これはどうだ!のおすすめ狛犬
No.72〜 2011.9

寅の日の狛犬

                穂高神社(長野県安曇野市穂高6079)


安曇野・穂高神社の境内右の若宮社前に面白い狛犬がいる。
銘は「明和六己丑 四月十四日(1769)「献主 東都深川□□郡有□」とある。



籠神社の吽像
見ておやっと思ったのが阿像狛犬の首下だ。

国産狛犬として最も古いと言われている
籠神社(京都府宮津市大垣)の吽像の首下にある団子のようなコブコブがこの狛犬にもあり、時代と場所を超えて京都の狛犬が信州の狛犬に影響を与えていると思われ興味深い。

前足に注目!

前足だけ石をくりぬいていない!


もう一つ気になったのが奉納日の4月14日だ。
狛犬の奉納日には大事な意味があり、調べると殆どが祭礼日に因んでいる。
穂高神社の有名な祭礼は御舟祭で9月27日に行われるが、江戸時代は7月27日だったので、この祭りは関係ないようだが、穂高神社には「御遷座祭」という重要な行事がある。
資料によれば、7年毎に本・社殿等の建て替えが行われていたが、江戸時代には松本藩の指示で本殿建て替えのみで、社殿、鳥居、玉垣など、すべて造り替えの慣習を改め修復に重点が移されという。
遷座祭り、現在は5月に行われるが江戸期は4月で月に3回ある寅の日の「中の寅の日」の寅の刻(午前3時)に行われたという。
4月14日はこの寅の日だったと思われる。
ではなぜ寅の日なのか、江戸時代には薬師如来を祭る薬師堂があり本堂とされていたという。
この薬師如来の眷属が寅なのだ。




(写真/文・山田敏春)