。


安政2年10月2日に起きた安政大地震、江戸では震度7、武蔵国では震度4といわれている。
その大震災からわずか3ケ月ほどしか経っていない安政3年の正月、江戸ではまだまだ大きな余震も度々起きていて不安な世情の中での狛犬奉納は、国土安穏・家内安全などを祈念してだろうか。



(文・写真 山田敏春)