これはどうだ!のおすすめ狛犬
No.58〜 2010.7

検校(けんぎょう)の狛犬

                水元香取神社(葛飾区東水元2-41-1)


江戸時代もいよいよ押し詰まった慶応二年丙寅十一月(1866)、検校の位を持つ木村田氏によって奉納された狛犬。
砂岩系の石で造られ、傷みが進んでいいます。

狛犬が子犬を持つのは文化年間頃からで、嘉永年間から慶応年間に掛けて子持狛犬が多く造られました。
小振りの作品ながら
3匹の子犬の姿態が活き活きとして素晴らしい。


検校奉納の狛犬と云えば江の島神社が知られていますが、検校とは縁のない水元香取神社(葛飾区東水元)に奉納されているところをみると、当社の氏子で、検校の位を得た記念かも知れません。
目の不自由な人が貰う官位を盲官といい、座頭
(ざとう)、勾当(こうとう)、別当(べっとう)、そして最高位が検校と成ります。
有名な検校と云えば、鍼灸を確立した
杉山検校、琴曲の作曲で知られる八橋検校、囲碁の世界で名を残した者もいます。
また、群書類従の
塙保己一も将軍から検校の位を与えられていたといいます。
そして徳川幕府から金貸しの認可をえて蓄財した
鳥山検校は、金にものを言わせて松葉屋の遊女瀬川を見受けし、名古屋検校は十万数千両を貯めたといわれています。
検校の権威はたいへんなもので、
惣検校になると十五万石並の大名と同じ権威と格式がありました。
時代劇には殆ど描かれませんが、彼らの扱う座頭金が江戸の経済の一翼を担っていたのはたしかです。
文化的な貢献をした検校ひたすら金儲けに走った検校…狛犬を奉納した検校はどちらだったのだろうか。
武江年表に「明治四年十一月四日、盲人検校・勾当官御停止」とあります。

奉献 慶応二年丙寅十一月 
願主 木村田検校  石工 亀有村森田常次郎


                                       
(写真・文/山田敏春)